犬も歩けば棒に当たる 作:政影
本年もよろしくお願いします。
※ベースはイベストです。
「ふぅ……間に合った」
「遅いわよ、ワンコ」
CiRCLEの入り口で待っていてくれた友希那さんからお叱りの言葉。
もっとも表情は穏やかなので本当に怒っているわけではない様子。
年末から正月三が日に掛けて巴ちゃんと一緒に神社で巫女のバイト、あ、バイトじゃなくて助勤か。
助勤と言うと何故か新選組の副長助勤を思い出して血が騒いだり。
イヴちゃんと時代劇を結構見たからかな?
ちなみにその神社で麻弥さんとイヴちゃんがお仕事で今年の抱負を初詣の人達にインタビュー。
あと、こころちゃんと美咲ちゃんとあこちゃんと燐子さんが初詣に来たり。
イヴちゃんが巾着袋をなくした事件はこころちゃんの活躍で解決。
スマイルパワー恐るべし。
……私は仕事でてんてこ舞い。
「ワンコさん、料理をどうぞ」
「ありがとう、紗夜さん」
「ワンコちゃん、飲み物貰ってきたよ♪」
「ありがとう、日菜ちゃん」
こころちゃんが用意したホテル並みの御馳走とリサさんや有咲ちゃんが持ってきた手料理。
まりなさんのお雑煮とか星四級のレアさかも。
どれもこれも美味しくて食べすぎ注意。
「はい、それでは! ただいまより!」
「ガールズバンドパーティーメンバーによります。お正月かくし芸大会――」
「「開催しまーーーす!」」
お、楽しみにしていたかくし芸大会が始まった。
最初はリサさんと宇田川姉妹とはぐみちゃんのヒップホップダンス。
結構本格的でビビる。
「……誘いを断って良かったわ」
「で、ですね……」
誘われたらしい隣の友希那さんと燐子さんが渋い顔をしている。
私も誘われたけど多忙を理由に断ったし。
巴ちゃんも結構働いていたけどまだ体力余ってるんだ……。
「血が騒ぎますね」
「うん、来年はおねーちゃんも一緒に踊ろうよ」
「……考えておくわ」
うわ、氷川姉妹の闘志に火がついてる。
まあ紗夜さんも結構情熱的なダンスを踊るから見てみたいかも、ついでに日菜ちゃんも。
来年はダブルソイヤ姉妹?
「当然ワンコちゃんも踊るんだよ?」
「それは良い考えね」
……巻き込まれてるし。
「手裏剣風船割りです!」
イヴちゃんのかくし芸は手裏剣で風船を割るというもの。
そう言えば前に投げ方を一緒に話し合ったような。
結果は三連続成功。
忍者から武士になった人もいたしイヴちゃん的には武士道なんだろうね。
「師匠やりました!」
「おめでとう。ちょっと手裏剣見せてもらっていい?」
「はい! シコウサクゴしました」
手渡された木製の手裏剣を手に取って眺める。
……なるほど、苦心の跡が見て取れた。
「良い出来だね」
「よろしければお一ついかがですか?」
「いいの?」
「はい、いつでも私で感じてください!」
ブフッ!
何人か飲み物を噴き出してる。
誰の影響か知らないけどアイドルなので発言には気を付けてもらわないと。
そう言えば巫女仲間から冬の新刊を頂いたので、読んだらイヴちゃんか蘭ちゃんに回そう。
「はい、ワンコちゃん。コップが空だよ」
「ありがとう日菜ちゃん」
「うさぎのモノマネします」
次はたえちゃんのうさぎのモノマネ。
前歯でカリカリしてるのは確かにニンジンを食べてるっぽい。
だけど……うん。
「はは、ははは……」
有咲ちゃんが乾いた笑いをしている。
頑張れ保護者。
「あははは! おたえちゃん、おもしろーい!!」
「すごいわ、たえ! たえは間違いなく、うさぎの末裔よ!」
一部には大受けの模様。
私も犬か猫のモノマネだったら負けない。
「次はモカちゃんの『目隠し利きパン』でーす!」
……利きパン?
利き酒みたいな感じかな。
準備するのも大変そう。
というか近所に十軒もパン屋さんある?
結果は十問全問正解、やるなモカちゃん。
色々なパンが食べられて羨ましかったり。
「……で?」
「モカがパン好きなのってみんな知ってるし……」
「おめでとうモカちゃん!」
「すごかったね、モカ!」
幼馴染の蘭ちゃんとひまりちゃんは微妙な感じだったけど、りみちゃんと沙綾ちゃんは大興奮。
流石はチョココロネ愛好家とパン屋の娘。
「次のかくし芸は……Pastel*Palettes、日菜さんでーす!」
うーん、何をするか予想できない。
「はーい! それじゃあ行こ! おねーちゃん!」
「え、私も!?」
日菜ちゃんに指名された紗夜さんはフライドポテトを持ったままフリーズ。
サプライズか……どうする紗夜さん?
「どうしてもおねーちゃんと一緒に出たかったから」
その言葉に紗夜さんの口元が緩む。
まあやるしかないよね。
「全く……で、何をするつもりなの?」
「ありがとうー! 昔、よく二人でやってたテーブルクロス引き!」
やべー、凄く楽しみ。
幼い氷川姉妹がなぜテーブルクロス引きに興味を持ったのかは謎だけど。
そう言えば前に見せてもらった昔の写真とても可愛かった。
「二枚同時!?」
「ドキドキしてきました……」
リサさんとつぐみちゃんは本人達よりも緊張している。
「あの二人が同じステージに立っているのを見るのは感慨深いわ」
「はい……」
「紗夜さんもひなちんも頑張れー!」
温かく見守るRoseliaの面々。
私も初対面時の辛そうな表情を憶えているだけにジーンとくる。
「あははっ、そんなしみじみすることじゃないってばー!」
明るく笑い飛ばす日菜ちゃん。
その裏に長い葛藤と愛憎……他人の私が推し量れることじゃないけど、それでも。
少し涙もろくなったかな?
「それじゃあ、いくわよ――」
「「せーーーのっ!」」
「紗夜も日菜もやるじゃん♪」
「私感動しました!」
「今井さんも羽沢さんも大袈裟ですよ」
「そーそー、あたしとおねーちゃんなら余裕だって」
「日菜、次からは事前に言いなさい」
「はーい♪ あれ、ワンコちゃん無言でどうしちゃった?」
「そう言えばさっきから静かね。ワンコ、大丈夫?」
友希那さんに答えようとするも声にならない。
あれ、もしかしてまずいかも。
「日菜、さっきワンコさんのコップに飲み物注いだわね?」
「う、うん。確かこのゴミ袋の中に……あった!」
「ノンアルコールカクテル……あ、アルコール分が0%じゃない」
えっ!?
疑いもせず普通に飲んでた。
昔からアルコールとは相性が。
「もう一度こころんと美咲ちゃんに盛大な拍手をお願いしまーす!」
私の異変とは別に進行するかくし芸大会。
あ、ジャグリング見逃しちゃった。
録画映像後で見せてもらわないと。
「ちょっと何してるんですか!」
騒ぎを聞きつけて蘭ちゃんが来た。
大丈夫、と伝えようとしても言葉が――
「何でもないにゃーん♪」
『えっ!?』
辺りが騒然とした。
私も何が起きたのか分からない。
口が勝手に。
「蘭ちゃん、お久しぶりにゃん」
「え、あ、もしかしてあの時の!?」
体が勝手に動いて蘭ちゃんの鼻を指で撫でる。
ちょっと何してるの!?
「あなた、誰?」
友希那さんの困惑した表情が辛い。
何とか体の主導権を取り戻したいが何もできない。
「ん~説明しにくいにゃ。お、まりなさんのギターが始まるみたいだしそっちに注目にゃ」
「あなた!」
「大丈夫、『吾輩』も『私』だにゃん♪」
「……そうね」
不安げな友希那さんをそのままに、体は蘭ちゃんの肩に顎を載せステージの方を見る。
心なしか蘭ちゃんの顔が赤い気がした。
ちょっといい匂い……。
まりなさんの超絶ギターテクに圧倒され、香澄ちゃんと彩さんの手品に手に汗を握った。
「吾輩も何かやりたいにゃん。あ、そうだ、香澄ちゃん」
「はい、ワンコ先輩……雰囲気違いません?」
「まあまあ、ちょっとステージ借りていいかにゃ?」
「歓談タイムなのでどうぞ!」
「ありがとにゃん♪」
不安げな表情を浮かべる面々をよそに嬉々としてステージに上がる私の体。
頼むから余計な事は――
「飛び入りでモノマネやるにゃ~♪」
パチパチパチパチ
事情を知らない人達から疎らな拍手が起こる。
「先ずは……『にゃーんちゃん、かわいいねー』」
「っ!?」
「あはは、似てる似てる!」
顔を真っ赤にする友希那さんとお腹を抱えて笑るリサさん。
大多数の人は誰の真似か分からず呆気に取られているけど……後が怖い。
「次は……『私には妹しかないの! 放っておいて!』」
「わ、私はそんな事言いません! 日菜、そんな目で私を見ないで!」
「おねーちゃん、そんなにあたしの事を……るんっ♪ ってきたー!」
照れと怒りが混ざった表情の紗夜さんと瞳のキラキラっぷりがない半端ない日菜ちゃん。
おい後先考えて。
「続いて――」
そこからは地獄絵図?
有咲ちゃんの顔が今日一番赤くなったり。
薫さんが八つ当たりで千聖さんに殴られたり。
蘭ちゃんとモカちゃんの間にピンク色の空間が出来たり。
どう収拾つけるの?
「――じゃあ最後に『戸山さん、あなた達の音楽からは勇気を貰ったわ』」
「え……ありがとうございます!」
「『美竹さん、あなた達の音楽からは進み続ける情熱を貰ったわ』」
「悪くないですね」
「『丸山さん、あなた達の音楽からはプロとしての責任と矜持を感じたわ』」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいな♪」
「『弦巻さん、あなた達の音楽からは音楽だから出来る無限の可能性を感じたわ』」
「まあ、素敵な感想ね!」
「そしてRoseliaは……おっと、後はゆきにゃんよろしく♪」
マイクをステージ下の友希那さんに向けると、最初は困惑顔だったけれど覚悟を決めた表情で上がってきた。
ごめんなさい、巻き込んで。
でも友希那さんの言葉は私も聞きたい。
友希那さんはマイクを受け取ると適度に表情を緩めた。
「はぁ……全く手の掛かる妹ね。Roseliaは全員で頂点のさらに先を目指して歩んでいくだけよ」
そこで一旦区切ると会場の一人一人と目を合わせる。
「今年も一年切磋琢磨していきましょう」
盲目的ではなく周り見る、それでいて前よりも先を見据えた言葉。
他者を尊重し高めあえる競争相手として認めた言葉。
その言葉で私の意識は途切れた。
「……あれ」
「起きたのね」
気が付けば見慣れた天井に使い慣れた布団。
横になったまま声のした方を見ると、友希那さんが炬燵で勉強を……思わず二度見。
「全員の前であんな事言って留年は不味いでしょ?」
「ふふっ、流石友希那さんだ」
「という事は最後まで記憶があるという事ね」
あ、墓穴掘ったかも。
まあ私の体がやった事だし仕方ないか。
デコピンの一、二発は覚悟しよう。
「ワンコがいなくなったと思って怖かったんだから」
布団の上から覆い被さってきた友希那さん。
私の胸辺りに顔をぐりぐりと当てる。
……布団越しに微かな震えが伝わってきた。
胸が締め付けられる。
「ごめんな――」
「なんてね。冗談よ」
上げた顔はしてやったりの表情。
子供のような悪戯っぽい笑顔にこちらも顔がほころぶ。
全く……敵わないよ。
「いつでも私の所に戻って来るって約束したでしょ?」
「うん、勿論」
その言葉で満足したのか起き上がり私に手を差し出す。
「さあ起きなさい。数学で解けない問題があるの」
「任せて」
今年一年、とりあえずは全員無事進級出来るよう頑張りますか。
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<備考>
湊友希那:結果的に親しみ度がアップした。
氷川姉妹:次は一緒におせちを作るかも。
ワンコ(酔):Afterglow推し。
戸山香澄&丸山彩:やりきった。
月島まりな:私物を冷蔵庫に置いておいたら手違いで会場に。
下記の中で一番好きな話は?
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今井リサ誕生日(8/25)
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紗夜視点(一寸の光陰軽んずべからず)
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白金燐子誕生日(10/17)
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今井リサの弟
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湊友希那誕生日(10/26)