犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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バレンタインに間に合いませんでした。


<イベント発生条件>

(キャラ:好感度)
全キャラ:中以上
全キャラの中で???の好感度が一番高い


本編X-2:バレンタイン(シーズン1冬)

「物言わぬ相手を刻んで溶かして固める。流石リサさん、容赦ない」

 

「ちょっと~、変な言い方しないでよ。ワンコだってブートキャンプでもっと酷い事してたじゃん!」

 

「お二人ともお静かに……手先が狂います」

 

 私と軽口をたたき合いながらも、手際よくチョコと生クリームで作ったガナッシュを団子状に丸めていくリサさん。

 そして計量作業に思いの外時間が掛かっている紗夜さん。

 

 ここは今井家のキッチン。

 明日のバレンタインデーに向けて私達三人はチョコ作りに勤しんでいる。

 全く乙女というのはつくづくイベント事に弱い、私も含めて。

 

「紗夜、数滴レベルで計量しなくても大丈夫だってば」

 

「いえ……大切な人達に日頃の感謝の気持ちを伝えるものですから……」

 

 紗夜さんの気合の入り度が段違い。

 リサさんの方を見ると慈愛に満ちた表情、聖母がかってる。

 

「私のはそろそろ固まったかな?」

 

「そうだね。出してみたら?」

 

 ポリエチレン手袋をはめ冷蔵庫からシリコンの型を取り出しリサさんに見てもらうとオーケーのハンドサイン。

 注意深くペーパーの上に型から外していき、リサさんが用意してくれたチョコレート用着色料で色をつける。

 

「うわ~、造形凝ってるね」

 

「本当ですね。特にこの犬……もしかしてレオンくんですか?」

 

「流石紗夜さん。それは千聖さん用」

 

 二十五種類の特注シリコン型……材料のチョコの金額の何倍だよ、って感じ。

 値が張った分出来は上々、二人からも高評価の様子。

 味じゃリサさんに勝てないから差別化という事で。

 

「Roseliaの分だけ湊家で作ってサプライズとか期待しちゃうよ♪」

 

「そうですね。私も楽しみです」

 

「代は見てのお帰り、ってね」

 

 かなり物議を醸しそうな形なのでまだお見せできない。

 

 さて、後は三人でショッピングモールの雑貨屋で買ったリボンと袋でラッピングをすれば完了。

 湊家に戻ってRoselia分の方の仕上げをしないと。

 

 

 

 

「三、二、一、ハッピーバレンタイン♪」

「……ハッピーバレンタイン」

 

「ありがとう、二人とも」

 

 日付変わって二月十四日、恥ずかしがる友希那さんを強引に伴ってお父様に手作りチョコを渡す。

 友希那さんと私の合作……あんなにチョコを刻む時に飛び散るとは思わなかったけど何とかなった。

 思い切ってハート形にしたけど、序盤でお役御免になった友希那さんには勿論内緒。

 後の認識の齟齬が楽しみ。

 

「良かったわね、あなた。はい、私からも」

 

「……ありがとう。ホワイトデーは期待してても良いぞ」

 

 湊家の女性陣からチョコを贈られて嬉しさが滲み出ているお父様。

 たまにはこんなのもありかな。

 

「にゃー」

 

「猫にチョコは毒だからユキに手伝ってもらうのは来世かな」

 

 湊家次女からは熱意だけ頂いておく。

 

 

 

 

「おっはよー、友希那、ワンコ♪」

 

「おはよう、リサ」

 

「おはよう、リサさん」

 

 夜が明けていつも通りの登校風景。

 Roselia内のチョコの受け渡しは練習後ということでリサさんとはいつも通りの挨拶。

 ……かなりウキウキしてるのが分かる。

 逆さに吊るされた兎の頭部のピアスがピョンピョンしてるし。

 

 

 

 

「もー、遅いってば!」

 

「いや、普通に始業前だし」

 

 チョコで溢れかえる薫さんの下駄箱をスルーしたら、お次は日菜ちゃんが私の席で待ち構えていた。

 そして机の上には巨大なハート形の箱、明らかに日菜ちゃんの顔より大きい。

 え、これ持ち帰るの?

 

「……貰っていいの?」

 

「勿論、その為に手作りしたんだから♪ で、ワンコちゃんからは?」

 

「はいはい、どうぞ」

 

 ライトブルーのリボンが付いた袋を渡すと即座に開封。

 うん、何となくそんな気はしてた。

 

「もしかして……太陽系の惑星?」

 

「そう。まあ縮尺合わせると酷い事になるで大きさは揃えてあるけど」

 

 悪いね冥王星ちゃん。

 

「好きでしょ、みんな違う個性豊かな惑星達」

 

「うんうん、流石天文部副部長のワンコちゃん!」

 

「サラッと嘘をつかないで」

 

「え、ジブンもそういう認識だったのですが」

 

 申し訳なさそうな顔の麻弥さん。

 最近学園内で指をさされてこそこそ何か言われているのってまさか……。

 

「言いたい事はあるけど、とりあえずチョコをどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 緑のリボンが付いた袋を大事そうに受け取る麻弥さん。

 ついでに今日会えそうにないパスパレメンバーの分も預かってもらう。

 

「既製品で申し訳ないですが、ジブンもワンコさんに……」

 

「うん、ありがとう」

 

 パス〇ル某……これ結構有名なやつだよね。

 

「フヘヘ、普段立ち入らない売り場だったので緊張しました」

 

「麻弥さんが一生懸命私の為に選んでくれたなんて嬉しいな」

 

 バレンタインのチョコ売り場という女の戦場。

 オロオロする麻弥さんが勇気を振り絞り、人波にも店員のトークにも負けず吟味した至高の一品。

 嬉しいに決まっている。

 

「ひゃっ!」

 

 思わずハグしてしまう。

 いつもイヴちゃんにやられているみたいだから大丈夫の筈。

 

「えー、麻弥ちゃんだけずるいー!」

 

「はいはい、日菜ちゃんもこっちおいで」

 

「うん♪」

 

 麻弥さんと日菜ちゃんをまとめてハグ……両手に花かな。

 日菜ちゃんの手作りチョコも普通に嬉しい。

 二人の関係を言葉にするのは難しいけれど、嫌いじゃない。

 ……箱の大きさ通りの中身だったら結構なボリュームだけど。

 

「ふんっ!」

 

 後ろから友希那さんにハグされて珍妙な光景に。

 一年近くこんな光景を見せられ続けてきたクラスメイトは基本スルーだから助かる。

 息を荒くしてデッサンしている人もいるけど。

 

 

〇Pastel*Palettes(相手:チョコの形、「文字チョコ」)

 

丸山彩:花束

氷川日菜:太陽系の惑星

白鷺千聖:レオンくん詰め合わせ

大和麻弥:猫詰め合わせ

若宮イヴ:「義」「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」

 

 

 

 

「やあ、子猫ちゃん」

 

「あ、薫さん。丁度、んぐっ!」

 

 休み時間、二年B組に現れた薫さんに言葉の途中で口に何かを押し込まれた。

 ビターなチョコ、美味しい。

 

「『愛は万人に、信頼は少数に』つまりそういうこと、んっ!?」

 

 つい差し込まれた指に舌を這わせてしまう。

 勿体ないから。

 

「はむ……ぺろぺろ……」

 

 お返しに手首を掴み逃がさないようにして舌テクを披露。

 さくらんぼの茎を結ぶのも余裕なレベルなので。

 段々と薫さんもポーカーフェイスを保つのが難しく……潮時か。

 

「ご馳走様」

 

「……ああ、どういたしまして」

 

 長細くて綺麗な人差し指を解放してウェットティッシュで拭く。

 爪ケアやらスキンケアやら一番女子力の高い人は薫さんかも知れない。

 努力の跡を見せない努力、メリット・デメリットはともかくその姿勢は恰好良いと思う。

 ……同じ傾向の人間が私の周りに多い気がするけど。

 

「『ぼんやりしている心にこそ恋の魔力が忍び込む』」

 

「ふふっ、ワンコも儚さが分かってきたみたいじゃないか」

 

「ありがとう。ついでにハロハピのみんなにもチョコ作ってきたのよろしく」

 

「お安い御用さ」

 

 

〇ハロー、ハッピーワールド!

 

弦巻こころ:向日葵

瀬田薫:「儚い」

北沢はぐみ:マリー

松原花音:クラゲとペンギン

奥沢美咲:ミッシェル

 

 

 

 

「おまたせ」

 

「あ、ワンコ先輩!」

 

 昼休みの屋上、陣取るはAfterglowの面々。

 事前に連絡があったのでチョコはしっかり準備。

 ……風が吹くと普通に寒い二月の屋上。

 

「えっと……」

 

「蘭~、頑張れ~」「えいえい」「ソイヤ!」「蘭ちゃん!」

 

 四人の声援を受けて覚悟を決める蘭ちゃん。

 眩しいよ。

 

「あ、Afterglowのみんなで作りました!」

 

「うん、ありがとう。開けても?」

 

「はい!」

 

 綺麗なラッピングを慎重に解くと中からは夕焼けをイメージしてアイシングされたクッキー。

 口にすると軽やかな歯ごたえ、それにこの微かな香りは――

 

「薔薇の香り?」

 

「はい」

 

 力強い眼差し。

 視野を広げ、向上心を持ち、貪欲に吸収していく。

 そして……これはRoseliaへの挑戦の意も含まれてるのかな?

 全くこれだから後輩は。

 

「蘭ちゃん、いつも通り格好良い」

 

「ちょっ、先輩!」

 

 思わずハグ。

 メッシュと区別が付かない程赤くなっても逃さない。

 蘭ちゃんっていつもお花の匂いがするよね。

 

「ひゅーひゅー」

 

「モカ、茶化してないで助けて!」

 

 

美竹蘭:蘭詰め合わせ

青葉モカ:パン

上原ひまり:「え」「い」「え」「い」

宇田川巴:太鼓

羽沢つぐみ:コーヒーカップ

 

 

 

 

 放課後、少し生徒会の仕事をしてから市ヶ谷家へ。

 万実さんに挨拶をして蔵の地下へ。

 

「チョコ~♪」

 

「おい、先に挨拶しろ!」

 

 抱き着いてくる香澄ちゃんと即座にツッコミを入れる有咲ちゃん、いつもの光景。

 

「あ、兎だ」

 

「おたえも勝手に開けるな!」

 

 元気が良くて結構。

 この割と自由なバンドの空気といざという時の団結力が彼女たちの強み。

 同学年のAfterglowとは別の意味で楽しみなバンド。

 その屋台骨と言えば――

 

「有咲ちゃん、がんば」

 

「きゅ、急に何ですか!?」

 

 ハグするとひまりちゃんと双璧を為す柔らかさ。

 天は二物を与えたみたいだ。

 

 

戸山香澄:☆

花園たえ:兎詰め合わせ

牛込りみ:チョココロネ

山吹沙綾:「やまぶきベーカリー」

市ヶ谷有咲:盆栽

 

 

 

 

「ごめん、遅れた」

 

「遅いわよ。待たずに始めるところだったわ」

 

「とか言ってずっと時計と睨めっこしてたのは誰かな~」

 

 コンビニのバイトが長引きようやくRoseliaのみんなが待っている羽沢珈琲店へ。

 少しむくれている友希那さんとそれをからかうリサさん。

 他の三人はNFOの攻略について議論しているようだ。

 

「そんなにコンビニ忙しかった?」

 

「リサさんもモカちゃんもいなかった上に義理チョコサービスの所為か大混雑。そんなに欲しいかな?」

 

「ワンコさんから……貰えるなら嬉しいです……」

 

「燐子さん、ありがとう」

 

 私も席に着きつぐみちゃんからお冷を貰う。

 一応隔離席になっていてチョコの持ち込み許可も羽沢店長に貰っている。

 

「チョコレート交換、行くわよ」

 

 いつものメンバー紹介のノリで友希那さんが宣言した。

 

 ちなみに友希那さんだけ既製品で他のメンバーは手作り。

 猫ラベルの某有名チョコ……帰ったら一緒に食べるか聞いてみよう。

 

 

「……ワンコ、この形は何なの?」

 

「今度発売予定のRoseliaグッズの試作SDイラストからシリコンの型を作ってもらった」

 

「羽沢さんと日菜が混ざっているのですが」

 

「ついでに作ってもらった」

 

「うひゃ~、友希那のチョコとか勿体なくて食べれないよ~」

 

「型はあげるから駄目になる前に食べて」

 

「あ、りんりんのあこだらけだ!」

 

「うん……こっちのあこちゃんも食べちゃう……」

 

 ちょっと変な空気になったけど何とかなった、かな?

 この甘さならブラックコーヒーが最適かも。

 

 

湊友希那:リサさん詰め合わせ

氷川紗夜:つぐみちゃんと日菜ちゃんの詰め合わせ

今井リサ:友希那さん詰め合わせ

宇田川あこ:前にやったNFOのSDキャラ六人

白金燐子:あこちゃん詰め合わせ

 

 

 

 

「お邪魔します」

 

「お、待ってました!」

 

 既に出来上がっている部屋の主、鍵をかけないとか不用心すぎる。

 机の上の酒瓶を片付けて持ってきたウイスキーボンボン、円を描くように並べられていてCiRCLEっぽい。

 

「飲みすぎですよ。まりなさん」

 

「うるさい! バレンタインに縁の無い女を舐めるな! ぐすっ」

 

 うわ、駄目だこの人、半泣きだ。

 仕事もできるし綺麗だしギターも上手いし……普通にモテそうなのに。

 

 まあ考えても仕方ないから、なるようになれ、だ。

 

 

 ウイスキーボンボンを食べ自分の意識を朦朧とさせる。

 さあ、もう一人の私、まりなさんを悦ばせてあげて。




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<備考>

氷川日菜:日付が変わった瞬間に姉の部屋に突撃。

大和麻弥:購入時はTV出演並みに緊張した。

瀬田薫:前年比200%、去年に続き最多記録更新。

美竹蘭:チョコ作りを提案した。

市ヶ谷有咲:ツッコミは年中無休。

Roselia:勿体なくて当日は誰も食べられず。

月島まりな:起きたら記憶が飛んでおり、同衾に気が付いて血の気が引いた。

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  • 連載終了
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