犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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本編Xはそれぞれ独立しているので思いついた順に書いています。


<イベント発生条件>

(キャラ:好感度)
麻弥:高
友希那:中以上
Pastel*Palettesの中で麻弥の好感度が一番高い

不幸度:中以下
性欲:中以上


本編X-3:修学旅行(シーズン1秋)

「――さん! ワンコさん、起きてください!」

 

「……麻弥さん? あれ、ここって」

 

 聞き慣れた声で目を覚ますと目の前に焦っている麻弥さん。

 仰向けに寝ている事を認識したので、ゆっくりと上半身を起こし辺りを見回す……浜辺?

 そして右目に違和感、いつも着けている眼帯が無い。

 

「体は大丈夫ですか!?」

 

「ん」

 

 立ち上がり全身を見て確認、触って確認、動かして確認。

 

「大丈夫。ちょっと記憶が飛んでるから説明してもらってもいい?」

 

「はい。あ、その前に湊さんも起こさないと!」

 

「友希那さんも!?」

 

 見回すと少し離れた位置に友希那さんが倒れていた。

 駆け寄って脈を取り、呼吸を確認……大丈夫そう。

 

「友希那さん、朝ですよ」

 

「ん……後五分……」

 

 いつも通りの返答に少し脱力しつつ安心した。

 まあいつまでも可愛らしい寝顔を見ているわけにもいかないので……鼻を摘まむ。

 

「……っぱ! 何事!?」

 

「おはよう、友希那さん」

 

「……ええ、おはよう……ワンコ」

 

 起き上がり辺りを不思議そうに眺める友希那さん。

 近付いてきた麻弥さんと挨拶を交わすもまだボンヤリしている。

 取り合えず日差しが厳しいので日陰に移動。

 

「麻弥さんお待たせ。修学旅行中という事は思い出したけど、何があったか説明してもらっていい?」

 

「はい。といっても完全ではないですけど」

 

 

 

 羽丘二年の修学旅行先は花女三年が春に訪れた沖縄。

 湊班は友希那さん、麻弥さん、私の三人。

 友希那さんの希望はイリオモテヤマネコ一択、麻弥さんも同じ。

 那覇空港から石垣島へ飛び予約していた西表島ツアーに参加。

 羽丘の修学旅行は私服なので長袖長ズボンで準備万端。

 そして念願のイリオモテヤマネコ! には全く会えず。

 失意のまま帰りのフェリーで暴風雨に遭遇。

 急いで救命胴衣は着けたものの転覆して海に放り出された。

 私が二人の手を離さなかったおかげで離れ離れにはならなかったけど、気付いたら浜辺に打ち上げられていた。

 他の乗客と船員は不明。

 

 まとめるとこんな感じ。

 

 

 当然ながらスマホは三人ともお釈迦。

 海での遭難は初めてだから少し不安かな、サバイバルキットでもあれば良かったのに。

 

 

 

「……ごめんなさい。私のせいで」

 

「そ、それを言ったらジブンもツアーに賛成しましたし!」

 

 落ち込む友希那さんと慌ててフォローする麻弥さん。

 うん、ここは私が頑張らないと。

 

「友希那さん、何か問題でも?」

 

「えっ?」

 

「三人とも無事。なら後は救援を待って帰るだけ、でしょ?」

 

 私の言葉にキョトンとする二人、ちょっと可愛い。

 

「……フヘヘ、流石ワンコさん。どこまでも前向きですね」

 

「ほら、麻弥さんも『フヘヘ』言ったし勝利フラグは立った」

 

「あなた達……そうね。Roseliaの狂犬とパスパレのサバイバルマスターがいるのに弱音は吐けないわね」

 

 あれ、まだ狂犬の仇名生きてたんだ。

 そして麻弥さんが大活躍だったパスパレ特番は確かに湊家全員で見てた。

 やっぱり麻弥さんは凄かった。

 

「それでこそ友希那さん。それに暴風雨なんて自称雨女の紗夜さんでも呼べないよ」

 

「……帰ったら紗夜に言っておくから覚悟しておきなさい」

 

「うん、期待しておくね」

 

「お二人の掛け合いを見てるといつもの教室みたいで落ち着きます」

 

 そう言ってもらえると嬉しいな。

 

 

 

 

「まずは島を一周でしょうか?」

 

「うん、その前に捜索隊が来た時に分かるように目印を残しておきたいな」

 

「漂着物が結構あるわね」

 

「では、それで『SOS』を作りましょう!」

 

「容器類は使えそうだから確保、と」

 

 ゴミ問題について考えたり。

 

 

 

「大和さんの言った通り直射日光を避けて森伝いに移動すると日差しが防げていいわね」

 

「あ、あの果物、彩さんの図鑑に載ってた食べられる果物です!」

 

「ちょっと取ってくる」

 

「脱水症状は怖いですからね。湊さんもこまめに水分補給お願いします」

 

「ええ、ありがとう」

 

 食糧問題について考えたり。

 

 

 

「あら、一周したわね」

 

「大体一時間なので四キロ前後?」

 

「そうだと思います」

 

「大和さんが見つけた果物のお陰で喉は乾かないけど、汗と海水で服が……出来れば髪も洗いたいわね」

 

「少し休憩したら森の奥に行ってみる?」

 

「そうですね。水源があればいいんですけど……って、曇ってきてません?」

 

「降りそうね。というか降ってきたわ」

 

「流石友希那さん、持ってる」

 

「たまたまよ。天然のシャワーなんて贅沢ね」

 

「ついでに容器も満タンにしておきましょう」

 

 水不足について考えたり。

 

 

 

「岩場で貝を捕獲」

 

「濡れてない流木を拾ってきたわ」

 

「お二人ともありがとうございます。丁度ペットボトルで火が起こせました」

 

「おお、理科の実験みたい。これで貝も蛇も蛙も焼いて食べられる」

 

「……」「……」

 

 価値観の違いについて考えたり。

 

 

 

「♪~♪~」

 

「寝ころんで湊さんの歌声を聞きながら星を見るなんて最高ですね」

 

「リサさんとか香澄ちゃんとか絶対に悔しがると思う」

 

「ギャーウ」

 

「あ、イリオモテヤマネコ」

 

「にゃーんちゃん!?」

 

「どこっすか!?」

 

「うん、おいで。いいこ、いいこ」

 

 絶滅危惧種について考えたり。

 

 

 

「寝心地はどう? 漂着物の網で作った簡易ハンモック」

 

「虫除けの草を組み込んだので安眠できると思います」

 

「ええ、快適よ。じゃあ見張りの交替の時間になったら起こして頂戴」

 

「ギャウ」

 

「うん、お休み」

 

「良い夢を」

 

 睡眠の質について考えたり。

 

 

 ……全く、修学旅行は色々と考えさせられる。

 悪くないけど。

 

 

 

 

「……湊さんは眠ったみたいですね」

 

「うん」

 

 微かに聞こえてくる安らかな寝息、いつもと同じで安心する。

 森と浜辺との境界、森寄りで眠る友希那さんと浜辺寄りで焚き火をする麻弥さん。

 軽く見回った感じ肉食獣はいなかったけど蛇や虫が怖いので少し枝を落とし見晴らしを良くした場所にハンモック。

 一応周囲の森には拾った釣り糸で作った簡易鳴子を設置してあるのでもし何か来たら分かる筈。

 あまり浜辺の方だと大波が怖いので焚火の位置は海岸線から離した。

 ここらへんは分かる人がいなかったので完全に手探り。

 

 さて、と――

 

「麻弥さん、ありがとう」

 

「あっ」

 

 小声での感謝の言葉と共に唇を重ねる。

 それだけで緊張の糸が切れたのか麻弥さんの両目から涙が零れた。

 心細い状況の中での気丈な振る舞いと行動力、やっぱり麻弥さんといると安心できる。

 

 髪を撫で、体をさすり、出来るだけ落ち着けるように。

 いつしか舌が絡み合い互いの唾液が混じり合う。

 淫靡な音が波の音、風の音、虫の音に混じる。

 

「……フヘヘ、ワンコさんみたいにはいきませんね」

 

「ううん、私は鈍感なだけだから真似しない方が良いよ。それに麻弥さんが一緒で心強かった」

 

 私の唾液の影響からか顔を赤らめる麻弥さん。

 新鮮なその表情に私の体も火照り、疼く。

 アイドル活動やバンド活動で引き締まっているものの、女性らしさを全く失っていない魅力的な肢体。

 服の上から豊満な胸に手を当てつつ、耳に吐息がかかる距離で囁きかける。

 

「続き……しちゃう?」

 

「はう……是非、と言いたいところですが、これ以上やると湊さんの顔をまともに見れなくなるので」

 

「友希那さんは気にしないと思うけど……うん、続きは帰ってから」

 

「……はい」

 

 続ける代わりに麻弥さんの頭を膝の上に。

 最初は驚いていた麻弥さんも観念して目を閉じた。

 頭を撫でているうちに聞こえてくる寝息。

 

 今日は徹夜で見張り、かな。

 

 

 

 

 バラバラバラバラバラ

 

 

 

 

 早朝、ヘリのプロペラ音に急いで火を消し麻弥さんを抱え木陰へ……って、こんな過剰反応は私も疲れている証拠。

 改めて捜索隊のヘリだと確認し浜辺へ出て手を振る。

 無人島生活は一日で終わりのようだ。

 

 帰る前にハンモックとか鳴子とか片付けないと。

 

 

 

 

「ゆ~ぎ~な~!」

 

「あら、リサ」

 

 沖縄本島の病院で軽い検査を終え外に出ると、リサさんが顔をぐしゃぐしゃにしながら友希那さんに抱き着く。

 カンキワマリなリサさんだが友希那さんの反応は薄い。

 朝起きたらイリオモテヤマネコがいなくなっていたとかで、救援の安堵より喪失感が勝っている様子……やはり大物。

 

 

「麻弥ちゃん♪」

 

「日菜さん!」

 

 抱き合う麻弥さんと日菜ちゃん。

 こちらは感動の御対面、少し取り乱している日菜ちゃんが可愛い。

 

 

「フフ、お帰り」

 

「薫さん、ただいま」

 

 いつも通りの薫さん、信頼の証だと受け取っておこう。

 麻弥さんを日菜ちゃんに取られて手持無沙汰というわけではない筈。

 そして――

 

「なんでつぐみちゃんまで?」

 

「生徒会長から現地に飛んで対応に当たれって……心配、したんです、から……ぐすっ」

 

「ごめんね」

 

 私の顔を見て安堵したのかつぐみちゃんの瞳から涙が。

 ……釣られて私も泣いちゃいそう。

 これ以上見ないようにハグして背中をさする。

 無事帰ってきたことを実感した。

 

 他の乗客と船員も無事だったので一安心。

 

 

 

 

「じゃあ、これから友希那も修学旅行の続きを」

 

「歌いたい……いえ、歌うわ!」

 

「えぇ!?」

 

 友希那さんの爆弾発言にリサさんの声が裏返る。

 無人島生活によって友希那さんの中で変化が生まれた?

 力強い眼差しにワクワクしてきた。

 

「ジブンも同感です。この近くにパスパレのロケでお世話になったライブハウスがあるので行きましょう!」

 

 麻弥さんもやる気満々だ。

 今にも「ソイヤっ!」とか言いそうな位に。

 ドラマーって根本は一緒なのかな、良い意味で。

 

「おー、麻弥ちゃんからるんっ♪ な発言が。あたしも!」

 

「元気なお姫様達だ。喜んでお付き合いしよう」

 

「ちょ、ちょっと皆さん!」

 

 思わぬ流れに慌てるつぐみちゃん。

 ……うん、観念してもらおう。

 

「友希那さん、丁度ここに気鋭のキーボーディストが」

 

「えっ!?」

 

「あら、それは好都合ね。羽沢さんも行くわよ。大和さん、早く案内して」

 

「フヘヘ、了解です!」

 

 ライブハウスに向かって歩き出す一同。

 つぐみちゃんだけはその場に止まり私を恨みがましく見つめている。

 

 我ながら無茶なお願いだとは分かっているけど……。

 つぐみちゃんの右手を取り両手で包み込む。

 

「つぐみちゃん、お願い。後は私が対応するから。それにきっと良い経験が出来る」

 

「もう……後で埋め合わせはしてもらいますからね!」

 

「うん」

 

 覚悟を決めたような表情のつぐみちゃんを送り出す。

 さあ、後は私の仕事。

 

 引率の先生が戻ってきたらどう丸め込もうか?

 つぐみちゃんを派遣した生徒会長にはどう対処しようか?

 湊家と大和家にも直接連絡しておきたい。

 

 

 

 

 さあ、甘えた分だけ頑張ろう。




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<備考>

大和麻弥:目覚めた。

湊友希那:一皮剥けた。

ワンコ:発情した。

今後読みたいシーズンは?

  • シーズン0(一年生)
  • シーズン1(二年生)
  • シーズン2(三年生)
  • 連載終了
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