犬も歩けば棒に当たる 作:政影
<イベント発生条件>
(キャラ:好感度)
友希那:高
リサ:高
Roseliaの中で友希那の好感度が一番高い
ねえ、しあわせ?
もちろん。
ほんとうに?
ほんとう。
……よかった。
…………うん、よかった。
「――起きて」
「……うん、おはよう」
何か夢を見ていた気がしたけど、友希那さんの声で一気に意識が覚醒した。
私より先に起きるとは珍しい、とそこまで考えて今日は「アノ日」だと気付いた。
なるほど、私も急いで準備しないと。
まだ寒い早朝の空気の中歩いて辿り着いた場所は商店街が管理している空地。
監視カメラも設置され防犯にも配慮されていたりする。
そんな場所に何の用かと言うと――
「にゃん」
「にゃ~」
「にゃ~ん♪」
私達の来訪に気付き姿を見せる猫達。
つまり……友希那さんにとっての天国。
「ふふっ、お待たせ」
猫を前に満面の笑みを浮かべる友希那さん。
先ずはレジャーシートを敷き鞄を下ろす。
次いで取り出した水皿を並べ、家で沸騰させ冷やした水をペットボトルから注ぐ。
最後に餌皿を並べると手際良くドライタイプのキャットフードを入れていく。
全般的に器用とは言い難い友希那さんだけど、特定の事に対しては目を見張るものがある。
コレに関しては日本代表レベル、かも。
「さあ、召し上がれ」
友希那さんの柔らかな声に物陰に隠れていた猫達も姿を見せ水を飲み餌を食べる。
終わった猫はその場に寝転んだり友希那さんに頬擦りしたり。
「……なんて可愛いの。友希那、LOVE、にゃーんちゃん!」
恍惚とした表情で仰向けになった猫のお腹を撫でる友希那さん。
思わず本音が漏れてしまっている。
うん、友希那さんも可愛い。
「ほら、ワンコも座りなさい」
「それでは失礼して」
友希那さんの横に腰を下ろすと早速何匹かが寄ってきた。
それぞれ耳の先端が桜の花びらの様にカットされた去勢済みの地域猫達。
友希那さんも私も手術代の寄付をして、月に数回の餌やり当番にも参加している。
次代へ繋げる可能性を断つ事が本当に正しいのか、割り切ったつもりでも胸の奥に燻り続ける。
「……難しい問題ね」
「……うん」
放っておけば野良猫は増え、器物破損や媒介するノミ・ダニによる疾病、糞尿による悪臭等人間の生活に悪影響を与える。
それを防ぐための殺処分に人間社会の恩恵を受けている私は異を唱えることは出来ない。
全てを生かすには足りな過ぎるから。
だから無責任に繁殖させたり捨てたりする行為には、ね。
……人間がいなくなったら食物連鎖の関係で増えたり死んだりで一定数には落ち着くだろうけど。
「ただ……この子達が旅立つ時に『生まれてきて良かった』と思ってもらえたら、いいな」
「そうね。迷いなく割り切れる程私は大人じゃないけれど、その考えには賛成よ」
私の手をぎゅっと握りしめる友希那さん。
歌とRoselia以外でこんなに真剣になるなんて。
「『猫は淑女よ。人間の天国ではなく、猫の天国に行きたい』つまりそういうことよ」
……友希那さん語録に追加しておこう。
素で間違えたのかアレンジしたのかはこのさい問題じゃないよ。
「さて、こんなものかしら?」
「うん、完璧」
猫達との時間が終わり後片付けを済ます。
食べかす一つ残さず、お皿は袋に入れ後で庭で洗う。
商店街の好意で場所を貸してもらっているので不義理は許されない。
「にゃーん」
「……また今度ね」
断腸の思いで別れを告げる友希那さん。
だけどライブハウスに猫を持ち込もうとした前科があるだけに最後まで油断できない。
「大丈夫よ」
「いや、思いっきりチラ見してるので信用できない」
「にゃん♪」
付いて来ようとした猫達にはお帰りいただいた。
伊達にペットホテルで働いてはいないので。
「終わったら羽沢珈琲店で」
「ええ、英気を養った分いつも以上に練習するわ」
「テンション上げてくよ♪」
帰宅し手洗いうがいを済ませ着替えた後、今度はCiRCLEへ友希那さんとリサさんと向かった。
私はこの後つぐみちゃんとバイト、っとその前に。
「リサさん、例のアレ」
「任せて」
私の耳打ちに自信満々な回答、これは期待できそう。
「ありがとうございました」
笑顔でお客さんを送り出すとテーブルの片付け、はもうイヴちゃんが終わらせているか。
コーヒーとお冷のおかわりは、つぐみちゃんがやっている。
多少の忙しさでも私達三人なら問題ないね。
「ワンコ先輩……可愛いです」
「ありがとう。蘭ちゃんも可愛いよ」
突然お客さんとして来ていた蘭ちゃんに褒められ思わず頬を撫で撫で。
そこへモカちゃんが割り込む。
「……この泥棒猫! なんちゃって~」
「モカ、抱き着くなら後にして」
「は~い」
冗談めかしているけど一瞬敵意を感じた。
いい度胸。
「モカちゃんも可愛い」
「!? びっくりしたなーもー」
首筋を一撫ででこの反応、やっぱり敏感。
やる事やってるみたいで一安心。
「モカ……あたしの時より反応良いね」
「嫌いになった~?」
「今夜憶えておきなよ」
「蘭大好き~」
後輩が仲良くしてるのを見るって良い気持ち。
青春だね。
「流石ワンコ師匠、一件落着です!」
「う~ん、元はと言えばワンコ先輩が原因のような」
カランカラン
「いらっしゃいませ。あ、友希那さん」
「謀ったわね」
入店して私に気付くと早歩きで眼前まで来て私を睨みつける友希那さん。
残念ながら全く怖くない、小柄な上に頭には――
「お、お似合いですよ、猫耳の湊さん……プフー!」
「蘭、笑いすぎ~」
怒りでプルプルしている猫耳の友希那さん。
入口の方を見ると手を合わせて謝罪の意を示す猫耳を付けたリサさん達Roselia一同。
ちょっとしたサプライズだったんだけどなぁ。
「二月二十二日の猫の日にちなんで商店街で猫耳の人にはサービスする企画、駄目だった?」
「……全然駄目よ」
そう言うと店内を見回してから再び私を睨みつける。
「あなた達、猫にすべてを賭ける覚悟はある?」
『!?』
呆気にとられる蘭ちゃん達、名言台無し。
「……つまり単に猫耳を付けただけで猫へのリスペクトが足りない、と?」
「そうよ」
サービスメニューの白猫ロールケーキを食べて少し機嫌が良くなった友希那さん。
今回のお怒りは流石に私も読めなかった。
ちなみに店員を含め店内全員猫耳だったりする。
「井伊直孝を雷から救った招き猫は尊敬しています。ハンネにも送りました!」
フィンランドに招き猫……異国の地でも頑張ってほしい。
あっちは法整備と環境が過酷な所為で野良猫がいないとか。
「若宮さんは良い子ね。それに引き換え美竹さんは……まあいいわ」
「それって、あたしのことは眼中にないって意味ですか?」
「ら、蘭ちゃん落ち着いて!」
「あたしは落ち着いてるよ!」
猫耳を着けた女の子達が言い争ってるというシュールな光景。
つぐみちゃんが蘭ちゃんを宥めようとしているものの厳しめ。
友希那さんは我関せず、な感じでコーヒーに砂糖を優雅に入れ続けてるし。
どう収拾をつけたら……。
カランカラン
「蘭、そろそろ時間だぞ。って、あこ?」
「あ、おねーちゃん! 時間って?」
「ああ、実は――」
来店した巴ちゃんの話に何人かが閃いたような顔をする。
私もその内の一人。
そう言えばこの後アレがあったか……よし、これならいけるかも。
ここはRoselia渉外担当の腕の見せ所。
「――ありがとう。Roseliaでした」
練習の疲れを感じさせないRoseliaの演奏が終わり、控室代わりのテントに帰ってきた。
猫耳を着けて演奏というRoselia史上初の試み。
飛び込み参加の野外ステージでも圧倒的存在感を見せつけた。
「どうだったかしら?」
「うん、猫のしなやかさが表現出来てた」
「そう」
あ、嬉しそう。
頬が少し赤い。
で、次はAfterglowの番。
こちらも全員猫耳を着けてやる気満々。
蘭ちゃんがこちらを一瞥、友希那さんとの間で火花が散るのを見たような。
「まるで黒豹ね」
「うん、蘭ちゃんらしい」
そして始まるいつも以上に熱を持った演奏、闘争心の塊と言っていいのかもしれない。
それでいてギリギリのラインで冷静さを保っていたりする。
うん、いつも通りの彼女達だ。
「良い音ね」
隣で真剣に演奏を聴く友希那さんがポツリと漏らす。
楽しそうで何より。
「Afterglowでした! これから募金活動するので協力できる方はお願いします」
演奏が終わりステージを下り募金活動を始めるAfterglowの面々。
「行くわよ」
「ええ」
友希那さんの言葉に紗夜さんが答え私を含めたRoseliaの面々も手伝いに向かう。
猫の保護活動にも結局先立つものがいるわけで。
商店街の猫の日イベント、締めのライブが急遽対バンになったけどこれで無事終了かな?
「どうでしたか湊さん、あたしの演奏と猫っぽさ?」
羽沢珈琲店に戻り打ち上げが始まって早々、蘭ちゃんが友希那さんに絡む。
頭には黒猫耳を着けたまま。
「いつも通り良かったわよ」
「はぁ!? さっきは眼中にないって」
「それは美竹さんが勝手に言った事よ。そもそも普段から十分に猫っぽいわ」
「ど、どうも……」
赤くなってトーンダウンする蘭ちゃん。
誉め言葉として受け取ったらしい。
これで一件落着かな?
……友希那さんの言葉不足は何とかしないと。
「ツグミさん、お店に看板猫として保護猫は引き取れませんか?」
「う~ん、許可がいると思うしアレルギー持ちの人が来れなくなるから難しいかも」
「無念です……」
「氷川さんは……ペットは飼いませんか?」
「いずれレオンくんみたいな犬は飼ってみたいですね。猫は……もう間に合っています」
「ふふっ……姉妹仲は良好ですね……」
「巴は将来何か飼いたい?」
「やっぱりライオンだな」
「ライオン!? 私富豪になるから一緒に海外に住んで飼おう!」
……普段興味のない人も一年に一回今日ぐらい猫の事を考えてもいいかな。
ちなみに犬の日は十一月一日だけど商店街のイベントは特に無いので提案しておこう。
「……で、もう日付が変わろうとしているのに何事?」
「にゃーん♪」
布団に入った私の上に覆いかぶさるのは下着姿に猫耳と猫尻尾を着けた友希那さん。
まるで発情した猫みたいに息が荒い。
「リサさんに構ってもらったら?」
「リサなら力尽きて私のベッドで寝てるわ」
いつもなら友希那さんが真っ先に寝てるというのに……まさかこれが猫の日パワー?
圧も増している気がする。
「だからワンコが相手しなさい」
「んっ」
有無を言わさず舌を口の中に侵入させてきた。
いつもより情熱的に絡ませてくると同時に器用に布団を剥ぎ取っていく。
「はむ」
さらに私の首筋に甘噛み。
全く……困った事に私の体もやる気に、体が熱い。
友希那さんの華奢な指先を私の――へ誘導。
今日ばかりは私がネコかな……。
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<備考>
湊友希那:身体能力が222%向上。
美竹蘭:敏感なのと咄嗟に出る大声が最近の悩み。
ワンコ:犬キャラとしてのアイデンティティーの喪失。
読みたい視点は?
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ワンコ視点
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ヒロイン視点
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どちらでも