犬も歩けば棒に当たる 作:政影
感想が貰えるくらい面白い話が書きたいです(迷走中
<イベント発生条件>
(キャラ:好感度)
紗夜:高
燐子:高
さよつぐが一線を越えていない
「来ていただいてありがとうございます」
「こちらこそ情報交換が出来て良かった」
桜舞う年度初めの四月、新入生はもちろん在校生も浮かれる傾向にあるようで。
羽目を外しすぎないよう羽丘と花女の両風紀委員で協力していこうという方針。
二駅しか離れていないので移動も楽だし。
今日は私が羽丘を代表して花女の風紀委員の会合にお邪魔させてもらった。
「それにしても羽丘の風紀委員がワンコさんになるとは」
「うーん、ガラじゃないような」
「いいえ、お似合いですよ」
花女の風紀委員の紗夜さんからお褒めの言葉、ちょっとむず痒い。
紗夜さんのキリっとした貫禄ある雰囲気に比べると私は……取り締まられる側?
実際、前年度は日菜ちゃん共々目をつけられていたし。
対立候補の選挙協力に最初に誘われた手前三役辞退を公言していたら、日菜ちゃん当選後に押し付けられて。
副会長並みの権限を持たされたら辞退した意味が無いというのに。
選挙後の組閣で対立陣営の取り込みをしようとしたら私の風紀委員就任が条件とか。
どれだけ日菜ちゃんの首輪役を待望しているのやら。
「日菜の事で何かお悩みですか?」
「うっ、するどい」
「何となく、です。羽丘でのあの子の事はお任せしますので厳しく躾けてください」
悪戯っぽく笑う紗夜さん。
日菜ちゃんの言葉を借りるなら「るんっ♪」な感じ。
昔の事は……詳しくは知らないけど今の姉妹仲は良好で何より。
コンコンコン
「変ですね。この時間は白金さんがいるはずですが」
不審げな顔をしながら生徒会室の扉を開ける紗夜さん。
中に入るが燐子さんの姿は見えない。
「……こちらです」
紗夜さんに呼ばれ書類棚の奥に回り込むと……通路の一番奥の机に突っ伏す燐子さん。
安らかな寝息を立てている。
「どうします?」
「お疲れの様なのでそのままで」
私のブレザーを眠る燐子さんに掛ける。
こういう時は羽丘の制服って便利、ワンピースタイプの花女には出来ない芸当。
デザインは好きだけど。
やっぱり生徒会長ともなると色々と大変だよね。
うちの生徒会長が特異なだけで。
「では風紀委員の過去の活動記録を出しますね」
「うん、よろしく」
音を立てないように机の上に活動記録を並べていく紗夜さん。
パイプ椅子に腰かけた私はそれに目を通しながら参考になりそうな箇所をノートに書き留めていく。
学園外秘なのでコピー不可、撮影不可なので面倒だけど仕方がない。
役を引き受けた以上全力で全うするのが信条。
「直近三年はそんなところです。お茶でも淹れますね」
「ありがとう」
お茶を淹れるために部屋を出ていく紗夜さん……優しい。
頼み事も断られた記憶は無いし、気配りもできるし。
帰りを遅らせるのも気が引けるので一気に片付けてしまおう。
「あ、この香り」
「白鷺さんから良い茶葉を貰ったので」
暫くしてトレイを持った紗夜さんが帰ってきた。
配膳をして机の反対側に座る。
私も一旦作業を止め、紅茶、そして一緒に出されたクッキーに手を伸ばす。
「美味しい……カップも温めてあるし抽出の温度・時間も完璧。クッキーもまた上達してる」
「ふふっ、ワンコさんにお出しするのに気は抜けませんから」
優しい笑顔、初めて会った時からは想像もできない。
この一年でRoseliaの中で一番変わったのは彼女かも知れない。
勿論、良い意味で。
「手書きを強いてしまってごめんなさい。うちも電子化すればいいのですが」
「全然、要点がしっかりまとめてあるので読みやすい」
「……数少ない取り柄ですから」
昔の事を思い出したのか少し表情が曇る。
胸がざわついた。
「適材適所、うちの生徒会長に書類を書かせると翻訳が必要になるし」
「あの子ったら……」
「それに……紗夜さんの字、好き」
「っ!?」
私の言葉に顔を赤らめる。
親友と呼んでいいくらいに仲良くなったというのに初々しい反応、ついつい弄りたくなってしまう。
「わ、私も嫌いではありません!」
「うん、ありがとう」
「う~ん、花女も不登校がゼロってわけじゃないか」
活動記録を読み終え一番気になった事を言葉にした。
伝統校のイメージが強いお陰か素行不良的な意味での問題児は稀。
一部校舎を飛び降りてショートカットするお転婆さんもいるけど今回は無視。
「……そうですね。個人の事情等もあるので残念ですが」
「日菜ちゃんが羽丘全体を楽しいところにしようと頑張ってるから、風紀委員の方でも何かしたいけど」
「なるほど」
紗夜さんの綺麗な顔を眺めて考える。
私の場合特待生なので出席するのが当たり前だったから参考にならない。
紗夜さんもサボるなんて発想は無さそうだし、日菜ちゃんは授業聞かずに紗夜さんの事考えてそうだし。
……確か有咲ちゃんも昔は不登校気味だったような。
「……お悩み相談室」
「うん?」
「お悩み相談室等はどうですか? 先生方に相談するよりハードルは低いですし」
少し顔を赤らめながら紗夜さんが提案してくれた。
意外な提案にあの日の光景が脳裏に浮かぶ。
「私も皆さんに出会うまで、一人で思い悩んでは堂々巡りを繰り返していましたから……」
「紗夜さん……」
寂しげな言葉に思わず机の上で組まれた手に手を重ねてしまう。
「もう大丈夫ですよ。あなたと出会えた季節の所為で少し感傷的になったみたいです」
「お悩み相談室、頑張るよ。行き場を失くしてうずくまっている子は見逃さない」
「ええ、よろしくお願いします」
たとえ直接救えなくても何かの切っ掛けになれば。
あの日のレオンくんと私のように。
「……っと、これで要点は書き出せたかな」
「お疲れ様です。では白金さんを起こして帰りますか」
「その前にうちの生徒会にきた投書を読み上げるね」
「はいっ!?」
「『おねーちゃんの甘えるところが見たい!』」
「それ日菜ですよね?」
「『紗夜さんの甘え下手なところを直してほしいです』」
「羽沢さんまで……」
「というわけで今日はこれから紗夜さんを甘やかす」
「ちょっと言っている意味が――」
「話は……聞かせてもらいました……」
「白金さん、いつの間に起きて」
「おはよう燐子さん」
「おはよう……ございます……失礼」
寝起きで喉が渇いていたのか私の飲みかけの紅茶を一気飲み。
普段の彼女なら絶対しない行動、ゲップまでしてるし。
うん、寝惚けてる。
「ふにゅ……」
仕舞いには座っている私の背後から覆い被さり頬を激しく擦り付けてくる。
友希那さんが猫、紗夜さんが犬だとすると……パンダ?
白金燐子、面白い、尾も白い、燐燐、悪くない。
「白金さんがこんなに乱れるなんて……」
「紗夜さんはこれ位アグレッシブに甘える事ある?」
私の質問に眉間に皺を寄せて考える紗夜さん。
十秒……二十秒……三十秒……六十秒、長いっ!
「……甘え方ってどうでしたっけ?」
これは重症。
「そもそも妹がいる手前、昔から姉として相応しい振る舞いを心掛けていましたので」
「あー、うん、何となく想像できる」
三つ子の魂何とやら、幼いながらも凛とした紗夜さんが容易に想像できた。
しかしそうなると問題の根はかなり深いという事に。
「私が甘え下手なのは納得しましたが、それを言うならワンコさんも甘えているイメージが無いのですが?」
「私? 友希那さんには寝付けない時に子守唄を歌ってもらったり、リサさんには服を選んでもらったりしてるよ」
どうだ私の甘えスキル。
絵面的にどうかという問題については触れないでいてほしいけど。
「やりますね……でも、日菜や羽沢さんに甘えるには姉や年上として抵抗感が。それに怖いんです。一度甘えてしまったら引き返せなくなりそうで」
「じゃあ試しに私に甘えてみたら?」
「……普段から十分お世話になっていますが」
「そういうのとは違うと思う。紗夜さんからは我がままらしい我がままを聞いたことないし」
「キューキュー」
「はいはい、燐子さんは飴でも舐めててね」
常備している友希那さん用の喉飴を袋から出し燐子さんの口元に持っていく。
……私の指まで舐めないでほしいな。
「大分極端だけどこんな感じ」
「なるほど……では私にもください」
「うん」
二つ目を取り出し紗夜さんの口元に喉飴を運ぶ。
身を乗り出し髪をかき上げ真剣な表情で口を近付け……咥えた。
おまけに飴を口内に移動させた後も、舌先で恐る恐るといった感じで私の指に触れてくる。
うわぁ……これは、凶悪。
「……もう離れても良いよ」
「ふぁい……」
不安げな表情で座りなおす紗夜さん。
唾液で濡れた口周りが艶めかしい。
「どう……でしょうか?」
「うん、良いと思う」
「( ̄∇ ̄*)oグッド」
これには燐子さんも親指を立ててのドヤ顔。
まだ寝惚けてるのか。
しかし……まあ……何と言うか、夕焼けに染まる生徒会室で顔を赤らめた紗夜さん。
ガチャ
「鍵……かけました……」
「白金さん!?」
「生徒会長のお許しが出たようなので、今度は私が甘えます、全力で」
パイプ椅子から立ち上がろうとする紗夜さんの両肩を抑えつける燐子さん。
徹夜で裁縫が出来たり数時間で弓を的に命中させた筋力は伊達ではない。
それなら、私も。
机の下に潜り込み紗夜さんの両膝に手を乗せ見上げる形で視線を合わせる。
ぴっちり合わさった両膝、それでも私なら簡単にこじ開けられる。
「嫌なら蹴飛ばして。許してくれるなら力を抜いて」
「……馬鹿」
「本当に信じられません! まさか生徒会室で……うぅ」
「私もまさかここまでヒートアップするとは」
「すーすー」
すっかり暗くなった道を歩く私達。
燐子さんは疲れてまた眠ってしまったので私が背負っている。
寝る子は育つ……今度、麻弥さんやひまりちゃん、有咲ちゃん達にも睡眠時間を聞いてみよう。
「全く、一歩間違えれば犯罪ですよ!」
「だから決定権は委ねた。それに甘えさせてくれる度量の大きな人を見定めるのも大事な人生スキル」
「はぁ……誉め言葉として受け取っておきます」
「うん、前向きに行こう」
ため息は吐かれたものの紗夜さんの表情は明るい。
ウインウイン?
「わんわん!」
この声はレオンくん。
少し先にレオンくんを連れた千聖さんが……こんな時間に散歩?
「こら、レオン静かに。きゃっ!?」
千聖さんを振り切り駆け寄ってくるレオンくん。
近付くと立ち上がって私の顔を舐めてくれる。
「う、羨ましい……流石ですね」
紗夜さんが羨望と賞賛の眼差しで私を見る。
過去最大級のリスペクトがそれだとちょっと複雑な気持ち。
「紗夜さんにもやってあげて」
「わん……くぅーん?」
「えっ!?」
レオンくんを紗夜さんにけし掛けても舐めるどころかスカートの……の部分の匂いを嗅ぐだけ。
時折こちらを見ては困ったような表情を見せ再び匂いを嗅ぐ。
「ワンコちゃん、今日変な事があったのよ」
可憐な笑顔と凄まじい怒気を同居させた千聖さんが話しかけてきた。
こちらも過去最大級。
「今日のレッスン中、急に日菜ちゃんが不調を訴えたのよ」
「日菜が!?」「日菜ちゃんが?」
「『千聖ちゃん……アソコが変なの……おねーちゃん……良かった』だそうよ」
思わず顔を見合わせる私と紗夜さん。
紗夜さんは心当たりがあるようで顔が真っ赤に。
いや、まさか、そんな……双子で感覚を共有なんて都市伝説じゃないの!?
冷汗が止まらない。
私の顔は多分真っ青。
言い訳が思いつかない。
「ねえ……その時刻に紗夜ちゃんと何してたのか聞いていいかしら?」
感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。
アンケートにご回答をお願いします。
<備考>
氷川紗夜:食べ物を差し出されたら指までしゃぶる癖がついた。
白金燐子:お疲れ。
ワンコ:調子に乗ると大体正座END。
白鷺千聖:事前申請を徹底させた。
読みたい視点は?
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ワンコ視点
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ヒロイン視点
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どちらでも