犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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書いている途中に内容が二転三転した結果無難なお話になりました。
初期案だとガチバトル(謎


<イベント発生条件>

(キャラ:好感度)
あこ:高
お悩み相談室開設フラグ有


本編X-6:風紀委員2(シーズン2春)

「こんなところかな?」

 

 私しかいないこの部屋で独り言。

 最近はいつも誰かと一緒にいたので、一人きりの作業で寂しさを感じていたからかも。

 我ながら可愛い事で。

 

 紗夜さんから提案された「お悩み相談室」の開設について、上申書にまとめて日菜ちゃんに提出したら即採用。

 ただし生徒会のメンバーは年度初めで多忙なので、人手が欲しかったら自分で集めろとの事。

 ふざけている様でたまに正論を吐くから腹が立つ。

 ……だから信頼できるんだけど。

 

 というわけで日菜ちゃんが生徒会長権限を発動し、物置になっていた空き部屋を接収。

 部員一人の部でも活動実績次第で存続できる位羽丘に余裕があるのは知っていたけど放置されてる部屋があるとは。

 中には大量の段ボール。

 本やらアクセやらCDやら謎の機材やら……まるでちょっとした流星堂状態。

 教員、生徒、誰に聞いても持ち主不明、生徒会で処分してくれて良いと。

 つぐみちゃんに確認したら売却益が出た場合、一旦生徒会の収入として処理してから活動費として支給されるとか。

 質屋、フリマアプリ、フリーマーケット、リサイクルショップ、廃棄……どれを選んでもこの量を捌くのは骨が折れそう――

 

「ワンコ先輩♪」

 

「お久しぶりです、先輩」

 

 お、この元気いっぱいな声と落ち着いた声は――

 

「あこちゃんと明日香ちゃん、とそちらは初めまして?」

 

「あ、朝日六花です!」

 

 片付け中で開けっ放しだった扉から姿を見せたのは緑のネクタイとスカートが初々しい一年生三人。

 一年以上の付き合いになる「世界で二番目に上手いドラマー」の宇田川あこちゃん。

 お姉さんがPoppin'Partyの戸山香澄ちゃんなので顔見知りな戸山明日香ちゃん。

 そして――

 

「あ、思い出した。六花ちゃんって特待生枠で入学した子だよね」

 

「はい! 入学式でのスピーチ……感動しました」

 

「ありがとう」

 

 生徒会長の日菜ちゃんが紗夜さんとつぐみちゃんとで形にした原稿を「るんっ♪ ってしよー!」とばら撒いた衝撃入学式。

 アイドルとして奇行、もとい型破りな行動が世間に知られているため新入生の過半数は大盛り上がり。

 まあ昔の私みたいにアイドルに興味の無い生徒達は呆気に取られていたけど。

 フォローすべき副会長のつぐみちゃんは、あわあわしたり散らばった原稿を拾い集めたりでそれどころではなく。

 そんなわけで風紀委員として軽く学生生活上の注意を話す筈がそれっぽい話をする羽目に。

 

「私もどんなに苦しくても自分だけのキラキラドキドキ目指して笑顔で走り続けます!」

 

「うん、頑張って」

 

 …………あれ、そんなスピーチだっけ?

 

 普段耳にする五バンドの歌詞をとっさに繋ぎ合わせて話した記憶しかなかったり。

 式の終了後、日菜ちゃんには大笑いされつぐみちゃんには感謝されつつも笑いを堪えている様子が見て取れた。

 まあ、元ネタを知っていると丸パクリだとバレバレなわけで。

 

 …………スピーチもうしたくない。

 

「とりあえず一年間よろしく」

 

「は、はい!」

 

 手を差し出すと両手でしっかり握りしめてくれた。

 ん? この感触って――

 

「もしかしてギタリスト?」

 

「えっ!?」

 

「ギターだこだっけ? 知り合いに何人かギタリストいるから」

 

 紗夜さんは女の子らしくないから触ってほしくないみたいだけど私は大好き。

 積み重ねてきた時間と努力、格好良い。

 

「受験でギターを封印してたので柔らかくなっちゃいましたけど……」

 

「じゃあこれからまた固くなるね」

 

「が、頑張ります!」

 

 眼鏡の奥の強い煌めき。

 今年の一年生も私の胸を熱くしてくれそう。

 高校生活の残り一年、寂寥感は門前払いかな?

 

 

 

「言い忘れてたけど三人とも入学おめでとう。で、何か用事?」

 

「ひなちんから『ワンコちゃんを手伝って』ってメッセが」

 

 相変わらず変なところで手回しが良い。

 まあ、折角の助っ人なので手を借りようか。

 

「それじゃあ――」

 

 

 

 

「うん、これで片付け終わり。ありがとう」

 

「我が人生に……つ、疲れた」

 

「「…………」」

 

 乱雑に置いてあった段ボールの中身を出して分類して再び段ボールに詰めて廊下の端へ並べる作業の繰り返し。

 結構な数になったけど一応部屋は片付いた。

 二人ほど声も出せないほどぐったりしてるけど。

 

「お礼がしたいけど何か希望はある?」

 

「このドラゴンの置物がいいです!」

 

「あこ、流石にそれは高いんじゃ」

 

「別にいいよ。元々廃棄予定だし」

 

 こっそり値が付きそうなものは流星堂用、気に入って部室に残しておきたいものは分けてあったりする。

 独眼でも目利きには自信があったり。

 

「じゃあ……私は星のネックレスを」

 

「……少女漫画でお願いします」

 

「うん、了解」

 

 ……物の価値も人によってそれぞれ、ね。

 元々羽丘の物だし処理方法は決まった。

 早速上申書を作って今日中にメールしておくか。

 

 

 

 

「あら、こんなところでこのCDに出会えるなんて」

 

「ちょ、湊さん、それはあたしが目をつけていたやつです!」

 

 

「へ~、センスの良いアクセが揃ってるね。アタシ本気出しちゃうよ♪」

 

「リサ先輩、是非私に似合うのも選んでください!」

 

 

「ふへへ、この機材は掘り出し物ですよ!」

 

「ああ、なんて儚い」

 

 

「お、モカ、そのパーカー似合うな!」

 

「ふっふっふー、パーフェクトモカちゃん誕生~♪」

 

 

 

 

 生徒会主催の不用品オール百円売り尽くしセール。

 まさか昨日の今日で放課後に開催されるとか羽丘生徒会やべー。

 場所は食堂、机の上にどこからか調達してきた布を敷き昨日の段ボールの中身を並べただけ。

 通知はお昼の放送だけだというのにまさかの大盛況。

 流石は敏腕生徒会長、この調子なら今日中に売り切れそう。

 

 

 で、本日開催を聞いて急いで作った室員募集ポスターも貼らせてもらった。

 

 

『お悩み相談室開設につき室員募集。口が堅ければ誰でも可』

 

 

 

「ワンコちゃんのポスター地味だよね」

 

「そもそもどの程度需要があるか分からないし最初はこんな感じで」

 

「でも手伝ってくれる人は絶対いるから安心して♪」

 

 

 

 

 翌日、掃除して綺麗になった相談室で応募のあった人達を割り振る作業。

 ノートに編成案を書き出してみる。

 まあ、こんなところか。

 日菜ちゃんの言った通り人は集まった……全員顔見知りだけど。

 

 

①湊友希那、今井リサ

 

②美竹蘭、青葉モカ

 

③宇田川巴、上原ひまり

 

④瀬田薫、大和麻弥

 

⑤宇田川あこ、戸山明日香、朝日六花

 

 ……意外と悪くなかったり?

 発言内容は悪くなくても上手く伝えられない口下手さんとフォロー役が大体セットになった感が。

 後は如何に私が相談者から悩みの核心を引き出せるか。

 一年生トリオは少し不安だけど挑戦させてみたい。

 

「あ、人集まったんだ。あれ、あたしの名前が無いよ?」

 

「生徒会長なんだから生徒全体を見ててよ」

 

 神出鬼没な生徒会長。

 そもそも生徒会のメンバーが使えないから募集掛けたのに。

 もっともあからさまに匂わされたので分かってた、付き合い長いし。

 

「でもアイドルだったらみんな向けのイベントも個人向けの握手会もやるよ?」

 

「はいはい、つぐみちゃんと事務所に迷惑を掛けない範囲で参加して。疲れない程度に」

 

「はーい♪」

 

 元気良く相談室を出ていく日菜ちゃん、数秒後今度はあこちゃんが入ってきた。

 

「こんにちはー」

 

「いらっしゃい。今日はまだする事が無いけど」

 

「あ、編成表出来たんですね」

 

 興味深そうに覗き込むあこちゃん。

 そうそう、忘れないうちに『ランダム:氷川日菜』と書き足しておく。

 

「ひなちんも……人気者ですね」

 

「そうだと嬉しいけど、それとは別にみんな恩返しがしたいんじゃないかな?」

 

「恩返し?」

 

「うん、この一年間だけでも『悩んで』『ぶつかって』『考えて』『助けられて』『行動して』……色々あったんじゃない? 私もそうだけどあこちゃんも」

 

「…………うん」

 

 じっくり考えてから返事をするあこちゃん。

 大切な妹分が私の知らないところで壁を乗り越えてきた事を感じてつい口元が綻ぶ。

 

「あこちゃんも心のどこかでそう思ってたから志願してくれたんじゃないかな?」

 

 頭を撫でようと手を伸ばすが身を引かれ躱された。

 これにはちょっと驚いた。

 流石に子ども扱いし過ぎだったかも。

 

「……あこ、そんなに良い子じゃないです」

 

「そう?」

 

「恩返しなんてこれっぽっちも考えてないです。ただ、ワンコ先輩の役に立ちたい、認めてもらいたい、愛して……」

 

 あこちゃんの頬を伝う涙に思わず立ち上がり逃げる間も与えず抱きしめる。

 

 大事な後輩になんて顔をさせて……。

 

「ごめん……勝手な考えを押し付けて」

 

「あここそ自分勝手な考えで明日香と六花も巻き込んで……」

 

 いつもの活発な声は鳴りを潜め、今にも消えそうな弱々しい声。

 彼女の想いに気付かなかった私の罪。

 ……私が責任取るしかないよね。

 

 涙を舐め取り耳元に口を近付ける。

 

「悪い子にはお仕置きが必要だと思わない?」

 

 耳を甘噛みし宴に誘う。

 これではどちらが悪い子なのか。

 模範解答が無いなら私の流儀でやるだけ。

 

「えっ……んっ! あ、あこに罰を与えて……ください……」

 

 私の意を察し顔を赤らめるあこちゃん、緊張してきたのか息も荒い。

 それに、凄く……煽情的。

 直ぐにでも攻め立てたくなるが。

 

 落ち着け私、まずは扉の鍵をかけてからだ。

 

「私がRoseliaで二番目に好きな歌声、聞かせてもらうから」

 

 

 

 

 

「少しは追いついたと思ったのになー」

 

「二年前の私よりカッコイイから大丈夫。それにちゃんと成長してるよ、私が保証する」

 

「えへへ♪」

 

 お仕置きされてすっきりしたのか、憑き物が落ちたように上機嫌で私の膝の上に乗り体を預けてくるあこちゃん。

 お悩み相談室なのに大切な人の悩みに気付かないなんて先行きが不安。

 

「……あこ不安だったんです。高校生になってからワンコ先輩やひなちんの凄さが前よりもっと分かって」

 

 まあ、確かに。

 同じ生徒会に所属していても日菜ちゃんの行動力と突破力は毎回驚かせられる。

 生徒会長になってからは私もつぐみちゃんも息を切らせて付いて行くのがやっとだし。

 

「それで何か新しい事をしなきゃって」

 

「その心意気、好きだよ。まさにRoseliaの先駆け、Vanguard of Roselia」

 

「おお、カッコイイ! ふっふっふー、わらわこそは異世界より顕現せし『ヴぁんがーど おぶ ろぜりあ』!」

 

 私の思い付きの命名に瞳をキラキラとさせる。

 勝手な思いだけど成長してもこういう表情はそのままでいてほしい。

 あんまり姉貴面すると巴ちゃんに怒られそうだけど。

 

「もしかして、あこが相談者第一号?」

 

「みたいだね。解決した?」

 

「うん! これからは大人の階段をのぼったカッコイイあこがワンコ先輩を支えるからね♪」

 

 

 

 

「最後に……相談内容は?」

 

「秘密厳守!」




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<備考>

宇田川あこ:恋する聖堕天使は止まらない。

戸山明日香:察したので協力。

朝日六花:ポピパへのリスペクトを感じたので協力。

氷川日菜:直感で行動。

ワンコ:中学生は×、高校生は〇。

読みたい視点は?

  • ワンコ視点
  • ヒロイン視点
  • どちらでも
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