犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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書き足りなかったのでシーズン1版を書きました。

どうしてこうなった。

<イベント発生条件>

(キャラ:好感度)
紗夜:高
日菜:高
友希那:高
?の残念度が中以上


本編X-8:双子の誕生日2(シーズン1春)

「んっ……」

 

 ここは私の癒しスポット白金邸、のトイレ。

 思わず安堵の吐息が漏れてしまう。

 

 Roseliaとか生徒会とかバイトとか三月も目まぐるしい日々。

 好きでやっている分どれも中々力が抜けなくて、結果疲労が抜けていない。

 

 今日はRoseliaとPastel*Palettes合同の氷川姉妹誕生日会。

 仕事が終わり次第駆けつけてくれるパスパレの分まで準備は完璧にしないと。

 ……祝われる本人も精力的に準備しているので猶更。

 

 妹の為に生真面目な顔で飾りつけをする紗夜さんの顔を思い出すとほっこりする。

 

 うん、私も気合を入れて準備しないと。

 

 

「紗夜さん!?」

 

「氷川さん!」

 

 

 あこちゃんと燐子さんの叫び声に急いで後処理を済ませトイレを飛び出した。

 

 

 

 

「どうしたの!?」

 

 リビングに入り目にしたのは床に倒れ顔を赤くし呼吸も荒い紗夜さん。

 傍には必死に名前を呼び続けるあこちゃんと燐子さん。

 

「ちょっと失礼」

 

 紗夜さんの額に手を当てると微熱。

 口元に鼻を近付けるとコーヒーの香りとアルコール臭。

 辺りを見回すとテーブルの上には空になったグラス。

 匂いを嗅ぐと同じ……。

 

「このグラス持ってきたのは?」

 

「……氷川さんが喉が渇いたと言ったので……手が塞がっている私の代わりに友希那さんが」

 

 あ、分かったかも。

 

「騒々しいわね。紗夜がどうかしたの?」

 

 騒動を聞きつけキッチンから現れた友希那さん。

 取り敢えず――

 

「友希那さん、正座」

 

「えっ!?」

 

 

 

 

「そんな……」

 

 紗夜さんの状態を聞き呆然とする正座友希那さん。

 対する私は立ったまま、見下ろす形。

 応急処置として吐瀉物を喉に詰まらせるといけないので、ボタンを外して服を緩め回復体位を取らせた。

 横にして上側の膝を九十度に曲げ寝返りを防ぎ、上側の手の甲を顔の下に入れ気道確保。

 居酒屋バイトの経験が役立った。

 

「飲み物のラベルに何て書いてあった?」

 

「『Coffee』と書いてあったわ」

 

「『Liqueur』とか『ALC』とか『%』書いてなかった?」

 

「……ごめんなさい。そこまで確認していなかったわ」

 

 私の質問に泣きそうになる友希那さん。

 泣かせたいわけではないんだけど……。

 

「もし紗夜さんの様態が悪化したら救急車呼ぶよ。そうなったら」

 

「……未成年の飲酒……Roselia活動休止」

 

「そんな! Roselia無くなっちゃうの!?」

 

「いや……そんなのいや……」

 

 ポロポロと大粒の涙を流す友希那さん。

 私も泣きたいけど表情を崩さないように努力する。

 

 

「駄目ですよ。《ゆきな》を泣かせては」

 

「え!?」

 

 突然後ろから優しく優しく抱きしめられた。

 聞き慣れた声の筈なのに全く違う印象。

 

「氷川紗夜、復活です♪」

 

「紗夜!?」「紗夜さん!?」「氷川さん!?」

 

 

 

 

「本当に大丈夫なの?」

 

「はい! 大丈夫ですよ《ゆきな》」

 

 え、なにこのポテト食べている時以上のハイテンション紗夜さん。

 サラッと名前呼びしてるし。

 

「今日は私達の誕生日会という事で先にRoseliaのメンバーにお礼を」

 

 いきなりの発言に戸惑う私達。

 紗夜さんのお礼の言葉って個人個人にはどうか知らないけれど、全員の前だとあまり言わないイメージが。

 

 迷いの無い眼差し、いつもとは違う柔和さ、思わず緊張してしまう。

 

「《ゆきな》と会ってRoseliaを結成したお陰で今の私があります。ありがとう《ゆきな》」

 

「さ、紗夜!」

 

「よしよし♪」

 

 包容力溢れる言葉に思わず紗夜さんに抱き着いて頭を撫でられる友希那さん。

 とてもRoseliaのクール担当の二人とは思えない。

 

「《あこ》」

 

「は、はい!」

 

「いつも厳しい事を言ってごめんなさい。《あこ》ならもっと格好良くなれるからつい口を出してしまうの」

 

「ざ、ざよざ~ん!」

 

 あこちゃんが号泣して紗夜さんに抱き着く。

 この流れだと――

 

「《りんこ》」

 

「……はい」

 

「この一年融通が利かない私を学校でもバンドでも支えてくれてありがとう。《りんこ》なら素敵な生徒会長になれるわ」

 

「…………氷川さん…………ぐすっ」

 

 うっすらと涙を浮かべ燐子さんも抱き着く。

 エモい。

 

「ふー、料理の方は一段落したよ♪ って何この状況!?」

 

 ここにきて一人キッチンに籠っていたリサさんが登場。

 いや、まあ、いきなりこの状況を見せられたら混乱するよね。

 

「《りさ》」

 

「え、名前呼び!?」

 

「《りさ》のクッキーからは愛を感じるわ。何度もRoseliaを救ったその愛でこれからも私達を包んで」

 

「あはは、紗夜からそんな風に言われると照れるね。お、私も抱き着くね♪」

 

 流石リサさん、見事な対応力。

 ……耳が真っ赤だけど。

 

「《わんこ》」

 

「うん」

 

「《わんこ》が脇道で私を見つけてから、いえ《ひな》と出会ってから運命が回りだしたのかしら? ありがとう」

 

「私も紗夜さんに出会えて良かった」

 

 この場面なら堂々と抱きつける。

 流石に五人も抱き着くとぎゅうぎゅうだけど。

 

 何だろう……この感じ……とても温かい。

 

 

 

 バーンッ!

 

 

 

「おねーちゃん!」

 

「ちょっと日菜ちゃんノックくらいしようよ!」

 

 ドアを勢いよく開け放って入ってきた日菜ちゃん。

 おいそのドア高級品だぞ。

 ……彩さんがまた引きずられてる。

 

「《ひな》!」

 

「えっ、むぎゅ」

 

 Roselia勢が空気を読んで離れると同時に紗夜さんがダッシュして日菜ちゃんを抱擁。

 最初は呆然としていた日菜ちゃんだったが我に返ると恐る恐る抱きしめ返す。

 

「ごめんなさい《ひな》。あなたに嫉妬して疎んじて……それでも私を姉として見続けてくれてありがとう」

 

「ううん、あたしこそおねーちゃんの痛みに気付かなくて。今までも、これからも、おねーちゃんの妹で幸せだよ♪」

 

 

 ……やばい、視界がぼやけてきた。

 姉妹間の葛藤なんて部外者の私には何割理解出来ているのか怪しいけれど、それでも。

 肉親の情ってある所にはあるんだ。

 

 気付くと後で入ってきたパスパレ含めほぼ全員が嗚咽を漏らしている。

 体を震わせながらも何とか笑顔を浮かべている千聖さん凄い。

 

 

 

 

「じゃあ氷川姉妹の誕生日を祝して、かんぱ~い♪」

 

 

『乾杯♪』

 

 

 気を取り直してリサさんの音頭で始まった誕生日会。

 白金邸のリビングにはRoseliaのメンバーで作った料理とパスパレが手配したバースデーケーキが並んだ。

 え、三段重ねってまるでウェディングケーキ。

 ……残ったら各々持って帰ってもらうか。

 

 

「これからも《ひな》をよろしくね《あや》」

 

「うん、紗夜ちゃんの分まで芸能界の闇から守るから!」

 

 

「《いヴ》には失われつつある武士の魂を感じるわ」

 

「感激の極みです! これからもヒナさんや皆さんと乾坤一擲です!」

 

 

「《まや》は凄いわね。私以上に《ひな》の言葉を理解しているわ」

 

「フヘヘ、ありがとうございます。でも根っこの部分で繋がっているのは紗夜さんだけですよ」

 

 

「《ちさと》……レオンくんをください」

 

「駄目よ」

 

 

 ……紗夜さんの豹変をスルーしてくれるパスパレのメンバーに感謝。

 もしかして双子の片割れの破天荒な言動で慣れているからかな?

 

「ワンコちゃん、今失礼な事考えてたでしょ?」

 

「別に。誕生日おめでとう」

 

「ありがとう♪」

 

 ソファに座ってまったり紗夜さんを眺めていたら左側に日菜ちゃんが座ってきた。

 相変わらず勘が良い。

 取り敢えずテーブルの上のポテトを取り日菜ちゃんの口に押し込む。

 

「今日の紗夜さんは偶然の産物。明日には元に戻ってると思うから」

 

「どんなおねーちゃんでも大好きだよ♪ 何年妹やってると思ってるの?」

 

「……それもそうか」

 

 キラキラとした瞳で臆面もなく言い放つ日菜ちゃん。

 本人は気付いてないと思うけど一年前より確実に魅力的。

 

「正直日菜ちゃんの才能より紗夜さんという姉の存在が羨ましい」

 

「へへーん、いいでしょ♪」

 

 自信満々、敵わないなぁ。

 

「……ワンコ、私より紗夜の方が良いの?」

 

「あ、友希那さん……」

 

 先程の件を引きずっているのか、表情に陰りの見える友希那さんが右側に座った。

 また私の言い方の所為で……。

 

「もー、友希那ちゃんはワンコちゃんの『おねーちゃん』なんでしょ? 駄目だよ、そんな顔しちゃ」

 

「日菜……」

 

「ごめんね、友希那さん。私って気を許した相手には口調が強くなるかも。でも日菜ちゃんよりはマシだから」

 

「え、酷くない!?」

 

「……ふふっ、姉って大変なのね」

 

 私と日菜ちゃんとのやり取りで友希那さんの顔に明るさが戻る。

 もう狂犬じゃないんだから気を付けないと。

 

「そうなんです。姉って大変なんですよ《ゆきな》!」

 

「さ、紗夜……」

 

 グラス片手に私の膝の上に腰を下ろしたのはまだアレな状態の紗夜さん。

 元気そうだからいいか。

 

「妹が優秀過ぎると姉は親からも周りからもがっかりされるんです!」

 

「おねーちゃん……」

 

「でも妹が活躍すると自分の事以上に嬉しいんですよ♪ ハグしてキスして高い高いしたい位に!」

 

 こ、これが姉馬鹿……。

 リミッター解除した紗夜さんやべー。

 

「分かるわ、紗夜。私もワンコがテストで学年二位だったり生徒会で活躍しているのを見ると思わず作曲したくなるわ!」

 

 え、そんなに喜んでくれてたの!?

 多分いつも通りの名曲になると思うけど、ライブで演奏されたら恥ずかしてくて耳塞いじゃいそう。

 

「流石は我らがリーダー《ゆきな》! 二人で姉道を極めましょう!」

 

「ええ、頂点へ狂い咲くわ!」

 

「頂点へ狂い咲くわ!!」

 

 これ、紗夜さんは酔ってるけど友希那さん素面なんだよね……。

 日菜ちゃんですら若干引き気味。

 リサさん、撮影してないで助けて。

 

 

 

 

『頂点へ狂い咲くわ!!』

 

「な、なんなんですか、この動画は、今井さん!?」

 

「え、昨日の誕生日会のだけど」

 

 結局宴は深夜まで続きそのまま全員白金家にお泊り。

 早起きしたリサさんとイヴちゃんと日菜ちゃんと私で昨日の余り物で簡単な朝食を作った。

 折角なので昨日撮影した動画を見ながらの朝食。

 そんな中、元に戻った様子の紗夜さんが起きてきて動画を見て絶叫。

 

「紗夜さん、覚えてません?」

 

「えっと、その、てっきり夢かと」

 

 眉間に皺を寄せて考える紗夜さん。

 残念ながら現実です。

 

「ふぁ……おはよう。あら、ワンコ達が朝食を作ってくれたのね」

 

「おはよう、友希那さん」

 

「おはよー、友希那。ハチミツティー淹れるね♪」

 

「ええ、お願い。どうしたの紗夜、そんなところにしゃがみ込んで?」

 

「み、湊さん……」

 

 すがるような視線を向ける紗夜さんに対して友希那さんはにっこりと微笑む。

 

「さあ、妹達が作ってくれた朝食をしっかり食べて今日も頑張りましょう。音楽も姉も一日にして成らず、よ」




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<備考>

氷川日菜:姉の本音を知り姉妹愛を更にこじらす。

氷川紗夜:口にした手前両校合同の姉部を設立する羽目に。部長。

湊友希那:姉妹をテーマに作曲中。副部長。

ワンコ:食べきった。

丸山彩、白鷺千聖:入部検討中。

読みたい視点は?

  • ワンコ視点
  • ヒロイン視点
  • どちらでも
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