犬も歩けば棒に当たる 作:政影
「バーン!」
可愛らしい声と共に自室の扉が勢いよく開かれた。
私は指立て伏せを止めタオルで汗を拭う。
「あこちゃん、扉は優しく開けて」
「ご、ごめんなさい! じゃなくて、あこついに超魔姫に覚醒したの!」
「そう」
「む~、信じてないでしょ!?」
むくれるあこちゃん
仕方なく右目の眼帯を外す。
「私の魔眼は節穴じゃないよ」
「えっ……黒い…………」
後ずさるあこちゃん。
仕込んでおいた白目部分も黒い義眼は効果抜群。
自分でも鏡を見てビビった程。
「ご、ごめんなさい!」
あ、逃げちゃった。
ちょっと罪悪感。
「全く、大人げないですね」
「申し訳ない」
次に部屋に入って来たのは紗夜さん。
二人して正座で向かい合う。
「それはそれとして、ワンコさんに話しておきたいことが。実は……私は日菜なんです」
苦悩の色を浮かべ言葉を絞り出す紗夜さん。
私は無言で続きを促す。
「昔は髪型も背格好も全く同じでよく入れ替わってました。でも六歳の誕生日、氷川家の長女しか着ることが許されない着物をどうしても着たくて……」
「もういいよ」
続きは言わせず抱きしめる。
そして体を離し目を合わせる。
「私が大好きな『氷川紗夜』は目の前の貴女だけ。話の真偽はともかくそれじゃ駄目?」
「……ふふっ、ずるい言い方ですね」
私の切り返しがお気に召したのか先程の辛そうな表情とは打って変わって優しい笑み。
うん、この方がずっと良い。
「…………妊娠…………しました」
「……」
燐子さんから渡されたエコー写真。
呆気にとられる私と頬を紅潮させる燐子さん。
「私達、女同士だよね?」
「寝ている間に……ワンコさんの細胞を……それにわたしの細胞を掛け合わせて……」
うっとりとした表情。
燐子さんならやりかねない、という凄みがある。
「確実に非合法な上に燐子さんの体に負担が掛かりそうな方法を私が喜ぶと思う?」
「…………駄目…………ですか?」
「心意気は嬉しいよ。でも本当にやる時は相談して」
「………………はい」
演技か本気か分からないけど泣きそうだったので額に口づけ。
これで我慢してくれればいいけど。
「いやー、大変だね♪」
「次はリサさんか」
「大丈夫、私のは軽いから……ワンコが一番好き。それじゃ」
「……嘘つき」
「万馬券が当たったわ」
最後は友希那さん。
普段と変わらないクールな口調。
「どこで買いました?」
「お父さんに買ってもらったわ」
「参考にしたのは?」
「好きなボーカルの予想よ」
「買い方は?」
「三連単!」
ドヤ顔が可愛い。
まあ最低限調べてあるようだけど。
「もし本当だったとしても未成年の馬券購入は禁止なので外で言わないでね」
「むぅ……」
「何時から気付いていたの?」
「日付が変わった瞬間NFOのエイプリルフールイベントが始まったので。誰か仕掛けてくるとは思ってた」
全員終わったという事で私の部屋にRoselia集合。
普段から見ているので些細な違和感も見逃さない、つもり。
「で、誰の嘘が一番本当みたいだったの?」
「んー、同率で紗夜さんと燐子さんかな? 重めの話で突っ込み辛かったし」
「ふふっ、やりました」
「……良かった」
「あこちゃんは奥の手があれば良かった。友希那さんは競馬するイメージが全くないし」
「頑張ります!」
「他に浮かばなかったのよ」
「リサさんは卑怯」
「せめて小悪魔って言ってよ~」
うーん、Roseliaが愉快な集団に……って今更か。
実力派面白バンド、悪名は無名に勝るって言うし。
批判は実力で抑え込んで今までやってきたしね。
「ところでなんでワンコは筋トレをしているの?」
「ちょっとレスリングの助っ人に呼ばれたので」
「ふふっ、ワンコも言うわね。何でもいいけど日が変わる前には帰ってきなさいよ」
嘘は言ってないんだけどなぁ。
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<備考(大嘘)>
宇田川あこ:打楽器の音により覚醒が阻まれる。
氷川紗夜:氷川神社の流れを汲む退魔の血筋。
白金燐子:白金製薬の闇は深い。
今井リサ:這い寄る魔性。
湊友希那:予想屋ゆきゆき。私は馬が好き。
ワンコ:ミスブシドーとの日芬コンビは以心伝心。
読みたい視点は?
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ワンコ視点
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ヒロイン視点
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どちらでも