犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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温泉行きたいです。


本編X-10:温泉後編(シーズン1夏)

「……何があったの?」

 

「まあ色々と」

 

 白いお肌が赤く染まるまで温泉を堪能した友希那さんが部屋に戻って来るなり一言。

 紗夜さん、燐子さん、あこちゃんは体力を使い果たしてぐっすりお昼寝中。

 一人で事後処理をした私はうつらうつらしてた。

 

「三人とも気持ち良さそうだね~♪」

 

 元気の有り余ってそうなリサさんは三人をスマホで撮影。

 素早い対応。

 

「で、友希那さんが抱っこしている子は?」

 

「ひなこ、よ。レンタルしてきたの」

 

「ひにゃ~」

 

 ……エメラルドグリーンの瞳とグレーの毛皮のロシアンブルー。

 何となく何処かの誰かさんを彷彿とさせる。

 

「ひにゃ!」

 

「あっ」

 

 突然友希那さんの抱っこから逃れると眠っている紗夜さんに頬擦り。

 紗夜さんは眉間に皺寄せてるけど。

 

「友希那さん、振られた」

 

「煩い」

 

 つい口を滑らしたら指で額を小突かれた。

 頬を膨らます友希那さん可愛い。

 

「仕方ないわね。ひなこは紗夜に譲るとして何をしようかしら?」

 

「じゃあ、ホテルの中を散策しない? 色々あるみたいだし♪」

 

「そうね。ワンコもそれでいい?」

 

「うん、楽しみ」

 

 ちなみにまりなさんは温泉で出会った女性と意気投合してバーで飲んでいるらしい。

 一番エンジョイしてない?

 しばらく戻ってこなそうなので施錠しても良いか。

 

「ひにゃー!」

 

「うん、お留守番よろしく」

 

 

 

 

「あ、温室だって」

 

「青薔薇はあるかしら?」

 

「うーん、あった」

 

 青薔薇を前に感慨深そうな友希那さん。

 Roseliaのアイコンでもある青薔薇。

 青薔薇の下で歌ってきた日々を思い出しているのかな。

 

「……不思議ね。去年までは花の色なんて気にしていなかったというのに」

 

「それだけ友希那が成長したってことだよ♪」

 

 ずっと見続けてきた幼馴染だからこそ言える言葉。

 私の行動も少しは友希那さんの成長の手助けになったと思いたい。

 

「家でも育ててみる?」

 

「そうね……でも棘でユキが怪我をしたら困るわ」

 

「過保護だね~」

 

 おりこうさんと言ってもまだ子猫。

 もう少し大きくなるまで鉢植えは我慢かな?

 

「むしろ友希那が植物の世話をするのってアサガオ以来で不安だよ」

 

「水のあげ過ぎでお母様に叱られそう」

 

「あなた達言いたい放題ね」

 

「ユキが肥満気味なのは誰の所為?」

 

「…………ごめんなさい」

 

 

 

 

「お、スポーツジムもあるんだ♪」

 

「友希那さん、汗でも流す?」

 

「興味無いわ」

 

 相変わらず運動は不得意のようで。

 

「リサさん、採寸」

 

「おっけ~」

 

 私の言葉にリサさんが友希那さんの後ろから腰に手を回す。

 

「きゃっ! ちょっとリサくすぐったいわよ」

 

「ん~増量気味かな?」

 

「お昼を食べ過ぎただけよ!」

 

「夏バテよりは良いけどあまりステージ衣装の腰回りのサイズを大きくすると見苦しい」

 

「分かったわよ! 旅行が終わったら毎朝ジョギングするから二人とも付き合いなさい!」

 

「りょーかい♪」

 

「うん、任せて」

 

 音楽か猫に関わる事ならストイックなので一旦大丈夫かな。

 サイズが元に戻ったら直ぐに止めそうだけど。

 

 

 

 

「へ~美術館もあるんだ」

 

「見ていきましょう」

 

「うん」

 

 色々あるね、このホテル。

 

「五色絢爛、羽に五色の紋、声は五音を発す……」

 

 鳳凰の銅像、前に京都で見た物と似てる気がする。

 

「死と蘇生を繰り返し永遠の時を生きる……」

 

 フェニックスの銅像、鳳凰に比べると西洋的な顔つき。

 

 やっぱり芸術方面の能力が低いな、私。

 カッコイイという感想が精一杯。

 

「潰えぬ……燃え上れ……」

 

 友希那さんが何やらぶつぶつと呟いてる。

 曲のイメージでも浮かんだのかな。

 

「………………」

 

「リサさん、ダビデ像の下腹部凝視してどうしたの?」

 

「ちょ、言わないで!」

 

 ギャルっぽい見た目なのに彫刻を見て赤面とか乙女ギャル。

 まあ性的な意味での興味は無さそうなので単純な好奇心だと思うけど。

 私もパンダの性行為動画は何回も見たし。

 

「あ、あっちにワンコの好きそうな刀剣コーナーあるよ!」

 

「楽しみ」

 

 露骨な話題逸らしに乗り刀剣コーナーへ。

 流石に国宝級の物は無いけどそれの写しはある模様。

 

「え、なにこの大きさ!?」

 

「布都御魂剣が271センチメートル、祢々切丸は337センチメートル。一度振ってみたい」

 

「……長い方だとアタシと友希那の身長足しても届かないじゃん」

 

「重さ的にはリサさん一人より軽いから大丈夫」

 

「体重には触れないで!」

 

 怒られちゃった。

 まあ友希那さんと違って別の部分が増量中だし気にしてるのかな。

 

 

 

 

「あなた達……にゃんて可愛いの!」

 

『にゃー』

 

 友希那さんの自制の利かなさに磨きが。

 ウェルカムキャット以外の猫は猫カフェで働いている様で、さっきのひなこもそこでレンタルしたとか。

 というわけで猫カフェに入店。

 

「友希那じゃなくても動けなくなるでしょ?」

 

「うん、人懐っこい子が多いね」

 

 リサさんも私も相性の良い猫が寄ってきて膝の上に乗られてしまい動けない。

 ユキもバイト先の猫達も勿論可愛いけどこの子も中々。

 

「みゃーや」

 

「うん、凄く可愛い。おやつ買っちゃうね」

 

「みゃん♪」

 

 元々は保護猫だったこの子達。

 条件を満たせばお迎えすることもできるとか。

 今はまだ無理でもいつかは……。

 

 

 

 

「お騒がせしました」「……しました」「しました!」

 

 夕食の時刻が近付いたので友希那さんとリサさんをバーにいるだろうまりなさんを呼びに行ってもらい私は宿泊部屋へ。

 部屋に入るなり三人が土下座でお出迎え。

 

「元気になったみたいで良かった」

 

「あっ……」

 

 念の為紗夜さんの額に私の額を当て確認、大丈夫そう。

 

「わたしも……」

 

「あこも!」

 

「うん、任せて」

 

 Roseliaの体調管理は私の役目だしね。

 

「ひにゃー!」

 

「君も元気いっぱいだね」

 

「あの……この猫は?」

 

「友希那さんがレンタルしてきた。紗夜さんが大好きみたいだからよろしく」

 

「はぁ……」

 

 自体がよく呑み込めていない様子だけど私もそれ以上の説明は出来ない。

 食事に連れて行く時はハーネス必須だというので取り付け。

 紐の反対側に付いているバンドを紗夜さんの手首に巻いてもらい準備完了。

 

 さあ全力で狂い食べるだけ。

 

 

 

 

「まさか……これ程とは……」

 

 それを口にした紗夜さんが驚きで目を見張る。

 もはやフライドポテトと言ってよいものか。

 目の前の凛々しい女性の板前、先程まで天ぷらを揚げていた彼女が新しい鍋で揚げたのは細長くカットしたジャガイモ。

 油遣いのプロが料理したフライドポテト、美味しくない筈がない。

 ……紗夜さん涙流してるし。

 

「リサさん、真似できそう?」

 

「いやー、このレベルになると流石にね」

 

「流石燐子が手配しただけあるわね」

 

「りんりんどれも美味しいよ♪」

 

「うん……良かった……」

 

 猫連れでホテル内の日本料理店に入るとかちょっと怖かったけど良い意味で衝撃を受けた。

 人を感動させる料理……これがプロか。

 Roseliaの目指すレベルもこの領域なのかも。

 

 

「くーくー」

 

「静かだと思ったらひなこは寝ていたのね」

 

 私達の食事中はケージの中で猫用の食事を食べていた筈がもう食べ終わって寝ている様子。

 この自由さ、ますます誰かさんそっくり。

 

「あー、これもお酒に合うね!」

 

 ……まりなさん、良かったね。

 

 

 

 

「はー、美味しかった。ありがとね、燐子♪」

 

「白金さん、今以上の演奏で感謝の言葉とします」

 

「は、はい……」

 

 リサさんと紗夜さんに詰め寄られて頬を染める燐子さん。

 私も何か恩返ししたいな。

 

「燐子さん、この後は?」

 

「展望室で……星でも見えたら……」

 

 おお、青春っぽい。

 デネブ、アルタイル、ベガの夏の大三角。

 天の川、彦星、織姫。

 

「でも空は曇ってるわね」

 

「あー、降ってきちゃった!」

 

 あこちゃんの言う通り窓に水滴が……。

 これだと星は見えない。

 

「……ごめんなさい。私が雨女の所為で」

 

「ひにゃ……」

 

 うなだれる紗夜さん。

 そう言えば雨が降るたびに気にしている節があったような。

 ひなこもそんな気持ちを察してか元気無さそう。

 

「雨なら雨の楽しみ方をすればいいだけよ」

 

 先陣を切って歩き出す友希那さん。

 いつもは突っ走る私でも友希那さんの背中を追いかけるのは嫌いじゃない。

 

 

 

 

 サー

 

 

『………………』

 

 露天風呂に浸かり目を閉じ静かな雨音に耳を澄ます。

 屋根の下にいるので直接雨は当たらないから音だけで雨を堪能する。

 夏の雨なんて不快でしかない筈なのにここではまるで別物。

 

「紗夜どうかしら、悪くないでしょ?」

 

「ええ……そうですね……」

 

「ひにゃー♪」

 

 貸切の家族風呂、レンタル猫も入浴可能だというのでひなこも連れてきたら紗夜さんの肩に乗ったまま湯船に浸かった。

 今まで何十匹の猫の世話をしてきたけどここまで水に抵抗の無い猫は初めて。

 

「温泉の匂いと……雨の匂い……」

 

「風流だね~」

 

「同感、冬になったら雪でも降らせてもらおうかな?」

 

「そうなったら紗夜さんは雨雪の魔女ですね!」

 

「宇田川さん、それでは霙です」

 

「全く、騒がしいわね」

 

「そういう友希那さんだって頬が緩んでる」

 

「今日は休養日だから問題ないわ……あら、雨脚が弱まったわね」

 

 友希那さんの言葉通り雨脚が弱まり、完全に止んだ。

 ということは、もしかしたら。

 

「……綺麗」

 

 雨雲が過ぎ去り現れたのは夏の星々。

 照明が抑えられているお陰で割と見える。

 無数の星が川のように連なった天の川。

 

 あー、柄にもなく視界がぼやけてきた。

 

 

「ねーりんりん、あこ達もあの星座達みたいになれるかな?」

 

「うん……わたし達ならきっと大丈夫……」

 

「当然ですよ、宇田川さん。私達はRoseliaなのですから」

 

 

 

 

 

 

「ふー」

 

 あの後は大人しく部屋に戻りまりなさんを加えた女子会。

 色々と大人な話を聞かせてもらった。

 ……ちょっと他言無用な話題もあったけど。

 

 

 そして、気が付いたら全員寝落ち。

 

 

 目が覚めたら朝だったので簡単に身支度を済ませスポーツジムへ。

 折角なので使わせてもらおう。

 着替えも一式揃っていてありがたい。

 

「お、やっぱりいた」

 

「おはようございます」

 

「おはよう」

 

 軽くウォーミングアップを済ませたところで現れたリサさんと紗夜さん。

 昨日の疲れもなく元気な様子。

 むしろ二人とも元気が有り余っているような。

 

「勝負しませんか?」

 

「紗夜!?」

 

「うん、楽しそう」

 

 アップを済ませた紗夜さんからまさかの申し出。

 二人とも運動神経は良さそうだし良い勝負が出来るかも。

 

 使うのは……エアロバイクでいいか。

 

「どうせなら賭けない? 私は友希那さんが期末テストの結果を見て小さくガッツポーズする画像と日菜ちゃんが天文部の部室で寝ちゃった画像」

 

「賭けとは風紀違反ですね。日菜が私の為に一生懸命食事を作っている画像と私の自主練に付き合ってくれた湊さんが新曲を閃いて一心不乱にノートに書きこむ画像」

 

「紗夜もノリノリじゃん♪ 昔友希那とお医者さんごっこをした時の画像とヒナが剣道でワンコに負けた後抱き合った画像」

 

 私も二人もやる気満々。

 ペダルに足を掛け集中力を高める。

 

「十五分で走行距離が一番多かった人が総取り」

 

「オーケー。友希那に自転車の乗り方を教えたアタシの実力見せちゃうよ♪」

 

「日菜より先に自転車に乗れた私だって負けませんよ」

 

「では、よーい……どん!」

 

 唸りを上げるエアロバイク。

 最初からトップギア、血がたぎる。

 目の前のデジタル数字がどんどん加算されていく。

 

 

 さあ白黒つけようか。

 

 

「友希那友希那友希那友希那友希那友希那友希那友希那友希那友希那!」

 

「日菜日菜日菜日菜日菜日菜日菜日菜日菜日菜日菜日菜日菜日菜日菜日菜!」

 

「怖い」

 

 

 

「悔しー!」

 

「想像以上ですね……」

 

「いや結構ギリギリだったし」

 

 何と言うか……後ろから猛獣に追走されるような嫌な汗をかいた。

 友希那さん級の圧を感じたし、怖いよRoselia。

 

 それはそれとしてお宝画像ありがとう。

 

 

 

 

「一つ質問いい?」

 

「何ですか?」

 

 疲れ果てて休憩している紗夜さんにスポドリのペットボトルを渡しながら聞きそびれていた事を尋ねる。

 

「燐子さんの提案に賛同したのが意外だったんだけど」

 

「その事ですか……バンドでも学校でも自分を変えようと頑張る彼女の姿を見ていたらつい応援したくなって」

 

「そっか。うん、納得した」

 

「それに白金さんには学校でも助けられていますし……」

 

 頬を染める紗夜さん。

 何となくこれ以上聞いてはいけないような。

 多分、きっと、深い意味はないんだろうけど……流石に学校だしね。

 

「逆に私も質問していいですか?」

 

「うん」

 

「…………歌や楽器をやるつもりはありませんか? 素晴らしい耳をお持ちなのに」

 

「友希那さんに言われたんだけど、耳が良すぎる所為で余分な音まで拾っちゃって音楽には向かないんだって」

 

「そんな…………」

 

「まあ脳の処理の問題なので鍛えればアカペラ、並以下なら弾き語りも出来るようになるとか」

 

「…………ごめんなさい」

 

「いやいや紗夜さんが謝る事じゃないって。でも、もし出来たら褒めてほしいかな?」

 

「……はい、必ず」

 

 言った手前やるしかない。

 まずはそこでぶっ倒れているリサさんの誕生日、間に合うかな?

 

 

 

 

 一泊二日の温泉旅行、課題、目標、疑念……各々思うところもあった筈だし私も頑張らないと。

 

 

 

 

 この後まりなさんの華麗な運転が待ってるから朝食は控えめにしておこう。




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<備考>

湊友希那:新曲が閃いた。メンバーへの理解が深まった。

氷川紗夜:色々とスッキリした。

今井リサ:友希那と旅行が出来てハッピー♪

宇田川あこ:すっごく楽しかった。

白金燐子:無事帰宅出来て一安心。

ワンコ:これがリア充の旅行……。

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