犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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今回も2部構成です。


アンケート途中経過:


Poppin'Partyで読みたい視点は?

(4) 戸山香澄
(4) 花園たえ
(0) 牛込りみ
(10) 山吹沙綾
(8) 市ヶ谷有咲

Afterglowで読みたい視点は?

(14) 美竹蘭
(3) 青葉モカ
(3) 上原ひまり
(0) 宇田川巴
(8) 羽沢つぐみ


番外編X-5:リサな日々(シーズン0~1)

〇手当(シーズン0)

 

 

「いい加減バイト変えたら?」

 

「まあそのうち」

 

 ワンコの住処の六畳一間、そこでアタシは簡単な手当をしている。

 最近は傷口を乾燥させないタイプの絆創膏が良いらしいので、単純に張り替えて溢れた滲出液を拭き取るだけ。

 場所によっては上から包帯をまいておく。

 背中の傷とかは一人だと処置が難しいからと強引に受け持った。

 

 一体どんなバイトをしたらこんな傷だらけに……ワンコは絶対に教えてくれないけど。

 

「リサさんは面倒見良すぎ」

 

「マブダチは助ける、これギャルの鉄則ね♪」

 

「今日日聞かない言葉かも」

 

 流石に包帯ぐるぐる巻きで登校してきたら無視できないって。

 きっとアタシの知らない誰かの為に負った傷だろうけど。

 

 

 それで本当に良いの?

 

 

「怪我ばっかりしてると、ますます『狂犬』の悪評が広まるよ?」

 

「理解者は片手で数えられる位で十分だから」

 

「馬鹿……」

 

 気付くと後ろから抱きしめていた。

 誰かこの馬鹿犬の陽だまりになってあげられないかな……。

 

 

 

「私の事よりリサさんは…………何でもない」

 

「あはは、そっちは大丈夫だって。前よりは距離も縮まったと思うし♪」

 

 逆に気を遣わせちゃった。

 アタシこそ頑張らないと。

 幼馴染に昔の笑顔を取り戻す事ができるのはアタシだけだと自負してるし。

 

 

「昔みたいな関係に戻れたら紹介するから期待しててね」

 

 

 

 

〇忘れ物(シーズン1)

 

 

「わーーー!!! やだやだっ!!」

 

 どこからか聞こえてきた悲鳴に思わずワンコの腕にしがみ付く。

 みんなはおばけなんていないって言うけど……いないっていうなら証明してよ、馬鹿!

 

「リサさん落ち着いて。ただの不法侵入者の悲鳴だから」

 

「それはそれで怖いよ!」

 

 どこまでも冷静なワンコの言葉に無性に腹が立つ。

 アタシはこんなに怖がってるのに!

 

「やっぱり私が一人で取りに行った方が良かった」

 

「流石にそれは……忘れ物をしたのはアタシだし、ワンコだって一人の女の子だし」

 

「うん、ありがとう。変に義理堅いところもリサさんらしい」

 

 よしよし、と頭を撫でてくれるワンコ。

 少し悔しいけど落ち着く事ができた。

 

 

 

 そもそも、何でアタシが夜の羽丘校舎にワンコと二人きりでいるかと言えば――

 

 

 自宅でのベースの自主練時間を増やすために、夏休みの宿題を登校日に学校で進めようと思ったのが発端だった。

 

 

 空き時間を利用しイイ感じに進めてそのままRoseliaの練習に参加、ファミレスでの反省会を終え帰宅してから軽く自主練。

 そろそろ宿題の続きを、と思ったら鞄の中に宿題は無かった……え、マジで!?

 

 学校以外で宿題を取り出した記憶が無いからあるとすれば教室の机の中!

 でも最終登校日、つまり今日から始業式までは完全閉鎖されるから今夜がラストチャンス。

 急いで取りに――

 

 

 

 そこでアタシは気付く……夜の学校ってメチャクチャ怖くない?

 

 

 

 一人では無理だと思ったアタシは直ぐに隣の湊家に、何とかワンコの協力を得る事ができた。

 友希那には動物番組を見るのに忙しいからと断られたけど。

 危険な目に遭わせたくはないのでそこは我慢しなきゃね。

 一応校舎に入るので湯上りのワンコには悪いけどまた制服に着替えてもらった。

 

 

「落ち着いた?」

 

「……何とか」

 

「ていうか、ワンコはおばけは怖くないの?」

 

「うーん、襲われたことが無いので何とも。銃で武装した人間の方が現実的に怖いし」

 

「それはアタシも怖いよ!」

 

 本気なのか冗談なのか分からない返答に思わず突っ込む。

 もしかしてビビりっぱなしのアタシをリラックスさせようとしているかも知れないけど。

 灯りは進む先を照らす懐中電灯しかないので、ワンコの表情はよく分からないや。

 

「さっさと回収して警備員室に戻らないと」

 

「そうだね。頑張れアタシ! よろしくワンコ!」

 

 最初は普通に昇降口から入ろうとしたけど鍵が掛かっていてダメだった。

 そこでワンコの言う通り警備員室に行ったところ、警備員さんに軽く注意されたけどそこから校舎に入れてもらえた。

 警備員室があるなんて知らなかったな。

 

 

 

 ♪~♪~♪~

 

 

 

「ピアノの音!?」

 

「Afterglowの『That Is How I Roll!』か」

 

「な、なんでー!?」

 

「成程、中々上手い。燐子さんと良い勝負かも」

 

「冷静に評価しないでよ!」

 

「音色的に悪い人じゃないよ、多分」

 

 ワンコの腰にしがみ付きながらふと思い出しちゃった――羽丘七不思議。

 

 一つ、夜な夜な聞こえるピアノの音

 二つ、動き出す人体模型

 三つ、鏡に映る知らない人

 四つ、一段増えてる階段

 五つ、体育館から聞こえるドリブルの音

 六つ、覗き込むと中に引きずり込まれるグラウンドの井戸

 七つ、夜な夜な遊び相手を探してウロついている生徒の幽霊

 

 夜になっても茹だる様な暑さで既に汗だくだったけど、違う汗も掻き始めた。

 それと……アッチの方も……。

 

「………………ワンコ、ごめん。先にトイレ行かせて」

 

「うん、了解」

 

 

 

「ぜ、絶対に扉の前から動いちゃダメだからね!」

 

「ちゃんといるから早くして」

 

「あと……できれば音は聞かないで」

 

「……善処する」

 

 

 

「あ、あった~!」

 

「おめでとう」

 

 何とか2年A組に辿り着きアタシの机から宿題を発見した。

 途中で人体模型が動いていたり、鏡に何かが映ったり、階段で変な声が聞こえたり、体育館の方から物音が聞こえた気がするけど――全部気のせいだよ、うん。

 

 宿題を鞄に詰め込んだまさにその時、

 

 

 スッ

 

 

「え……」

 

 いきなり暗くなった懐中電灯、辺りは一瞬で真っ暗に――

 

 

「わあああああああああ!!!!!」

 

 

 限界だった。

 悲鳴を上げてその場にへたり込むアタシ。

 生きた心地が全くしない。

 もう友希那と二度と会えないのかな?

 そう考えたら涙が溢れてくる。

 思考がネガティブな方へどんどん加速――

 

 

「はい、灯り」

 

「眩し!」

 

 

 灯りの正体は――ワンコのスマホのライト。

 ……普通に考えればアタシでも思いつきそうなのに。

 優しくハンカチで涙を拭き取ってくれるワンコ。

 

「やっぱり私じゃ頼りない?」

 

「今のは違うよ……アタシがビビりなだけ」

 

 ワンコの手を借り立ち上が――れなかった。

 足に力が入らない。

 

「あ、あれ?」

 

「……リアルに腰を抜かす人って珍しい」

 

 ワンコの冷静な意見に恥ずかしくて顔が熱くなる。

 じっくり見ないで~!

 

「はい、さっさと背負われて」

 

「……うん、ごめん」

 

 差し出された背中に体を預けて腕を首に回す。

 十分に固定されたことを確認して立ち上がるワンコ。

 

「重くない?」

 

「スタイルが良い分、紗夜さんよりは重たいかも」

 

「う~複雑だよ~」

 

 アタシの鞄を持って警備員室へ向かうワンコ。

 昔遊んだ黒い大型犬、友希那もアタシも背中に乗せてもらったっけ。

 安心するなぁ。

 

 

 安心したのはいいけど、こんなに密着したらアタシの汗とか体臭とかが!

 

 

 今は降ろしてとも言えないし…………無心になるんだアタシ!

 

 

「相変わらずリサさんは良い匂い」

 

「言わないで!!!」

 

 

 

 

 

「あー、外の空気が美味しい!」

 

「そう? 蒸し蒸しして微妙だけど」

 

「校舎内よりはマシだって! ……流石にもう何もないよね?」

 

 警備員室から外に出て校門へ。

 もう何も起きませんように、と心の中で祈り続ける。

 

 神様、仏様、友希那様! ついでにワンコ様!

 

「あ、誰かいる」

 

「ひっ!?」

 

 恐る恐る見た先には――

 

「蘭!?」

 

「あれ、蘭ちゃんどうしたの?」

 

「リサさんにワンコ先輩!?」

 

 

 そこにいたのは蘭をはじめとするAfterglowの面々だった。

 

 話を聞くとひまりが参考書を忘れたので取りにきたと……アタシと一緒じゃん!

 

「リサさんもですか。ところでなんでおんぶを?」

 

「暗がりで足首を軽く捻ったみたいなので大事をとって」

 

「……相変わらず優しいですね」

 

 アタシが答えるより早くサラッと嘘を。

 全く……何でもかんでも背負い込むんだから。

 って、現在進行形で背負われてるアタシが言える立場じゃないか。

 

「ワンコ先輩の方は変な事は起きませんでした?」

 

「まあそこそこ」

 

 やっぱり蘭達の方も……やばっ、また怖くなってきた。

 早く帰りたい。

 

 

「んー、犯人はアレかな?」

 

 

 ワンコの向いた方を見ると……屋上に人影。

 あの髪型、もしかして――

 

「ヒナ!?」「日菜さん!?」

 

 アタシと蘭の声が重なる。

 幽霊の正体見たり枯れ尾花……はぁ、怖がって損しちゃった。

 呑気に手なんか振っちゃって。

 

 今日はお風呂に入ってさっさと寝ちゃおうかな。

 

 おばけなんていなかったんだから!

 

 

 

 

「お、蘭じゃん。オハヨー♪」

 

「あ、リサさん。おはようございます」

 

 翌日Roseliaの練習の為に少し早めに家を出たアタシはCiRCLE前のカフェテリアで蘭と遭遇。

 昨日の事を思い出して互いに微妙な表情。

 と、そこへ紗夜もやってきた。

 

「おはようございます。美竹さんも練習ですか?」

 

「はい。といっても夏休みの宿題が終わってないひまり抜きですけど」

 

「それはいけませんね。そもそも長期休みは計画を立てて規則正しい――」

 

「ストーップ! ほら、紗夜も練習する為に早く来たんでしょ?」

 

 アタシの方にも矛先が向けられそうな予感がしたので話を遮る。

 流石に朝一で説教は勘弁だし。

 

「あ、紗夜に言うべきこと思い出した。昨日の夜に羽丘の校舎でアタシも蘭達もヒナにビビらされて散々だったんだから叱っといてね!」

 

「あたしは怖くなんてなかったですけど!」

 

 忘れないうちに紗夜に告げ口。

 電車以外ワンコにずっと背負われてたのはかなり恥ずかしかったし!

 ヒナには紗夜のお叱りの餌食になってもらわなきゃ。

 

「……おかしいですね。昨晩、日菜は私とずっと動物番組を見ていましたが」

 

「え……それって…………」

 

「ちょ、ちょっと紗夜さん……え……」

 

 顔を見合わせるアタシと蘭。

 紗夜がこんな事で嘘を吐くわけはないし。

 …………ということは。

 

 

 

 薄れゆく意識の中、蘭も同じように気を失うのが見えてちょっとおかしかった。




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<備考>

今井リサ:器用で不器用。

ワンコ:日菜本人ではないと気付いていたけど思いやり沈黙。

氷川日菜?:悪戯好き。

美竹蘭:最初からひまりに参考書を貸していれば……。

氷川紗夜:ポテトを用意されたので仕方なく(?)一緒に視聴。

Pastel*Palettesで読みたい視点は?

  • 丸山彩
  • 氷川日菜
  • 白鷺千聖
  • 大和麻弥
  • 若宮イヴ
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