犬も歩けば棒に当たる 作:政影
今回は美竹蘭さんのお話です。
アンケート結果&途中経過:
Afterglowで読みたい視点は?
(14) 美竹蘭 ☆
(3) 青葉モカ
(3) 上原ひまり
(0) 宇田川巴
(8) 羽沢つぐみ
Pastel*Palettesで読みたい視点は?
(6) 丸山彩
(10) 氷川日菜
(9) 白鷺千聖
(5) 大和麻弥
(1) 若宮イヴ
ハロー、ハッピーワールド!で読みたい視点は?
(4) 弦巻こころ
(1) 瀬田薫
(1) 北沢はぐみ
(8) 松原花音
(7) 奥沢美咲
○マンホール(シーズン0)
「ひゃ……水!?」
首筋に掛かった水に目を覚ますとそこは闇の中。
下からは激しく流れる水の音。
意味分かんない。
必死に記憶を遡ってみると、確か学校帰り。
家族やバンドの事を考えて憂鬱な気分でぼんやりと歩いていて……車をを避けようとしたら足元の感触が無くて、数秒後には頭に衝撃。
もしかしてマンホールか何かに落ちたってこと!?
冷静になると下からは下水の匂い……やば、落ちたら死ぬかも。
何とか心を落ち着けて状況を確認、落ちないようにゆっくりと。
梯子に体が引っ掛かってるみたいで直ぐに落ちることは無いと思うけど慎重に。
体勢を立て直しスマホを取り出してみたけどバッテリー切れ……あたしの馬鹿。
連絡は諦めて上へ、容赦無く落ちてくる水で制服が濡れて重くなってく。
そう言えば今日の予報は雨だったか……。
意識を失っても手放さなかった鞄に折り畳み傘は入ってるけど上手く差せそうにない。
弱気になったら駄目だ、泣いたら駄目だ。
気力を振り絞って一番上まで辿り着いた。
だけどそこには重たいマンホールの蓋。
押してもびくともしない。
更には雨音が強くて外の音が聞こえない……これってあたしが叫んでも誰も気付かないんじゃ……。
「……やだよ…………そんなのやだよ……」
まだ十五年しか生きてないし、バンドも華道も全然やりきってない。
それに幼馴染のみんなともずっと一緒にいたい……。
「お願い……誰か……」
カーン! カーン! カーン!
「えっ!?」
マンホールの蓋を叩く音が三回、絶対に偶然じゃない!
急いであたしも叩き返す、気付いて!
「蘭ちゃん?」
「はい!」
雨音が激しくて誰かは分からないけど、マンホール越しにあたしの名前を呼ぶ声。
助かった……。
「工事の人呼んで。傘貸して。雨水避けの土手作るからタオルも。……蘭ちゃん、もうちょっとの辛抱だから」
「は、はい!」
外にいるだろう人達に向かってテキパキと指示を出す彼女。
それから十数分後(あたしにとってはもっと長く感じたけど)マンホールの蓋は外された。
聞いた話によると私を見つけてくれたのは四月に一悶着あったワンコ先輩だった。
でも……助け出された頃にはもうその場にはいなかった。
つぐみの話だと犬の散歩のバイト中だったので、工事の人に後を引き継いで仕事に戻ったとか。
救出されてからはモカ達に抱き着かれたり父さんに病院へ連れて行かれたりで、その日の内にお礼を言う事はできなかった。
後日つぐみにワンコ先輩のバイトのシフトを教えてもらってお礼を言ったら、逆にコーヒーをサービスしてもらう始末。
なんでこんなに優しくしてくれるんだろう?
○捨て猫(シーズン1)
「それじゃあ昼休みに」
「じゃーねー」
一緒に登校してきたAfterglowの面々と別れ自分の教室へ。
ずっと同じのクラスになれなくて、少しだけ、ほんの少しだけ寂しい。
寂しい理由はもう一つ。
自分でも愛想がないのは自覚、なので入学して二か月以上経ってもクラスに友人はいない。
変えなきゃいけないんだろうけど……ワンコ先輩ならどうするのかな?
自分の席に着き鞄から教科書類を机の中に移しつつ溜息を漏らす。
今日も憂鬱な学園生活――
「っ!」
「きゃっ!?」
突然横から何かが飛び掛かってきて椅子から転げ落ちそうになったけど何とか耐えきる。
恐る恐る目を開けると腕の中には灰色の猫。
一体どこから?
「よいしょっと」
「ワンコ先輩!?」
聞き慣れた声がした方を見ると窓から教室内に入ってくるワンコ先輩。
ここって二階なんですけど……。
「あ、蘭ちゃん。そのままその子押さえてて」
「は、はい」
言われた通り灰色猫を抱きかかえるようにして押さえる。
温かい……けどこの時期だと気温がそこそこあるから長時間は遠慮したい。
「~~~」
「うーん、嫌われちゃったかな?」
ワンコ先輩が撫でるといやいやをするようにあたしに頭を擦り付けてくる。
ちょっと可愛いかも。
それに……何となく馴染みがある様な。
「そもそも誰の猫ですか?」
「生徒会の人が今日拾った捨て猫。そのまま連れてきたけど脱走したとかで探し回った」
「それにしたって外壁登らないでくださいよ。下からだと中見えちゃいますよ?」
「大丈夫、短パン穿いてるから。ほら」
「み、見せなくていいですから!」
スカートをめくり上げ短パンを誇示してきたので急いで顔を背ける。
あたしの心臓にも配慮してほしい。
「朝のホームルームまで時間がないしどうしよう」
困り顔のワンコ先輩。
いつもお世話になってるし協力したいけど……。
それとは別に腕の中の命の重さに言葉に出来ない感情が湧いてきた。
「どうしましたか?」
「あ、先生」
いつの間にか担任の先生が来ていた。
というか見回せばクラス全体から見られてるし……少し恥ずかしい。
でも、今あたしがすべきことは恥ずかしがることじゃなくて!
「先生、お願いです。今日一日この猫と一緒にいさせてください!」
「え!?」
驚きの声を上げる先生。
ワンコ先輩はじっとあたしを見つめる。
「いいの?」
「はい。あたしがそうしたいから、です」
「そう。じゃあ先生、生徒会からもお願いします」
深々と頭を下げるワンコ先輩、急いであたしも立ち上がり灰色猫を落とさないように頭を下げた。
「先生、私からもお願いします」
「アタシもー」
予期せず上がるクラスメイト達からの賛同の声。
……ありがとう。
「はぁ……分かりました。今日だけですからね」
「ありがとうございます」
なんとか許可は下りた。
後でクラスメイト達にお礼を言わないと。
「美竹さん、撫でても良い?」
「うん、一人ずつ優しくね」
休み時間の度にクラスメイトから声を掛けられる。
今までこんな事なかったのに。
ちなみに灰色猫はあたしの机の上に寝そべってる……くつろぎ過ぎでしょ。
「実はAfterglowのファンなんだ、私。でもプライベートで話しかけたら迷惑かなって」
「そんな事ないよ、クラスメイトだし。そんな風に思われてたなんて意外かも」
そっか、こんな人もいるんだ。
Afterglowのファンだと言われると素直に嬉しいし。
「あと羽丘でメッシュ入れてる人って少ないから声掛け辛いかも」
「うっ……」
薄々そんな気はしてたけど……そんなにアレかなぁ?
恥ずかしくなって思わず赤メッシュを触ってみたり。
「失礼するわ」
「失礼します」
「湊さんに麻弥さん!?」
何で二年生の二人が一年生の教室に?
「ここ一年の教室ですけど、もしかして階間違えました?」
「馬鹿にしないで頂戴」
腕を組んでいつも通り強めの口調、でも灰色猫を見つめる視線は柔らかい。
やっぱりガチの猫好きなんじゃ……。
「ジブン猫が好きなので湊さんに付き合ってもらいました」
「……そうなんですか、是非撫でてあげてください」
「では失礼して……おぉ流石ロシアンブルー、惚れ惚れする手触りっすね!」
機材の話をするときみたいに生き生きとしてる麻弥さん。
変、いや個性的な人が多い二年生の中でも存在感を発揮してるし、ワンコ先輩が信頼しているのも納得できる。
「じゃあ私も……」
プイッ
「あっ……」
「ちょ、ちょっと、湊さん、ライブ中に大勢に出ていかれたような表情しないでくださいよ!」
「別に気にしてないわ…………くすん」
「お前も少しは忖度しろ!」
「なー」
「ほ、ほーら湊さん今が撫でるチャンスですよ!」
「…………にゃーんちゃん、ふふふ」
……見なかった事にしよう。
麻弥さんも普段から苦労してそう、パスパレには日菜さんもいることだし。
何となくつぐみと話が合いそうな気がする。
「きゃーカワイイ♪」
「お、目元が凛々しいな!」
Afterglowの面々との屋上ランチタイム。
ワンコ先輩から渡されたハーネスを灰色猫に付けて連れて行った。
早速夢中になるひまりと巴、それを温かく見守るつぐみ。
モカはいつも通りパンに夢中だ。
「ねー蘭、この子って名前無いの?」
「まだ飼い主が決まってないし、情が移ると別れが辛くなるから」
甘いだけじゃなくて冷静なところもあるワンコ先輩からの忠告。
あたしの家は華道をやってる関係で猫には有毒な植物もけっこうあるし……無理だよね。
「名付けるなら『ココア』がいーなー」
「モカ、人の話聞いてた?」
一番マイペースな幼馴染にいつも通りツッコミを入れる。
……この灰色猫に既視感があるのは自由奔放なところがモカそっくりだからかも。
「ココア……モカちゃんらしいネーミングだね」
「おー、流石つぐ」
あたしとモカに意味深な視線を送るつぐみ。
ココア、モカ……もしかしてカフェモカに使うココアに掛けてる?
はぁ……面倒な性格、嫌いじゃないけど。
「気まぐれな猫はモカだけで間に合ってる」
「えへへ、素直じゃないな~」
呆れを含んだあたしの言葉に笑顔を返すモカ。
素直じゃないのはどっちだか。
「蘭ちゃん」
「あ、はい」
放課後の教室、灰色猫をワンコ先輩に返す。
観念したのかあたしに飽きたのか今度は抵抗もなくすんなりワンコ先輩に抱かれた。
「……引き取り先は見つかりました?」
「お昼の放送で募集したけど申し出は無し。近場の保護団体も空きは無いって」
「それじゃあ」
最悪の結末が頭をよぎる。
あたしは飼えないにしても花女や商店街で募集すれば見つかるかも。
それにはどうしても時間が。
「というわけでスクールキャット(仮)として生徒会で預かる事になった」
「はぁ!? 何ですかそれ?」
「職場で猫を社員として採用するオフィスキャットの学校版」
「……今日の今日でよくそんな案が通りましたね」
「生徒会に猫好きが多かったお陰かな。猫アレルギーの調査とか先生方への根回しとかあるから、しばらくは旧兎小屋で暮らしてもらうけど」
……呆れるほどの行動力。
嫌いじゃないけど、あたしの知らない間に話が進んでいたのを知って胸がざわざわした。
「本当は誰かの家に引き取ってもらうのが一番だから飼い主探しも並行して続けるけど……手伝ってくれる?」
期待を込めた眼差しが向けられる……あたしが断わるわけが無いのに。
ずるい先輩だ。
「猫とはいえあたしの後輩(仮)ですから、それくらい当然です」
感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。
アンケートにご回答をお願いします。
<備考>
美竹蘭:結果的にぼっち解消。
灰色猫:こころぴょんぴょん。
ワンコ:波に乗ると強い。
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