犬も歩けば棒に当たる 作:政影
今回は氷川日菜さんのお話です。
アンケート結果&途中経過:
Pastel*Palettesで読みたい視点は?
(6) 丸山彩
(10) 氷川日菜 ☆
(9) 白鷺千聖
(5) 大和麻弥
(1) 若宮イヴ
ハロー、ハッピーワールド!で読みたい視点は?
(5) 弦巻こころ
(1) 瀬田薫
(1) 北沢はぐみ
(8) 松原花音
(11) 奥沢美咲
○看病(シーズン0冬)
「テストが終わったからといって羽目を外しすぎないように」
先生のそんな言葉で帰りのホームルームが終わり、教室は一気に解放感による明るい喧騒に包まれた。
今日で二学期の期末テストも無事終了、多分満点だけどね。
テスト期間中は出入り禁止にされてた一年B組にでも行きますか♪
さーて、ワンコちゃんのテストの出来はどうだったかな?
「やっほ~♪」
「やっぱり来た」
「だね~♪」
「ですね、フヘヘ」
あたしが来る事が分かってたみたいで、ワンコちゃんの席で、リサちー、麻弥ちゃん共々待っていてくれた。
何だか嬉しいね。
一応今回もテストの点で勝負することになってるけど、それはそれ。
今は解放感に溢れたこの雰囲気をあたしも楽しまないと。
「学食で昼食をとったら演劇部の手伝いに行くけどどうする?」
「薫もアタシの幼馴染も学食に来るって♪」
「へ~、るんっ♪ てするね。もちろ――」
言葉の途中で急に力が抜けてく……あれ、おかしいなぁ……。
近くの机に手を突こうとしたけどそれすらも無意味で。
あ……まずいかも。
「氷川っ!?」
……ぼやけた視界の中で椅子を跳ね飛ばすように立ち上がるワンコちゃん。
慌てちゃって……どうしたの、かな…………。
気が付けば辺り一面真っ黒な世界。
そこにあたしは這いつくばっている、多分。
でも起き上がろうとしても起き上がれなくて。
『………………』
『おねーちゃん!?』
突然目の前に現れたおねーちゃん。
でも無言で見下ろすだけであたしの言葉に何の反応も示さない。
必死に手を伸ばそうとするけど体は動かない。
ああ……もう昔みたいに仲良くはなれないんだ……。
そう思うと涙が溢れてきた。
おねーちゃんと仲良くなれないなら生きてたって……。
『……馬鹿』
『えっ』
あたしの頭を優しく撫でるおねーちゃんの手。
理由は分からないけど……るるるんっ♪
あはっ、さっきとは違う意味で涙が止まらないや。
「おねーちゃん!」
「残念、私」
周りを見ると……どうやら保健室。
あたしはベッドで寝ていたみたい。
ベッドの横にはワンコちゃんが丸椅子に座って本を読んでいた。
なんだ、さっきのは夢だったか……残念。
「はい、体温計。服緩めてあるから検温して身支度したら呼んで」
「はーい」
無理して元気良く返すと微かに口元を緩めて間仕切りのカーテンの向こう側へ行くワンコちゃん。
あ、本当にスカートのホック外れてる。
上着とネクタイはハンガーに掛けてラックに吊るしてあるからワイシャツ姿なわけで。
特に何かされたような形跡はなかった。
……何かしたい程には魅力的な体じゃなかったかー。
手鏡でチェックすると微かに涙を拭いた後が。
もしかしたら夢の中で撫でてくれたのも……。
「三十七度……微熱?」
「そうだね。ちょっとボーっとする感じ」
「心当たりは?」
「うーん、昨日湯上りで空を眺めてた位しか」
「どう考えてもそれでしょ。馬鹿なの?」
「ひっどーい! あたしに一度もテストの点で勝ったことないくせに」
「知性と学力は別物。ほら、もうすぐ下校時刻だから念の為にお家の方呼んで迎えに来てもらって」
「それなんだけど……今日泊めてもらえないかな?」
「……は?」
うわ、凄く嫌そうな顔!
普段おねーちゃんがあたしに向ける表情の数倍酷い。
「実は今日親が帰ってこないからおねーちゃんと二人きりなんだ」
「良かったね。看病してもらえば?」
「こんな状態で帰りたくないよ。おねーちゃんに迷惑かけたくないから……」
これ以上おねーちゃんの負担になりたくない。
でもワンコちゃんに無理を言って嫌われるのも、嫌。
友達の家か最悪24時間営業の店か何処かで……。
「…………分かった。明日は土曜だし一晩だけなら泊めてあげる」
「本当!?」
「この後何かあったら気分悪いし。それと覚悟しておいてよ、私の部屋の狭さ」
ワンコちゃんの言葉に一も二もなく頷くとおねーちゃんに急いでスマホでメッセージを送った。
そう言う事は早く言いなさい、と叱られちゃったけど単純に友達の家に泊まるという認識で済んで良かった。
「で、いきなり氷川さんが倒れたから私が保健室まで運んだ。荷物やら後始末やらを引き受けてくれたリサさんと麻弥さんには今度お礼言ってね」
「………………」
「本当は直ぐに氷川家に連絡したかったけど『連絡しないで』って熱に浮かされながら何度も言うから」
「………………」
「あ、夕飯は何食べたい? 食材切らしてるから商店街で何か買わないと」
「………………」
「返事が無いけどもしかして悪化した?」
「おんぶが恥ずかしいだけだよ!」
「耳元で大声出さないで。仕方ないでしょ、ふらふらしてるんだから」
「う~~~」
確かにまだふらふらするけど、丁度部活帰りの羽丘生とかち合ったせいでジロジロ見られたりコソコソ言われたり。
好意的なものだと捉えたいけどそれはそれで恥ずかしいかな。
あと、この密着状態だと絶対に体臭が……。
「で、何が食べたいの?」
「味が濃いもの!」
「……おかゆに梅干しと大根おろしでも乗せとけばいいか」
「えー、ジャンクフード食べたいよ~!」
「そういうことは平熱に戻してから言って。……なめ茸も追加してみるか」
元気になったら絶対ジャンクフード祭りやるんだから!
「はい、到着」
「へ~、年季が入っててるんっ♪ てするね」
「そう? ありがとう」
商店街から少し外れた場所に立つワンコちゃんが住むアパート。
外装は大分傷んでるけど古いもの特有のワクワク感があった。
「取り合えずシャワー浴びちゃって。下着は……この前まとめ買いした新品がまだあった筈」
「いいの?」
「後日請求するから安心して」
「あはは、りょーかい♪」
これでようやく寝汗で臭っているだろう状態から解放される!
臭いなんて言われたくないしね。
「脱いだ服は洗濯する?」
「うーん、流石に悪いから持って帰って洗うよ。ビニール袋頂戴」
「うん、分かった」
ワンコちゃんよりは大きいけどリサちーに比べたら全然。
ブラを見られなくて良かった。
新品の下着と一緒に用意された羽丘の体操服とジャージ。
柔軟剤の匂いしかしなかったのはちょっと残念だったかも。
「ご馳走様、意外と美味しかったよ♪」
「お粗末様」
ワンコちゃんが作ってくれたみぞれ粥を食べ終え、保健室でもらった風邪薬を白湯で飲む。
これで明日には全快、だといいなぁ。
「ちょっと失礼」
「えっ!?」
あたしの前髪をかき上げるとワンコちゃんがおでこを当ててきた。
吐息のかかる距離に近付かれて鼓動が早まる。
「大丈夫みたい。どうしたのボーっとして?」
「な、何でもないよ!」
こんな恥ずかしい事を平然とやるなんて!
今までのいざこざから好かれてるとは思ってないけど、それはそれでイライラする。
……なんでイライラするんだろ?
「じゃあ寝ようか」
「ええっ、もう!?」
「一応病人でしょ?」
あたしの抗議の視線を無視してコタツ机を端に寄せ布団を敷いていくワンコちゃん。
あれ、布団が一組……え、嘘!?
「こ、これって!?」
「お布団どうぞ。流石に客人だしね」
用意された布団におずおずと入る。
も、もしかして、寝ている間に間違いが起きたりとか!?
「……それ、何?」
「寝袋だけど。記憶にある限り風邪は引いたことないけど、念の為。もしかして同じ布団で添い寝してほしかった?」
「べ、別に~」
意地の悪い笑みを浮かべるワンコちゃん、人の気も知らないで!
そもそも勘違いしてるし!
「まあ……うなされていたらまた撫でてあげるから。ゆっくりお休み」
「!?」
夢の中で撫でてくれたのって……。
おねーちゃんとワンコちゃん、背格好と真面目なところは似てると思うけど、逆に言えばそれ位。
どうして夢の中でおねーちゃんだと認識しちゃったんだろう?
今度夢についての学術書でも読んでみようかな?
でも、まずは。
「今、撫でてほしいんだけど?」
「うん、了解」
寝袋から腕を出して優しく撫でてくれるワンコちゃん。
いつもこれ位優しければいいのに。
きっと今のあたしが病人だから……。
「ここからは独り言……ごめんね、氷川さん」
「?」
「最初は嫌悪から始まった勝負だけど、今では心から楽しんでいるよ」
ワンコちゃんの突然の発言に耳を澄ますあたし。
「今まで対等な立場で競い合える相手がいなかったから凄く嬉しいんだ」
……そんな風に思ってくれてたんだ。
「でも……これ以上仲良くなったら馴れ合いになると思って、一線を引いてた」
そっか……悩んでたのはあたしだけじゃなかったんだ。
「ごめんね。面倒臭いワンコで」
悲しげな言葉があたしの胸を締め付ける。
だけどワンコちゃんの事が前よりも分かった気がして少し嬉しい。
あれ、あたしが他人の事を「分かった」なんて変なの♪
「大丈夫だよ、あたしも成長中だし面倒臭さじゃ負けてないし! それにそういう発言はあたしにカンペキに勝ってからにしてほしいな。あ、今のは独り言ね」
「…………ありがとう」
そう言うとワンコちゃんはあたしから手を放し寝る態勢に入った。
あたしも早く元気になって家に帰らないと。
おねーちゃん分が不足しちゃうからね♪
会話を重ねる事による相互理解、直感とあたし理論で話すからちょっと難しいかも。
でも大好きなワンコちゃん達と絆を深める事ができたなら、きっとおねーちゃんとも……。
いっちょやってみますか♪
○ご褒美(シーズン1冬)
「はぁ……んっ! あたしのアソコがるんっ♪」
「しなやかな筋肉、シミ一つない肌、そして敏感な部位、まったく日菜ちゃんは最高」
賞賛の言葉と共にあたしの体の隅々まで触れていくワンコちゃん。
気持ち良すぎて気を失っちゃいそう。
そのままもっとあたしの深くまで――
「あ、あなた達、何やってるの!」
「あ、おねーちゃん! おねーちゃんもマッサージ受ける?」
あたしの部屋のドアをノックも無しに開けたおねーちゃん。
いけないんだー。
「すみません……早とちりでした」
「ううん、日菜ちゃんが変な声を出した所為」
「えー、気持ち良いから仕方ないでしょー」
少し赤い顔をして謝るおねーちゃんもるんっ♪ てするね。
「私も何度か受けているから気持ち良さは分かるけど……声は抑えなさい」
「えーなんで?」
「ご、ご近所迷惑だからよ!」
「あんまり紗夜さんを困らせないで。アイドル業で鍛えた日菜ちゃんの声はよく通るから」
「そっかー、次からは彩ちゃんのタオル噛みながらマッサージしてもらうね」
「……丸山さん、ごめんなさい」
「ドラマ主演決定のご褒美ですか?」
「うん。今回はオーディションにも気合が入っていたから祝ってあげたくて。日菜ちゃん、台本借りるよ」
「いいよー」
ストレッチをしながらオーディション用の台本のページをめくるおねーちゃんを盗み見る。
驚きの色に染まっていくのがるるるんっ♪
「いつも一回読んだら覚えるので台本は綺麗なままだと思っていましたが」
「書き込みで真っ黒」
「パスパレのみんなや薫くん、燐子ちゃん達にも聞いて色々考えたんだ」
あたしじゃないドラマ用のあたしをみんなで作り上げてく。
あたしだけでは奏でられなかった音を全力で響かせて。
それは虚構だけどドラマの中には確かに存在することになる。
そんなのもアリかなって♪
「日菜!」
「は、はい!」
おねーちゃんの言葉に思わず正座。
何か悪いことしちゃった!?
手の届く距離に座りなおすおねーちゃん。
怒られると思って緊張したあたしの頭におねーちゃんの手が触れ優しく撫でられる。
「次は私にも聞きに来なさい。役に立てるかもしれないから」
「えっ、いいの?」
「当然でしょ。私はあなたの『おねーちゃん』なんだから」
感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。
アンケートにご回答をお願いします。
<備考>
氷川日菜:「姉さまは魔法少女」で姉デビュー、新規ファンも獲得。
ワンコ:フィジカル一流、メンタル二流、ラブ三流。
氷川紗夜:妹の出演番組は必ず録画、ベッドの下には各種グッズも。
Roseliaで読みたい視点は?
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