犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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二日遅れでお誕生日おめでとうございます。


番外編X-12:あこの誕生日(シーズン?)

○誕生日(シーズン?)

 

 

「それでは、あこの誕生日を祝って」

 

『かんぱーい!』

 

 友希那さんの合図で五つのワイングラスが軽くぶつかり合い綺麗な音色を奏でた。

 そのまま『わたし』の生まれ年のワインを一気に飲み干す。

 葡萄の甘味と渋味、じんわりと頭が痺れる感覚……成程、これがお酒なんだ。

 

「あこちゃん……大丈夫?」

 

「平気だよ。ちょっと渋かったけど美味しかった♪」

 

 初飲酒を心配してくれるりんりんに笑顔を返す。

 お酒でほんのり赤くなったりんりんは普段とは違う魅力に溢れている。

 ストレートに言えば官能的。

 このままお持ち帰りしたい位に。

 

 

「へ~、あこってばやるじゃん。友希那なんて未だに」

 

「リサ、黙りなさい」

 

 相変わらず苦いものが苦手らしい友希那さんは、一口だけ飲んだワイングラスをリサ姉に押し付けた。

 リサ姉はくいっと飲み干すとバーカウンター行き、友希那さんの為に甘いカクテルを作り始める。

 本職のバーテンダーみたいに小気味良い音を立ててシェイクするリサ姉、カッコイイ!

 軽やかな手つきで作られた淡い緑色のカクテルを美味しそうに飲む友希那さん、『わたし』も後で作ってもらおう。

 

 

「空腹のままだと悪酔いするわよ」

 

「ありがとうございます、紗夜さん」

 

 紗夜さんが大皿から取り分けてくれた、紗夜さん畑で育った野菜で作られたサラダやフライドポテトが載った取り皿を受け取る。

 こういう時でも姉力を発揮する紗夜さんは心強い。

 それに紗夜さんが作った野菜は美味しいので大好き……ピーマンはみじん切りにしてハンバーグにしてもらえれば何とか。

 

 

 

 今日は『わたし』の二十歳の誕生日。

 

 

 

 そしてここはりんりん所有のタワーマンションの最上階にして一部屋のみのゆったり仕様。

 

 みんなで忙しい中何とか集まって料理を作って飾りつけを行った、Roseliaによる『わたし』だけの為の最高の会場。

 バースデーライブを無事終わらせて急いで戻ってきてからの乾杯。

 

 興奮で闇の波動がバーンバーンと飛び出そう♪

 

 

 

 

「いやー、あこのバースデーライブ最高だったね♪」

 

「当然よ。大切なRoseliaのメンバーの為のライブ、最高じゃなくてどうするの?」

 

「リサ姉……友希那さん……」

 

 二人の言葉に目頭が熱くなる。

 演奏中は二人の背中しか見えないけど心はいつも一つ。

 Roseliaのドラマーは自分じゃなきゃ務まらない、って自負はあるし。

 今までも……これからも……。

 

 

「飲酒が可能な年齢になったからとは言え、飲み過ぎには注意してください」

 

「アル中は……カッコワルイから……」

 

「も、勿論だよ!」

 

 ワイングラスを空にした後リサ姉にカクテルをオーダーしようと思ったけど、慌ててウーロン茶のグラスを手に取る。

 演奏が走りそうになった時、二人の音がそれを抑えてくれる。

 いつも本当に頼もしい……少しずつでも恩返ししていきたいな。

 

 

「あこ、今日の主役から一言貰えるかしら?」

 

「はい!」

 

 友希那さんの言葉にグラスを置き、全員が見渡せる位置に移動する。

 

 友希那さん、リサ姉、紗夜さん、そしてりんりん。

 全員と順番に目を合わせるとRoselia結成の日の光景が脳裏をよぎった。

 

 

「……最初は友希那さんに憧れて始まったRoseliaでのバンド活動、本当の意味でRoseliaの一員に成れたあの日の事……」

 

 思い出が溢れてきて視界が滲む。

 心配そうなりんりんを手で制して言葉を続ける。

 

「不可能に挑み続けるのがRoseliaだから……更に進化した挑み続ける『わたし』から目を放しちゃダメなんだから♪」

 

 後半涙声だったけどみんなから温かい拍手を貰えた。

 りんりんには情熱的なハグをされたけど。

 

 言葉で語れなかった分は演奏で語るから許してね。

 

 

 

 

 バタバタバタバタ

 

 

「あ、この音は!」

 

 乾杯から一時間位経った頃、聞き慣れたローター音を耳にして急いでグラスを置きエレベーターで一人屋上に向かう。

 漆黒の空からヘリポートに舞い降りたのは『わたし』のイメージカラーでもあるローズピンクのヘリコプター。

 

 

 その名もデスガルーダ!

 

 

 ローターの回転も止まらないうちに扉を開き駆け寄ってきたのは――

 

「あこ!」

 

「おねーちゃん!」

 

 愛しのおねーちゃんだった。

 久しぶりにがっしりと抱き合う。

 ずっと見上げる身長差だったけど、今では『わたし』の方がちょっと大きかったりする。

 

「ごめんな、遅れて」

 

「ううん、予定より早い位だよ。ライブお疲れ様」

 

「あこもな! 改めて誕生日おめでとう!」

 

「ありがとう♪」

 

 Afterglowも今日は離れた場所でライブをしていた。

 おねーちゃんとしては『わたし』のライブの方を優先させたかったみたいだけど、涙を呑んでAfterglowの方を優先してもらった。

 だっておねーちゃんのドラムを楽しみにしていた人達をガッカリさせちゃうからね。

 

 

 おねーちゃんに続いてヘリから降りてきた蘭ちゃん達Afterglowの面々とハイタッチを交わし先に会場に行ってもらう。

 二回目の乾杯に『わたし』も行かないと。

 

 でもその前に……『わたし』はヘリのパイロットが降りてくるのを待つ。

 

 

「お誕生日おめでとう、あこちゃん」

 

「ありがとう、ワンコ先輩♪」

 

 

 満員電車での運命の出会いから数年、ますますカッコ良くなったワンコ先輩。

 身長以外も釣り合いが取れるくらい『わたし』も成長できたかな?

 

 

「素敵なドレス、良く似合ってる」

 

「うん、りんりんの自信作なんだ」

 

 

 その場でくるりと回転、闇夜に純白のドレスがふわりと舞う。

 聖堕天使に相応しい装い、流石りんりん!

 ワンコ先輩の表情からも花丸合格みたい♪

 

 

「一曲踊ってほしいな」

 

「私、こんな格好なんだけど」

 

「問題ないよ♪」

 

 漆黒のフライトスーツ姿で困った笑みを浮かべるワンコ先輩の手を引き強引にワルツを踊り始める。

 最初はぎこちない動きだったけど『わたし』のリードに合わせ次第にステップが軽やかになる。

 ボンヤリとだけどずっと夢見てた光景。

 

 

 大人になった『わたし』をその片目に焼き付けてもらうんだから♪

 

 

 

 

○誕生日(シーズン1)

 

 

「――ってのはどうかな?」

 

 あこが考えたカッコイイ二十歳の誕生日(案)をスタジオ練習の終わったRoseliaのみんなに話す。

 まだ中学三年生だけどお酒をお洒落に飲んだり、大人っぽいドレスで踊ったりするのは秘かな夢だったりする。

 ちなみに今年はライブ日程を考慮してお誕生日会は後日、プレゼントは練習前に家に届けてもらった。

 まだ開けてないのですごーく楽しみ♪

 

「良いんじゃないかしら? 五年後だろうとこの全員で更なる高みを目指している自信はあるわ」

 

「アタシは料理の腕を上げてカクテルの作り方を憶えれば良いんだよね、任せて♪」

 

「私は野菜作りですか。今度日菜がテレビ番組で農作物を育てるので聞いてみましょう」

 

 友希那さん、リサ姉、紗夜さんは大丈夫みたい。

 でも、りんりんとワンコ先輩は――

 

「……ヘリポート付きの……タワーマンション……」

 

「六人乗りだと中型ヘリか。そもそもヘリの免許が必要だし、いや隻眼だと条件が……」

 

 二人して頭を抱えてた。

 ちょっと欲張りすぎたかも……ちょっと反省。

 

「む、無理しないでね!?」

 

「大丈夫……あこちゃんの為なら……一山当てるから」

 

「角膜移植から始めれば……バイト増やさないと」

 

 あこの言葉に逆にやる気を漲らせる二人。

 嬉しい反面、無理し過ぎないかちょっと不安。

 Roseliaの中でも二人はあこに対して特に優しいから。

 

 

 ……本当に実現してほしいのは、その時に全員揃っていることなんだけどね。

 特にワンコ先輩はこの前まで大怪我で入院してたし。

 あこも非常事態に備えておねーちゃんみたいに筋肉付けて、いざとなったら『ソイヤ!』って解決できたらな~。

 ワンコ先輩が紗夜さんをお姫様抱っこしたって噂を聞いたことがあるから、あこはりんりんをお姫様抱っこするのが当面の目標にしよっと。

 

 また友希那さんがブートキャンプに申し込んでくれないかな?

 

 

 

 それとは別に……身長伸びろ~!

 

 

 

 

「お休み、あこ」

 

「お休み、おねーちゃん♪」

 

 帰宅して家族でのお誕生日会を終え、おねーちゃんとお休みの挨拶を交わし自室へ。

 

 みんなからたくさんお誕生日プレゼントを貰ったけど、一番大きかったのはワンコ先輩から貰った黒犬の抱き枕。

 なんと一メートル以上あってとっても抱き心地が良い。

 大きいのに眠たげな表情で全体的にゆるっとしてて……気を抜いた時の本人みたい。

 何だか良い香りもするし……。

 

 うん、さっそく今夜から抱いて寝よう♪

 

 

 

 

 その夜、不思議な夢を見た。

 

 

 明らかに現実とは違う絵具を全色ぶちまけた様な光景。

 そして奏者が見えないのに和太鼓が鳴り響く異質な世界。

 

 

 そんな中あこの傍らには五人、いや五匹の仲間。

 

 

 絶世の歌声を披露する猫。

 

 器用にクッキーを作る兎。

 

 芋を掘る誇り高き狼。

 

 丸太を振るう優しい大熊貓。

 

 そして……あこを背中に乗せる黒い犬。

 

 

 あこ達の前に立ち塞がるのは無数の敵や分厚い壁、不毛な砂漠、険しい山々。

 

 

 でも歩みは止めない……何故ならあこは聖堕天使にしてRoseliaのドラマーだから!

 

 

 

 支離滅裂な内容だけど、あこ的にはカッコイイと思う。

 

 

 前はおねーちゃんみたいなカッコイイ人達の真似をしていればカッコ良くなれると思ってた。

 

 でも今は、Roseliaのみんなと出会ってからは、それだけじゃ物足りないと感じた。

 

 あこだけのカッコイイ、見つからなければ作り上げればいい。

 

 青薔薇の誓いと誇りはいつもこの胸に。

 

 

 

 誰が呼んだか『ちいさな魔王』、野望も欲望も魔王級なんだからね♪




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<備考>

宇田川あこ(?):スーパーアコ。

湊友希那(?):世界の歌姫兼猫保護活動家。

今井リサ(?):友希那の世話の傍らトップモデル。

氷川紗夜(?):農業機械を使いこなすポテトクイーン。

白金燐子(?):あことリサをモデルとして雇用するファッションデザイナー。

ワンコ(?):スーパーパイロット。

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