犬も歩けば棒に当たる 作:政影
「R-15」「ガールズラブ」のメリットを少しでも生かしたいです。
本編2-1:五月の鯉の吹流し
「お、終わったわ……」
「お疲れ様です。採点が終わるまでユキと遊ぶなり音楽を聞くなりしていてください」
「……そうするわ」
「にゃーん」
友希那さんはゾンビのようにふらふらと立ち上がると、勉強中はケージに入れておいたユキを出し、棒の先端に羽のついた玩具で遊び始める。
ご厚意で自室を貰えた私だったが友希那さんの勉強を見たりユキと遊んだりと、結局友希那さんの部屋にいる方が多い気がする。
「丸、丸、丸っと……大丈夫そうですね」
「当然ね」
「これで一年生で習った範囲は大丈夫ですね。次は二年生の範囲です」
「……今日はここまでにしない?」
「そうですね。これ以上続けたらまた悪夢にうなされた友希那さんが私の布団に潜り込んできそうですし」
「忘れなさい……それと一つ聞いてもいい?」
いつになく真剣な表情の友希那さん、一体何を聞かれるのだろう?
「なんで家の中でずっと体操着なの?」
「全部焼けてしまったので、特待生特権をフル活用して制服と体操着とジャージを多めに手配してもらいました」
「どうりで外出時はいつも制服だったわけね。てっきりキャラ付けかと思ってたわ」
「誰へのアピールですか」
「とりあえず家の中で体操着は止めなさい。食事中に一人だけ体操着とか虐待にしか見えないわ」
「……そう言われるとそうですね。でも代わりに着る服が」
「仕方がないわね……私のお古をあげるわ」
「ありがとうございます」
ちなみに友希那さんから貰ったの部屋着はシンプルなTシャツやスカートだったが……。
「似合ってるわ、そのパジャマ」
「衝動買いしたけど自分で着る勇気のなかったやつですよね……この猫の着ぐるみパジャマ」
猫耳フードと猫しっぽの付いたフワフワなパジャマ。
友希那さんの猫スイッチが入ってしまったようで全身を撫で回される。
貰った手前抵抗できない……たまにユキがぐったりしている事があるが気持ちがよく理解できた。
……終わりが見えないので携帯で助けを。
「リサさん……友希那さんが危険『ツーツーツー』」
「友希那、大丈夫!」
窓が開いてリサさん即参上……流石に早過ぎ。
「ええ、問題ないわ」
「ワンコがぐったりしてるんだけど」
「……気付かなかったわ」
気付いてください。
「私服全滅か~、今度買いに行こっか?」
友希那さんから引き剥がされた私はリサさんに膝枕され頭を撫でられている。
「服なら私が選んであげる」
私を取り上げられた友希那さんは代わりにユキを膝の上に乗せ撫でている。
「……動きやすくてあまり高くないのでお願いします」
着せ替え人形にされそうな予感しかしないので気休めに予防線を張る。
「Roselia全員で最高の服を選ぶわよ」
あ、他の三人も呼ぶ気だ……大人しく練習してて。
「以上、Afterglowでした!」
以前貰ったチケットで来たAfterglowのライブ……凄かった。
Roseliaとは全然違うが感情の昂ぶりは勝るとも劣らない。
ちなみに差し入れはやまぶきベーカリーのパンの詰め合わせを受付の月島さんに渡した。
一人最後まで余韻に浸っていたらAfterglowの面々がやってきた。
「来てくれてありがとうございます」
「すごく、良かった」
私の言葉に満面の笑みを浮かべる蘭ちゃん、思わずその手を取って私の左胸に当てる。
「まだドキドキしてるの、分かる?」
「あ、はい……」
耳まで真っ赤に……照れたのかな?
「ワンコ先輩、服の趣味変えました?」
「あー、燃えちゃったんで友希那さん達に選んでもらった。変かな?」
今日の恰好はフリルの付いた白いブラウスと黒のダブルスカート、それとタイツ。
その場でくるっと回ってみる……この生地のスカートをフワッとさせるのは難しい。
「いつものファストファッション中心のコーデとは大分違うので……でも今のも似合ってますよ」
「うん、ありがとう」
選んでくれた人達が褒められたようで嬉しくなる。
「うわ、確実にすれ違ってるよ~」
「蘭……」
「これから打ち上げも兼ねてみんなでスーパー銭湯行くんですけど、ワンコ先輩も一緒にどうですか?」
「お邪魔じゃない? それに……」
「防水眼帯おっけー」
「ラッシュガード貸出してます」
「先輩、覚悟を決めましょうよ!」
……Afterglowの結束の固さを見せつけられた。
『ちょっと帰りは遅くなりそうです』
『わかったわ』
一応友希那さんにメール、特に詮索されなくて肩すかし。
まあ面倒事は無い方が良いよね。
「あら、美竹さん奇遇ね」
「湊さん……」
油断した途端これですか。
スーパー銭湯前でRoselia御一行とばったり、Afterglowの面々を見ると顔を逸らすモカちゃん、巴ちゃん、つぐみちゃん。
Afterglowの結束とは。
「Roseliaに馴れ合いは要らないんじゃ?」
「バンドメンバーのフィジカルに気を使うのはリーダーの務めよ」
「うちのひまりを馬鹿にしないでもらえますか?」
「え、私に飛び火!?」
……火花散らしてるし、競うのはステージ上だけにして。
「他の人にも迷惑なのでこのまま続けるなら帰りますよ?」
「「ごめんなさい」」
「……じゃあみんなで入りますか」
胃が痛くなりそう。
「あら、その背中」
「ああ、そういえば友希那さんには初披露でしたね。体育の時はトイレで着替えてましたし」
背中に広がる火傷の痕、まあ覚えていないので特に感慨はないが見る方は気持ちのいいものではないだろう。
「ひゃん! ……なんで舐めるんですか?」
「……何となくよ」
「ちょ、湊さんずるいです! あたしも!」
「蘭ちゃんまで何言ってるの? リサさん、モカちゃん、何とかして」
「アタシは友希那が幸せなら……」
「モカちゃんも同じかなー」
駄目だ、当てにならない。
他の人はどうだろう。
「紗夜さん、今日はお背中流しますね」
「ではお返しに羽沢さんの前を流しますね」
「……そういう事は二人きりの時にお願いします」
「あこも大きくなったな~」
「高校生になったらおねーちゃんに追いつけるかな?」
「あこならアタシよりも大きくなれるぞ」
「水の中っていいですよね~、燐子さん」
「……分かります、上原さん」
「この手の話題が出来る人って貴重ですね♪」
他のペアは和気あいあいの模様。
どうしてこうなった。
「折角だから勝負をして勝った方がワンコに一つ言うことを聞いてもらうのはどうかしら?」
「望むところです」
「…………」
「何よ、その目は?」
「いや……友希那さんって我儘なんだか律儀なんだか」
「うるさいわね」
「?」
蘭ちゃんは分かって無さそうだけど……って、結局損をするのは私か。
そもそも銭湯勝負って何?
改めて見回すと……私とは違ってみんな綺麗な体。
アレの大きさはパッと見
特:燐子さん、ひまりちゃん
大:リサさん
普:友希那さん、紗夜さん、巴ちゃん
小:蘭ちゃん、モカちゃん、つぐみちゃん
微:あこちゃん、私
「あこちゃん、ずっと友達だよ」
「ワンコ先輩……」
「電気風呂、サウナ、水風呂に長く入っていた方が勝ちよ」
「分かりました」
体を洗って二人ともやる気満々、もはや何も言うまい。
「まずは電気風呂に入りますか」
三人で並んでそれぞれの電気風呂に入る。
段差に腰を下ろすと両側の電極版から電気が流れる仕組みか。
ピリピリとした刺激が血行を促進させてくれる気がする。
「うん、気持ちいいね……え?」
左右の二人を見ると頬を上気させ、歯を食いしばり、必死に何かと戦っている模様。
「んっ……そ、そうね……んんっ!」
「もう……ちょっと……強くても……んっ!」
「いや、どう見ても異常だけど。体調不良なんじゃない?」
私の言葉に二人はふるふると首を横に振る。
もはや言葉を返す余裕もなく呼吸も次第に荒くなっていく。
それでも決して立ち上がることはなく互いに潤んだ瞳で睨み合う様はある種の美しさを感じる。
……いや感じてる場合じゃないだろ。
「リサさん、モカちゃん、ちょっと二人を休ませてあげて」
遠巻きに眺めていた二人を呼んで限界寸前の二人を託す。
心得たようにタオルを巻きつけ脱衣所の方に去っていく……まあ何とかなるだろ。
「……ワンコさん」
「どうしたの?」
すっと近づいてきた燐子さんが耳元に口を近づける。
「……お二人とも火傷痕を」
「ばっちり舐めてましたね……これでもしサウナにでも入ったら」
「いいデータが取れるかも……知れません」
燐子さんの意外な発言にドキッとする。
「半分……冗談です」
「半分本気なんですね……まあ最悪気絶させてでも」
「待たせたわね」「お待たせしました」
まだ多少赤みは残るもののスッキリとした表情の二人が帰ってきた、早いね。
むしろリサさんとモカちゃんが戻ってきていないのが気になる。
「次のサウナで決着を付けましょう」
「負けませんよ」
仲良いね君達。
「どう見ても堅気じゃない光景」
「そうかしら?」「そうですか?」
サウナに眼帯+ラッシュガードだけでも目立つのに両隣の二人とも腕を組むのだから完全に危ない人。
他の人が逃げて行ってしまったので三人で貸切状態。
通報されないといいけど。
「そう言えば何でそんなにワンコを慕ってるのかしら?」
「うん、私もそれは不思議」
「……ワンコ先輩はあたしを暗闇の中から救ってくれました」
蘭ちゃんはじっと私の目を見つめてくる。
「で、具体的には」
「車を避けたらマンホールの蓋が開いていて落ちました」
「えっ……」
「そのまま気付かれずに蓋を閉められ、数時間後にワンコ先輩に見つけてもらいました。笑いますか?」
「そんなわけないじゃない! 大丈夫だったの!?」
「えっ……いや、半年以上前の話ですし」
「そう、それは良かったわ」
蘭ちゃんの手を取って微笑む友希那さん、少し涙ぐんでる。
ちなみに見つけたのは私じゃなくてレオンくん、マンホールを開けたのは工事の人。
他の四人が探し回っているのをレオンくんの散歩中に見かけて協力を申し出た。
レオンくんの嗅覚である程度絞れたので、後は可能性のありそうな側溝の蓋を開け、マンホールを叩き耳を当て確認した。
……よく見つかったね。
「……ワンコ先輩、湊さんってこんなキャラでしたっけ?」
「今まで内に秘めてた感情が時々出てくるようになったんで。基本純粋ないい人」
「…………」
さらに赤くなってそっぽを向く友希那さん、可愛い。
「そもそも勝負なんてしなくても友希那さんの言うことは全部聞くのに」
「えっ、じゃあどうしてわざわざ?」
「……想像にお任せするわ」
「意気地なし」
「ワンコ、何か言った?」
「いえ。そう言えば蘭ちゃん、前にRoseliaと対バンライブやりたいって言ってたよね?」
「えっ!?」
友希那さんに分からないように蘭ちゃんにアイコンタクト。
「そ、そうですね。機会があれば」
「負けないわ」
友希那さん、反応早い。
「私も負けませんから」
うん、サウナの温度がさらに上昇した気がする。
……今のところさっきみたいな変な空気にはなっていないので一安心。
「ふう……フルーツ牛乳が美味しい」
割と限界だったのでサウナ勝負は引き分けにして外に出たら他のメンバーは既に上がっていた。
腹いせ、というわけではないがフラフラな二人だけに飲み物を奢る。
「二人ともコーヒー牛乳でいいんだ」
「そうね」
「まあ、たまには」
……フルーツ牛乳美味しいのに。
「そう言えばこの場合勝負はどちらの勝ちかしら?」
「引き分けでいいんじゃないですか? こうして奢ってもらっただけで十分ありがたいですし」
「意外に無欲ね」
「……ちょっと引っかかる言い方ですね」
「てっきりワンコ一日レンタル権とか言うと思ったわ」
「あっ!」
蘭ちゃん、その手があったかなんて顔しないで。
「次の対バンライブで決着を付けます」
「ええ、望むところよ」
……モチベーションが上がってなにより。
「友希那さん、強引に私を引き取ったこと気にしてるんですか?」
「何のことかしら」
スーパー銭湯からの帰り道、サウナで聞けなかったことを聞いてみる、が答える気はなさそうだ。
「経緯はどうあれ友希那さんと一緒にいられる今は幸せですよ」
「……そう、それは良かったわね」
「うん、すごく良い」
繋いだ手は振りほどかれることもなく強く握り返してくれた。
全く……不器用で素直じゃなくて放っておけない、素敵なご主人様だ。
感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。
<備考>
ワンコ:液漏れ注意。
美竹蘭:真っ向勝負。
青葉モカ:バイト中にポロっと。
宇田川巴:家でポロっと。
羽沢つぐみ:入浴中にポロっと。
番外編2で扱ってほしいバンドは?
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Roselia
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Afterglow
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Poppin'Party
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Pastel*Palettes
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ハロー、ハッピーワールド!