犬も歩けば棒に当たる 作:政影
去年書いたのでスルーするつもりが……急いで書いたので短いです。
※8/27(木)追記
○誕生日(シーズン0)
「またねー、リサ」
「うん、またね~♪」
アタシの誕生日祝いという事で少し羽目を外して遊んだクラスメイトに手を振り家路につく。
高校一年生の夏休み……うん、十分楽しいよ?
まあ、一部の友人達と中々会えないのはちょっと寂しいけど。
ワンコはバイトの掛け持ち、麻弥はスタジオミュージシャン、日菜は音信不通、薫は演劇部、千聖とイヴは撮影、友希那は……最近見てないな。
部屋の電気が夜遅くまで点いているのは確認済みだから、部屋に帰ってきているのは間違いない。
メールを送っても返事がないのは慣れちゃったけど。
「ただいま……あれ、この靴って」
「リサお客さんよ」
ある筈のない二組の靴に頭が混乱したままリビングに向かうと――
「やぁ、お邪魔しているよ子猫ちゃん」
「お帰りなさい、リサちゃん」
ソファに腰掛け優雅に麦茶を飲む薫と千聖、放たれるオーラに自分の家とは思えなくなってくるよ。
「お久しぶり~、もしかしてアタシの誕生日祝い?」
「勿論さ、私からはリサに相応しいピンクの薔薇を八本」
「私からは最近気に入っている紅茶の茶葉よ」
「えっ、ありがとう!」
思いもよらないプレゼントに頬が緩むのを止められない。
忙しそうな二人と会えただけじゃなくて素敵なサプライズまで……あー、嬉しいな♪
少しの雑談の後、二人は仲良く? 帰っていった。
千聖の容赦ない言葉も薫との奇妙な信頼関係の上で成り立っていると思うと微笑ましいね♪
やっぱり時代は幼馴染かも……。
「御用改めです!」
「イヴさん使い方が違いますよ!」
「うわー、まさかの追いサプライズか~」
夕食後くつろいでいると玄関のチャイムが鳴り、開けたらそこにはイヴと麻弥が。
またしても意表を突かれたけど凄く嬉しい。
「センスが大事といわれたので私からは扇子です」
「お、イヴらしいね。使い勝手も良いから夏にはピッタリだし……あれ、どこかの家紋?」
「はい! 今井家といえば茶人今井宗久、今井宗薫。その家紋『井桁に花菱』の花菱は由緒ある甲斐武田家の――」
「ストーップ! イヴさん、リサさんが唖然としていますよ」
「う~、失礼しました……」
「あはは、ありがとねイヴ♪ お、麻弥からは音楽用品?」
「はい、ベースのメンテ用にジブン一押しのオイルやクリーナーの詰め合わせです」
「丁度欲しかったんだ。絶対上手くなるからね♪」
「フヘヘ、その意気っス!」
「流石はリサさん、マヤさんです!」
二人からもアタシへの温かい思いを感じたよ。
選んだ物は全然違うけど両方とも二人が一生懸命選ぶ姿が目に浮かぶよう。
アタシも負けていられないね。
二人に残っていた誕生日ケーキをご馳走し夏休みの出来事をそれぞれ披露し合った。
麻弥はどんどん音楽関係者に認められていってるし、イヴも撮影に引っ張りだことか。
アタシは……普通の女子高生だし!
ベースだこのあるギャルだっていいじゃん♪
「ふう……あー涼しい」
お風呂上りに自室でさっそくイヴからもらった扇子で仰ぐ。
長時間仰いだら疲れそうだけど、それもまた修行なのかも。
変な事を考えながらもスマホをチェック……メールは無いか。
これで友希那から一言でもあれば、なんて欲張りだよね。
カーテンの向こう、数メートル先にいる筈の幼馴染の事を思う。
もっとアタシのベースの腕が上達したら前みたいに…………なんてね。
コンコン♪
「えっ!?」
ベランダのガラス戸が叩かれる音。
もしかして友希那が!?
勢いよくカーテンを開けると――
「やっほー、リサちー♪」
「日菜かよっ!?」
「リサさん、ナイスツッコミ」
ノックの主は日菜、横には何故かワンコも。
……あー、思いっきり素で突っ込んじゃった。
「で、普通に不法侵入なんだけど?」
「氷川さんが絶対リサさんが喜ぶからって」
「おかしいなぁ? あたしの計算だと喜んでハグしてくれる筈だったのに」
「はぁ……」
とりあえず二人をアタシの部屋に入れて床に正座させてベッドに腰掛ける。
この二人が羽丘一年の学力ワンツーだと思うと溜息しか出てこないよ。
「はい、あたしからは必殺アロマオイル。寝る前に使うと見たい夢が見れるよ、多分」
「見たい夢……」
文字通り夢のような言葉に喉が鳴る。
……神様、仏様、日菜様!
早速使わなきゃ♪
「私からは……猫模様の便箋と封筒」
「……意外とファンシーなプレゼントに驚きを隠せないアタシであった」
「真顔で言われると困るけど一応私も女の子なので」
「あはは、ごめんごめん♪」
少し不満そうなワンコの頭を撫でたら日菜にも要求された。
ぶっ飛んでるこの二人だけど意外と可愛いんだよね~♪
お説教は短めにしてあげようかな?
「あれ、スマホが光ってる」
二人を玄関で見送ってから部屋に戻るとスマホが点滅していたので確認すると――
『おめでとう』
……あと一分で誕生日が終わっちゃうのに、遅いんだから。
さっそく便箋と封筒の出番かな♪
●X時間前
「二人とも突然の招集に応じてくれて感謝しているよ」
「フヘヘ、ジブンも演劇部の一員ですから」
「私も……幽霊部員?」
夏休みも残すところ後僅かという日に瀬田さんに呼び出されてみれば演劇部のお手伝い。
諸々の事情で人手が足りなくなったという事で大道具作りに精を出した。
嫌いじゃないから別にいいけど。
そんなわけでパン屋と質屋のバイトは今日はお休み。
「この後千聖と一緒にリサに誕生日プレゼントを渡しに行くが一緒にどうかな?」
「「!?」」
麻弥さんと顔を見合わせる――誕生日を忘れるどころか聞いた事すらなかった。
「どどど、どうしましょう!?」
「何を渡せばいいか思いつかない」
友人に誕生日プレゼントを渡した記憶がない人間になんという難問。
夏休みの課題の方がよっぽど簡単だ。
……持ち合わせもそんなに無いし。
「困った子猫ちゃん達だ。『輝くもの、必ずしも金ならず』つまりそういうことさ」
「成程、分かりました! 早速買いに行きます」
えっ、麻弥さん凄い。
私は――っと電話か、相手はイヴちゃんか。
用件は――
「……麻弥さん、ちょっとお願い。イヴちゃんもリサさんにプレゼント渡したいみたいだから一緒に行ってあげて」
「了解です」
うん、ここは波状攻撃でいかせてもらおう。
私がプレゼントを選ぶ時間を稼ぐ為に。
「……難しい」
ショッピングモールを物色するもこれといったものが見つからない。
衣類はファッションセンスのない私には選べないので却下。
同じ理由でコスメ・小物類も却下。
花は瀬田さん、紅茶は千聖さんが渡すと言っていたので却下。
日持ちするスイーツあたりなら……一旦保留。
「あ、ワンコちゃん!」
ぬいぐるみはちょっと重いかも。
「無視しないでよ!!」
「ぐふっ!?」
背中に強い衝撃を受けたけど何とか踏み止まる。
殺意なき一撃とかやってくれる。
「……って氷川さん?」
「おひさ~♪」
神出鬼没の野良猫か……そう言えばリサさんの仲直りしたがっている幼馴染って猫が好きだったっけ?
一か八か賭けてみるか。
「ありがとう、氷川さん」
「え、ああ、うん、どういたしまして」
私の言葉に急に大人しくなる氷川さん、まあいいか。
羽丘で初めてできた友達の誕生日、心を込めて祝いに行こうか。
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<備考>
今井リサ:便箋にびっしりと思いの丈を。
瀬田薫:羽丘トップクラスの王子力と女子力。
白鷺千聖:あくまでも迷わない為よ。
氷川日菜:星を見に行ったりアロマの素材を集めたり。
湊友希那:今日はやけに騒がしいわね、あらそう言えば。
ワンコ:来年は頑張る。
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