犬も歩けば棒に当たる   作:政影

84 / 99
シーズン1羽丘生徒会のブラック疑惑。


本編4-3:生徒会出撃せよ(シーズン1夏)

「では夏休みだからといって羽目を外さないように」

 

 担任の先生の言葉を深く胸に刻み夏休みに突入。

 長期連休は生活のリズムが乱れがちだから規則正しい生活と規則正しい労働を。

 稼げる時に稼ぐのが私の主義、湊家にお世話になっていても譲れない。

 

「ジブンこれから仕事なのでお先に失礼しますね」

 

「うん、頑張って」

 

 足早に教室を後にする麻弥さん。

 廊下で日菜ちゃんが手を振っていたので振り返す。

 人気急上昇中のパスパレ、夏休みの間も忙しそう。

 ……またお泊りしたいな。

 

「ワンコはこの後どうするの?」

 

「ちょっと生徒会の方に顔を出しておこうかな」

 

 一時期つぐみちゃんに仕事が集中して大変そうだった時には手伝ったけど最近はあんまり。

 つぐみちゃんの様子がおかしかったら教えてと蘭ちゃん達にはお願いしてあるけど……。

 

「そう。なら私も行こうかしら」

 

「友希那が!?」

 

 当然のように友希那さんの横に立っていたリサさんから驚きの声が上がる。

 馴染みすぎ……というかいつの間に入ってきたのか謎。

 

「ワンコの仕事ぶりを見たくなったの」

 

「うーん、仕事あるのかな?」

 

 

 

 

「あっ、ワンコさん丁度良かった。手伝ってください!」

 

「う、うん?」

 

 ノックをしたけど返事がなかったので扉を開けて生徒会室に入ると修羅場の様相を呈していた。

 いつの間にか増設された電話機で電話を掛けていたり、書類を作成していたり、ヒートアップしながら打ち合わせをしていたり。

 てっきり夏休み突入で一段落だと思っていたのに……お、Afterglowの他のメンバー達も手伝ってる。

 

 そんな喧騒の中、興奮気味なつぐみちゃんの言葉に気圧された。

 

「リサ先輩に友希那先輩まで連れてくるなんて流石ワンコさんです!」

 

 このツグり具合、休日のランチタイム以上かも。

 イヴちゃんよりもテンション高いし。

 頼もしさと危うさが混在した状態。

 

 でも……ワクワクしてきた。

 

 

「お願いしたいのは――」

 

 

 つぐみちゃんの話を要約すると現在行われている各部活の夏の大会で、運動部文化部問わずどの部も予想以上に健闘中だとか。

 地区大会を勝ち進み本大会へ駒を進める部活がたくさんありそこで問題になってきたのが遠征費。

 関東近郊で個人種目なら可愛いものだけど、本大会が関西で集団競技だったりすると……。

 というわけで急いでOGやら関係者やらに電話で緊急寄付のお願い。

 連絡先が電話番号しかない人も多いので仕方がない。

 生徒会役員の上級生達は毎年多額の寄付をしていただいている方の御宅に出向いているので、ここの指揮はつぐみちゃんが執っているとか。

 ……入学して一学期しか終わっていないのに三学年統率とかやべー。

 

「ワンコさん、リサ先輩にはこちらの名簿に電話をお願いします。プロフィールと過去の寄付履歴はそこのパソコンで見れるのでご参考に」

 

「うん、了解」

 

「オーケー♪」

 

 うわ、もろに個人情報。

 それだけ信頼されているってことか。

 可愛い後輩の前で無様な姿は見せられない。

 

「友希那先輩はお礼状を三つ折りにして封筒に入れてください。折る時は定規で測って空き缶で奇麗に折り目を付けてくださいね」

 

「分かったわ」

 

 あれはRORSIAアックスコーヒーの空き缶、友希那さんが使うのには打って付け。

 きっと大丈夫……多分。

 

「湊さん、教えてあげましょうか?」

 

「あら、美竹さんもいたのね。よろしく頼むわ」

 

「えっ…………調子狂うよ」

 

「?」

 

 軽く挑発するつもりで素直な友希那さんに面食らった蘭ちゃん、うちのリーダー可愛いでしょ?

 これで友希那さんの方は大丈夫。

 

「素直な友希那も素敵……キャッ♪」

 

「リサさん戻ってきて」

 

 恍惚とした表情のリサさんの肩を揺さぶり現実世界へ連れ戻す。

 気持ちは分かるけどもう少し自重してほしい。

 

「ゴメンゴメン、それじゃあアタシらも始めようか」

 

「うん、二年生の実力を披露しよう」

 

 羽丘の看板を背負ったお願い電話、バイトで培った技術がどこまで生かせるかな?

 

 

 

 

 

 

「――はい。よろしくお願いします」

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 

 フックを押してからゆっくり受話器を置くと同時に下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。

 ……あれ、気付けば見慣れたRoseliaとAfterglowのメンバー達しかいない。

 つぐみちゃんが出してくれたインスタントコーヒーとお菓子が結果的に昼飯代わりに。

 

 戦果は……多分上々。

 進学校だけあって稼いでいる人もそれなりにいるのが幸いした。

 ネット入金で手間いらず。

 平日の昼間に電話なのでアポ電詐欺を何回か疑われたけどそこは腕の見せ所。

 逆に防犯や熱中症の注意喚起をしてみたり。

 

 

「あはは、熱中しちゃったね~♪」

 

「流石Roseliaの皆さんですね!」

 

 良い笑顔のリサさんと巴ちゃん、他の人はというとつぐみちゃんとひまりちゃんはぐったりでモカちゃんは夢の中。

 友希那さんと蘭ちゃんは封筒の山の横で何やら書き物をしている。

 

「やりますね」

 

「美竹さんの歌詞も熱が伝わってくるわ」

 

 ああ、二人とも仕事が終わったから作詞をしてたのか。

 やりきった表情の二人、歌詞が楽しみ。

 私のことも書かれていたら嬉しい。

 

「……すみません、こんな時間まで」

 

「つぐみちゃんもお疲れ様。この後予定がなければみんなでファミレスでも行かない?」

 

「そうですね……是非♪」

 

 ここで羽沢珈琲店を選ぶとつぐみちゃんの気が休まらなそうなので。

 たまにはファミレスもいいよね。

 

 

 

 

「先輩方もみんなも今日は最後まで本当にありがとう……乾杯♪」

 

 つぐみちゃんの乾杯の音頭でソフトドリンクが入ったグラスを軽く当てる。

 数年後には中身がアルコールになっているかも。

 

「今日はつぐみちゃんの活躍が見れて良かった」

 

「うんうん、つぐみ会長って感じだったしね~♪」

 

「生徒会の活躍が見れて良かったわ」

 

「……えへへ」

 

 私達の言葉に顔を赤くするつぐみちゃん。

 こういうところには初々しさが残っていて少し安心。

 

 

「まー元はと言えば先輩方が発端なんですけどね~」

 

「モカ!」「モカちゃん!」

 

 モカちゃんの言っている意味が分からず首を傾げる。

 

「どういうこと?」

 

「悪い意味に捉えちゃったらごめんなさい。ワンコ先輩が入院中の出来事なんですけど――」

 

 

 私が入院している間に部活間でいざこざがあって、生徒会がそれの仲裁に乗り出したけど担当の一人がつぐみちゃんだった。

 一年生なので中々話を聞いてもらえず困っていたところ助けに入ったのがなんと日菜ちゃん。

 持ち前の才能を発揮して相手の得意種目でフルボッコ……文字通り実力で黙らせて問題解決。

 

「それじゃあ日菜ちゃんがかなり恨み買ってない?」

 

「そこは同じクラスのリサさんや薫先輩が上手い具合に収めたって聞きました」

 

「そうなのリサ?」

 

「うーん、アタシは薫のサポートをちょっとしただけだからね」

 

 曖昧な笑みを浮かべるリサさん……いや、かなり助けになってそう。

 日菜ちゃんも薫さんもたまに言動がアレなので。

 でも二人が事後処理をしてくれたなら一安心。

 残る問題は。

 

「まー、そのお陰各部活が発奮して好成績を収めているんで結果オーライなんですけどね~」

 

 含みのある言葉。

 でもモカちゃんにしか言えない言葉。

 本当に一見可愛げのない可愛い後輩なことで。

 

「ワンコ先輩がいなくなった途端問題が起きるなんて……ソイヤの風上にも置けねえ!」

 

「つぐの困った顔なんて見たくないよ~」

 

 怒りが抑えられない巴ちゃんと泣きそうな顔のひまりちゃん。

 

 大事な幼馴染が辛い目にあえば当然の反応。

 ああ、モカちゃんの言う「先輩方」ってここにいる私達三人じゃなくてもっと大きな意味か。

 わざと紛らわしい言い方を。

 

「……ワンコ先輩、あたし達の目の届かないところでつぐみが傷つくのは嫌なんです」

 

「蘭ちゃん……」

 

 蘭ちゃんの真剣な眼差しとつぐみちゃんの潤んだ瞳。

 頼りにされたら応えるしかない。

 前に「頼って」とか言ったこともあるし。

 

 チラッと友希那さんを見ると微かな笑み。

 以心伝心、だと自惚れていいかな。

 

 

「先代会長の少数精鋭主義の踏襲で最低限の人数しかいない現状、ひっくり返してみる?」

 

 

 私の言葉に期待の眼差しを向ける面々。

 現会長との仲はアレだけど直談判でもしてみるか。

 嫌な顔をされようがつぐみちゃんの為にもこのまま黙っていることはできないから。

 

 

 

 

「今日は色々すみませんでした」

 

「ううん、手助けになれたら良かった」

 

 ファミレスの女子トイレでつぐみちゃんと二人きり。

 普通の女子っぽい。

 去年だと私がトイレに入った途端に雑談中の女の子達が怯えた顔で逃げ出した記憶が……。

 

「……モカちゃんのこと誤解しないでくださいね。普段はあんな態度――」

 

「大丈夫、気難しい猫の相手は慣れてるから。それに友達思いの幼馴染は素敵」

 

「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいです……あっ!」

 

「おっと」

 

 日々の疲れが出たのかふらついたつぐみちゃんを抱きとめる。

 

 軽い、そして華奢……生徒会や実家の手伝いや町内会の仕事、そしてバンド。

 

 本人が好きでやっている以上、余計な口出しは控えたいけど……。

 

 

「私、いえ私達が間違えそうになったらリードを引っ張ってくださいね♪」

 

 私の不安を払拭する力強さと引き込まれそうになる艶めかしさを併せ持った瞳。

 三日会わざれば何とやら、全く誰の影響やら。

 

「うん、任せて」

 

 私もうかうかしてられない、かも。

 

 

 それにしても今日のつぐみちゃんっていつにもまして良い匂い。

 思わず抱きしめて貪欲に匂いを求めてしまう。

 …………やべー。

 今度バイト終わりにも嗅がせてもらおう。

 

 

 

 ガチャ

 

 

 

「紗夜さん!?」「あ、紗夜さん」

 

 トイレの入り口から現れたのはまさかの紗夜さん。

 うーん、つぐみちゃんを抱きしめて匂いを嗅いでいる今の姿は流石にまずいかも。

 

「さ、紗夜さんこれは違うんです!」

 

「そうそう、私がつぐみちゃんの魅力的な体臭を堪能しているだけ」

 

「変な言い方しないでください!!」

 

「………………」

 

 必死に弁解する私達を無視して個室に入る紗夜さん。

 

 つぐみちゃんと頷きあい個室の壁に耳を当てると、小声で『風紀』と連呼している様子……怖っ。

 

 

 

 一緒に来ていた燐子さんと彩さんの席に山盛りのポテトを持っていきその場は乗り切った、と思う。

 

 後は……氷川邸につぐみちゃんを送り込んだら許してくれるかな?




感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。


アンケートにご回答をお願いします。


<備考>

羽沢つぐみ:小さくツグる→大きくツグる。

青葉モカ:積極的に動く。

今井リサ:友希那の世話にワンコの穴埋め。

氷川紗夜:混ざりたいという葛藤を鋼の自制心で抑えつけた。

ワンコ:奇行も忌避される原因。

偶然出会ったのは?

  • ボーカル組
  • ギター組
  • ベース組
  • ドラム組
  • キーボード+DJ組
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。