犬も歩けば棒に当たる 作:政影
今年もよろしくお願いします。
真冬に真夏の話は書けなかったので。
その他-12:初夢(シーズン1冬)
「――起きて、ワンコ。起きて」
「う~ん、ちょっと待って」
聞きなれた大好きな声に意識を覚醒させ体を伸ばす。
――あれ、何だか違和感が。
とりあえず目を開けるとそこには艶やかな薄紫色の毛並の美猫さんが。
このパターンは――
「もしかしなくても友希那さん?」
「そうよ。毎回夢に出てくるなんてそんなに私の事が好きなのかしら?」
猫の姿をしていても分かる悪戯っぽい笑顔。
どんな姿になっていても可愛いんだから。
「うん。なのでモフモフさせて……あれ?」
友希那さんを撫でようと差し出した自分の手に違和感。
毛深い上に肉球があったりする。
「ふふっ、ワンコもわーんちゃんになっているわ」
「!?」
急いで首を回らせば黒い毛並。
それに視界に違和感……犬の鼻か!
優しく手、いや前足で触ると確かに自分のものだという感触がある。
「分かったかしら?」
「うん。で、なんで友希那さんは私の毛を舐めてるの?」
「仕方ないでしょ。グルーミングは猫の習性なんだから」
ペロペロというかゴシゴシ。
不快ではないけど少しこそばゆい。
親愛の証だと思えば悪い気はしないけど。
気の済むまでさせてあげよう。
「待たせたわね」
「満足できたみたいで良かった」
友希那さんの唾液で少し湿ったけど彼女が満足げな表情なので私も嬉しい。
普段表に出てこない無意識に隠している感情だったりして。
「で、この後はいつも通りRoseliaのみんなを探せばいいのかしら?」
「多分」
どういうわけか私、というか私達の夢は全員集合すれば目を覚ますパターンが多い。
夢の続きは現実で何とかしろってことなのかな?
「それじゃあ、行くわよ」
「うん、了解」
子猫と大型犬の珍道中。
さてはてどうなることやら。
「友希那~♪」
「きゃっ……もう、リサったら急に飛び出してこないで」
「ゴメン、ゴメン♪」
草むらから飛び出してきたのは野生のリサさん、じゃなくて茶色の兎。
どう考えてもリサさんだけど。
兎が猫を組み敷いているのって下剋上過ぎる。
「リサ……ごめんなさい」
「えっ!?」
友希那さん(猫)が謝罪の言葉を口にしたらと思ったらリサさん(兎)を振りほどき耳に噛みついた。
「甘噛みしちゃらめぇー!」
「ふふっ、兎になっても耳が弱点のようね」
「そんなこと言われたって~」
「友希那キャットはアグレッシブなのよ」
……私は何を見せられているんだろう。
ただの猫と兎のじゃれ合いにはどうしても見えない。
とりあえず二人とも楽しそうで良かった。
「はぁ……はぁ……友希那……激しすぎ」
「猫だから仕方ないわ」
満足したのかリサさん(兎)を解放し、しれっと自分の前足を舐めている。
その姿は完全に猫だ。
「リサさん、お疲れ」
「……あっ、黒犬の方はワンコか」
「この扱いの差」
「しょうがないじゃん! 友希那にあんなに激しくされたら……」
自分で口にして赤面するリサさん(兎)……面白い。
「冗談。次は私がリサさんを」
「えー、私もー」
「誰?」「誰っ!?」
聞いたことのある声に振り向けば兎がもう一羽。
この不思議な雰囲気の兎は――
「たえちゃん?」
「おー、流石ワンコ先輩」
どうやら当たったみたいだ。
兎関連だと兎ピアスのリサさんと兎大好き花園ランドのたえちゃんのイメージが強い。
「たえちゃんも兎なら別にリサさんを可愛がらなくても」
「可愛い兎がいたら愛でるのが花園家の掟です」
「そっか、じゃあしょうがないね。お先にどうぞ」
「え、アタシの意思は!?」
夢の恥はかき捨てって言うし……言わないか。
まあ年下のお願いだから仕方ない。
「……ワンコ、起きたら覚悟してよ?」
「まあまあ」
「落ち着きなさい、リサ。それに収穫はあったでしょ?」
「……一応」
新たな兎を求め私達と別れたたえちゃん。
別れ際にお礼としてビニール袋に入った茄子をくれた。
多分自然分解する袋だから無料。
「これが初夢だとすると後は富士山と鷹かな?」
縁起の良い一富士二鷹三茄子。
四以降もあった気がするけど忘れた。
「そうね」
「その前に残り三人を見つけないと」
目標が定まれば後はそれ目掛けて邁進するだけ。
私達Roseliaにとってはいつもの事だ。
「さあ、先に進むわよ」
「…………紗夜、あなた何をしているの?」
「ち、違うんですこれは!」
歩き始めて少し、直ぐに紗夜さんらしきアイスグリーンの狼っぽい犬が見つかった。
……ポテトフライを咥え、前足がくくり罠に嵌った状態で。
恋は盲目、色気より食い気。
「あはは、ポテト好きすぎでしょ♪」
「とりあえず外すのでじっとしてて」
「…………すみません」
「っと、外れた」
「ありがとうございます」
犬の手なので大分手こずったけれど何とか解除完了、夢補正万歳。
舐めて確かめてみたけど紗夜さんの前足に異常が無いようで何より。
でも、何故か紗夜さんはモジモジと。
「……迷惑ついでに……お尻の匂いを嗅いでもよろしいですか?」
「紗夜っ!?」
「そんな願望があったのね」
「い、犬の習性です! 決して現実でそんなことを願っているわけではありません! そもそも犬の肛門には――」
赤面して早口で犬の習性についてまくし立てる紗夜さん。
流石に可愛そうなので紗夜さんにお尻を向け尻尾を立てる。
「犬の散歩をしてれば割とよくあることだから別にいいよ」
「ワンコさん……ありがとうございます!」
クンクンと紗夜さんが私のお尻の匂いを熱心に嗅ぐ。
たまに鼻息がこそばゆい。
もし今おならしたら……頑張れ私。
基本的には初対面の犬の情報を得る為にすることだった気がするけど……彼女の名誉の為に黙っておこう。
「ふぅ……ありがとうございました」
「満足した?」
「はい。では次はワンコさんの番ですね」
「えっ」
紗夜さんがお尻を向け尻尾を上げた。
そしてチラチラと期待に満ちた視線を送ってくる。
友希那さんとリサさんは生暖かい目で見守って……絶対楽しんでる。
特にリサさんは先程の仕返しとばかりに。
でも……私も女だ。
覚悟を決めて犬としての責務を全うしよう。
「さーて、次は誰が出てくるかな~♪」
「ええ、楽しみですね」
「はしゃぎ過ぎよ、二人とも。ふふっ」
上機嫌の三人の後を首に茄子の入ったビニール袋をぶら下げて歩く私。
人間として大事なものを失った気がする、夢だけど。
結構惹かれる匂いだったのが逆に辛い。
「あれ、なんかこっちに向かって飛んできてない?」
「本当ですね」
「流れからして鷹かしら?」
「でも黄色くない?」
黄色い鷹ってまさか――
「ワンコー!」
「こころちゃん!?」
こころちゃん(鷹)の体当たりを仁王立ちになり何とか受け止める。
流石四年連続日本一の威力、ただの犬だったら吹き飛ばされてた、流石私。
「慌ててどうしたの?」
「燐子が全然起きないの! これじゃあ遊べないわ!」
流石こころちゃん、展開が早い。
「あれってパンダだよね?」
「パンダですね」
「パンダね」
「燐子さん……立派になって」
「ね、燐子でしょ?」
こころちゃんの案内で先に進むと燐子さん(パンダ)が大の字になって眠っている。
いつもの小動物のような繊細さを微塵も感じさせない王者の風格。
普段でもこうだったら……あこちゃんを中ボスに押しやるラスボス感が。
「全然起きないのよ」
こころちゃんの羽が飛び散るくらいの勢いで叩いても目を覚まさない燐子さん。
流石に噛むわけにもいかないしどうすれば。
「あ、お姫様は王子様のキスで目を覚ますよね?」
「それよ、リサ! 絵本にもそう描いてあったわ!」
「となると」
「ワンコでいいんじゃない?」
「女子度を否定された上に投げやり感が酷い」
拒否権があるわけでもないのでリーダーの指示通り燐子さんに近づく。
まあ夢だし……いいよね?
寝ている燐子さんの横に行き口付けを……犬の構造上人間のようにはし辛い。
こころちゃんの前だし軽く触れる程度許してもらおう。
チュ♪
傍から見れば犬とパンダの軽い口付け、の筈だったけど――
「!」
「!?」
いきなり燐子さんの舌が私の閉じた口を割り中へ。
そして私の舌に絡みついてきて――
「キスってこんなに激しいものなのね! 今度美咲に試してみるわ!」
「友希那~」
「全くリサは欲しがりさんね」
「…………羨まし、はっ、破廉恥です!」
外野は何やら盛り上がっているようだけど私は逃れるのに必死。
笹食いで鍛えた舌に燐子さんのテクニックがユニゾン。
自分でも何を言っているのか分からないけれど油断すれば蹂躙される。
……夢の中で何やってるんだ私?
「……ご迷惑……お掛けしました」
「目が覚めて良かった」
何とかしのぎ切ったものの疲れ果てた私は燐子さん(パンダ)に膝枕してもらっている。
我ながらユニークな光景。
「弦巻さんが落としていった鷹の羽が手に入りましたので最後は富士山ですね」
「富士山は……あの山かしら?」
「うっひゃー! 結構距離あるよ!?」
遠くにそびえ立つ雪化粧の富士山。
前に登山した時は…………夢の中でリベンジとはね。
流石にゼロ合目スタートは勘弁してほしいけど。
「五合目行きのバスなら……そこの停留所から……」
……夢は便利。
「もー、遅いよー!」
「ごめん、あこちゃん」
「ごめんね……あこちゃん……」
富士山五合目で待っていたのはあこちゃんだった……姿はユキヒョウだけど。
「その姿ってもしかして」
「えへへっ、多分この前新宿のファッションビルで買った服の影響!」
ガールズバンドとコラボしてたやつだっけ。
あこちゃんに良く似合ってる耳・尻尾付きのコート。
実年齢より若く見えるあこちゃんにはとても似合っていたりする。
「まさに雪山の支配者感」
「格好良いよ……」
「ありがとう♪」
私の言葉が嬉しかったのか長い尻尾をマフラーのように首に巻き付けてくれた。
……とっても暖かいよ、これ。
そう言えば残りの三人は――
「寒いわ」
「野生の兎じゃないんだからむーりー」
「私も室内犬ですので」
バスから降りてこない。
意外なRoseliaの弱点。
まあ寒いと演奏も難しいから仕方ないか。
てっきり登頂すれば夢から覚めると思ったんだけど……どうしたものか?
「ワンコ先輩、暖かくなればいんですよね?」
「うん。何か方法が?」
「えーっと、おねーちゃん顕現せよ!」
「!?」
いきなり吹雪に見舞われたと思ったら直ぐに止んだ。
そしてそこには数十体の巴ちゃんを模した雪だるまが整列。
「ソイヤ!」
『ソイヤ!!』
あこちゃんの掛け声と共にジャンプして着地、それにより起きる地響き。
「まさかこれって」
「活を入れたら温泉が湧き出るかと思って♪」
あこちゃんが言い終わるのと同時に立っていられないほどの振動。
ツッコミを入れる暇もなく私達は湧き出たマグマに飲み込まれた。
「まさかのデッドエンド!? ……あ、夢か。というか足が熱い」
どうやら炬燵に足を入れたまま寝落ちしていたらしい。
そういえばRoselia全員で私の部屋で夜更かしをしていたっけ。
過去の事、今の事、未来の事、中々話題は尽きなくて。
時刻は……零時を過ぎてるから一月二日か。
ということは今のが初夢?
……途中までは良かったけど流石にオチが酷い。
「熱い……」
「う~ん、う~ん」
「ひにゃ……」
「助けて……」
「ソイヤー」
あー、何かの拍子で炬燵の温度調節ツマミがマックスになってる。
先ずは電源を切って、と。
後は五人を起こさないように布団に寝かさないと。
まだ夢の中ならいい夢にできるかも知れないし。
さあ悪夢からの大逆転、決めちゃいますか。
感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。
<備考>
湊友希那:人間時より運動能力は高い。
今井リサ:愛され系。
氷川紗夜:本能と理性が喧嘩。
白金燐子:策士。
宇田川あこ:魅惑の尻尾。
ワンコ:脱ぼっちで幸せ。
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