犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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最新話が一番下に来るようにした方が読みやすいでしょうか?


その他-13:初売り(シーズン1冬)

 飛び交う咆哮、迸る血潮、そして乱れ舞う紙幣。

 

 飢えた獣の博覧会、百花繚乱の夢舞台。

 

 年の初めの総力戦……そんな戦場、初売り中のショッピングモールに私はいる。

 

 

 

「お待たせ―、見事ゲットしたよ♪」

 

「おめでとう」

 

 両手に買い物袋を提げてご満悦のリサさん。

 既に私の足元にはたくさんの戦利品、また増えた。

 壁際に立っているので通行の邪魔にはなっていないけど、これ以上増えたらこの限りではない。

 

「お財布は大丈夫?」

 

「勿論♪ 二人と一緒に勉強してたら期末試験で自己最高位! お年玉も増額ってわけ」

 

「なるほど」

 

 勉強嫌い、というか基本的に赤点を回避すれば良いというポリシーをお持ちの友希那さんを、二人と一匹で監視した余波がそんなところに。

 ……一石二鳥?

 

「あれ、友希那は?」

 

「待ちくたびれたから本屋に行ってくるって」

 

「うーん、初売りのこの人混みで大丈夫かなぁ?」

 

「スマホ持ってるし流石に……多分大丈夫、きっと、恐らく」

 

「そ、そうだよね……」

 

 リサさんと各々微妙な表情で顔を見合わせる。

 良くも悪くも予想の斜め上の行動をするのが我らがリーダーだし。

 花音さんレベルの迷子ではないけど気付くといないことも少々。

 

「ところでワンコにお願いした分は全部買えた?」

 

「うん、ミッションコンプ」

 

 少し得意げに依頼された戦利品を指差す。

 リサさんの目利きを必要としない福袋、それなら私でも買い回れる。

 事前に紗夜さんや燐子さんと攻略法を考えたのも大きいけど。

 モールにあるバイト先から入手した人の流れのデータと店の位置と販売量、後は私の身体能力で何とかできた。

 二人には何かお礼をしないと。

 

「ありがと♪ お礼に似合いそうなのがあったらあげるから」

 

「私より友希那さんを着飾ってあげて」

 

「大丈夫、そっちはちゃんと別に確保してあるから♪」

 

「流石」

 

 相変わらず友希那さんラブを発揮していて心強い。

 リサさんの所為で友希那さんのクローゼットは満員御礼だけど。

 

「ワンコの方は買いたいもの無いの?」

 

「うーん、特に無いかな」

 

 身の回りで不足しているものは無いし、これといって欲しいものも。

 衣服は湊夫妻が面白がって色々買ってくれるので実は供給過多。

 

 友希那さんとユキと合わせて三姉妹コーデは流石に恥ずかしかった……。

 

 

 

 

「あ、ワンコ先輩!」

 

「ちょ、香澄!」

 

 リサさんがお手洗いに行ってすぐポピパの香澄ちゃんと有咲ちゃんに話しかけられた。

 相変わらず良いコンビっぷりを発揮している。

 問答無用で抱き着いてくるのも慣れているので、星形の髪型を崩さないように頭を軽く撫でる。

 

「お、香澄ちゃんも有咲ちゃんも初売り狙い?」

 

「はい! お目当てのコレも買えました♪」

 

 香澄ちゃんが首から下げた星の付いたペンダントを本当に嬉しそうに見せてきた。

 香澄ちゃんの大好きな星、だからそんなに――

 

「有咲とお揃いで買ったんですよ!」

 

「ほほう」

 

 有咲ちゃんの方を見ると真っ赤になって胸元を押さえている。

 しっかり付けているみたい。

 ……付けるまでに恥ずかしさで一悶着あったのが窺い知れる。

 

「有咲ちゃん」

 

「な、何ですか?」

 

「並んでるところスマホで撮るからペンダント出して」

 

「はぁ!?」

 

「流石ワンコ先輩! 有咲~早く~」

 

「だー、分かったから人前で抱き着くな!!」

 

 真冬なのに真夏のような熱々っぷり。

 おずおずとペンダントを胸元から取り出す有咲ちゃんが初々しい。

 

 そして撮影の瞬間に香澄ちゃんが有咲ちゃんの頬にキスをキメてやべー画像ができあがってしまった。

 

「香澄っ!!」

 

「え~、あっちゃんにはいつもしてるし有咲にだって――」

 

「それ以上喋るな!」

 

 ……うん、聞かなかったことにしよう。

 さっさと二人に送らないと。

 

「くしゅん! ……あっ」

 

「『あっ』って何ですか!?」

 

「ごめん、ガールズバンドのグループに送っちゃった」

 

「はぁ!?」

 

「も~、ワンコ先輩ったらおっちょこちょいなんだから~」

 

 途端に鳴り出す三人のスマホ。

 

 三人ともそっと電源を切った。

 

 

 

 

 

 

「お、ワンコさん!」

 

「ワンコ先輩、さっきの画像見ましたよ♪」

 

 足早に去っていったポピパの二人と入れ替わるように、今度はAfterglowの巴ちゃんとひまりちゃんが登場。

 巫女仲間の巴ちゃんは自慢の筋肉を生かして大量の荷物を抱えている。

 実に男らしい、ん、何か違ったか。

 

「それってひまりちゃんの?」

 

「はい。ひまりったらあれもこれも欲しいって」

 

「だって~。ワンコ先輩の方こそ大量じゃないですか」

 

 ひまりちゃんに指を差された大量の荷物。

 

「いや、どう見てもワンコさんのじゃないだろ」

 

「そうだよね。明らかに買わなそうな店の袋だし」

 

 分かってらっしゃる。

 

「そうそう、全部リサさんの」

 

「……お互い大変ですね」

 

「お姫様から頼りにされるのも誉ってことで」

 

 同じ境遇に親近感が湧く。

 まあファッションセンスは雲泥の差だけど。

 

「きゃー巴、お姫様だって!」

 

「はいはい、とっとと買い物済ませてラーメン屋に行こうぜ」

 

「もー分かったってばー。あ、ワンコ先輩、私達も有咲みたいに撮ってもらえますか?」

 

「任せて」

 

 ひまりちゃんからスマホを受け取り撮影体勢に。

 おー、背伸びしたひまりちゃんが巴ちゃんの肩に頭を乗せ満面の笑み。

 巴ちゃんも心持ちしゃがんでいるあたり息もぴったり。

 

 これも良い画になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

「探したわよ」

 

「ふふーん、まんまるっとお見通しだよ♪」

 

 ドヤ顔の千聖さんと相変わらず珍妙なキメポーズを取る彩さん。

 お願いだから人気アイドルが目立つことしないで。

 変装ばっちりな千聖さんと違って彩さんなんか逆に目立ってるし。

 

「何か用ですか?」

 

「香澄ちゃんやひまりちゃんの画像がアップされたから私達も撮ってもらおうと思って」

 

「買い物袋と背景から場所を特定したのは私だからね♪」

 

 ガールズバンド内で謎のブームが。

 まあ、いいけどね。

 快諾して千聖さんからスマホを受け取る。

 

「彩ちゃん、令和ポーズでいくわよ」

 

「任せて♪」

 

 あー、はいはい逆ピースのあれ――

 

 

「令」「令」

 

「「和」」

 

 

「お笑い芸人の方か!」

 

 思わずツッコミを入れてしまったけど、何とか手ブレなしに撮影。

 見事に決まってるけど……パスパレの将来が不安になってきた。

 日菜ちゃんはアレだし、イヴちゃんはブシドーだし……麻弥さん、頼んだ。

 

「ち、千聖ちゃん、バランスが……きゃっ!」

 

「えっ!?」

 

 彩さんがバランスを崩して千聖ちゃんを押し倒す。

 あー、この角度だとがっつりキスして見える……もちろん撮影して先程の「令和」と一緒にアップ。

 

「全く……体幹は私よりしっかりしているのに何やってるのよ」

 

「えへへ、ごめんね♪」

 

 誤魔化し笑いを浮かべる彩さんのおでこをつつく千聖さん。

 微笑ましい光景だけど周りから注目浴びてるからね?

 

 

 

 

 

 

「あ、わーくん見っけ!」

 

「はぐみステイ! 花音さんこっちですよ」

 

「ふえぇ~!」

 

 まさかのハロハピからは三人。

 美咲ちゃんが新年早々お疲れ様になりそうな組み合わせ。

 

「わーくんに写真を撮ってもらうと良いことが起きるんだって♪」

 

「初耳なんだけど、美咲ちゃん?」

 

「……実は戸山さんペアが福引でお米一袋当てたり、上原さんペアがスイーツ食べ放題券を当てたとかで」

 

 ……偶然というか当人達の運のような。

 金額的にそこまででもないのが微笑ましい。

 

「はぐみちゃんは何か欲しいの?」

 

「ううん、みーくんとかのちゃん先輩が幸せになったらなーって」

 

「はぐみ……」

 

「はぐみちゃん……」

 

 相変わらず良い子過ぎて涙腺が緩みそう。

 天使がここにいた……少しパワフルだけど。

 

「ちゃんとこころんと薫くんも呼んだからそのうち来ると思うけど」

 

 ……うわ、カオスな予感しかしない。

 とっとと帰りたいけどリサさんも友希那さんも戻ってこないし。

 ……まさか、ね?

 

「美咲ちゃん、えっとね――」

 

「――分かりました」

 

 美咲ちゃんと花音さんがはぐみちゃんに聞こえないように小声で相談。

 ……うん、終わったみたい。

 

「それじゃあ三人寄って」

 

「は~い」「うん!」「はい」

 

 美咲ちゃんから渡されたスマホを構える。

 はぐみちゃんを真ん中にスタンバイ。

 

 

「ハッピー、ラッキー、スマイル」

 

「チュッ」「イエーイ!?」「チュッ」

 

 

 ……二人ともやるなぁ。

 天使が真っ赤になってる。

 

 思わずアップしちゃった。

 

 

 

 

 

 

「お、お待たせ……」

 

「待たせたわね」

 

「お帰り」

 

 ヨレヨレのリサさんとばつの悪そうな友希那さん。

 本屋で迷子に懐かれた友希那さんが迷子センターに行こうとしたら人混みに流されて。

 それを見かけたリサさんが頑張って……。

 更に迷子センターにいた子供達が不安そうだったから、友希那さんと一緒に笑顔に……慈愛の女神か。

 

 数十メートル先でそんな面白、大変なことが起きていたのに参加できなかったのは無念。

 年が明けたからといって浮かれていないで、気を引き締めていかないと。

 

「ワンコもワンコだよ、スマホの電源切っちゃって連絡付かないし! グループにはイチャラブ画像の投稿が引っ切り無しだし!」

 

「ごめん、操作ミスで」

 

 あー、着信がやばかったから電源切りっぱなしだった。

 そろそろつけても大丈夫かな?

 

「……ガールズバンドのほぼ全員の着歴が」

 

 特にポピパの残り三人からの着信が多い。

 有咲ちゃん、がんばれ。

 

「リサ、ワンコ、私達だけ画像が無いのは問題よ」

 

「友希那~♪ しょうがないから三人で撮ろっか?」

 

「私も?」

 

「当然よ」「勿論♪」

 

 ノリノリのリサさんと満更でもない友希那さん。

 

 それなら私も最高の表情で……。

 

 

 

 さてさて新年早々騒がしい私達、今年はどんなことが起きるのかな?

 

 ぼやぼやしてるとリードごと引き摺っていくからね。




感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。


<備考>

湊友希那&今井リサ:ファッションショーin今井邸。

戸山香澄&市ヶ谷有咲:ポピパ緊急招集でお米一袋完食。

宇田川巴&上原ひまり:ラーメン。

白鷺千聖&丸山彩:ネタ出し。

北沢はぐみ&松原花音&奥沢美咲:カレーセットが当たったので弦巻邸でカレーパーティー。

ワンコ:午後は巫女助勤。

偶然出会ったのは?

  • ボーカル組
  • ギター組
  • ベース組
  • ドラム組
  • キーボード+DJ組
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