犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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引越しが終わったので再開です。


投票ありがとうございました。

アンケート結果:

偶然出会ったのは?

(13) ボーカル組
(2) ギター組
(5) ベース組
(3) ドラム組
(14) キーボード+DJ組 ☆


その他-15:輪(シーズン2春:アンケート1位)

「本当にありがとうございました」

 

「お安い御用、かな」

 

 市ヶ谷万実さんの依頼で有咲ちゃんと一緒に流星堂の倉庫整理。

 春先とは言え午前丸々の肉体労働、軽く汗もかいたし少々疲れた。

 まあ、結構なお値段の物もあって精神的疲労の方が大きいかもしれないけど。

 

 常々体を動かすことは苦手と公言している有咲ちゃんが頑張っているのを見ると私も負けていられないと思う。

 店番も普通にこなしているし本当に立派になって……何目線だ私。

 相変わらず年下には甘い気がする。

 

 ……いや、そもそも私の周りは甘い、当然Roseliaも。

 友希那さんは香澄ちゃんやこころちゃんの無茶振りに文句を言いつつ応えているし、紗夜さんも日菜ちゃんは勿論のこと暴走しがちなはぐみちゃんやイヴちゃんの面倒も見ているとか。

 燐子さんは……少しあこちゃんの将来が心配になるレベルの甘やかし。

 あこちゃんも小学生にダークネスファイヤーなるものを教えてたから私の甘さも標準レベル、うん。

 

「シャワー浴びていきます?」

 

「ごめん、次の用事があるから」

 

 有咲ちゃんの言葉に思考を中断しこれからの予定を思い出す。

 シャワーは行った先で浴びさせてもらおう。

 

「そうですか……また今度ばあちゃんのご飯食べに来てくださいよ」

 

「うん、必ず。蔵練も見学したいし」

 

「は、はい!」

 

 良い笑顔になった有咲ちゃんに微妙に後ろ髪を引かれつつ流星堂を後に。

 ……素直で可愛い有咲ちゃんも素敵だけどキレの良いツッコミを連発する有咲ちゃんも捨てがたい。

 やっぱり「ポピパは5人でポピパ」だよね。

 

 

 

 

 

 

「ワンコ師匠!」

 

「あ、イヴちゃん」

 

 目的地を目指して気持ち早めに歩いていると仏具店の前で呼び止められた。

 

 ……え?

 

「このお店に日本文化を感じました!」

 

「う、うん?」

 

 満面の笑みを浮かべるイヴちゃん。

 確かに寺社巡りをした時もとても興奮してたけど……仏壇でもいいの!?

 ……まあ個人の嗜好の問題か。

 

「ただ……自室に置くにはお値段が少々」

 

「まあそうそう売れるものじゃないから高いよね」

 

「はい……」

 

 しょんぼりするイヴちゃん。

 お土産屋で売っている安い仏像じゃないからしょうがない。

 アイドルでそれなりに稼いでそうだけど金銭感覚が変になっていなくて少し安心。

 

 

 ……そもそもフィンランドってキリスト教だったような。

 

 

「あ、そうだ」

 

「?」

 

 さっき倉庫整理を手伝った時に廃棄予定だったので貰ったものが鞄の中に……あった。

 

「はい、檜扇」

 

「見事なヒオウギです!」

 

 その名の通り檜で作られた扇子。

 平安時代には和歌を書いて贈ったりした雅な一品。

 経年劣化で表面は剥げ落ちて解読不能だけど。

 

「私よりイヴちゃんが持っていた方がこの子も喜ぶかなって」

 

「きょ、恐悦至極!」

 

 私から慎重に受け取ると優しく胸に抱きしめる。

 ほんのり頬を染め潤んだ瞳。

 予想外の反応にちょっと罪悪感。

 

 

 ……ごめん、なんか軽率な振る舞いだった気が。

 

 

「あー、ちょっとこの後用事があるので失礼」

 

「はい! あ、そういえば──」

 

 

 

 

○有咲(檜扇)→イヴ

 

 

 

 

「ワンコさん、助けて!」

 

「あ、ミッシェル」

 

「ワンワン!」

 

 ミッシェルがリードを引きずりながら走るジャーマンシェパードに追いかけられてる。

 流石美咲ちゃん、軍用犬相手に見事な走り。

 ……じゃなくて。

 

 

「わんっ!!」

 

「っ!?」

 

 

 私の大声で動きを止めるシェパード。

 ゆっくり近付きリードを道路標識の鉄柱に縛る。

 これで一安心。

 犬の相手は慣れているので。

 

 

「す、すみません」

 

「ミッシェルは犬にも人気だから仕方ない」

 

「人間だけで間に合ってますって……」

 

 ぐったりした美咲ちゃん。

 何か元気の出るものは、と。

 

「これイヴちゃんから貰ったからお裾分け。フィンランドの有名なキャンディらしいよ」

 

「ありがとうございます。それじゃあ、私からも」

 

 人助けは気持ち良いね。

 

 

 

 

○有咲(檜扇)→イヴ(サルミアッキ)→美咲

 

 

 

 

「えーん! おかーさん、どこー?」

 

「……困ったわね」

 

 ……お次は泣いている幼女と少し困った表情の黒髪ショートクール系美少女。

 今日はよく棒に当たる日らしい。

 

「お困りですか?」

 

「泣いているこの子を見かけたので声を掛けたのですが、その……どうしていいのか」

 

「なるほど……」

 

 確かに、先ずは泣き止んでもらわないと変な騒ぎになりかねないし。

 でも初対面だし私の不器用スマイルでは荷が重い。

 

「……あ、ミッシェルだ!」

 

「えっ」

 

 少女の視線の先にさっき美咲ちゃんに貰ったミッシェル風船がぷかぷか。

 とりあえず紐を幼女の手首に結ぶ。

 

「これでミッシェルと一緒だよ」

 

「うん♪」

 

「じゃあ、あなたのお名前を教えてくれるかな?」

 

 

 

「はっぴー、らっきー、すまいる、いえーい!」「イエーイ!」

 

 何度かお世話になった最寄りの交番へ連絡したら、丁度幼女のお母さんがいるとのことだったのでおんぶして連れて行く。

 ハロハピのファンらしく泣き止んだら元気いっぱいに歌ってくれた。

 改めて思う、ミッシェル達は凄いなって。

 私も同じ着ぐるみ仲間として負けていられない。

 

 

 

 交番で親子の再会を見届け婦警さんの簡単な事情聴取を終えると外へ出た。

 

「瑠唯ちゃん、ありがとうね」

 

 改めて自己紹介したら彼女の名前は「八潮瑠唯」で今年から高校一年生ということが判明。

 落ち着いた雰囲気、気品のある態度、何となくピアノ演奏中の燐子さんを思い出した。

 

「感謝されることはしていませんが」

 

「瑠唯ちゃんがあの子の傍にいてくれたから最悪の事態が防げたって思うよ?」

 

「……そうですか、私の方こそ助かりました。でも、あの風船は良かったのですか?」

 

 あー、確かにミッシェル風船は惜しかったかも。

 まあ幼女の笑顔の為なら仕方ないか。

 

「元々貰いものだしね。経緯を話したら贈り主も喜んでもらえるから大丈夫」

 

「素敵な方ですね……では代わりと言っては何ですが」

 

 

 

 

○有咲(檜扇)→イヴ(サルミアッキ)→美咲(ミッシェル風船)→瑠唯

 

 

 

 

「ワンコ先輩、待ってました!」

 

「盛況だね」

 

 羽沢家でシャワーを借り、仕事着に着替えて羽沢珈琲店のホールに入る。

 ランチタイムも後半戦だというのに客足は途切れていない。

 午後からのシフトだったけどもう少し早めに来ればよかったかもしれない。

 

「つぐみ、洗い物を頼む」

 

「はい! ワンコさんホールの方は」

 

「任された」

 

 店長の指示でつぐみちゃんがホールから退場、後は私の戦場だ。

 伊達に二年近くバイトしているわけじゃないところを見せてあげる。

 

 

 

 頭を冷やし、耳を澄ませ、心を熱く……私のステージが幕を上げる。

 

 

 

 

「お疲れ様でした」

 

「…………毎回つぐみちゃんのコーヒーで生き返る」

 

「大袈裟ですよ。……少しは上達した自信はありますけど」

 

 いつものごとくティータイム終了と共に休憩に入る。

 バックヤードで「えっへん」と胸を張るつぐみちゃんの可愛さにむせる。

 

 Afterglowのキーボーディストとしてより存在感を増し、生徒会でもバリバリ仕事をこなし、家でもコーヒーの研究に没頭。

 

「つぐってるな~」

 

「ええ、つぐってますとも!」

 

「また倒れない?」

 

「だ、大丈夫です……多分……きっと」

 

 ……不安だ。

 周りの人も気に掛けているだろうけどそもそもその人達も多忙であることが多いし。

 

 あー、これが早速役立つのか。

 

「はいプレゼント」

 

「あ、ありがとうございます……これって!?」

 

 さっき瑠唯さんから貰った入浴剤を渡すとつぐみちゃんの顔が驚愕の極みに。

 もしかしてやべー代物?

 

「い、いいんですか!? 海外でしか買えない高級品ですよ!」

 

「いいんじゃない? それだけ喜んでくれるなら私も嬉しい。ただししっかり休むこと」

 

 

「はい! うわ~、凄いな~、紗夜さんと一緒に入ったら……きゃっ♪」

 

 

 ……喜んでくれて何より。

 

 

「はっ、そうだワンコさんに渡す物が……これです!」

 

「クッキー?」

 

「はい、私と日菜先輩で作ったんですけどちょっと作りすぎちゃって」

 

「……業務用?」

 

「……もっともな感想です」

 

 つぐみちゃんから手渡された紙袋はずっしりと重かった。

 限度を知らないのか、あのアイドルは。

 

 

「本当はもっと上手になってから渡したいみたいでしたけど……口が滑りました」

 

「了解。次作る時はこっそり呼んで」

 

「はい♪」

 

 

 私は意地悪だから、ね。

 

 

 

 

○有咲(檜扇)→イヴ(サルミアッキ)→美咲(ミッシェル風船)→瑠唯(高級入浴剤)→つぐみ(クッキー)

 

 

 

 

「お邪魔します」

 

「待って……ました……」

 

「お先にお邪魔してます!」

 

 今日の最後は白金邸。

 既に令王那ちゃんは来ており燐子さんと一緒に衣装制作に励んでたようで。

 

「進捗は?」

 

「鳰原さんから……たくさんアイデアをいただいたので……」

 

「今更かもしれませんが燐子さんって凄いんですよ! パスパレのカワイイとRoseliaのカッコイイのハイブリッド! プロ級です!」

 

「……恥ずかしい……です」

 

 令王那ちゃんの力説に顔を真っ赤にする燐子さん。

 色々あって知り合った二人だけど仲は良好そうで安心した。

 

 二人とも内に秘めるタイプだったから共感できたのかな?

 

「そうそう、これお土産」

 

「持ちますね、重っ! 何ですかこれ!?」

 

「日菜ちゃんとつぐみちゃんお手製のクッキー」

 

「ひっ、日菜ちゃん!? て、手が震えちゃいます!!」

 

「飲み物……淹れてきますね……」

 

 テンション爆上げのパレオちゃんに冷静な燐子さん。

 意外と見ていて面白い組み合わせ。

 

「ふー、危うく尊死するところでした」

 

「お疲れ様。相変わらず大好きなんだ」

 

「はい! パスパレの皆さんは私にとって星ですから!!」

 

 力説する令王那ちゃん、目が星のように輝いてる。

 出会いの大切さを改めて感じたり。

 

 私にとっては……思い浮かぶ姿が多すぎて困る。

 それでもRoseliaのみんなは別格、かな。

 

 

「あ、燐子さんにも渡したんですけどうちの干物どうぞ♪」

 

「嬉しい。ありがとう」

 

 干物の鳰原と書かれた紙袋。

 実はファンで通販で湊家に届いているから……うん、市ヶ谷家にお裾分けしよう。

 

 

 

 

○有咲(檜扇)→イヴ(サルミアッキ)→美咲(ミッシェル風船)→瑠唯(高級入浴剤)→つぐみ(クッキー)→令王那(干物)→有咲

 

 

 

 

 

 

「……色々あった……みたいですね」

 

「うん、色々と」

 

 互いにベッドを譲り合った結果、何故か床に布団を敷き雑魚寝。

 終電を逃して千葉に帰り損ねた令王那ちゃんは既に幸せそうに寝息を立てている。

 

 流石に今日は自重かな。

 

「ふふっ……相変わらず不思議……」

 

「まあ自分でも不思議な感じだけど」

 

 布団の中手探りで燐子さんの手を探し指を絡める。

 細長くて柔らかいけれど……絶世の調べと至高の装束を作り上げる指。

 

「みんなで手を繋げば、大抵のことは何とかなりそうじゃない?」

 

「……はい」

 

 

 燐子さんの嬉しそうな声。

 思いが伝わったようで私も嬉しい。

 私一人では進めない道もみんなとなら……。

 

 

「それと……私が眠れるまで離さないでほしい」

 

「……はい♪」




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<備考>

市ヶ谷有咲:恩義

若宮イヴ:憧憬

奥沢美咲:意識

八潮瑠唯:興味

羽沢つぐみ:信頼

鳰原令王那:同志

偶然出会ったのは?(バンド編)

  • Roselia
  • Afterglow
  • Poppin'Party
  • Pastel*Palettes
  • ハロー、ハッピーワールド!
  • RAISE A SUILEN
  • Morfonica
  • Glitter*Green
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