犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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UA57,000突破ありがとうございます。


その他-19:Roselia四方山話(シーズン1)

○君の名は(シーズン1夏)

 

 

「っと、これで完成」

 

「ワンコ先輩何作ったの?」

 

 とある昼下がり、午前中の練習を終えたRoseliaのみんなは白金邸で昼食を取り、その後ネットで猫動画を見たりSNSをチェックしたりNFOをしたりしている。

 私はというと床に置かれたクッションに座りローテーブルに置いたノートパソコンで――

 

「各々の呼び方表作ってみた」

 

「……ワンコ先輩って時々不思議なことするよね」

 

 口ではそんな事を言いながらもあこちゃんは私の右肩に顎を乗せノートパソコンの画面を覗き込む。

 表計算ソフトで作った簡単な表だけど流石に二十六人分だと骨が折れた。

 私が見聞きしていない部分は本人に聞いたりして補完。

 

「へー、こう見ると呼び方って性格出るね」

 

「うん、『さん』『ちゃん』『先輩』『あだ名』『呼び捨て』……興味深い」

 

「えへへ、『りんりん』を『りんりん』って呼ぶのはあこだけなんだ♪」

 

 嬉しそうなあこちゃん。

 確かに似たような響きの『りみりん』は何人か使っているけど『りんりん』はあこちゃんだけ。

 特別な存在というのがよく分かる。

 

「……呼びました?」

 

「あ、りんりん。これ見て!」

 

「……失礼します」

 

 当然といった感じで私の左肩に顎を乗せる燐子さん。

 背中に柔らかいものが押し当てられる。

 ちょっと羨ましい。

 

「……なるほど」

 

「面白いよね♪ あ、ひなちんだけみんなから名前呼びされてる」

 

「あー、姉妹だと呼び分けないといけないからね」

 

「日菜がどうかしましたか!?」

 

 私の頭に顎を乗せ画面を覗き込む紗夜さん。

 ……双子の妹のことになると我を忘れがち。

 三人分の体重が掛かって少し重い。

 

「逆にリサ姉を名字で呼んでるのがりんりんと紗夜さんだけ……リサ姉嫌われてるの?」

 

「ちょ、何の話!?」

 

 いきなり話を振られて驚いた様子のリサさん。

 あこちゃん、その聞き方はやめてあげて。

 

「べ、別に嫌われてないし……」

 

 うわ、リサさん露骨に落ち込んでるし。

 いや露骨過ぎて演技かも知れないけど。

 

「りんりんは友希那さんの事を名前で呼んでるよね?」

 

「……えっ……えーと」

 

「宇田川さん、呼び方なんて些細な事です。どれだけ相手の事を――」

 

「あー、紗夜さんっておねーちゃんと一緒の時じゃないとあこの事名前で呼んでくれませんよね?」

 

「そ、それは」

 

 色々と触れてはいけない部分に。

 紗夜さんからの助けての視線が痛い。

 この話題は理屈というより感覚的なものだけに紗夜さんだと説明が難しいかも。

 

「あこちゃんは十年後、二十年後もあこちゃんって呼ばれたい?」

 

「うーん、それは相手によるけどちょっと微妙かも」

 

 チラチラっと燐子さんの方を見るあこちゃん可愛い。

 

「最初に呼んだ呼び方って中々変えにくいけど、変えたくなるくらいカッコ良くなれば解決」

 

「おー、流石ワンコ先輩! 紗夜さんの『宇田川さん』呼びも嫌いじゃないけど、おねーちゃんに負けてる気がするんだよね」

 

「私の事も呼び捨てにしても良いよ?」

 

「……それはちょっと早いかな」

 

 満更でもない表情、一応納得してくれたのかな?

 何年か後にはお互いに名前は呼び捨てでお酒を酌み交わしたりしてるかも。

 更にカッコよくなったあこちゃんを見てみたいな。

 

「ちなみにリサさんと二人っきりになると呼び方が変わって『仲良し』する人がいるとか」

 

「そうなんですか、紗夜さん!?」

 

「ち、違います! 私には――」

 

「全くうるさいわよ」

 

 絶妙なタイミングで会話に加わる友希那さん。

 危うく紗夜さんが自爆するところだった。

 

「友希那さんってRoseliaのメンバー以外だとひなちんだけ名前呼びですよね?」

 

「そうだったかしら?」

 

 あこちゃんの質問に首を傾げる友希那さん。

 きっちり線引きをしてるかと思いきや、クラスメイトの麻弥さんですら苗字呼びなのに……。

 

 あれ、ちょっと変な気持ちかも。

 

 

 

 

 

 

○NYAON(シーズン1夏)

 

 

 

「今日の支払いは私がするわ」

 

「よろしく~♪」

 

 Roselia恒例のファミレスでのポテトタイム、いやディナータイムを終えて支払いの時。

 自信満々でスマホを持ちレジに向かう友希那さん。

 ついにアレを……

 

 

『にゃおん♪』

 

 

「お支払いありがとうございます。こちらレシートです」

 

「ごちそうさま」

 

 スマートにキャッシュレス決済をして外へ出る友希那さんに続く私達。

 そして夜の街を颯爽と髪をかき上げ歩く友希那さん。

 でも――

 

 

「口元緩んでる」

 

「うるさい」

 

 

 怒られた。

 

 

 

 

「意外でした。あの湊さんが電子決済を使えるとは」

 

「それはどういう意味かしら、紗夜?」

 

「まあまあ、友希那も現役JKなんだからこれくらいは――」

 

「ワンコ、残高が心許ないんだけど」

 

「じゃあコンビニでチャージしてから帰ろう」

 

「……友希那さん……可愛い」

 

「あ、ついでにNFOのコラボアイス買いましょ!」

 

 今食事を終えたばかりなのにアイスと聞くとつい心がウキウキと。

 ちょっと心もお腹周りも緩み気味かも。

 

 

 

「ん~、美味しい!」

 

「そうだね……あこちゃん……」

 

 コンビニ前のベンチでアイスを食べる私達、青春してるっぽい。

 そんな中紗夜さんだけが何かを考えているようで。

 

「スイートポテト味外れだった? 私のデッドエンド醤油味と交換する?」

 

「い、いえ、また予定外の出費をしてしまったと」

 

 全力で拒否する紗夜さん。

 意外と美味しいのに。

 

「あー、紗夜さんバイトしてないんだっけ」

 

「はい、不器用なので今やってることで手一杯です」

 

「バンド、風紀委員、部活……十分凄いけど」

 

「それでも日菜はアイドルの仕事で収入を得ています。お小遣いをもらう必要がないほどに」

 

 アレはかなり特殊な例だと思うけど。

 姉としては思うところがあるのかな。

 

「私だってアルバイトはしていないわ」

 

「あこもでーす」

 

「わたしも……」

 

 お小遣い組が紗夜さん含めて四人。

 ……紗夜さん以外はお小遣い無制限な

 

「バイト組はアタシとワンコだけか~」

 

「リサさんはRoselia、いや羽丘のおしゃれ番長だから出費が激しい」

 

「まーねー♪」

 

 バイト組が二人。

 ……ガールズバンドパーティーの面々だと家業の手伝いを含めると働いている方が多数派かも。

 

「無理のない範囲でやるならバイト探し手伝うよ? 働く事でお金以外にも得られるものはあるから」

 

「……そうですね。見聞を広める為にも経験してみたいです」

 

「紗夜さんのそういう真っ直ぐなところ好きだけど仕事は選ぼうね?」

 

「は、はい?」

 

 将来ブラック企業に就職して異世界転生しそうなイメージが大変失礼ながら浮かぶ。

 仕事を終わらす為なら徹夜とか休日出勤も厭わなそうだし。

 万が一Roseliaが無くなると二番目に不安なメンバーかも……。

 

「紗夜がやるなら私もやるわ」

 

「あこもあこも!」

 

「……わたしも……やります」

 

 う、うーん、やる気があるのは良いんだけどとてつもなく不安な組み合わせ。

 あこちゃんにいたってはまだ中学生だし。

 

「みなさん……ありがとうございます」

 

「Roseliaとして成長する為ならこれくらい当然よ」

 

 みんなの成長とそれを成す為に生じる困難を心の中で天秤に掛け、食べ終えたアイスの袋をコンビニのゴミ箱に入れた。

 

 

 

 

 

 

○少女☆家出(シーズン1秋)

 

 

 

「――で、二人とも家出してきたわけ?」

 

「はい」

 

「はーい!」

 

 人を猫にするクッションに体を預けた友希那さんが深い溜息。

 私は家出少女の紗夜さんとあこちゃんそして残りの仲間達に緑茶を淹れる。

 あこちゃんが心配になって湊家に来た燐子さんと何故かいるリサさん、これで私の部屋は満員御礼。

 

 紗夜さんは犬の置物を日菜ちゃんが誤って壊したから。

 あこちゃんは隠し持ってたちょっと過激なNFO同人誌を巴ちゃんに捨てられたから。

 ……物の価値は人それぞれだから仕方ない。

 

「あこはともかく優等生の紗夜が家出って……ぷぷっ」

 

「今井さん笑わないでください! そもそも日菜が!」

 

「『あこはともかく』ってリサ姉酷いよ!」

 

「ゴメンゴメン♪」

 

 あえて明るく振舞っているように見えるリサさん、不安げな燐子さんに気を遣ってるのかも。

 まあ理由が理由なだけに……。

 私も解決方法を考えてみるか。

 一緒の部屋で寝泊まりは嫌じゃないけど、家出された方は気が気じゃないだろうし。

 

「でも家出先が湊家で良かった」

 

「ワンコは甘いわ」

 

「でも家出少女が犯罪に巻き込まれるとかよく聞くよ?」

 

「まあ……そう言われたら追い返すわけにはいかないわね」

 

「流石アタシの友希那♪」

 

 どさくさに紛れて友希那さんに抱き着くリサさん。

 部屋は十分暖かいのでこれ以上部屋の温度を上げないでほしい。

 

「勿論手ぶらというわけではありません」

 

「紗夜さんと一緒に選んだよ♪」

 

 紗夜さんとあこちゃんが取り出したのは一辺が二十センチ程度の正方形の箱。

 突発的な家出なのに手土産持参とは……義理堅いというか何というか。

 

「ワンコ先輩開けてください!」

 

「え、私?」

 

 友希那さんの方を見ると首を傾げながらも頷いてくれた。

 家主じゃないけど、それじゃあ、遠慮なく――

 

 

「『湊家ハーフアニバーサリー♪』……えっ?」

 

 

 箱の中身は立派なイチゴのケーキ。

 その上にチョコレートで書かれた文字の意味が分からずみんなの顔を見ると……してやったりの笑顔、友希那さんを除いて。

 困惑のあまり思考が追い付かない。

 

「ワンコが湊家に住み始めてからそろそろ半年でしょ?」

 

「サプライズですよ、ワンコ先輩♪」

 

「たまには驚かされる側になってください」

 

「……ふふっ……大成功」

 

 あー、やっと事態が飲み込めた。

 家出自体狂言だったか。

 姉妹喧嘩が嘘でホッとした。

 

 …………私も友希那さんも忘れていた事に気付いてくれてありがとう。

 ちょっと涙腺がやべー、かも。

 

 

「何で私には教えてくれなかったのかしら?」

 

「えー、友希那に言ったら直ぐ態度に出ちゃうじゃん」

 

「……まあいいわ。一周年には私がもっと盛大なサプライズを仕掛けてあげるから」

 

「うん、待ってる」

 

「湊さん……それはサプライズになっていないのでは?」

 

「ねー、早く食べようよ」

 

「……お皿持ってくるね」

 

 

 この半年で私の心の中の多くの部分を占めるようになった目の前の仲間達。

 

 半年後、一年後、そしてずっと先の未来……大切にしていきたいな。




感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。

特に感想をいただけるととても喜びます。


<備考>

湊友希那:導入の決め手はタッチ音。

今井リサ:友希那がいればひょっこリサとか言われるレベル。

氷川紗夜:犬の置物は無事。

宇田川あこ:同人誌は無事。

白金燐子:演技か本気か区別が難しい。

ワンコ:お陰で湊夫妻にお礼ができた。

今後読みたい話は?

  • シーズン0(一年生)の続き
  • シーズン1(二年生)の続き
  • シーズン2(三年生)の続き
  • シーズン指定無しの短編
  • 連載終了
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