犬も歩けば棒に当たる 作:政影
日付が変わりそうなので端折り気味……。
「夏だー!」
「海だー!」
あことワンコの元気のいい叫び声、そしてアタシに向けられたキラキラとした視線、あーこれは続かないといけないやつだ。
友希那と紗夜は我関せずのスタイル、燐子はというと脇を締めて両手はグーの応援スタイル。
えーい、旅の恥は掻き捨てだ!
「Roseliaだー!」
アタシの大声はアタシ達以外誰もいない砂浜と青く澄んだ海に吸い込まれていった。
発端は先日のアタシの誕生日、ワンコ&日菜&こころによるサプライズで少し怖い思いを……。
まあその後は色々楽しかったから気にしてなかったけど、何故か一泊二日で燐子の親戚の別荘にRoselia一行で行くことに。
諸費用はワンコ持ちという謝罪旅行の名目だけど、バンド内でしこりが残らないように燐子や紗夜も気を遣ってくれたのかな?
本当に良い仲間達なことで♪
それはそれとして、夏休み最後の思い出にはもってこいだね♪
「昼食の支度は私達でするからリサさんは散歩でもしてきて」
「えー、アタシも料理したいのに!」
「リサは私の料理が食べたくないの?」
「ゆ、友希那の手料理……りょーかい、散歩してくるね♪」
到着早々ワンコと友希那に別荘を追い出され浜辺へ。
友希那の手料理かぁ、最近練習しているみたいだし他の四人もいるから大丈夫だよね?
期待半分不安半分でアタシは燐子が持たせてくれた日傘を手に浜辺へと向かった。
昼食の後はみんなで海水浴、しっかり下調べでもしますか。
「うわー、実質プライベートビーチだけあって砂浜奇麗!」
普通なら空き缶とかプラゴミとか落ちてるしね。
ここに落ちてるなんてあそこのイルカくらい……ってイルカ!?
「……キュー」
へー、イルカってこういう鳴き声なんだ……って、そうじゃないでしょアタシ!
このままだと干からびて死んじゃうかも!?
「ちょっと待っててね。今助け――」
でかっ!
近付いたら予想以上に大きかったよ!
大きさはアタシ以上、どう考えてもアタシ一人じゃ動かせないって!
それに――
『無暗に野生動物に近づくのは危険、病気がうつるかもしれないから』
あー、この前紗夜がフラフラと野良犬だか野犬だかに近づこうとした時ワンコが止めてたしね。
このイルカちゃんも何か病気を持ってるかもしれないか……。
「キュ……」
グッとこらえて先ずはワンコに連絡、ってスマホは別荘だ。
でも見るからに弱ってるし何か応急処置をしないと。
今手元にあるのは――
「日傘しかないじゃん!」
しょうがないからこの日傘に海水を汲んで……あ、秒で壊れそう。
とりあえず地面に刺して少しでも日除けに。
他に身に着けてて使えそうなものは…………ううっ、これしかないか。
お気に入りだけど仕方ない、生命優先だからね。
「ワンコいる!?」
「リサさん……流石に下着で泳ぐのはどうかと思う」
別荘に駆けこんだアタシの姿を見て溜息をつくワンコ。
強い日差しと全力疾走でぱっと見濡れてるから普通はそういう反応するよね、下着姿だし。
一応気合を入れてちょっと大人な下着を選んだんだけど溜息はちょっと傷つくよ。
「違うの! イルカが打ち上げられていて――」
「流石リサさん、自分の服を濡らせてイルカに掛けて乾燥を防ごうとしたんだ」
「あ、うん、理解が早くて助かるよ」
最後まで言ってないのに良く分かったね。
こういう時の頭の回転は紗夜や日菜より早いから助かるよ。
「みんなちょっと聞いて」
手早くワンコが仕切りみんなそれぞれ指示通りに動き始めた。
現場を見たアタシが消防に連絡、他のみんなはバケツや日除けのテントを用意。
こういう時に心を一つにして行動できるRoselia、だからアタシは大好き。
「……………………」
あれワンコ、その視線は何?
気付けば他のみんなも……。
「リサさん、いい加減服着て」
「あ、あはは……着替えてくるね」
すっかり忘れてた……。
「あー、リサ姉の料理美味しかった♪」
「そうね」
「結局今井さん頼みに……」
「……ごめんなさい」
「いいっていいって、みんなが喜んでくれたんだからね♪」
結局イルカ救助が長引いて昼食が後ろにずれ込んだ。
その後思いっきりはしゃいだら……みんなばてちゃってアタシとワンコで手早く夕食を作っちゃった。
洗い物はワンコがやるというのでアタシはみんなに食後のお茶を淹れている。
うーん、やっぱりこうしてる方がしっくりくるし楽しいね♪
「家からこんなに離れた場所に来たというのに……リサのお陰でとてもくつろげるわ」
「あ、友希那さんの言うこと分かります! 畳の上に寝転ぶ感じですね♪」
「今井さんはRoseliaのお母さんですからね」
「……慈愛の聖母」
「ちょ、ちょっとみんな~」
少し気になる表現もあったけどすっごく嬉しいな。
時々自分でも重いとかお節介焼きとか思われてないか不安になることもあるし。
こうしてみんなの率直な感想を聞けるとホッとする。
カシャ!
「えっ!?」
「リサさんの満更でもない笑顔を撮影。いつものグループチャットに送っておくね」
「またこのパターン!?」
震えだすアタシのスマホ。
……どうせしばらく収まらないだろうから無視してお風呂に入ろうっと♪
「ん……まだ夜かぁ」
お風呂→トランプ→お喋り、といつもの食後を過ごした後にみんなで雑魚寝。
月明りが丁度顔に当たって目が覚めたみたい。
あれ、たしかカーテンは閉めて寝た筈だけど。
「あら、ごめんなさいリサ。ちょっと夜空を眺めていたの」
「東京より星が良く見えるよ」
窓辺で夜空を見上げる友希那とワンコ。
どことなく神秘的な印象……まあ友希那はいつも神ってるレベルで可愛いけどね♪
「へぇ……どうせなら外で見ない?」
「そうね……折角だから」
「うん、了解」
他の三人は――
「……日菜ったらいつのまにこんなに……生意気……」
「……んっ、あこちゃん、いつもより激しい……」
「……りんりんがしぼんじゃった……」
アタシは何も見なかった、何も聞かなかった、うん。
「夜風が気持ち良いわね」
「友希那、風邪ひかないでよ?」
「リサさんのスケスケな寝間着の方が問題」
アタシ達三人以外誰もいない夜の砂浜。
昼間も非日常だったけど夜はもっと。
まるで夢の続きの様な。
「友希那、ワンコ、アタシの頬つねって」
「えい」「おりゃ」
「痛っ! 二人とも躊躇無さ過ぎ、手加減してよ!」
多分赤くなってる頬をさする。
痕が残ったら責任取ってもらうんだからね!
「夢じゃないわよ。はむ」
「ゆ、友希那~♪」
突然耳たぶに友希那の柔らかい唇の感触。
思わず持っていた懐中電灯を取り落としそうになった。
幼馴染の愛情表現は過激すぎて困る、けど嬉しい。
「うわ、リサさんの顔の緩みっぷりが放送事故レベル」
「ワンコはしてくれないの?」
「はいはい」
口ではそう言いながら優しくアタシの耳を……両手に花だね♪
でもそれは一瞬だった。
「……あっちから何か聞こえる」
「えっ!?」
アタシの耳から唇を離し海の方を見つめるワンコ、そして歩き出す。
何かって何?
また怖がらす気なの!?
「歌ね」
ワンコに続いて友希那も桟橋の先の方に……一人にしないでよ!
急いでアタシも追いかけるとそこには――
「キュッ♪」
「昼間のイルカかしら?」
「うん、こんばんは。リサリサ」
「勝手に変な名前付けないでよ!?」
いやもう少し可愛い名前にしてあげようよ!
今井ルカとか……ないかー。
「良い名前じゃない。優しそうな名前よ」
「そ、そうかなぁ……じゃあ君はリサリサだ」
「キュー!」
友希那にそう言われたらしょうがないね。
元気に育つんだぞ。
二人が誘われたのはこの子の歌だったか。
怖がって損しちゃった♪
「こういうのはどうかしら。♪~~~」
「キュ~♪」
突然始まった友希那とリサリサの『せっしょん』に心を奪われた。
隣のワンコも同じようで目を閉じ優しい表情で聞き入ってる。
その表情のお陰で少し胸が軽くなったかも。
アタシの幼馴染、いや世界で一番大好きな人はいつもアタシを魅了しちゃうから困るな。
最高のプレゼントが直ぐに更新されちゃうからね♪
「リサ、リサリサがプレゼントみたいよ」
「へーどれどれ」
「キュ!」
「貝?」
「へー、阿古屋貝か。後で開く時中身を落とさないように気を付けてね」
「う、うん?」
その時はまだ知る由もなかった。
初めて宝石を貰った相手はイルカだったことに……。
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<備考>
今井リサ:周りに振り回されることが多いのでたくましく。
湊友希那:料理を始めてリサの偉大さを改めて認識。
氷川紗夜&宇田川あこ&白金燐子:朝起きたらお見せできない姿に。
ワンコ:役に立てて嬉しい。
リサリサ:後に歌うイルカとしてダイバーに愛される。
今後読みたい話は?
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シーズン0(一年生)の続き
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シーズン1(二年生)の続き
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シーズン2(三年生)の続き
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シーズン指定無しの短編
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連載終了