犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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気付けば99話目、本当にありがとうございます。


※活動報告にお題箱を作ってみたりしました。


その他-23:湊友希那誕生日(シーズン2-10/26)

「3!」

 

「2!」

 

「1!」

 

「「0! ハッピーバースデー友希那(さん)♪」」

 

「……わざわざ日付が変わった瞬間に祝わなくても」

 

 誕生日を迎えた私――湊友希那――よりも浮かれているのはリサとワンコ、もう夜も遅いのに二人とも元気過ぎる。

 まあ……悪い気はしないけれど。

 三人並んで私のベッドに座るのは何となく落ち着く。

 普段は私の膝の上が定位置のユキは今頃夢の中ね。

 

「だって、一生に一度しかない友希那の十八歳の誕生日だよ!」

 

「二回あっても困るわよ」

 

「そりゃそうだけどさ~」

 

 口を尖らすリサの頭を撫で宥める。

 いつも大人びていて周りに気を配れる彼女が私の前だと子供っぽくなるのは面白い。

 こういうところは昔から変わっていないわね。

 

「リサさんの言うことも分かる。一期一会、この二度とない一瞬を大切に」

 

「そうね……ライブでもいつも心掛けているわ」

 

 ワンコの方はパッと見普段通りだけど嬉しさが漏れ出ているのが分かる。

 大事な家族の一人だから、ね。

 それに真面目な言葉で照れ隠しをしているのも分かるから。

 

「それじゃあ誕生日プレゼントしちゃうよ♪」

 

「ありがとう。これは……暖かそうなマフラーね」

 

 リサから受け取った紙袋の中身は手編みのマフラー。

 既に何枚も貰っているけど、どれも私のことを想って編まれているのでとても嬉しい。

 ……マフラーどころから上から下まで数セットはリサお手製で揃っているけれど。

 

「新作なんだ♪ ちょっと広げてみて」

 

「ええ……にゃーんちゃん!?」

 

 広げたマフラーにはさり気なく白猫の刺繍が!

 私の名前も入っているのも嬉しいわ。

 

「全体的なデザインも良くて見事な完成度」

 

「でしょー?」

 

 その出来にお世辞は言わないワンコも感心している。

 手触りもいいし流石ね、リサ。

 

 ……あれ、この色の組み合わせって。

 

「バイオレット、カーマインレッド、ターコイズブルー、マゼンタパープル、シルバーグレイ、そしてブラック」

 

「お、気付いちゃったか♪」

 

「決めてから一年以上も経ってるイメージカラーに気付かない訳がないでしょ?」

 

 ライブでオーディエンスが私たちに振るペンライト、それにどれだけ力を貰ったことか。

 そうねリサ、改めて全てに感謝しないといけないわね。

 例え頂点に立ったとしてもその時周りに誰もいなかったら意味が無いわ。

 

「私のブラックも入ってる」

 

「当然だって♪」

 

「簡単には抜けさせないわよ?」

 

「……うん、了解」

 

 あなたも大事なメンバーよ、ワンコ。

 必ず頂点に連れて行くから。

 もう絶対に、一人にはしない。

 

「それじゃあ、私からはこれ」

 

「何かしら……あっ」

 

 ワンコから渡された木の小箱、中には銀色に輝く精巧な猫のキーホルダーが。

 裏側には『Y.M.』と私のイニシャルが刻まれている。

 それにしても見た事のないキーホルダーね。

 猫製品に関してはそれなりに詳しいつもりなのだけど。

 

「美術部に教わってユキをモデルに銀粘土で作ってみた」

 

「最近放課後忙しそうにしてると思ったらこれだったのね」

 

 相変わらず神出鬼没な風紀委員で色々な部活に関わっているみたいね。

 その姿は……『カッコイイ』とでも表現すれば良いのかしら?

 リサ同様忙しすぎじゃないかと心配になったりもする。

 

「鞄にでも付けておくわ」

 

「ありがとう」

 

 また大事なものが増えたわね、二つも。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「友希那、朝よ」

 

「……はーい」

 

 お母さんのドア越しの声に目を覚ます。

 今日も学校……小テストは嫌ね。

 リサが待ってるだろうから早くシャワーを浴びて朝食をとらないと。

 さあ、今日のおかずは何かしら。

 

 

 

「おはよ、友希那♪」

 

「おはよう、リサ」

 

 いつも通り自宅の門の前で私を待っていたリサ。

 最近寒くなってきたと言うのに律儀ね。

 

「あれー、昨日、いや今日渡したマフラーじゃないんだ?」

 

「……去年貰ったマフラーのままだったわね」

 

「早速使ってほしかったんだけどなぁ」

 

 リサの言葉には答えず歩き出す。

 使うのが勿体無いとは恥ずかしくて言いたくないし。

 あれは特別だから。

 

 

 

「おはよー、友希那ちゃんとリサちー!」

 

「おはようございます、友希那先輩、リサ先輩」

 

「おはよう」

 

「二人ともおはよー♪」

 

 生徒会の挨拶当番らしく日菜と羽沢さんが校門で登校する生徒に朝の挨拶をしている。

 早起きしないといけないから大変ね。

 

「友希那ちゃん」

 

「なに日菜?」

 

 珍しく真面目な表情で私を呼び止めた日菜。

 紗夜絡みかしら?

 

「う~ん、何を言おうとしたのか忘れちゃった♪」

 

「そう、思い出したら教えて頂戴」

 

 相変わらず自由ね。

 紗夜が猫に例えるのも分かるわ。

 

 

 

「よし、描けた♪」

 

「私もよ」

 

 今日の3年A組の美術は二人一組で相手の顔の写生。

 いつものようにリサと組んで何とか描き終えた。

 音楽以外はそんなに得意じゃないから出来は不安。

 

「どうかしら?」

 

「……友希那がアタシの絵を描いてくれるだけで最高だよ♪」

 

「引っ掛かる言い方ね。リサが描いた絵は……誰?」

 

「友希那が美人過ぎて一万分の一も表現できてないかも……」

 

 そこに描かれていたのは漫画にでも出てきそうな美少女。

 美化しすぎじゃない?

 まあ……悪い気はしないけど。

 

「……返却されたら貰ってもいい?」

 

「う、うん、勿論! 交換しよっ♪」

 

 いや、私の描いた方は直ぐにでも処分したいのだけれど。

 粘土細工とかだったらもう少しまともに…………猫なら。

 

 

 

「相変わらずリサのお弁当は美味しいわね」

 

「ありがと♪」

 

 外で食べるには少し辛い時期になってきたので、教室で机を繋げリサが作ってきてくれたお弁当を食べる。

 相変わらず冷めても美味しいわね。

 私の味の好みにぴったりで三食食べても飽きないと思う。

 

「こうやってリサと毎日食べるなんて二年前は思いもしなかったわね」

 

「急にどうしたの? まあ誕生日を迎えて少しおセンチな友希那も可愛いけどね♪」

 

「そんなんじゃないわよ、多分」

 

 感傷的な気分なのは季節の所為かしらね。

 佳境を迎えつつある『Girls Band Challenge!』に影響が出ては困るというのに。

 相手が誰であろうと頂点を取るのは私たちRoseliaよ。

 

 

 

「それじゃあ友希那、アタシ部活行ってくるから♪」

 

「ええ、頑張ってね」

 

 放課後テニス部に向かったリサを見送り私も席を立つ。

 Roseliaの練習までは時間もあるし何をしようかしら?

 こんな空き時間久しぶり過ぎてどうにも落ち着かないわね。

 

「あ、友希那さん」

 

「あら、大和さん」

 

 3年B組の大和さんとはクラスが変わってから話す機会が減ったわね。

 アイドルの仕事が忙しそうなのもあるけど。

 友人が一線で活躍しているのは嬉しいし励みにもなる。

 

「時間があればちょっと演劇部見ていきませんか? 音響関連でちょっと感想を聞きたくて」

 

「私で役に立てるのなら構わないわ」

 

「ありがとうございます!」

 

 大和さんに頼りにされるなんて光栄ね。

 

「『物事に良いも悪いもない。考え方によって良くも悪くもなる』つまりそういうことさ」

 

「っ!?」

 

「ちょ、薫さん、急に現れて脅かさないでくださいよ!」

 

 瀬田さんにも困ったものね。

 思わず悲鳴を上げるところだったわ。

 でも……その言葉はたまに真理をつくことがあるから疎かにはできない。

 

 

 

「……そろそろ時間ね。片付けを始めるわよ」

 

 Roseliaの五人全員が揃ったCiRCLEでの練習も気付けばもう終わり。

 常温のペットボトルで喉を潤し、自分で取り出したタオルで汗を拭き終えると片付けを始める。

 

 何故か他の四人は心配そうに私を見ている。

 

 やはり、ね。

 

「ゆ、友希那……その」

 

「何かしらリサ?」

 

 覚悟を決めて話し掛けてきたリサに平静を装って尋ねる。

 

「ええっと、その……」

 

「これのことかしら?」

 

 制服のポケットから出した猫のキーホルダー、ワンコからの誕生日プレゼントを見せつけた。

 呆気に取られたリサの表情に平静を装うのが難しくなる。

 にやけちゃいそう。

 

「えー、気付いてたの!?」

 

「勿論よ」

 

「いつから?」

 

「朝起きて直ぐ」

 

 私の言葉に膝をつくリサ、やれやれといった感じで首を振る紗夜、両手を合わせて喜ぶ燐子とあこ。

 

 私を起こしに来るのはワンコとユキ、それは大事な儀式。

 ……まあ全てを理解したうえで気付いていないふりをしたのはちょっと意地が悪かったかもしれないけど。

 仮想のリサとはいえ誤魔化せたのだから意外と私にも演技の才能があるかも、何てね。

 

「少し物足りないから早く出てきなさい、ワンコ」

 

「うん、友希那さん大好き」

 

 突然空中から現れ抱き着いてきたワンコに押し倒されたところで私の意識は途切れた。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「どうだった友希那ちゃん?」

 

「……そうね、中々リアリティはあったわ」

 

 寝起き特有のだるさを感じながらヘッドマウント……なんとかを外す。

 ベッドから降りて体を伸ばすと急速に体が覚醒していく。

 実時間だと一時間も経っていないというのは不思議な感覚ね。

 

 日菜が開発したVRゲームでワンコのいない生活を体験してみたけど予想通り物足りなかった。

 依存、とは言いたくないけどあの子がいるからこそ感じられること、経験できることがあるのは確か。

 それは私、私たちにとって得難いこと、大切なこと。

 

 

 それに……放っておくと何をしでかすか分からない大事な『妹』は目の届くところにいないと、ね。




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特に感想をいただけるととても喜びます。


<備考>

湊友希那:普通免許を取ると言ったら全員に反対された。

今井リサ:気を付けないと親目線で友希那の成長を喜んでしまう。

ワンコ:可愛い系の小物を作るのは苦手。

今後読みたい話は?

  • シーズン0(一年生)の続き
  • シーズン1(二年生)の続き
  • シーズン2(三年生)の続き
  • シーズン指定無しの短編
  • 連載終了
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