Fate/dark moon   作:ガトリングレックス

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第1章始まり

彼の名は攻城菊【コウジョウキク】。

日本に住む魔法科高校の2年生である。

攻城とは町で有名な魔術師の家系である。

学校では仲のいい友達とお喋りを楽しんだり、魔法の勉強をしていた。

「菊」

「なに?」

「いや、お前ってすげー奴だと思ってさ。だって菊は元々魔術に関わっていなかったお母さんの養子だった。なのに今では魔術師として成長してる、だからすげーんだよ」

「そう言う褒められ方は初めてだ、ありがと」

菊は元々母の息子で、再婚した相手が魔術師だった関係で魔法科に入っている。

父には20代の息子と、中学生の娘がいる。

正直家族といるより学校の方が楽しい。

なぜなら兄と妹にいじめられるからだ。

今では父と母のおかげでなくなったが、中学生の頃、つまり養子になりたての頃はいじめられ、

生きてる心地がしなかった。

それがトラウマになり20代の男性と、小学生から中学生ぐらいの少女が恐怖の対象になってしまった。

「なぁなぁ、菊、学校終わったらゲーセン行こうぜ」

「おっ、良いねぇ」

そんな事を言っている間に休み時間が終わったと言うチャイムが鳴った。

 

彼女は家族を失った。

夫、2人の息子。

もうつらくて、苦しくて。

死にたいと思った。

だから死ぬ。

自分が住むマンションの10階のベランダから自殺しようとする。

「待っててね、今行くから」

泣きながらそう言って飛び出そうとする。

その時だった。

誰かに手を掴まれ、自殺を止められた。

「誰!?」

後ろを振り返ると、そこにいたのはホッケーマスクを被った大柄の男だった。

恐怖の感情が脳に、一気に分泌される。

「あなたは誰?」

「僕はアサシン、君の願いを叶えるために来た」

アサシンは優しい口調でそう言うと、彼女を無理やりお姫様抱っこし、部屋に入った。

 

ここは衛宮家、ここで今、士郎【シロウ】、凛【リン】、セイバーの3人が会議をしていた。

「また起きるのか、聖杯戦争が」

「えぇ、今回は夏画町【なつがちょう】と言うところでやるみたい、まあ聖杯は10年周期で生み出される物、仕方ないと言ったらそうだけど」

「では壊しに行くのですね、聖杯を」

「ふーん、分かってるじゃない、そう、私達は聖杯を破壊するのを目的としたチーム、今回で3回目だけど、私とセイバーが受け持つわ」

「分かった。2人共、気をつけて行けよ」

「はい、行って来ます、士郎」

会議が終わり、バックを持って、凛とセイバーはリビングを出て、玄関に向かう。

そこにドタドタと5歳ぐらいの子ども2人が走って来た。

「お母さん、セイバーちゃん、どこに行くの?」

「どこ行くの?」

実は凛、士郎と結婚しており、子どもが2人いる、30代のママ魔術師なのである。

家事は士郎に任せ、凛は魔術師として働いている。

セイバーはホームステイしている外国人として住んでいる。

「ごめんね、お母さんとセイバーはお仕事でしばらく帰れないの、だからお父さんと待っててね」

「うん、頑張ってね」

姉の蒼【アオイ】は承諾してくれたが、

「嫌だー、お母さんといたいー」

弟の悟【サトル】がぐずり始める。

「たくさんおみあげ買ってくるから、それで許して」

悟はしばらく考え、「分かった」と言ってくれた。

 

学校が終わり、菊は友達の稔【ミノル】と共にゲームセンターに入る。

ガヤガヤとした店内を進み、2D格闘ゲームをやり始める。

10分後、両者共互角の戦いを繰り広げ、帰る事にした。

「やっぱ強えなー、菊は」

「稔こそ、あのコンボは中々出せないぞ、あれは」

そんな事を喋っている間に分かれ道につく、

「じゃあ俺、こっちだから」

「あぁ、また明日な」

そう言って菊は稔と別れ、家に帰った。

「ただいま」

家に帰ると、誰もいない。

するとスマホが鳴り始める。

「お父さんからだ」

通話ボタンをタップし、耳にあてる。

『もしもし、お父さんだ』

「もしもし、お父さん、なんでいないのさ、心配するじゃないか」

『実はな、菊、お前は聖杯戦争のマスターに選ばれたんだ』

「えっ、聖杯戦争って、お父さんが話してた。あの聖杯戦争?」

聖杯戦争、それは7騎のサーヴァントによる願いを叶えるための殺しあいである、

サーヴァントにはそれぞれ、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー、イレギュラーとしてアヴェンジャー、ルーラーがいる。

セイバーはランサーに強く、アーチャーに弱い。

アーチャーはセイバーに強く、ランサーに弱い。

ランサーはアーチャーに強く、セイバーに弱い。

ライダーはキャスターに強く、アサシンに弱い。

キャスターはアサシンに強く、ライダーに弱い。

アサシンはライダーに強く、キャスターに弱い。

バーサーカーはすべてに強く、すべてに弱い。

アヴェンジャーはすべてに強く。

ルーラーは弱点を持たず、また得意な者もない。

「だから俺を1人したんだ」

『すまない、一様お金と食料がある、それを使って頑張ってくれ、後サーヴァントを召喚するための触媒もある、それで強いサーヴァントを呼べるはずだ』

「分かった。頑張ってみるよ」

『お父さん達は応援してるからな、じゃあまた』

「じゃあ」

父から電話を切られ、菊はスマホをバックにしまい、2階に上がり、服を着替え、サーヴァントの召喚を行うため、素材である拷問器具の破片を持って、庭に出る。

殺したニワトリの血で魔法陣を書き、拷問器具の破片を置く。

そして呪文を唱える。

「満たせ、満たせ、サーヴァントよ、お前のために鳥の血を捧げよう、強者よ、現れよ」

呪文によって魔法陣が青く光り、召喚されたのはピンク色の髪で鎧を装備しているドラゴニュートの少女だった。

それを見た時、菊は冷や汗をかく。

「ハーアーイ、あなたが私のマスター?」

サーヴァントが挨拶をしたので菊も返事を返す。

「そうだよ、俺が君のマスターだ、まあ威張る様な事はしないから、仲良くやろうよ」

「ふーん、こんなマスターもいるのね、普通マスターってサーヴァントを従わせたくなるのに」

「そんなもんなのかな、とりあえず家に入ってゆっくり話そう、あっ、土足は厳禁だから」

そう言って庭からリビングに入る。

2人はソファーに座り、ゆったりしながら話を始める。

「一応聞くけど、クラスはなに?」

「セイバーよ、真名はエリザベートバートリー」

「エリザベートバートリーって、女性の血を浴びて若返ったって言う」

「それは未来の私、今いる私はそれを変えようとしている過去の存在なの」

「そうなんだ、あっ、もうごはんの時間だ、ちょっと作って来るね」

菊はキッチンに行き、冷蔵庫を開ける。

「よし、あれを作ろう」

作るのはタラコスパゲティだ。

そんな中、セイバーは足をぶらつかせながら待っていると、頭が痛くなる。

「やだ、やめて、来ないで」

セイバーの悲痛な声に菊は気づき、コンロの火を消し、リビングに戻る。

「どうした!」

その呼びかけと同時にセイバーの髪が赤から白に変わり、目の色も黄色に変わる。

「セイバー?」

セイバーの視線が菊に移った瞬間、ニヤリと笑みを浮かべ、いきなり押し倒して来た。

「この際男の血でも良いわ、飲ませてもらうわよ、マスター」

セイバーは鋭い牙を菊の首に突き立て、血を吸い始める。

「あっ、あっ」 

痛みが走り、暴れて逃げようとするが、力が強く、逃げ出せなかった。

数分後、ようやく吸血が終わり、解放される。

ヒリヒリする首を抑えながら立ち上がり、セイバーの方を見る。

「君、未来のセイバーだよね」

「察しが良いわね、そう、私は多重人格なの、一応真名はカーミラよ、フフフ、これからもよろしくね」

「良いよ、セイバーが多重人格でも、俺は一向に構わない」

「そう言ってくれるとありがたいわ」

未来のセイバーは感謝の言葉を述べ、過去の人格に戻る。

セイバーは慌てた表情をする。

「ごめんなさい、痛かったでしょ」

「仕方ないよ、相手は吸血鬼のカーミラだもん、さあ、俺は自分のごはんを作らなきゃ、悪いな、サーヴァントだとは言え、食事を見せびらかす様な事をするみたいで」

「別に良いわ、ちゃちゃっと食べて、戦いに行きましょ」

菊はキッチンに戻り、ため息を吐いて、タラコスパゲティを作り始めた。

 

一方その頃、もう1人のマスター、軍人であり、魔術師のキールグレイトスは、自分が望んだサーヴァントを呼べて気分が高揚していた。

金に輝く鎧、本物のライオンの毛皮でできたライオンのマスク。

「まさか20年前に猛威を振るった王をバーサーカーとして召喚できるとはなぁ」

バーサーカーは雄叫びを上げ、自分の強さをアピールする。

「ほう、戦いたいか、ならこいつを貯蔵してもらおう」

キールが用意した物、それは、マシンガン、スナイパーライフル、アサルトライフルなど、大量の銃火器だった。

バーサーカーは首を縦に振り、銃を貯蔵し始める。

(普通なら拒否するだろう事を平然とやる、ふっ、バーサーカーはバーサーカーと言う事か)

小バカにしつつ、キールはイスに座り、貯蔵できるまで待った。

 

「擬似サーヴァント化成功、まさかマスター自身がサーヴァントになるとはなぁ」

そう言うのはランサーだ。

スーツを着用し、メガネをかけた普通のサラリーマンに見えるが、中身が違う。

「久しぶりだな、現界するのは。観光もしてみたいが、私はサーヴァント、マスターのために戦わなければ」

ランサーは自慢の身体能力でサーヴァントを探しに向かった。

 

電車で片道1時間、凛とセイバーは夏画町に到着し、これからの事を考える。

まず1人に加勢し、仲間になりすまして、聖杯が出たところでセイバーの宝具で破壊する。

それが凛と士郎とセイバーが聖杯戦争でやっている事。

「スマホで検索したら、この町には攻城と言う有名な魔術師の家があるみたい」

「そこの1人がマスターで間違いありませんね」

夜の道を進み、学校へ向かい、双眼鏡を覗くと、早速戦っているところを目撃する。

「戦ってるのは、バーサーカーとランサーみたいね。バーサーカーの方はステータスが見えないけど」

バーサーカーの方は紺色の鎧で身を固め、バトルアックスを装備、黒いオーラを放出している。

一方ランサーはメガネをかけ、スーツ姿で、2本の槍を持っている。

それを見たセイバーは、かつて戦った英雄の名を口にする。

「ランスロット、再びバーサーカーとして召喚されたのですね」

「ランスロットって、円卓の騎士の?」

「そうです、30年前、聖杯戦争で戦いました。ですが、こんなところで出会ってしまうとは」

手を拳にし、強く握った。

ランスロットはバトルアックスを振るい、ランサーはそれを交わす。

「トレース、オン」

マスターであろう女性が呪文を唱えると、ランスロットの手元にマシンガンが錬成され、スキルで強化、ランサーに向けて連射する。

その光景に凛とセイバーは驚愕する。

「あれって士郎君の」

「えぇ、士郎のトレースオンです、まさか他の魔術師が使え、しかも遠隔で錬成するなんて、驚きを隠せません。さらにランスロットには武器を強化するスキルがあります。まさにこの2人は最高のコンビと言えるでしょう」

「まあ、バーサーカーにされた時点で、ランスロットにとってたまったもんじゃないだろうけどね」

感激するセイバーに、呆れた様に言う凛。

そんな中、ランサーが宝具の力を解放する。

「我が宝具は2本あり、1本目は貫かれた者を消滅させる槍、2本目は狙った者を逃さず貫く槍」

その言葉にまずいと思ったのかランスロットのマスターは呪文を唱える。

「トレースオン!」

すると、ランスロットの前にバリアを展開する装置を複数錬成し、バリアを張る。

両方の槍を逆手に持ち、三又の槍を投げる体制に入る。

「スレイプニル!」

投げた。

さらにそこから素早く金色の先が稲妻の様にギザギザしている槍を投げる体制に入る。

「グングニル!」

投げた。

そのスピードはマッハを超え、バリアを破壊して行く。

そんな中、〈スレイプニル〉が失速し、ランサーの手元に戻る。

しかし〈グングニル〉は止まらない。

バリアを破壊し、ついに最後のバリアを破壊、ランスロットの心臓部を貫いた。

ランスロットは背中から倒れ、動かなくなる。

「決まりね、いくら円卓の騎士でも、あの槍を受けて死なないなんて、まずありえないわ」

凛はランスロットの負けを確信するが、この後とんでもない事が起きる。

ランスロットのマスターが不適切な笑みを浮かべる。

なんと死んだと思われたランスロットが立ち上がったのだ。

「なんで、なんで生きてるのよ!」

「分かりません、ですが、今言える事、それはあのバーサーカーはランスロットではないと言う事です」

「えっ、あれランスロットじゃないの?」

凛の質問に、セイバーは首を縦に振る。

「そうです、鎧やステータスが見えないなど、ランスロットに完璧に偽装していますが、前に戦ったランスロットは蘇りのスキルなど持ち合わせていませんでしたから」

「つまりあいつはニセモノって事?」

「おそらくマスターのトレースオンで作った鎧をサーヴァントが装着しているのでしょう。これはランスロットを侮辱しているのと同じ、もし戦う事になった時は必ず私が仕留めます」

「そうね、裏切り者とは言え戦友だものね、それは殺したくなるわぁ」

一旦双眼鏡を覗くのをやめ、セイバーの方を同情の目で見る凛なのだった。

 

驚きを隠せないランサーにあざ笑うランスロット?のマスター。

「バーサーカーには蘇りのスキルがある、しかも死ねば死ぬほど強くなる。でっあなたの真名が分かった。オーディン、擬似サーヴァントとして召喚されたのね。でもバーサーカーは神だろうが邪神だろうが倒す事はできないわ」

「私達神を侮辱するとは、許さん」

「なんとでも言いなさい。バーサーカー、オーディンを仕留めるのよ」

マスターに言われ、ランスロット?はマシンガンの銃口をオーディンに向け、連射する。

オーディンは銃弾を〈グングニル〉で弾き、逃げる体制に入る。

「逃がさないで!トレース、オン」

呪文を唱えると、ランスロット?の手元に毒付きの銛銃が錬金され、オーディンに向ける。

トリガーを引き、銛が発射されるが、〈スレイプニル〉で弾かれてしまい、そのまま逃げられた。

それを見た凛は呼吸を整え、状況を整理する。

「あのランスロットのニセモノのマスター。自分のサーヴァントに自信がないか、それともものすごい有名な英雄だからそれを隠すためにランスロットと言う仮面を被らせているのか、どちらにしても強い相手であり仲間にしてもらえないチームね」

「私はあの方々と仲間になりたくありません」

「まあね、違うチームを探しましょ」

そう言ってセイバーを連れ、その場を立ち去った。


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