Fate/dark moon   作:ガトリングレックス

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第2章ハイスピードショット

夜の9時半。

菊【キク】とセイバーはサーヴァント探しをしていた。

菊にとってセイバーといる事が最も恐怖な事だ。

一様一般人に見えない様霊体化してもらっているが、それでも女の子と一緒にいるのに変わりない。

(なんで女の子なんだよ。もっとこう、大人な男性か女性が良かった。でもお父さんが探し出してくれた触媒で召喚されたサーヴァントなんだ、弱いはずがない)

まだ勉強途中の自分がセイバーとうまく付き合えるだろうか、そんな不安がのしかかる。

すると街灯で照らされた金髪の男子を発見した。

カーボーイハット、カーボーイを思わせる服装、ホルスターにはリボルバーが収められている。

「マスター、あいつサーヴァントじゃない?」

「だよな」

セイバーは姿を現し、背中に背負った剣と盾を手に取り、構える。

それを見てサーヴァントは笑みを浮かべる。

「ねぇ、剣と銃、どっちが早いか勝負しようよ」

「最初からやる気満々って感じね。行くわよマスター」

「待て。あいつは銃を持ってる、つまりアーチャーの可能性がある。セイバーはアーチャーが苦手なんだろう。だから言っておく、油断するなよ」

「それぐらい分かってるわよ。だからこそ先に仕留めなくちゃね」

セイバーは一気に加速し、アーチャーとの距離を詰め様とする。

「早いねぇ、でも僕より遅いかな」

アーチャーの余裕の言葉に、セイバーはイラ立ちを覚える。

だがその言葉はウソではなかった。

リボルバーをホルスターから取り出し、ハンマーを下ろし、トリガーを引く。

それを高速で3回行い、銃弾がセイバーに襲いかかる。

なんとかセイバーは盾で防ぎながらアーチャーの腹を盾で殴る。

それに仰け反るアーチャーだったが、素早くリロードし、構える。

「盾で殴るなんて、暴力的だなぁ」

「うるさいわねぇ、さっさと倒されなさい!」

「煽りに乗っちゃダメだ。それが相手の狙いなんだから」

「分かってる。だけどイラつくこいつは許せないのよぉー!」

アーチャーの狙い通り、セイバーはイラ立ち出す。

するとセイバーの人格がエリザベートからカーミラに入れ替わる。

「まったく、過去の私が迷惑かけたわね、マスター」

「未来のセイバー、良かった。未来のセイバーなら冷静に戦ってくれる」

その光景にアーチャーは少し驚いた表情をする。

「ふーん、クラスチェンジか」

「少し違うわね。クラスは変わらない、だけど法具が変わったり。戦い方が違ったり。細かいところが違うのよ」

「それって細かいのかなぁ」

そう言いながらリボルバーのハンマーを下ろし、トリガーを弾く、

銃弾が発射されるが、それをセイバーは盾で防ぎ、突きをくらわそうとする。

だがその時だった。

どこからか、まるで大砲から弾が放たれた様な音が聴こえて来る。

方角はアーチャーの後ろの方からだ。

アーチャーは素早く振り返り、ハンマーを下ろし、構える。

見える、戦車から放たれた弾丸が向かって来るのを。

トリガーを引き、銃弾が砲弾に命中、爆発を引き起こした。

爆風でカーボーイハットが吹き飛ばない様、手で押さえながら前を見る。

そこにあったのは戦車の軍勢だった。

「あれはドイツ軍の戦車、なんでこんなところに」

「分からない。あれはサーヴァントの宝具よ」

セイバーとアーチャーの言葉で菊はサーヴァントのクラスと真名が分かった。

「クラスはライダー、そして真名は、さまざまな悪事を働き、働かせた。最恐最悪のドイツ軍の司令官・・・」

真名を言いかけて、戦車の3車が一斉に発砲する、

狙いはセイバーだ。

砲弾をギリギリで交わし、攻撃を仕掛け様とする。

だが、今度は兵士が戦車から出て来て、機関銃で攻撃して来た。

銃弾をセイバーは盾で防ぎ、攻めに行く。

すると戦車の1車がいきなり前進して来る。

避けようとするが、避けれず、轢かれた。

「セイバー!」

菊の叫びに答え、立ち上がるが、肋骨が折れてしまい、苦しそうに荒い息を吐く。

サーヴァントはマスターの魔力によって体を修復できるが、時間がかかる。

「ライダー、いや、ヒトラー、貴様ー!」

菊の怒りの叫びを戦車の中にいるライダーとマスターである赤髪の少女があざ笑う。

「ハハハハ、おっかしい。サーヴァントがケガしたぐらいで怒るなんて、怒りのスイッチ浅すぎー。ねぇ。ライダー様」

「ミラの言う通りだ。まあ気持ちは分かるが、これは戦争だ。多少のケガなどで感情的になるのはマスターとしてどうなのだろうな」

赤髪の少女ミラはアインツベルンの刺客で、ホムンクルス、つまり人造人間である。

彼女は前々回冬木の聖杯戦争でアインツベルンの刺客であるバーサーカーのマスターが聖杯を手に入れられず死亡したのでその後玉として参戦した。

サーヴァントはライダーのクラスのヒトラー。

1900年代、ドイツ軍を率いてさまざまな国に戦争を仕掛けた男の司令官。

かつては画家を目指していたが、才能を理解されず、その逆恨みか司令官になった時に兵士に画家の作品を盗み出させたとされている。

さらに黒人であるユダヤ人を尋問、処刑させたと言われている。

尋問に使われたウソ発見器はウソをつくと電流が流れると言う仕組みと謳われたが、実際は都合が良い事しか言えない様にする拷問器具だったとされている。

ヒトラーの最後は処刑だったとされているが、処刑されたのは実は影武者で、村でひっそりと暮らしていたと言う説がある。

ライダーは法具である戦車と兵士を使い、セイバーとアーチャーを仕留めにかかる。

 

それを双眼鏡で見ていた凛は驚きを隠せない。

「なんでサーヴァントの宝具が近代兵器なわけ?、セイバーなら剣、アーチャーなら弓と弓矢、ランサーなら槍、ライダーなら乗り物、キャスターなら魔法に関係する物、アサシンなら殺人術、例外はあるけど大体古代の物が選ばれる事が多いじゃない?」

それを聞いてセイバーはため息を吐く、

「なにを言っているのですか凛、かつてあなたが共に戦ったアーチャーは、パラレルワールドですが、未来の英雄、エミヤシロウだった。つまり古代の英雄でも、最近の英雄でも、未来の英雄でも、関係なくサーヴァントとして召喚されると言うわけです」

セイバーにそう言われ、(確かに)と納得する。

「それにしても反英霊が多いわね、やっぱり聖杯は悪に汚れている、と言う事かしら、これは破壊するしかないみたい」

「そうですね、そのためにも早く仲間できそうなマスターとサーヴァントをみつけましょう」

「いいえ、もうみつけたわ、今回はあのセイバーのマスターを仲間にしましょ」

「いいのですか、あのマスター、まだ未熟に見えますけど」

「だからこそよ、熟練の魔術師じゃあ仲間にしても裏切られるのが関の山、だったら未熟な魔術師に魔術を教えつつ、支援してあげれば良いの、そうすれば信頼してもらえるでしょう」

「さすがは魔法科高校の講師、青年の気持ちが分かるのですね」

「まあねぇ、それじゃあ早速セイバーとマスターを助けに行くわよ!」

こうして凛とセイバーは、もう1人のセイバーとそのマスターを救うため、走り出した。

 

一方その頃セイバーと菊、アーチャーはヒトラーの攻撃に、防戦一方だった。

「本当に、厄介な奴が召喚された物ね」

「待ってろセイバー、今治癒魔術で骨を修復してやる」

「そんな隙をあの戦車が与えてくれるかなぁ」

アーチャーは霊体になろうとする。

「まさか、お前逃げるつもりか」

「当たり前だろう、僕はマスターの願いを叶えるために戦ってる、最初からやられてたらマスターに申し訳が立たないからねぇ。じゃあ、アディオス」

そう言って霊体になり、逃げ出した。

「アハハハハ。アーチャーたら、ライダー様の宝具に怖じ気付いたみたい」

「ふん、当たり前だ、我がドイツ軍の科学力は世界1なのだからな」

ヒトラーはすべての戦車の主砲をセイバーに向ける。

「全体、主砲、撃て!」

号令と共に放たれた砲弾。

それを菊は魔術のバリアで防ぐが、いつまで耐えられるか分からない。

そんな時だった。

「あなた達少し離れてて」

突然現れた女性に菊とセイバーは従う。

「あいつは、ライダー様、逃げるよ」

「なぜだ、あんな小娘、我が戦車で蹴散らしてくれるわ」

「相手はアーサーだよ。あいつのエクスカリバーをくらったら私達はたまったもんじゃない」

「それを早く言えー!」

ミラとヒトラーは戦車を出て逃げる。

「エクスカリバー!」

その叫びと共に〈エクスカリバー〉から放たれた閃光が戦車に襲いかかる。

だがヒトラーが宝具を解除し、戦車が姿を消す。

〈エクスカリバー〉は不発に終わったものの、相手を逃走させる事に成功。

今はそれで十分だった。

「あなた達、一体何者なんですか」

菊の質問に凛は笑みを浮かべる。

「私達はこの聖杯戦争の発端である聖杯を破壊しに来たの」

「なんでそんな事、だって聖杯は願いを叶えるための物なんですよね」

「本当わね、でもこの聖杯は悪に汚染されているの、例えばの話だけど、マスターが世界平和を願ったとするでしょう、すると少しでも悪の感情がある人が死んでしまう」

「そんな、そんなのダメですよ、そしたらたくさんの人が死んじゃうじゃないですか」

「だからこそ私達は聖杯を破壊するの、でも私達は部外者、それでね、あなた達に私達の仕事を手伝ってほしいってわけ、どう、手伝ってくれる?」

菊が了承しようとすると、セイバーが口を挟んで来た。

「私は反対よ、例え本当にそうだとしても、私には叶えたい事がある」

「セイバー、もしそれで女性の血が吸えなくなったら、どうする?」

菊の質問に、セイバーは顔にシワを寄せる。

「分かったわ。でもマスター、一応言っておくわよ、もし血が吸いたくなったら・・・」

「俺の血を吸わせろ、だろ、分かってるよ」

「理解があって助かるわ、じゃあ過去の私に戻るわね」

そう言ってセイバーの人格がカーミラからエリザベートに入れ替わる。

「話は聞かせてもらったわ。いいわよ、どうせ叶えたい願いなんてないしぃ。手伝ってあげるわ」

それを聞いて凛は安堵する。

「立ち話もあれですし、俺の家でゆっくり話をしましょう」

「そうしてくれると助かるわ。あっ、名前を言ってなかったわね、私は衛宮凛【エミヤリン】サーヴァントはセイバーよ。真名はあなたの家に着いたらセイバーに言わせるわ」

「俺は攻城菊【コウジョウキク】。サーヴァントはセイバーです、よろしくお願いします」

攻城と言われて心の中で驚くが、顔には出さない。

「えぇ、こちらこそよろしくね」

そう言って、凛達は菊の案内で、攻城家に歩みを進めた。

数十分後、攻城家に到着し、菊がカギを開ける。

「どうぞ」

菊の膨大な冷や汗がドアから滴り落ちる。

「ちょっとあなた大丈夫なの」

「大丈夫じゃないです、この事についても話ますから、お入りください」

心配しながら、家に入って行く。

菊も家に入り、カギを閉める。

凛は手を洗い、ハンカチで拭き、リビングのイスに腰掛ける。

それに続いて菊もイスに腰掛ける。

「でっ、なんでそんなに汗をかいてるの?」

「実は俺の母が再婚して、その夫が攻城と言う魔術師の一族だった。母の連れ子であり養子の俺の事を義理の兄と義理の妹は気に入らなかったみたいで、いじめられました。今は父と母が注意してくれてなくなりましたが、その影響からか、20代の男性と、小学生から中学生ぐらいの女の子を見ると冷や汗が止まらなくなっちゃたんですよね」

「つまりサーヴァントが中学生ぐらいの女の子だったから恐怖していると」

「そう言う事です、だけどせっかく俺に応えて現界してくれたんです、そんな事でくよくよする自分じゃありません」

「優しいのね、でもその優しさが仇になる事もあるわ、気をつけなさい」

「分かりました」

そう言うと凛の方のセイバーが霊体から実態化した。

「菊、あなたは魔術師としてはまだ未熟のはずです。ですがその割には魔術を使いこなしている。その事に敬意を評して真名を言いましょう。私はアルトリアペンドラゴン。まあ私の宝具を見て分かっていたとは思いますが」

「攻城家の人間として魔術を使いこなせる様にならないと、じゃなきゃまたいじめられる」

いじめ、それはなくならない行為、それは人間として最悪な行為。

それに同情しつつ、凛は菊に優しい笑みを浮かべた。

 

女性のマスターが自分の部屋で、サーヴァントと共に晩酌を楽しむ。

サーヴァントはその醜い顔で缶ビールを飲み、テーブルに置く。

「アゲハごめんね。ランサーを殺せなかった」

「良いのよジェイソン。あなたが悪いんじゃない。悪いのは戦いを放棄したオーディンなんだから」

ジェイソン、本名ジェイソンボーヒーズ。

アメリカで起きたキャンプ場大量殺人事件を起こした殺人鬼である。

少年時代、クリスタルレイクのキャンプスクールでその醜い顔から生徒達にいじめられ。最終的に布袋を被せられ。湖に落とされた。

そんな事が起きればカウンセラーが止めに来るはずだが、なんとカウンセラー達はセックスをしており、その現場を見てなかったのである。

それを聞いて母のパメラは激怒。さらに多重人格になってしまい、カウンセラー達を皆殺しにした。

だがカウンセラーに斧で首を切断され、パメラは死亡する。

それを見ていたジェイソンは母が殺人鬼に成り果てたと言う事を知らず、ただ「無実のママが殺された」と言う事が刷り込まれ、復讐のため肉体を鍛え上げ、復讐を果たす。

しかしそれによって自閉症を患い、母の声が聞こえる様になる。

「復讐しなさい、ママを殺したキャンプ場にいる者達を殺しなさい」

とっ言った感じで母の幻聴に言われ、それに従ってキャンプ場にいるすべての人、動物を殺害する様になる。

だが殺そうとしていた女性の息子、トミーの策略に嵌り、殺されてしまう。

だが皮肉な事に成長したトミーが偶然復活させてしまった。

再び殺戮を繰り返すが、その数年後、甥っ子によって魔法のナイフを刺され、地獄へ落とされる。

そんなジェイソンがサーヴァントとしてここにいる。

別にアゲハは恐怖していない。

願いが叶えばそれでいいのだ。

「カァー!やっぱりビールは最高ね。ジェイソンはどう?」

「初めて飲んだけど、すっごくおいしい。なんで僕生きてる時にビール飲まなかったんだろう」

ジェイソンはビールの事に後悔しつつ、ビールを口に含む。

シュワシュワする炭酸。ちょっとした苦味。それがたまらなく美味しい。

心が子どものジェイソンがここまで絶賛する程ビールはうまいと言う事だ。

晩酌はまだ始まったばかり。つまみを食べながらアゲハとジェイソンは笑い楽しむのだった。


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