1日目が終わり。
マスター達は全員就寝。
そして2日目を迎える。
今日は水曜日。
菊【キク】はお風呂に入り、制服に着替え、ごはんを作る。
凛【リン】とアルトリアはホテルで泊まると言って攻城家を出た。
だからまたセイバーと2人だ。
冷や汗を大量にかきながら換気扇を回し、シャケをフライパンで焼いて行く。
なぜ網焼きにしないのか、それは母からの教えがあったから。
母が言うには網焼きをすると他の料理ができなくなるから、らしい。
それを守り、菊はフライパンでシャケを焼く。
さらにインスタント味噌汁を作り、白飯を茶碗にのせ、焼けたシャケを皿にのせ、朝ごはんが完成する。
リビングのテーブルに朝ごはんを1つずつ持って行く。
そして全部持って行ったところでイスに座る。
「いただきます」
朝ごはんを食べ始め、それを未来セイバーはじーと見つめる。
その行動に菊は箸を止めため息を吐く。
「分かったよ。後で血吸って良いから」
菊の言葉に未来セイバーは尻尾をブンブンと動かした。
一方その頃、凛とアルトリアはコンビニ弁当を食べ終え、歯磨きを済ませ、これからの事を公園で考える。
「まずはあのニセランスロットをどうにかしないとね」
「正直今すぐニセモノを倒したいところですが、まずはあの蘇生スキルをなんとかしなければなりません」
「そうよね、倒すには完全に肉体を消滅させるしかない、エクスカリバーならそれができる。だけど燃費が悪いから1発で決めなきゃならない。と言うわけでしょ」
「えぇ、ですがニセランスロットのマスターは投影魔術が使えます。エクスカリバーでさえ防いでしまうかもしれません」
「それはないわ、だってエクスカリバーのランクはEX。魔術師でどうにかなる代物じゃないでしょ」
「そうですね、少し謙遜しすぎました」
「そうよ、だから自信持ってニセランスロットを倒しましょ」
「はい」
ニセランスロットを倒したい、そんな思いを胸に秘め、アルトリアは決意を硬めるのだった。
一方そのニセランスロット事ジェイソンのマスターであるアゲハは2人分の朝食を作っていた。
と言っても納豆ごはんとウインナーと卵焼きの安価な物だ。
しかしジェイソンにとって日本の朝食は初めてであり、楽しみにしていた物である。
食事がテーブルに置かれ、日本の礼儀座法である「いただきます」をしてからジェイソンは慣れない手つきで箸を使って食べ始める。
「どう、日本の味は」
「おいしいよ、でもママのごはんの方がおいしいかな」
「本当にママの事が大好きなのね」
「うん、もし聖杯を手に入れたらママを蘇らせるんだ」
「そうなんだ、私は家族を蘇らせたい」
「2人で叶えようね、願いをさあ」
「そうね、そのためにも力をつけなくちゃ」
「うん、食べよ食べよ」
アゲハは元々魔術師の家系で、夫は父と母が決めた魔術師だった。
最初は戸惑ったが、次第に惹かれ合い、結婚、2人の子どもも生まれ、幸せな生活を送る、はずだった。
車に乗り、スーパーへ買い物に向かっていたその時、夫と2人の子どもは後ろに座っていて、アゲハは運転していた。
すると後ろから暴走したトラックが追突して来た。
アゲハは前の席に座っていて助かったが、夫と2人の子どもは即死した。
暴走したトラックの運転手も死亡しており、事件の原因はトラックの運転手が持病によって死亡し、その影響で急発進、車に激突したと考えられた。
家族を失い、心を痛める中、冷たいカメラのレンズとネタを見つける事しか考えていない記者の嵐でアゲハの心はボロボロ。
友達に勧められたメンタルクリニックにも通ってみたものの、「安定剤を処方しますね」と、返答は同じ。
友達や父と母は優しくしてくれたが、それだけではアゲハの心は癒えなかった。
最終的に自殺に追い込まれ、マンション10階から飛び降り様とした。
その時止めてくれたのはサーヴァント、クラスアサシンのジェイソンだった。
最初は恐怖したが、同じ境遇であったジェイソンに共感を持ち、さらに聖杯戦争で勝てばなんでも願いが叶うと言う。
聖杯戦争に勝つため、早速実家で聖杯戦争の文献を調べた。
そこには第4次聖杯戦争の際出場したバーサーカーのランスロットの姿が写真に収められていた。
「これだわ」
そう言って思いついた作戦はジェイソンにランスロットの鎧を装備させるという、不可能な事だった。
そう、普通の魔術師なら。
なんとアゲハは見ただけで物をトレースオンできるのだ。
例えばテレビショッピングでフライパンを見たら、それをトレースオンできる。
という形でランスロットの鎧をトレースオンし、ジェイソンに装備させた。
この事によってジェイソンはバーサーカーのランスロットの魔力によって武器を強化するスキルと相手にステータスがバレなくなるスキルが付与された。
またジェイソンの固有スキルを説明すると、
肉体が完全に死滅しない限り何度でも再生、強化、復活する。
ただし肉体は腐敗して行き、理性が失われて行く、
さらに決まった回数復活するとスキルが増え、クラスチェンジする。
〈恐怖再びEX〉
どんな物でも武器として使いこなせる。
〈殺人のエキスパートA〉
どんな環境でも生きる事ができる。
〈環境完全対応A〉
母の幻聴のサポートにより、敵を追い詰める。
〈母の助言B〉
無限に活動できる。
〈悪魔の心臓A〉
早く泳ぐ事ができる。
〈泳ぎの達人B〉
心は子どものまま。
〈時は止まったままC〉
激しい水流を浴びる事で弱体化し、子どもに戻ってしまう。
〈子どもの頃のトラウマA〉
となっている、
ジェイソンはかなり有名で、見られたらすぐに真名がバレるので、それを防ぐためランスロットの鎧を装備し、戦い挑む。
そんな経緯で今戦いに備えて朝食を食べている。
アゲハは元々魔力が少なく、ジェイソンに供給するほどの魔力はない。
その足しになればとごはんを作り、食べさせている。
「おかわり!」
「はーい、今装ってあげる」
こう見ると、まるで自分の息子の様に思える。
その考えが後でとんでもない事になるとは、アゲハは思いもしなかった。
夜、菊とセイバーは凛、アルトリアと合流し、サーヴァントを探しを始める。
数十分後、海の近くに面する倉庫であのニセランスロットとマスターのアゲハを発見した。
アルトリアは礼装を装着し、セイバーは剣と盾を構える。
するといきなりニセランスロットが叫びを上げ、剣を二刀流にして、アルトリアに襲いかかった。
アルトリアはインビジブルエアーでカモフラージュした〈エクスカリバー〉で攻撃を防ぐ。
「アーーーサーーー!」
「あなたが例えランスロットを完全にマネしても私には分かる、あなたはニセモノだ! ニセモノになる、それはホンモノを愚弄する事を覚悟してやる事。もしそれがないのなら、私は絶対に許さない!」
アルトリアの怒りの叫びに、ニセランスロットは叫び返す。
「セイバー、凛さんのセイバーさんを援護してくれ、俺がサポートする」
「オッケー、行くわよニセモノ!」
セイバーはニセランスロットを後ろから強襲する。
「トレースオン!」
アゲハは詠唱をすると、ニセランスロットの後ろにバリアを展開する装置を錬成され、セイバーの強襲を防ぐ。
「まずはあのマスターをなんとかしないと」
「なら2人で攻撃しましょう」
「ダメよ、あいつにはトレースオンがある。バリアを張られておしまい」
「じゃあどうするんですか」
「新名、サーヴァントの新名さえ分かれば倒せるんだけど」
「ならこれでどうですか」
菊はセイバーに身体能力を上げる魔術をかけ、サポートする。
それにより、バリアを破壊する事に成功、後ろから攻撃する。
だがフルアーマーのニセランスロットには剣が歯が立たず、逆に腹パンをくらう。
その威力はすざまじく、鎧が大きくへこみ、大きく吹き飛ばされ、アスファルトの地面に叩きつけられる。
「なっ、なんて力なの」
もし鎧を装備していなければ腹に穴が開きあの世行きだった。
それほどの強敵。
一体どうすれば勝てるのか?。
そんな事を考えている間に新たなサーヴァントが出現する、
「あれは、英雄王ギルガメッシュ!?バーサーカーとして召喚されていたのね」
凛が言うギルガメッシュとは、40年前、第4次聖杯戦争の際、召喚されたアーチャーのクラスのサーヴァントである、
10年後の第5次聖杯戦争にて、その傲慢さから衛宮士郎【エミヤシロウ】に敗れ、この世からいなくなった。
今回はバーサーカーとしての参戦。
凛にとって2度と会いたくなかったサーヴァント。
まあギルガメッシュの方は忘れているだろうが、それがサーヴァントの定めである。
「セイバーーーーー!」
ギルガメッシュはそう叫びながら、宝具、〈ゲート・オブ・バビロン〉を発動し、なんとマシンガン2丁を取り出し、装備、アルトリアに向けて乱射する。
「なんであいつ銃なんか貯蔵してるのよ!?」
「えっ、だってそう言うサーヴァントなんでしょう?」
「あいつは古代の物しか貯蔵しないの、だから近代兵器が貯蔵されてる事がおかしいのよ」
凛の説明に、納得の菊、
アルトリアはニセランスロットから一旦離れ、〈エクスカリバー〉で銃弾を弾く。
「アーーーサーーー!」
「セイバーーーーー!」
2騎のサーヴァントにもはや呆れを感じる凛。
「ニセモノのランスロットに理性を失ったギルガメッシュ。もうわけがわからないわ」
マスターにはサーヴァントのステータスを見る事ができる。
菊はそれを使い、ギルガメッシュのステータスを確認する。
「オールステータスAの化け物じゃないですか!?」
「元が強いからね、バーサーカーにしたらとんでもない事になるわ。マスターは頭が良いわね、傲慢な性格で本気を出さないギルガメッシュを理性を失わせる事で本気を出させ、言う事を聞かせやすくするなんて」
「つまりずっと本気モードって事ですか!?」
「そう言う事、銃もおそらくマスターが貯蔵させた物でしょう、だけどセイバーにはそんな物効かないわよ」
凛の言う通り、アルトリアはギルガメッシュの攻撃をすべて防ぎ、斬りに行く。
だがギルガメッシュはマシンガンを捨て、〈ゲートオブバビロン〉から〈ゲイボルグ〉の原型となった〈ゲイボルグプロト〉を取り出し、〈エクスカリバー〉から身を守る。
「アーーーサーーー!」
そこにニセランスロットが乱入しようとする。
しかしセイバーが攻撃を行い、気を逸らさせる。
「ニセモノ、あなたの相手はアーサーじゃなく私よ」
「アッワーーーーーー!」
ニセランスロットはアルトリアからセイバーに標的を変更し、剣を振り回す。
それを盾で防ぎ、攻撃の隙を伺う。
「トレース、オン」
アゲハは詠唱すると、ハンドガンが錬成され、手に収まり、撃ってニセランスロットを援護する。
セイバーが銃弾を盾で防いでいる間に、ニセランスロットが攻撃してくる。
良いコンビネーションだ。
だが、菊とセイバーのチームも負けちゃいない。
菊はセイバーの前にバリアを展開、ニセランスロットの攻撃を防ぐ。
「そろそろ私も、援護しないとね」
凛は持っていたアタッシュケースを開く。
そこに入っていたのは大量の宝石。しかも魔導石だ。
「私の魔術は宝石がないと始まらないのよ」
そう言って魔導宝石を5つほど取り、魔力を注ぎ込み、ギルガメッシュに投げる。
宝石はギルガメッシュの腹部に命中、爆発を引き起こす。
だがその程度ではダメージを与えられず、逆に逆鱗に触れてしまった。
ギルガメッシュは〈ゲイボルグプロト〉を構えながら凛に襲いかかる。
「させるかー!」
そこにアルトリアが割り込み、〈エクスカリバー〉でギルガメッシュの攻撃を防ぎ、鎧を傷つけた。
「セイバーーーーー!」
「バーサーカーにまで落ちましたか。まあそれはマスターの策略による物でしょう。だとしても英雄王、あなたのその姿は見たくなかった」
アルトリアの嘆きの言葉に、ギルガメッシュは少しうろたえのか、後ずさりする。
が、すぐ持ち直して、〈ゲイボルグプロト〉を捨て、ゲートオブバビロンからアサルトライフルを取り出し、アルトリアに向けて乱射する、
「そんな物!」
アルトリアは〈エクスカリバー〉で銃弾を弾き、一気に距離を詰める。
「てりゃー!」
斬りこもうとしたその時だった。
ギルガメッシュは最強の宝具〈エア〉を取り出し、〈エクスカリバー〉を防いだ。
一方その頃、ニセランスロットとセイバーの戦いは、ニセランスロットが優勢で事が進んでいた。
連撃に追い詰められ、ピンチになる。
「さっき、もう1人のセイバーが、ニセモノになる事はホンモノを愚弄する覚悟があるからできる事、なんて言ってたけど、そんな物さらさらないわ。これは勝つための行為。ニセモノだろうがホンモノだろうが関係ない。ただ勝てれば良いのよ」
アゲハのその言葉に菊は「確かに」と納得する。
「納得してる場合!、あなたのセイバーがやられそうなのよ!少しは心配しなさい!」
「心配?、セイバーはそんなカンタンにやられる様なサーヴァントじゃないですよ」
その言葉を聞いたセイバーのやる気が上がり、なんとニセランスロットの剣を両方吹き飛ばした。
あまりの衝撃に、手が痛み、後ずさりする。
ニセランスロットは吹き飛んだ剣を取ろうとすると、パメラの幻聴が聞こえてくる。
『ダメよジェイソン。その剣を取ったらその隙にやられてしまうわ。こう言う時はアゲハがトレースオンしてくれるのを待つのよ』
(分かったよママ)
ニセランスロットは剣を取るのをやめ、アゲハがトレースオンしてくれるのを待つ。
「隙やり!」
その隙をついてセイバーが剣を振り下ろす、
しかしフルアーマーのニセランスロットにまた剣が弾かれる。
「こいつ強すぎでしょう!?」
そう叫びたくなるほど鎧が硬く、力も強い。
一体どうすれば良いのか。
菊は1つ思いついた。
それは服を脱がす魔術〈スティール〉を使用する事である。
元々イタズラ目的で使うために独学で覚えた魔術だが、まさかこんな緊急事態に使うとは思わなかった。
「スティール!」
その言葉に凛、そしてアゲハは顔を赤くし、恥ずかしくなる。
〈スティール〉の影響で、ニセランスロットの鎧が脱げ、正体がバレる。、
ホッケーマスクを被り、薄い緑のシャツに上に茶色いジャケットを着込み、ジーンズを皮製のベルトで留め、紺色の靴を履いている。
「ニセランスロットの正体がジェイソン!?」
「まさかアサシンとして召喚されていたとはね、菊君、弱点は水よ、ジェイソンを海に誘導して突き落とせば勝ち目があるわ」
「分かりました。セイバー、話は聞いてたよなぁ」
「オーケー、任せておきなさい!」
セイバーはジェイソンに攻撃を仕掛け、作戦を実行するのだった。