ダンジョンで安寧を求めるのは間違ってるだろうか   作:ステラ・グローリア

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20話 アイズの葛藤

「今日も元気ないなぁ、アイズたん……」

 

 

胸壁に寄り掛かりながら、ロキが呟いた

ロキ・ファミリアのホーム、黄昏の館の空中回廊。搭と搭を繋ぐ石造りの渡り廊下からは眼下にある中庭が見張らせる

 

ロキの視線の先、数本の庭木と僅かな芝生がある空間の中で、金髪の少女が寝そべる蒼白い毛並みの巨狼を背凭れに座っていた

 

 

「昨日一日もずーっとあんな感じやったし……」

 

「珍しいを通り越して不可思議だな、アイズが時間を無為に過ごすのは」

 

「そうやなぁ……ロボォ、羨ましいわぁ」

 

 

回廊には巨狼に嫉妬の視線を向けるロキの他にもう1人、アイズを見守る亜人がいた

凛々しい雰囲気を纏う麗人、リヴェリアは胸壁に肘をついているロキの隣で言葉を交わす

 

 

「いつもなら遠征の後だろうがダンジョンに突っ込むし、ロボ以外が止めても聞かんし、そのロボもウチらが頼み込んで必要って判断したときしか止めてくれんし……まぁ、目の届くとこにいてくれる分、こっちは安心できるんやけど」

 

「そこは同意するが、ああも塞ぎ込んでいる原因は、やはり酒場の一件だろう」

 

「そんなにベートにセクハラされたの嫌やったんかなぁ。あの温厚なロボもめっちゃ怒っとったし。あ、因みにベートも凄い勢いで凹んでるで。ロボのOHANASI付きやったからなぁ」

 

「知らん。自業自得だ」

 

 

酒場で開いた遠征の祝宴はもう2日前になる

1人アイズが外に出たあの後、入れ替わるように入ってきたロボによってベートが昏倒させられ、ロボと仲の良い店員により縄で身動きを封じられた後、ティオナ達の報復を受け、店の外に吊し上げたのだ

 

目を覚まし事の顛末をロボのOHANASI付きで聞いたベートは今はやってしまったとばかりに項垂れており、ティオナ達と常にアイズの側にいるロボによりアイズに近付けさせてすら貰えていない

 

 

「でもあんなやり取りで落ち込むほど、アイズたん繊細やないし……そんくらいならロボが慰めれるはずやし……」

 

「他に原因があったということか」

 

「多分な。あの後、ロボが明け方まで帰ってこんかったって報告もあったし、関係ないとは思えんのよなぁ」

 

 

リヴェリアは首を傾け、何もするわけでもなく中庭にいるアイズとロボを瞥見する

当時の酒場で他に思い当たるのは、アイズの前に外に向かった店員と、姿を見ることもかなわなかった客の1人

恐らくはロボはアイズの沈んでいる理由を知っているのだろう。しかし、ロボがアイズの断りなく教えてくれるはずもない

 

 

「リヴェリアに任せた。ウチがあれこれするより、そっちの方がええやろ。じゃ、後はお願いな、ママ」

 

 

目の前を通りすぎていく際、肩に手を置いて、ロキは回廊から去っていく

リヴェリアはロキ・ファミリアの中でも古株も古株だ

ロキはもとより、彼女はアイズとの付き合いが長く、何よりロボの次に深い

 

 

「……誰がママだ」

 

 

溜息をつきながら、リヴェリアは中庭へと向かった

 

 

 

 

 

 

私は狼である

名前は狼王ロボである

 

 

中央搭を囲むように出来ている円環型の中庭で私は芝生の上に寝そべり朝日を浴びて微睡んでいた

そんな私の身体を背凭れにアイズは座ってただじっと空を見上げていた

 

アイズは昨日からずっとこんな感じで毎日のようにやっていた追い掛けっこもやってない

やはり小兎、確かベルだったか。彼の事を気にしているのだろう

 

ベルがあの後1人で夜のダンジョンに潜っていたことは一応伝えてある。余計に気にやむとは思ったけどアイズには伝えるべきだと思った

 

原因を作ったベートにも説教をして暫くはアイズに近付かないように釘も刺した

いつものベートの罵倒がそのままの意味じゃないことくらいは私にも分かってる。けど、あれはない。酔った勢いとはいえ、あれでは唯の発情犬だ。礼節と誇りを持たない狼は唯の犬である

あれで狼の名を冠するとは………私は溜息をついた

 

 

「アイズ」

 

 

そんな事を考えているとリヴェリアが現れた

 

 

「リヴェリア……」

 

「相変わらず早いな。恒例のはしていないようだが」

 

 

何処からか見ていたのだろうか?

視線をリヴェリアと合わせていたアイズは、その金の瞳を私の顔に向けそっと頭を撫でる

これは何か気まずいときに良くやるアイズの癖だ

この癖のことはリヴェリアも良く知ってるからか、ほんの少し間が空く

 

 

「何があった」

 

 

アイズは顔を上げ、しかし私の頭はなで続けている

言うべきか葛藤しているのだろう。小さく視線が彷徨っている

暫くすると決めたのだろう。ぽつぽつと、アイズは話し出した

 

 

「酒場であった、ミノタウロスの話……」

 

「ああ」

 

「逃げた男の子……冒険者が、あの酒場にいて……」

 

 

語られるのは酒場で起きた私とアイズにしか分からない出来事

直ぐにベートを止めなかった私達の罪であり後悔の話。そして私が見たベルの努力の話

 

 

「ロボは止めなかったのか!見ていたのだろう!」

 

 

案の定怒られた

いや、アイズ以外にこの話が知れたら怒られるだろうな。とは思っていたけど怒ったリヴェリアはやっぱり恐い

私は誤魔化すように顔をそっぽに向けた

 

 

「ロボを怒らないで………止められなかったんだと思うから……」

 

「……それで、お前はどうしたい?」

 

 

リヴェリアが溜息をついて再度アイズに尋ねた

私の事は置いておくことにしたらしい。ありがとう、アイズ

 

 

「……分からない、けど……謝りたい、んだと思う……」

 

 

アイズは小さな声で、そう答えた

 

 

「そうか……」

 

「……」

 

 

会話が途切れ、見計らったように、館全体へ伝わる鐘の音が鳴り響く

朝食を知らせる合図だ

 

 

「自信がないなら、まだ悩め。お前は1人じゃないんだ。言ってくれれば、相談にも乗ってやる」

 

「うん……」

 

「朝食だ。行こう」

 

 

リヴェリアはそう口にし、踵を返す

アイズが立ち上がり私も起き上がり彼女の隣に立つ

 

 

「リヴェリア……」

 

「?」

 

「……ありがとう」

 

 

アイズの表情に淡い温もりが宿る。ああ、とリヴェリアも頬を緩め振り向いた顔を戻し、中庭から搭へと向かった

 

 

「……ロボ、行こっか………いつもありがとう」

 

 

私の背に乗り頭を一撫しそう言った




想定してたより話が進みませんでした
次回はティオナ達との買い物なんですけど
ロボって洋服屋入れないんですよね
別行動にした方がいいんでしょうか?

敢えてスキップ?


ところで誰か私のロボとアイズが一緒にいる絵を描いてくれたりしないでしょうか?
書いてくれる方がいらっしゃれば御一報下さいませ


それでは、また次回、お会いしましょう
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