デート・ア・グリムノーツ   作:☆桜椛★

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第10話とか……めどい

私はパペットが戻って喜んでるよしのんを眺めながらこれからどうやって帰るかをめんどいけど考えている。このデパートの中に入って、おまけ付きだけどよしのんを見つけたまでは良かったけど、この後どうやってよしのんを連れてここから逃げるかをめんどかったから考えてなかったの。

 

 

(私だけならまたカオス・ドロシーになって銀の靴の力で神社まで転移すればいいんだけど、今回はよしのんもいるしなぁ……ダルい)

 

 

この前めんどかったから説明省いてたけど、カオス・ドロシーの銀の靴は自分以外の生物や自分より重くて大きいものと一緒に転移したら、解除した時に感じる疲れがすっごく大きくなるんだよね……めどい。

 

 

「(う〜ん……どうしよう?)……うん?」

 

「シド〜…疲れた〜…お腹も空いた〜……」

 

「おい十香しっかりしろ!お前そんなダラ〜ってした感じじゃなかっただろ!?どうしたんだよ!?」

 

 

なんか騒がしいと思ったら、“わたしだけのせかい”の影響でダラ〜ってしてる十香ちゃんの肩をロリコン犯罪者が揺すって正気に戻そうとしてた。

 

 

「頑張ってるとこ悪いけど、その子は後1時間くらいはそのままだから。ほっとけば治る。だから静かにして……うるさい」

 

「い、1時間って……それまで十香をどうすりゃいいんだよ」

 

「シド〜……きなこパン〜……」

 

「あーもう帰ったら食わせてやるから!頼むからしっかりしてくれよ!」

 

 

きなこパン……食べた事無いけど、あんな風になっても食べたがる程美味しいのかな?ダルいけど、興味湧いたから今度買って食べてみよ。パン屋さんで買えるよね?

 

私は十香ちゃんが食べたがるきなこパンっていう食べ物を今度食べようと思っていると、急にロリコン犯罪者が耳に手を当ててボソボソ話し出した。

 

 

なんだよ琴里?今十香の事で忙しいんだよ。……え?ASTが?……なんだって!?

 

 

なんかボソボソ話してると思ったら、今度はいきなり驚いた様な表情で大きな声を出した。その声に驚いてさっきまで喜んでいたよしのんはビクッと肩を震わせて私の背中に隠れちゃった……めどい。

 

 

(つーかよく見たらこいつの耳、なんかスパイ映画とかで見そうな耳に付けるアレっぽいのがあるじゃん。しかも誰かの名前とか、ASTとかどっかの組織名っぽいの呟いてたし……ホントにこいつ何なの?)

 

 

私がダルいけどロリコン犯罪者を少し警戒してると、いきなりこの階の窓ガラスが割れて幾つもの銃声と一緒に弾丸の嵐が向かって来た。私は凄く疲れるけどすぐに『♣︎』のトランプ兵を3体生み出して私とよしのんを守らせた。ホントは十香ちゃんの分も含めて3体だったんだけど、ロリコン犯罪者が十香ちゃんを引っ張って物陰に隠れたから、1体無駄に出しちゃった……ダルい。

 

 

ドガガガガガガガガガガガ!!!

「あーもうめどい!なんなのいきなり!?」

 

 

トランプ兵達の盾の隙間からチラッと割れた窓の方を見てみると、痴女軍団達が私達に向かって銃を撃ちまくってた。しかも柱の陰に隠れたロリコン犯罪者と十香ちゃん達の方じゃなくて、私達を集中的に狙ってる……ウザい。

 

 

ドガガガガガガガガガガガ!!!

ドガガガ!!!ドガガガガガ!!!

 

 

つーか室内だから銃声が響いてうるさい!周りの柱や商品とかに弾が当たって飛んで来る破片とかがウザい!ダルい!しんどい!あぁ〜……めんどいめんどいめんどいめんどいめんどいめんどいめんどい!!!もう頭に来た!

 

 

「めどいけど………ちょっとだけ、本気出す!〈アリス・アンダーテール〉!」

 

 

私は片手に〈アリス・アンダーテール〉を出現させると、もう片方の手に〈混沌の栞〉を出現させた。よしのんとロリコン犯罪者は私のいきなりの行動にビックリしてるみたいだけど、そんな事は気にせず私は〈アリス・アンダーテール〉に〈混沌の栞〉を挟んだ。すると私は紫色の煙っぽいのに包まれた。

 

 

『え!?え!?何これ!?ちょっと何したのアリスちゃん!?』

 

「こ、これは!?おい琴里!一体何が……!?」

 

 

………まだ晴れない煙の中で、御二人の驚きの声が聞こえて来ます。確かに、突然私が紫色の煙に包まれれば、私の能力を知らない御二人は驚く事でしょう。少し申し訳ない気持ちになりますね。

 

 

(さて、私も私のやるべき事をやりましょう)

 

 

私は煙の中で右手に()を、左手に軍旗(・・)を持ち、煙を薙ぎ払う様に剣を振りました。

 

 

『え!?お、オネーサン……誰?』

 

「な!?」

 

 

煙が晴れた事で見える様になった私の姿を見て、よしのんさんと……確か五河さんでしたか?御二人は驚いた表情を浮かべて私を凝視しています。無理もありませんが、そんなに見つめられると少々照れますね。ですが、今はそれどころではありません。

 

 

「申し訳ありませんが、今は説明する時間はありません。私がこれから言う事をよく聞いて下さい」

 

 

 

 

 

 

識別名《ハーミット》と呼ばれる精霊が逃げ込んだデパートの外で待機していた痴女軍d…ゴホン!AST達の隊長である日下部(くさかべ) 燎子(りょうこ)は、送られて来たとある報告を聞いて驚きの声を上げた。

 

 

「なんですって!?精霊が2体!?それは確かなの?」

 

「「「「「えぇ!!?」」」」」

 

 

思ったより声が大きかった為、彼女の近くにいた部下達も報告の内容を聞いて驚きの声を上げながら思わず自分達の隊長を見る。その間も日下部は報告を聞き、何度か驚いた表情を浮かべながらも、最後には「了解」と言って通信を切った。

 

 

「今報告があったわ。周囲の防犯カメラの映像を調べた所、あのデパートの中にいるのは《ハーミット》の他にもう1体、以前私達を一瞬で全滅させたあの精霊がいるらしいわ」

 

「『「『「ッ!!!」』」』」

 

 

日下部の言葉を聞いて、直接聞いていた隊員と通信機越しに聞いていた隊員達の間に緊張が走った。まぁその精霊はカオス・アリスの事なのだが、ASTのメンバー達は彼女を特に警戒していた。

 

初めてカオス・アリスと交戦したあの日、彼女達は怠惰の世界を経験した。精霊の討伐と言う目的の為に武器を持った彼女達の戦う意思は、カオス・アリスが作り出した世界に入った瞬間、完全に消え失せた。精霊に並々ならぬ敵意を抱いていた折紙でさえ、『精霊と戦うなんて面倒…』と思って武器を下ろし、地面に座り込んでしまう程だった。全ての事が面倒に感じ、次第にその世界にいる事が心地良く感じ始め、カオス・アリスの“わたしだけのせかい”の効果が完全に切れる頃には、折紙以外の隊員全員がしばらく医務室のベッドから出る事を拒否する程で、彼女達の上司もカオス・アリスの力を危険視していた。

それをカオス・アリスは「手加減はする」と言って行った。なら、手加減無しだったら、いったい自分達はどうなっていたのだろう?そう考えるとASTの隊員達はブルリと体を震わせた。

 

 

「上からも攻撃の許可は下りたわ。総員、《ハーミット》と例の精霊の姿を確認次第攻撃開始!特に例の精霊には注意しなさい!」

 

「『「『「了解!!」』」』」

 

 

日下部の指示に従い、隊員達は気を引き締めてそれぞれの武器を構えて配置に着いた。そして1人の隊員がデパートの窓から《ハーミット》……よしのんと側にいるカオス・アリスの姿が見えたのを確認した。その部下の報告を聞いた日下部は頷くと、他の隊員達をそこに集結させ、攻撃の号令をかけた。

 

 

「撃ち方始めぇ!!」

 

ドガガガガガガガガガガガ!!!

ドガガガ!!!ドガガガガガ!!!

 

 

日下部の号令がかかった直後、隊員達は一斉に射撃を開始した。放たれた弾丸の嵐はデパートの中にいるカオス・アリス達に向かっていくが、トランプ兵達が防御するのを見て射撃を続行する。

 

 

(このままやられてくれたら楽なんだけど……)

 

 

日下部は部下達と一緒に射撃を行いつつ、攻撃を受けている精霊がどう動くかを警戒していた。この程度で精霊が倒されるとは思っていないからだ。そしてしばらく射撃が続いたその時……。

 

 

ドガァァァァァァァァァァン!!!

 

「「「「「ッ!!?」」」」」

 

 

突如攻撃していたフロアが爆発炎上し、滞空していたAST達を爆風で吹き飛ばした。突然の爆発に驚きつつも、日頃訓練を受けていた彼女達は空中で上手く態勢を立て直すと、先程まで自分達が攻撃していた場所に視線を向ける。

するとそこには、爆発を起こしたであろう凛とした表情の1人の女性が、燃え盛る炎の中でこちらを見上げていた。

 

彼女は右目に紫色の薔薇を模したアイパッチを付けており、肌は白く、膝辺りまで届く長い髪は上から金、オレンジ、水色の順に色が変わっている。服装は背中が開いた黒いドレスと鎧を混合させた様なものを身に纏い、両腕にはガントレットを嵌めている。右手には剣、左手には風に靡く真紅の軍旗を持っており、その姿は御伽噺などに出て来る姫騎士を思わせた。

 

 

「……本来ならば、私は祖国を守る為に戦っている貴女方と敵対する事はしたくはありません。貴女方にも守るべきものがあり、貫くべき正義があり、やり遂げなければならない使命があるのでしょう。ですが……」

 

 

彼女が一度話を区切ると、彼女の周りに幾つもの紫色の煙が立ち昇り、その中から盾と槍、もしくは弓矢を持った仮面を付けた昆虫の様なモンスター……ウィングヴィランと呼ばれるヴィラン達が現れた。

AST達が突然現れたヴィラン達に驚く中、ヴィラン達は盾と槍を構え、弓を引く。そしてヴィラン達を生み出した彼女は左手の軍旗を掲げて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の私の使命は、貴女方の使命を妨害する事!私の名はカオス・ジャンヌ!貴女方が今倒すべき敵!さぁ……私を殺して正義を示しなさい!!」


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