路上ライブで大儲けをしてから何日か経った。正確な日数は知らない……だって数えるのダルいし、1日のほとんどを拝殿の中で寝るかお菓子食べるかのどっちかで過ごしてる私には日にちとか関係ないもん。
「ん〜♪……このクッキー美味しい」
そして私は今日も
「ぷはぁ〜♪……食っちゃ寝生活サイコ〜♪」
あ、勘違いされるとめどいから一応言っとくけど……この布団や冷蔵庫とかは盗んだ訳じゃないから。ちゃんとお金は払ってあるから、盗んでない……買いに行くのめんどかったから、生み出したヴィラン達にお金を持たせて買いに行かせたけど。
「そう言えば……あの日はやたらとパトカーのサイレンがうるさくてウザかったなぁ……まぁどうでもいいけど」
お陰で今はこうして快適に1人食っちゃ寝パーティー生活を満喫してるから、サイレンが鳴るくらいなら許せる。それに今回はちょっと疲れたけど、この神社全体を2つの特別な結界で覆った。
1つは斬撃とか爆発とかを防ぐ結界。これでこの前みたいにあのウザい斬撃とかに寝床を消し飛ばされる心配もない……思い出したらムカついてきた……クソ。
そしてもう1つは時間を巻き戻す結界。これは結界内に入ろうとする人間の時間を1分くらい前に巻き戻すもの。1回だけじゃただ巻き戻すだけだけど……何回か巻き戻しが続くと神社に入ろうとする事が無意識にめんどくなって、ダラダラしたり、ぐだ〜ってしたり、家に帰ろうと思うようになる。だからこの神社に人間がやってくる事は絶対にない……あ〜、説明するのダルい。
(つーか、誰に説明してるの私?……ん?)
……パシャッ!……パシャッ!
なんかまた外から水溜りの上を跳ねる様な音が聞こえてくる。なんで?さっき誰に向けてか知らないけど、結界の説明したばかりなんだけど?言ったそばから異常とか発生しないで欲しい……はぁ、めどい。
「……あ、もしかしてよしのんかな?あの子精霊だし、この結界疲れるからちょっと魔力ケチって人間にしか効果が無いようにしちゃったし」
よしのんだったら別にいいかな?あの子のパペットはテンションが高くてウザいし、うるさいけど……一緒にお菓子を食べたり、ゲームしたりするのは楽しかったし……よし、ちょっとかったるいけど誘っちゃおう。
……パシャッ!ズルッ!ベッタァァァァン…!!
「あ、またこけたっぽい……」
私は前と同じ様にこけたのかな?と思いながら、しんどいけど布団から出て拝殿の襖を開けた。そしてそこには私が予想した通り、前と同じ緑色のウサ耳付きフードのレインコートを着たよしのんがいた。
・・・あのウザいナンパやろーに怯えてるけど。
「……トランプ兵」
「へ?え!?ちょ、ちょっと!?」
私は能力を発動して、片手に剣を持った『♥︎』のマークのトランプ兵を4体生み出して、あのウザいナンパやろーを包囲させた。トランプ兵達に剣の切っ先を向けられたナンパやろーは、ビックリしながら両手を上に上げた。
なんでこいつが
★
カオス・アリス曰くウザいナンパやろーこと五河 士道は、突然発生した紫色の煙の中から出て来たトランプ兵に剣を突き付けられて内心滅茶苦茶焦りながら必死に両手を上に上げていた。
(ト、トランプの兵隊!?これは確か
士道は自分に剣を向けているトランプ兵達が、カオス・アリスが生み出したものだと理解していた。以前自身の義妹である琴里にカオス・アリスが痴女軍団…もといASTと戦っている映像を見せてもらった事があるからだ。
(てか、なんで俺はこいつらに囲まれて剣を向けられてるんだ!?俺何もしてないだろ!?……あ、いや…なんか女の子を怯えさせちゃったけどさぁ)
士道は少し離れた場所で目を見開いて口をポカンと開けたまま固まっている緑色のレインコートを着た女の子…よしのんをチラリと見た。
士道は学校から帰る途中に突然雨が降って来たので、仕方なくこの神社の境内にある木の下で雨宿りをしていた。そこに水溜りの上を跳ねて遊んでいたよしのんが現れ、士道の目の前で派手にころんだ。
それを見た士道は彼女に大丈夫かと尋ねたが、ころんだ拍子にパペットを落としたよしのんは士道に怯えて後退った。そこにカオス・アリスのトランプ兵達が現れたのだ。
(待てよ?このトランプの兵隊がいるって事は、もしかしてあの子も……?)
士道はこのトランプ兵達がいるなら
「……めどいから動かないでよ?はぁ……雨ウザい」
降り続ける雨をウザがりながら、カオス・アリスは落ちていた白いウサギのパペットを拾い上げ、よしのんに投げ渡した。よしのんはいきなり飛んで来た自分のパペットに驚きつつも、上手にキャッチすると左手に嵌め、パペットをピコピコ動かして腹話術で話し始めた。
『ヤッハー!久しぶりだねーアリスちゃん♪こんな所で会うなんて奇遇だねぇ?』
「……相変わらずテンション高くてウザい……ダルい」
『あはは〜……アリスちゃんこそ相変わらずの面倒臭がり屋さんだねぇ〜』
よしのんはこれから先も一生変わらないであろうカオス・アリスの面倒臭がり屋な性格に少し呆れた様に言った。その口調にカオス・アリスは少しだけムッとした表情を浮かべる。
「……うっさい、バーカ。そっちだって、また水溜りの上を跳ねて遊んでてこけてんじゃん……ダッサ」
『ちょっとそれは酷くない!?』
「事実だし、別にいーじゃん……それより、またゲームして遊ばない?お菓子やジュースもある」
『ムムム……なんだか納得いかないけど、お腹もペコペコだし、そうさせてもらうよ!』
カオス・アリスの誘いに乗ったよしのんは、拝殿に向かって歩き出したカオス・アリスに付いて行く。
「って!ちょっと待ってくれよ!俺はこの後どうなるんだ!?」
「……あ、忘れてた。よしのんは先に中入ってて、私はめどいけど、このロリコン犯罪者とちょっとだけ話してくる」
『ロリ……?よく分かんないけど、分かったよ〜♪』
よしのんはコテンと首を可愛らしく傾げながらも、カオス・アリスに言われた通りに拝殿の中へ入って行った。士道は「誰がロリコン犯罪者だ!」とツッコミたかったが、トランプ兵に剣を突き付けられたので、納得いかないが仕方なく黙った。
「はぁ……で?貴方はここで何してるの?まさかまたナンパ?彼女とは別れたの?」
「い、いや……ナンパはしてないって。俺はただ雨宿りする為にこの神社に来て、そしたら水溜りの上を跳ねて遊んでいたあの子がころんだから、大丈夫か?って聞きに言っただけだよ」
「ふ〜ん……で、近付いたら怯えられたってこと?はぁ〜……ダッル。つーか、貴方どうやってこの神社に入って来たの?」
「え?どうやってって……普通に入ったんだけど?」
士道はカオス・アリスの質問に疑問を抱きながらも自分がどうやって入って来たのか答えた。それを聞いたカオス・アリスは首を傾げながらジッと士道を見詰めた後、もう1つの質問を投げかけた。
「……貴方、ホントに人間?」
「は?そ、そうだけど?」
士道は少しだけ自信なさげに頷いた。ホントは「当たり前だろ?」と言いたい所だったが、普通の人間がお腹に大きな風穴を開けられて生きていられるとは思えなかったので、士道は自分でも本当に人間なんだろうかと少し心配になった。
「………まぁ、いいか。じゃあさっさと帰ってよね。私これからあの子と遊ぶんだから……邪魔とかナンパとかされるのウザいし」
カオス・アリスはトランプ兵達を退がらせると、さっさと帰れとでも言いたげな視線で士道を見詰めた。
士道は何故カオス・アリスがここにいるのか?何故精霊があの子と一緒にゲームする程の仲になっているのかと色々聞いてみたかったが、トランプ兵が剣を構えて一歩近づいて来たので、士道は後で琴里に報告しようと決めて全速力で神社を出て行った。
「あーあ……後で結界の修正とかしとかないと……はぁ、ダルい」
カオス・アリスはトランプ兵達を消すと、自分も神社の拝殿の中へ入って行った。