ゼロの使い魔 -KING OF VAMPIRE-   作:歌音

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故・ヤマグチノボル氏に捧ぐ…


序章/夢の中の王

 

 

 

 

 

 

 

私は、暗い回廊を歩いている。

 

そこがどこかはわからない。

 

ただ、壁に施された装飾や回廊の長さから、貴族の屋敷などではなく、もっと位の高い…そう、『城』だと思う。

 

どれだけ歩いただろう…やがて、大きな扉の前に私はたどり着いた。

 

大きな扉…しかし、その扉にも細やかな装飾が、隙間なく施されている。

 

(ここが『城』だとしたら…これは『王の間』ね…)

 

私が扉の前に立つと、扉は独りでに開いていく。

 

そして扉の向こうには玉座が…

 

「…!?」

 

私は『ごくりっ』と息を呑んだ。

 

『王の間』の玉座に座っていたのは、眩いばかりの輝きを持つ『黄金の王』だった。

 

そこで私は射し込む朝日によって目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空は蒼く、何処までも高く。

 

白い雲は風に乗って流れ。

 

一つの太陽は豊かな緑が生い茂る草原を温かく照らしていた。

 

その中心には黒いマントを着けた集団がいた。

 

1人を除いてその全てが10代の少年少女である。

 

その傍らには様々な生物がいた。

 

その中で1人の少女が杖を持って呪文を唱えていた。

 

ピンク色で緩やかなウェーブが掛かった長い髪を持った可愛らしい少女である。

 

だが、その顔は必死の形相だった。

 

余裕が無く、渾身の願いをもって呪文を唱え続ける。

 

今日は大切な日。生涯のパートナーとなる使い魔を召喚し、メイジとしての新たな第一歩を踏み出す日だ。

 

しかし、クラスの者達が使い魔を呼び出す中、彼女は使い魔の召喚に成功していない。

 

「早くしろよな~、ゼロのルイズ!」

 

「もう何回目だよ、いい加減成功させろよな」

 

「早くしないよ日が暮れちまうぞ~~」

 

周りからそんな野次が飛んでくる。

 

(うるさい!黙れ!)

 

だが、少女…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに構わず、呪文(ルーン)を唱え続ける。

 

「ミス・ヴァリエール。心を落ち着かせてゆっくりルーンを唱えなさい。力が入りすぎですよ」

 

(うるさい!うるさい!うるさい!)

 

 ルイズはその忠告をまったく聞かず、力強く杖を振り上げた。

 

(絶対に喚んでみせるんだから!誰よりも美しくて!誰よりも気高くて!誰よりも…!)

 

そこでルイズは昨日の夢を思い出す。

 

あの眩いばかりの『黄金の王』を…

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 宇宙の果ての何所かに居る私のシモベよ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴える!我が導きに答えなさい!!」

 

 ルイズは杖を勢い良く振り下ろした、その瞬間…

 

ドガゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!

 

 

今まで自分が出した中でも一際大きな爆発音が草原に響き渡った。

 

「なんだ~、また失敗か?」

 

「いい加減にしろよな~」

 

「さすがはゼロのルイズだ!」

 

その爆発音を聞いて、周りからそんな中傷が飛んでくるがルイズは無視した。

 

ただ、煙が晴れるのをじっと待った。

 

(ドラゴンとかグリフォンとかユニコーンとか贅沢は言いいません。始祖ブリミルよ、私に立派な使い魔をお与え下さい!!)

 

しかし、現れたのは大きく予想を外れていた。

 

『ギャオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォンッ!』

 

全てを支配してしまえそうな計り知れない咆哮が辺りに響き、煙を一気に吹き飛ばす。

 

「あ、ああ、はは…」

 

その咆哮の主にルイズすらも腰を抜かす。

 

周りの生徒もその姿を見て腰を抜かしたり、逃げ出しそうになるものもいる。

 

ルイズの前に現れたのは巨大な竜。

 

タバサの呼び出した風竜よりも何倍も大きい。

 

奇妙な事は、その竜の体が城でできていることだったが、感じた事も無い…いや、こんな魔力を発する存在がいるということも信じられないくらいだった。

 

「ふふ、ふふふふっ!やったわぁぁぁぁ!」

 

しかし、そんな事ルイズにとっては関係ない。

 

この強大な魔力に満ちた竜を自分は呼び出したのだ!

 

もう誰にも自分を『ゼロ』とは呼ばせない。

 

「見なさい!これが私の使い魔!」

 

バッサッサッ…

 

「もう誰も私を馬鹿になんかさせないわ!この私の…」

 

バッサッサッ…ヒュー

 

「使い…魔…?」

 

竜はその場からアッサリ飛んでいってしまった。

 

あの巨体には似合わないほどの速さで。

 

「逃げた…?」

 

竜の去っていった所を見て呆然となっているルイズの後ろで、一人の生徒がそう呟いた。

 

「こ、こら~!戻りなさい!あんたのご主人様はここよ~!」

 

「バカヤロー!勝手に人のモン取り上げてんじゃねぇ!」

 

「えっ?」

 

先程竜のいた場所から声がした。

 

「渡!しっかりしろ渡!なんか知らんがこのペタンコネーチャン、キャッスルドランを自分のモンにしようとしてたぞ!早く起きろ!」

 

そこに一人の男が倒れている。線の細そうな男手自分より結構年上だろう。

 

その周りに一匹、鳥のようなものが飛んでいる。それは…

 

「こ、蝙蝠?」

 

「むむっ!おいペタンコネーチャン!俺に向かって蝙蝠とはなんという言い草だ!」

 

「な、何よ!言葉を喋る蝙蝠なんて聞いた事無いわよ!あんた何者!」

 

「ふん、よくぞ聞いた!我が名は『キバットバットⅢ世』!誇り高き名門『キバット家』の系譜を継ぐ者だ!」

 

エッヘン!

 

「『名門』…あんた貴族なの?蝙蝠の癖に?」

 

「なにおう!この伯爵家であるキバット家の当主に向かってなんて事を!」

 

「…私の実家、公爵家…」

 

「へへ~!大変ご無礼…じゃなかった!渡!起きろ渡!」

 

「う、ううん…」

 

『ワタル』と呼ばれた男が眼を覚ます。

 

「お~、生きてたか、渡」

 

「うん、あれ…」

 

渡は辺りを見回す。

 

「キバット…ここは?」

 

「さあ…でも、『あの場所』とは全然違うみたいだぜ。しかも…」

 

キバットは渡の肩に止まってルイズを指す。

 

「俺達をここにつれて来たのはあのネーチャンらしい」

 

キバットに言われて初めて渡はルイズに気付いた。

 

「あんた、誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時はわらかなかった。

 

今日私が召喚したのは、悲しいくらい優しくて、

 

本当は闘う事も嫌いなクセに自分ばかりが傷つく、

 

泣き虫な『王様』を呼び出した。

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