ゼロの使い魔 -KING OF VAMPIRE-   作:歌音

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第12話/舞踏会 ~王の来訪~

 

 

「キャァァァァァッ!」

 

森の向こうから悲鳴が聞こえた。

 

「あれはミス・ロングビルの声!?」

 

「大変」

 

「安心して…みんな」

 

「何言ってんのよワタル!ミス・ロングビルがフーケに襲われてるかも…」

 

「その心配はない」

 

「やっほー、お姉ちゃん達~」

 

「………」

 

森の向こうから現れたのはミス・ロングビルを捕まえた次狼・ラモン・力だった。

 

「ちょ、放してください!」

 

「すいません。少しおとなしくしててください、『フーケさん』」

 

『…え?』

 

渡はミス・ロングビルに近づき、

 

「もう言い逃れはできないと思います」

 

「だろ?ミス・フーケ」

 

次狼も問い詰める。

 

「…いつから気づいてたんだい?」

 

その言葉にルイズ・キュルケ・タバサは驚いたが渡は続ける。

 

「さっきの戦いの時、あなたの魔力がゴーレムとつながっている事を確認しました」

 

「…そうかい。まったく、あんたはとんでもない化け物だね」

 

フーケはふてくされたように言う。

 

「あんたが…伝説の『キバ』かい?」

 

「…はい。少なくとも現在『キバ』は僕一人しかいません」

 

その言葉に渡が『キバ』だと聞いた事がないキュルケだけが驚く。

 

「おいおい!渡もそう簡単にバラすな…ってなんで知ってんだねーちゃん」

 

「あんたの事を学園長(セクハラ爺)コルベール(ハゲ教師)が話してたのさ」

 

それを聞いてルイズは驚く。

 

(ど、どうしよう。ワタルの正体がばれてたなんて…)

 

「ねぇ、なんであんたあんな小娘にしたがってんのさ」

 

フーケはルイズを見て渡に話を続ける。

 

「魔法が使えないのを別にしても、この小娘は『貴族』だろ。『キバ』は『王』なんじゃないのかい?」

 

「…大切な人だから…じゃ、駄目ですか」

 

その言葉でルイズは顔を真っ赤にし、キュルケの顔が真っ青になり、タバサは杖に少し力をこめる。

 

「そうかい…じゃあ、仕方ないね。まったく散々だね。『鋼の鞭剣』の使い方はわからないわ。捕まるわで…」

 

「これはこう使うんだ」

 

次狼は『鋼の鞭剣』の柄の部分にあるスイッチを押しながら、

 

シュバッ!

 

振ると鞭のような刃が伸びてそこ辺りの木を切り倒し、

 

シュンッ

 

スイッチを離すと元のナイフ型に戻った。

 

「まさかこんなものもこっちの世界にきているとはな…」

 

「な、なんてマジックアイテムなの!そんなもの使われてたら…!」

 

「大丈夫だよ。僕なら見切れる。フーケさん。これ本当に宝物庫から持ってきたものですか?」

 

「…えっ!?あ、ああ、そうだよ。マジックアイテム『鋼の鞭剣』…」

 

「これは『ファンガイア・スレイヤー』といってマジックアイテムじゃない。科学技術は豊富だが、ただのリーチの長い剣…まあ、それだけでも、兵士一人でも持てばこの世界じゃ貴族以外には脅威だな」

 

(ゆりが使っていたな…)

 

次狼は昔惚れていた女を思いながら説明をする。

 

「ワタル…もしかしてそれ…」

 

「うん、僕の世界から来た物だよ。学園長さんに後できかなきゃ取りあえず…」

 

渡はフーケに近づく。

 

(あれ…この人…)

 

「ごめんなさい。ちょっと窮屈な思いをさせて…キバット」

 

「おう」

 

キバットが手錠をひとつ出す。

 

それをガチャっとフーケの手にはめると

 

「はにゃ」

 

フーケは力が抜けたように倒れかける。

 

「な、なに、これ…」

 

「カテナを改造した手錠です。力が奪われます」

 

こうしてフーケは捕まえられた。

 

 

 

 

 

渡達は学園に帰ると、学園長室でオスマンに報告をしていた。

 

「ふむ…ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな…美人なので、何の疑いもせず秘書に採用してしまった」

 

「一体何処で採用されたんですか?」

 

コルベールが尋ねる。

 

「街の居酒屋じゃ。私は客で、彼女は給仕をしておった。しかし、ついついこの手が魅惑の魔法を放つお尻を撫でてしまってな」

 

「それで?」

 

コルベールが続きを促す。

 

オスマンは、照れたように告白した。

 

「おほん。それでも怒らないどころか、わしの事を『学園長って素敵』とか『お髭が素敵』とか言ってきての…秘書にならないかと、言ってしまった。魔法も使えたし」

 

「…なんで?」

 

理解できないと言った口調でコルベールが尋ねる。

 

「だって…」

 

「一度くたばった方がいいのでは?」

 

コルベールは、ぼそっと言った。

 

オスマンは、軽く咳払いをすると、コルベールに向き直り、重々しい口調で言った。

 

「今思えば、あれこそが学院に潜り込むためのフーケの手じゃったに違いない。褒めてくれた上に尻を撫でても怒らない。惚れてる?とか思うじゃろ?なあ?ねえ?」

 

その言葉を聞き、コルベールは冷たい目で見ていたが

 

「そうだな、爺さん」

 

渡達の後ろにいた3人の内、次狼だけがオスマンに近づき、

 

「美人はそれだけで、いけない魔法使いだ。男が叶う筈ない」

 

「そのとおりじゃ!何処の誰かはしらんが君は上手いことを言うな!」

 

そんな2人を、渡達は呆れた目で見る。

 

そんな冷たい視線にオスマンと次狼は気付き、咳払いをすると、厳しい顔つきをして見せた。

 

「さてと、君達はよくぞフーケを捕まえ、『鋼の鞭剣』を取り返してきた」

 

渡とキバット、三魔人を除いた3人がオスマンに礼をする。

 

「ミス・ヴァリエールとミス・ツェルプストーの『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。と言っても、ミス・タバサはすでに『シュヴァリエ』の爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいた」

 

ルイズ、キュルケの顔が、ぱあっと輝いた。タバサだけはいつもの無表情。

 

「本当ですか?」

 

キュルケが表情を輝かせて言った。

 

「本当じゃ。君達は、そのぐらいの事をしたんじゃから」

 

「三人ともおめでとう」

 

「ひゅーひゅー」

 

渡とキバットは拍手を交えながら祝福する。それを見て3人はそろってオスマンに詰め寄る。

 

「学園長!」

 

「ダーリンには!」

 

「なにもないの?」

 

「ざ、残念ながら、彼は貴族ではない」

 

三人は内心苛立ちを覚える。

 

フーケのゴーレムを倒し、フーケの正体を見破ったのは全部渡だ。

 

自分達は結局の所ついていっただけ…

 

(…ワタル…)

 

ルイズは渡が『王』である事を言ってしまおうかと思った。

 

そうすれば自分の使い魔は正当な評価を…

 

「ありがとう3人とも。僕はいいよ。みんなが無事だったんだから」

 

渡がそういって初めてオスマンは3人から解放される。オスマンはホッと一息ついて

 

「さてと、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。この通り、『鋼の鞭剣』も戻ってきたし、予定通り執り行う。「今日の舞踏会の主役は君たちじゃ。用意をしてきたまえ。せいぜい、着飾るのじゃぞ」

 

『舞踏会!』

 

3人はそれに反応する。

 

(舞踏会…)

 

(ダーリンと…)

 

(踊る…)

 

『それでは失礼します』

 

3人は礼をして超スピードで部屋を出て行った。

 

己の戦闘服(ドレス)を用意する為に。

 

しかし、渡とキバット、そして三魔騎士は残っていた。

 

「さてと、どうやら君達は、私に聞きたいことがあるそうじゃな」

 

渡は頷く。

 

「言ってごらんなさい。出来るだけ力になろう。君らに爵位を授けることは出来んが、せめてものお礼じゃ」

 

コルベールが渡が何を話のかとワクワクとオッカナビックリが絶妙に混ざってしているようだ

 

「あの…」

 

「その前にだ、オールド・オスマン殿」

 

渡が言う前にキバットが口を挟む。

 

「な、なんじゃね、ええと…キバット君」

 

「最初に言っておく。王の御前だ。無礼は許さん」

 

『ふぇっ?』

 

(ちょ、ちょっとキバット)

 

渡は使い魔達と会話する時のようなテレパシーでキバットに問いかける。

 

(どうしたの急に)

 

(こいつらはお前の正体に気づいている。だからちょっとした芝居をするんだよ)

 

「これから『王』が問う事に嘘偽りは許さん」

 

後ろから次狼が歩いてくる。

 

「先程の『爵位を授けられん』といった暴言すら耐え難い言葉」

 

ラモンも普段とは違った雰囲気で問いかける。

 

「これ、以上の、無礼、死に、つながる」

 

最大級の人外の殺気を投げかけられ、オスマンとコルベールの本能が震える。

 

そう…確かに今ここにいる者達は人間に友好的だが、元は人間に原初の恐怖を与える存在達だ。

 

「わ、わかり申した。わ、ワタル王。先程のご無礼お許しください」

 

「い、いえ、その…」

 

(おっ、この彼からこの状況を打開…)

 

「…無礼を許そうオールド・オスマン」

 

(ヒィィィィ~)

 

渡の突然の変化にオスマンとコルベールはさらに震えた。

 

「まずはこちらから言おう。お前達が『鋼の鞭剣』と呼ぶもの…元は僕達がいた世界にあったものだ」

 

オスマンの目が光った。

 

「元いた世界とは?」

 

「…僕達はこの世界とは別の世界からやってきた」

 

「ほ、本当なのですか!?それではなぜあなたはキ…」

 

「それは後でこちらから話そう。それで、あの『鋼の鞭剣』はどこで手に入れた?」

 

「あの『鋼の鞭剣』は私の命の恩人の形見じゃ」

 

オスマンはため息をついて答えた。

 

「形見?」

 

「死んでしまった。今から、20年も昔の話じゃ。20年前、森を散策していた私は、ワイバーンに襲われた。そこを救ってくれたのが、あの『鋼の鞭剣』の持ち主じゃ。彼は鋼の鞭剣で、ワイバーンの首を薙ぎ払うと、ばったりと倒れおった。怪我をしていたのじゃ。私は彼を学院に運び込み、手厚く看護した。しかし、看護の甲斐なく…」

 

「死んでしまったのか?」

 

キバットが確認するように、オスマンの言葉を続けた。

 

オスマンは頷く。

 

「私はこれを『鋼の鞭剣』と名づけ、宝物庫にしまいこんだ。恩人の形見としてな…」

 

オスマンは遠い目になる。

 

「彼はベッドの上で、死ぬまでうわごとのように繰り返しておった。『ここは何処だ。元の世界に帰らなければ。奴等を倒さなければ』とな。きっと、彼は君と同じ世界から来たんじゃろうな」

 

おそらくその人は『会』の戦士だったのだろう。それが何故かこの世界にやってきてしまった。

 

「誰がこっちにその人を呼んだ?」

 

「それはわからん。どんな方法で彼がこっちの世界にやってきたのか、最後までわからんかった」

 

「そうか…」

 

「あ、あのワタル王。よろしければお聞きしたい事があるのですが…」

 

コルベールは四人の人外に睨みつけられながら恐る恐る尋ねる。

 

「よい。許す」

 

「あ、あなたはあの…『キバ』ではないのですか?」

 

コルベールは最大の疑問を問う。

 

「いかにも。僕こそが『キバ』だ。『キバ』とは我が種族の支配者の証。僕が…」

 

渡は一瞬だけ息を呑み。

 

「僕が、キングだ」

 

「しかしその左手の紋章は…!?」

 

「これは『キバの紋章』。この世界にも『キバ』がいたようだな」

 

「そ、それではあなたは元の世界を滅ぼしたのですか?」

 

ワタルがコルベールのその言葉を聞くとギロリッと睨みつける。

 

「あ、いえ、その…」

 

「安心しろ。この世界では私はルイズちゃんの使い魔だ。この世界を滅ぼすつもりはない。もっとも…」

 

渡はオスマンを睨みつけ、

 

「この事を理由にルイズちゃんやキュルケちゃん、タバサちゃんに何かすれば僕がそれを滅ぼす」

 

絶対の宣告。二人はそう感じた。これだけは渡の本心でもあり、芝居ではなかった。

 

「逆に言えばルイズちゃん達に被害がなければ手出しはしません」

 

渡が元の口調に戻る。

 

「わ、わかりもうした。肝に銘じておこう」

 

「それでは、これからもよろしくお願いします」

 

そうして渡達は学園長室から出て行った。

 

「…どう思うコルベール君」

 

「…し、死ぬかと思いました。私でもあの中の誰にも勝てる気がしません」

 

「そうじゃの。しかし、これはある意味救いかもしれん」

 

「どういうことです」

 

「いいか、彼はミス・ヴァリエールの使い魔だといった。だから彼女には従う気じゃし…おそらく彼は優しいのじゃろう」

 

「彼が…ですか?」

 

「そう、つまり彼は自分より周りの人間に手を出すなといいいたかったのじゃろう。彼は大切な者を護りたいだけなんじゃ」

 

だから自分の正体に気づいている自分達に釘を刺したのだろう。

 

変に誤解される前に…

 

「まあ、なんとも暫くは大丈夫そうじゃな」

 

 

 

「ふぅ~、やっぱり、ああいうのは苦手だね」

 

渡は息を吐いて、そういった。

 

「中々だったぞ渡。さてと、キャッスルドランにいこうぜ」

 

「え?なんで?」

 

元々ルイズの部屋に帰ろうとしていたので、ちょっと首をかしげる。

 

「舞踏会だぞ、渡」

 

「そうだな。我等の王の初の社交デビューだ」

 

「そうそう。こういったのは大事だよ。僕達も着替えなきゃ」

 

「王は、着飾る」

 

「ええ!まさか『アレ』!?」

 

渡は三魔人に引きずられながら、キャッスルドランへと向かった。

 

 

 

その夜…アルヴィーズの食堂の上の階にあるホールでは『フリッグの舞踏会』が催され、着飾った生徒達や教師達で賑わっている。

 

会場には、豪華に盛り付けられた料理がテーブルに並べられ、高級なワインが何本も用意されていた。

 

参加している者達は、一様に楽しげである。

 

その中に…

 

「まったく!ワタルはどこいったのよ!」

 

白に近い薄い桃色の清楚なパーティドレスを身に纏うルイズは舞踏会場で渡を探していた。

 

「せっかくご主人様がダンスを一緒に踊ってあげようと思ってたのにもう!」

 

同じく

 

「邪魔よ!あなた達とは終ったの!どきなさい!ダーリンはどこなの!?」

 

綺麗で胸を強調したドレスを着たキュルケも

 

「…どこ?」

 

黒を基調としたパーティドレスを着たタバサも渡を探していた。

 

そして3人はお約束通り会ってしまった。

 

「あんた達、誰を探してるのよ?」

 

「ふん、決まってるじゃない」

 

「(コクコク)」

 

ルイズの怒りメーターが振り切る。

 

「あいつは私の使い魔なのよ!人の使い魔に手ェ出すんじゃないわよ!」

 

「あ~ら、主人としての力を使わなきゃ男一人誘えないのかしら」

 

「踊るのは自由」

 

「何ですって!どーせ渡の前じゃいつも『あぅあぅ』言ってるだけの癖に!」

 

「言ったわね!」

 

「タバサ!あんたなんでワタルと踊ろうとしてんのよ!」

 

「別に」

 

3人が言い争っていると

 

『あれ?』

 

3人は同時に見つけた。

 

衛兵を寄せて門の前に立つ、シエスタ・次狼・ラモン・力。

 

すると力がメガホンを取り出す。石焼きイモのバイトの時に使っていたものだ。

 

力はす~、っと息を吸い込んで

 

『ワタル・クレナイのおな~~~~り~~~~!』

 

そしてすぐに四人は跪いた。

 

ギギギ~~…

 

ホールの扉が開き、足音が聞こえる。

 

「ワタル?まった勝手に…」

 

「ダーリンたら、結構演出家ね」

 

「うん」

 

そして現れた渡が現れる。その姿を見て3人は…いや、会場の人間すべてが息を呑む。

 

渡の服はいつもと違ってた。

 

黒と赤を基調とした上質な革の服。闇の色を纏わせた服に鎖が巻きついている。

 

そして、腰には『二本の剣』…デルフリンガーの他にもう一本…携えている。

 

そして表情は整った顔に威厳と同時に優しさを含ませた表情をしている。

 

時に威圧し、時に慈悲を与える存在感。

 

それはまさに…

 

(キ、キング…)

 

渡は会場の目線を釘付けにしながら3人に近づいていく。

 

「皆お待たせ。似合ってるよドレス」

 

3人はホッと息を吐く。

 

一瞬、渡が物凄く自分達とは遠い存在と感じてしまったからだ。

 

(やっぱり、ワタルはワタルなんだ…)

 

ルイズは内心ドキマギしながら渡に手を出す。

 

「ちょっとワタル。そんな似合わないカッコしてるんだから、何か言うことないの?」

 

キュルケとタバサはしまったと思い、急いで自分達も手を向ける。

 

それを見た渡はニッコリ笑って、

 

「僕と踊っていただけますか?」

 

 

 

 

 

 

結局、一騒動した後、踊る順番はルイズ・キュルケ・タバサ・シエスタの順に決まった。

 

「どうしたのその服?」

 

「キャッスルドランにおいてあったんだ。王の服みたいだよ」

 

踊りながら

 

「その服着ていると、本当に魔皇見たいね」

 

「…そうだね」

 

渡の表情が少し陰る。

 

(し、しまった!ええっと、他の話題を…)

 

「そ、そんな剣持ってたんだ」

 

「あ、うん。これもキバの鎧と一緒で、持ち主を選ぶ剣なんだ」

 

「ふ~ん。ねぇ、なんで渡は王様になれたの?」

 

「え?」

 

「だって、王族はこの世でもっとも誇り高き存在じゃない。王様になれるなんて渡はよっぽど頑張ったのね」

 

「…うん」

 

(まただ…また私…)

 

ルイズは少し耳を澄ます。すると、自分に『音楽』が聞こえてくる。

 

(なんでよ…)

 

ルイズは疑問に思う。

 

(なんでこんなに強い王様が…こんなに泣いているのよ)

 

ルイズは渡の顔を見てさらに傷つく。

 

こんなにも強く、

 

こんなにも頼もしく、

 

(こんなにも優しい人が…なんで泣き続けているの…?)

 

そしてルイズは決意する。

 

(いつか…ううん、絶対こいつの涙を拭って、泣き止ませて見せる)

 

それは今までのように強くなりたいじゃ駄目だ。

 

(強くなるんだ…あなたの主人にふさわしいくらい)

 

「もう、ステップ間違えてるわよ」

 

「あれ?」

 

ルイズの左掌が少し、熱くなった

 

 

 

 

 

「今日は大活躍だったわね。ダーリン」

 

「ありがとう。キュルケちゃんもおめでとう。『シュヴァリエ』だっけ?よかったね」

 

「あんなもの…」

 

今回の功績は全て目の前にいる人の力だ。自分は…何もできなかった。

 

そして今日初めて知った彼の正体…『伝説の魔皇(キバ)』…

 

「ねぇ、私強くなれるの?」

 

(あなたの…手助けができるくらい…)

 

「大丈夫。キュルケちゃんは素敵な『音楽』を奏でているよ。君は強くなる。ほら、目を閉じて、耳を澄ましてごらん」

 

キュルケは言われたとおりにしてみる。すると何かが聞こえてくる。何か暖かい、音…

 

(これが、私の音楽…私はこんな音楽を奏でられてるんだ)

 

それを聞くことができて、キュルケは少し自信が持てた。

 

(そうだ。ダーリンはどんな音楽を…)

 

キュルケは再び耳を澄まし、渡の音楽を…

 

(な、なによ…これ…)

 

渡の音楽を聴いた瞬間、キュルケは愕然とする。心が凍え、体すら止まりそうになる。

 

「だ、だーりん」

 

「どうしたの?」

 

(どうして、こんな…)

 

キュルケは信じられなかった。

 

(こんなにも優しい人がなぜこんな…今までの優しさは決して偽りなんかじゃない…じゃあ、なぜ!?)

 

キュルケは渡の言葉を思い出す。

 

『人は知らず知らずの内に心の中で音楽を奏でてるんだ』

 

(じゃあ、ダーリンは…ずっと悲しい思いをしてきたってこと?)

 

こんなにも心が辛くなってしまうほど目にあってきて、それでも優しさを忘れない。

 

(ダーリン…)

 

キュルケは渡の胸に身を預ける。

 

「ど、どうしたのキュルケちゃん?」

 

(決めた。私は強くなる。今は『微熱』かもしれないけど…いつか『太陽』のようにあなたの心を暖めてあげる)

 

キュルケは左掌が少し熱くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「タバサちゃん何処行くの?」

 

「少し…話したい事がある」

 

二人は踊らずにバルコニーに出る。

 

「話って何?」

 

「…私が、ビショップを探す理由」

 

タバサは自分の今までの生い立ちを話し始めた。

 

自分の素性、母親の事、そしてナイトの言葉…

 

「だから私はビショップを倒したい…お願い…力を貸して…」

 

それは少女の願い。

 

(厚かましいのはわかっている)

 

自分はホンの数日前、渡に重傷を負わしていた。

 

殺すつもりでもいた。

 

「いいよ」

 

「えっ?」

 

渡はタバサを抱きしめる。

 

「今まで寂しかったよね。ずっと頑張ってたんだね」

 

「ワ、ワタル…」

 

「僕でよければいくらでも力を貸すよ。ううん。僕の力を使って…まだ、君にはチャンスがある。僕には…もう何もないから、君だけでも…」

 

抱きしめられているタバサは気づいた。

 

(ワタルの心…とても冷たい)

 

自分が渡を気になる訳のひとつをタバサは気づいた。

 

自分と同じなのだ。

 

でも

 

(私より…冷たいかもしれない…もしかして…ワタルは…)

 

「…私も力を貸す」

 

「え?」

 

「私もあなたに力を貸す。これで…お互い様」

 

タバサの左掌が少し熱くなった。

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございますワタル様。私などと踊っていただいて」

 

「ううん。シエスタにはいつも頑張ってもらってるし…でも、いいの?僕なんかと踊るだけで」

 

(結構贅沢だと思ったんですけど…)

 

シエスタは内心そう思う。

 

「ワタル様は何故この世界に?」

 

シエスタは次狼達から渡が別の世界から来た事を聞いていた。

 

「ルイズちゃんに呼ばれたからかな…向こうの世界じゃ僕の居場所はなかったから…」

 

「王様…なのにですか?」

 

渡はとても悲しい笑顔で答える。

 

(ああ、この人は孤独だったんだ。なら…)

 

「ワタル様、ご命令を」

 

「え?」

 

「『いつも傍にいろ』と…それだけで、私があなたの居場所になります」

 

シエスタの左掌が少し熱くなった。

 

 

 

 

そうして、舞踏会は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

城下町のとある一角。チェルノボーグの監獄。

 

「こんばんわ」

 

「はいっ!?」

 

『し~…』

 

フーケは突然の来訪客に驚く。

 

突如自分の監獄にやってきたのは、自分を捕まえた『キバ』とその従者、力だった。

 

「看守さん達は全員眠っています。力さん。お願い」

 

「ふん!」

 

力は鉄格子をひん曲げて人が通れるようにする。

 

「こっちです」

 

渡はフーケを出口へといざなった。

 

 

「いったい何のつもりだい?あたしを捕まえた張本人が」

 

「実はあなたを…ええっと…『裏の社会』の人間だと見込んで頼みたい事があります」

 

「あたしに…?」

 

「はい」

 

渡はいくつかフーケに頼み毎を言って

 

「これが報酬です」

 

「うぉ!?」

 

大きな箱にギッシリ詰まった金銀財宝。

 

「キャッスルドランの宝物庫にあった物と、この世界のお金です…いったいいつ手に入れたんです、力さん?」

 

「(ぷい)」

 

力はそっぽ向く。

 

「あなたにも…護りたい人がいるはずです。お願いできますか?」

 

フーケは暫く考えて、口を開いた。

 

 

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