ゼロの使い魔 -KING OF VAMPIRE-   作:歌音

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第13話/ステンドグラスの破壊者

 

 

 

 

 

暗い空間の中に私はいた。

 

その空間はまさに闇で、光は差していなかった。

 

しかし、その闇の中で光もなく怪しく輝く無数の『存在』があった。

 

それは『ステンドグラス』。

 

その一つ一つが物凄く精巧で、魅入ってしまうほど美しく、また圧倒されそうなほどに怖かった。

 

蜘蛛・馬・熊・蟹・蟷螂…その他にも様々な動植物のステンドグラスだ。

 

ガシャンッ!

 

突如、何かが砕ける音が聞こえる。

 

砕ける音のする場所に振り向いてみると、ステンドグラスが破壊されている。

 

ガシャンッ!ガシャンッ!ガシャンッ!

 

ステンドグラスが次々に破壊されていく。

 

それを破壊しているのは

 

「ワ、ワタル…」

 

そう、ステンドグラスを破壊しているのは、自分の使い魔であるワタル…キバだった。

 

キバは次々にそのステンドグラスを破壊していく。

 

しかし、それは破壊を楽しんでいるのはなく

 

「ワタル…つらいの…?」

 

まるで辛い心を抑えて破壊しているようだった。

 

そして最後に一際大きく、美しい五枚のステンドグラスが残る。

 

『獅子』・『揚羽蝶』・『蝙蝠』・『真珠貝』…そして、『大蛇』だった。

 

キバはまず『獅子』に向かって殴りつける。

 

しかし、『獅子』のステンドグラスは壊れない。

 

しかし、キバは何度も拳を打ちつけ、とうとう破壊してしまった。

 

次に『揚羽蝶』。『揚羽蝶』のステンドグラスは不思議にも消えたり現れたり攪乱するが、最後には壊されてしまう。

 

『蝙蝠』は圧倒的だった。そこにあるだけでキバも怯んでおり、不思議な光でキバを傷つけた。

 

「ワタル!」

 

しかし、キバは光に怯まず、まるで怒り狂ったように『蝙蝠』に襲い掛かり、とうとう破壊してしまった。

 

残るは二つ、『真珠貝』と『大蛇』。

 

しかし、キバはその二つに襲い掛からない。

 

その場で立ち尽くしている。

 

しかし、意を決したように、『大蛇』に襲い掛かる。

 

キバの強力な一撃が『大蛇』に当たる…が、何故か『大蛇』と『真珠貝』が入れ替わっていた。

 

『真珠貝』が音を立てて崩れる。

 

キバは動揺を隠し切れずにうろたえる。

 

そこに怒り狂った『大蛇』がキバに襲い掛かる。

 

キバを瀕死の状態まで追い込んでいく。

 

そして…キバに止めをと襲い掛かったとき、キバのカウンター気味の一撃が、『大蛇』を破壊した。

 

キバは呆然と立ち尽くす。

 

『ウァ…ァァァ』

 

「ワ、ワタル」

 

『ウワァァァァァァァァァァンッ!』

 

子供のようにキバは泣き続けた。

 

 

 

ルイズはベットから跳ね起きる。

 

もう夜は明けていて、早朝の光が淡くさしていた。

 

辺りを見るとワタルとキバットがいない。どうやらもう昨日頼んだ洗濯にいったようだ。

 

「ワタル…」

 

ルイズは先日の舞踏会から時々熱くなる左手を握り締めた。

 

 

 

 

その日、ルイズ・キュルケは不機嫌だった。

 

タバサも少し納得いかないといった顔をしている。

 

「み、みんな少し落ち着いて…」

 

「そうそう、渡も気にしてないんだし…」

 

「でも、ダーリン!あいつら!特にギドーの奴…!」

 

 

 

3人の不機嫌の理由は今日行われた使い魔の品評会だった。

 

学園の2年生の全員参加行事で、使い魔を披露し、何かをやらせるといった行事だった。

 

今年はゲルマニア訪問の帰りに学園に行幸する事になったトリステイン王国の王女・アンリエッタ姫が来るとあって、皆気合が入っていた。

 

それぞれの使い魔が様々な事を披露している。

 

そして最後に渡の出番になった。

 

キバの力を隠すように学園長に言われている為、渡はブラッティ・ローズで演奏をする事にした。

 

最初はモンモラシーの二番煎じだといわれたが、渡が演奏を始めた瞬間、その場は渡に支配された。

 

渡の奏でるブラッティ・ローズから溢れ出す『音楽』…それはその場にいた者全てが聞き込んでいた。

 

渡が演奏を終え、一礼すると、その場に拍手が上がりそうになったが、それはギドーを中心とする教師陣にとめられた。

 

そして品評会の結果は1位がタバサのシルフィード、渡は…『論外』だった。

 

その評価にルイズだけではなく、キュルケとタバサも抗議した。

 

しかし、ギドーは

 

「我々貴族が、平民の引いた稚拙なヴァイオリンに感動するわけがありません。君の使い魔の平民はあろう事か貴族の楽器であるヴァイオリンを弾くなんて図々しい。マイナスを出さなかっただけでも温情だったと思いなさい」

 

ギドーはそういって、三人を追い返してしまった。

 

この通りギドーは渡を眼の敵にしている。

 

その原因は数日前の授業だ。

 

 

 

 

その日ギドーは自らの属性『風』こそが最強と説き、キュルケをダシにしてまで系統自慢をした。

 

渡の前で恥を掻いたと感じたキュルケが辛く落ち込んでいると、

 

「アホらし」

 

「馬鹿みたい」

 

「おろか、もの」

 

本当にタイミングがいいのか悪いのか…いやこの場合激烈に悪い事に、暇だった3人が見学に来ていた。

 

「そんなものに関係なく力の強い者が勝つに決まってるだろうが」

 

「それを自分の生徒相手に大人気ないね」

 

「バカ、だ。バカ」

 

3人、次狼・ラモン・力の言葉にギドーは激怒する。

 

「何を言うか!『風』全てを吹き飛ばす最強の系統だ!」

 

「じゃあ、リッキー。挑戦させてもらえ」

 

「リッキー、ガンバ」

 

「まか、せろ」

 

生徒がハラハラ見ている中、力は悠々と前に出た。

 

何かを叫んでいるルイズは次狼とラモンに抑えられている。

 

「じゃあ、いく、ぞ」

 

「ふん、死んでも知らんぞ!そら」

 

キュルケの時と同じように烈風が飛ぶ。

 

誰もが力が吹っ飛び、壁にたたきつけられると思ったが、

 

「なっ!」

 

しかしそれはならなかった。

 

力は悠々とその疾風をものともせずギドーに近寄ってくる。

 

ギドーがさらに風の強さを上げても変わらなかった。

 

とうとう、力はギドーの目の前に来て、

 

「ふん」

 

ゴンッ…ベシャッ!

 

力の軽い拳骨…しかし、それはギドーを地面に叩きつけるには十分だった。

 

ピクピクして動かないギドー。それを見て力は、

 

「フンガー」

 

とガッツポーズ。

 

人気のない先生を倒した者に、生徒達から歓声があがった。

 

 

 

 

 

それからというもの、ギドーは3人の主人である(教師陣には友人と認識されている)渡を眼の敵にしている。

 

今や渡の事を心よく思っていない者達の筆頭だ。

 

「トリステインの貴族の質は本当に最低ね!本当に素晴らしいモノに正当な評価を渡さないなんて!」

 

その言葉にルイズは何も言えなかった。

 

ルイズの落ち込みにはそれも入っている。自分達は貴族だ。貴族の義務の中に『真の評価する』のもあると思っている。

 

渡の演奏は本物だ。全てを魅了する事ができる。それを…

 

「ワタル…」

 

「うん?」

 

「ゴメンナサイ…」

 

ルイズはそういって渡達の制止も聞かず、部屋に戻ってしまった。

 

 

 

 

「どうすればいいの…」

 

ルイズは悩んでいた。今日見た夢のこともあり、ルイズは今日の出来事に酷く落ち込んでいた。

 

(どうしれば、渡の『涙』を拭えるの…)

 

何もできない自分にルイズは腹を立てていた。

 

(キュルケはあっちこっちにワタルを遊びに連れて行ったり、自分と一緒に特訓をしてもらっている。タバサは何かワタルと約束したみたいで、あの三人も何かで動いてる…)

 

さらに苛立ちが募る。

 

(一体私は…何ができるの!?)

 

コンコンコン…

 

ドアからノック音がする。

 

「…ワタル?開いてるわよ」

 

ガチャ…

 

扉が開き、ノックの主が入ってくる。しかしその人物は渡ではなかった。

 

「…!?」

 

「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」

 

黒頭巾を被り、それと同じ漆黒のマントを羽織ってはいたが、そこから覗かれる面貌は紛れもなくトリステイン王女アンリエッタその人であった。

 

 

 




-1コマ幕間スピンオフ-

「マエストロ!」

ルイズの去った後、渡の前にモンモラシ-が現れ、バイオリンを手に跪く。

「あ、あなたのバイオリンに感服いたしました!お願いです!わ、私を弟子にしてください!」

「え、ええ~」

まあ、どうなるかはまた後日。
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