ゼロの使い魔 -KING OF VAMPIRE-   作:歌音

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第18話/ヒカリ 後編 ~光満ち溢れる時~

 

 

「『ポーン』!『ポーン』はいるかい!?」

 

「…うるせぇな。そんなに叫ばなくても聞こえてるよ変態」

 

突如、自分の部屋に乱入してきた『ビショップ』に『ポーン』は答える。

 

ゆっくりと紅茶を飲んでいた彼の所に『ビショップ』は『持っていたモノ』をポイッっとほって、ズカズカと近づき、空いている椅子に勝手に座り、飽きているティーカップに紅茶を勝手に淹れ、優雅に飲み始めた。

 

「うん。美味しい」

 

「コロサレテェのか」

 

「まあまあ、同じ『四公爵(チェックメイト=フォー)』の仲じゃないか。それに私は変態じゃない。変態だったとしても変態という名の紳士だよ」

 

「それ、余計酷くないか?で…」

 

『ポーン』は紅茶を一口飲んでから、

 

「なんのようだ?」

 

「そうそう、用事だよ。実はね、君の『軍団(レギオン)』が欲しいんだ。何体かでいいから」

 

それを聞いて、クッキーを取ろうとした『ポーン』の手が止まった。

 

「どうしてだ。『騎士(ナイト)』や『守護番(ルーク)』ならいざ知らず、『管理人』のお前が珍しいじゃないか」

 

「う~ん実はね、『王』を迎えに行きたいんだ」

 

「『王』を?」

 

「うん。一人の『王』が覚醒したんだ。だから迎えにいきたんだけど、王を迎えるのに一人って失礼だろ?『ナイト』はガリアで『失格者』を使って『聖王』を監視しているし、『ルーク』はああ見えて各国境で目を睨ませて、『戦争』を勝手に起こさないよう目を光らせてるから」

 

「俺が直接行けばいいだろ?お前と一緒に…」

 

そこで『ビショップ』は首を振る。

 

「何言ってるんだい。こんな『戦争』が起こりそうな状態なのに、君には『兵団』を監理してもらわなきゃ!確かに『貴族』クラスの監理は僕だけど、『兵団』達は君の命しか殆ど従わないんだから」

 

「で、今一番暇なお前に、『兵団』ではなく『軍団(レギオン)』を貸せと」

 

「そいうことだ!頼むよ『四公爵(チェックメイト=フォー)』最強の男!僕は絶対に君には敵わないから、こうして頭を下げているんだよ!」

 

「…わかったよ。10人でいいか?」

 

すると、『ポーン』の影が盛り上がり、そのまま人の形となる。

 

『ポーン』の言ったとおり、10人の存在が現れる。

 

「何度見ても凄いよね、君の能力は。『侯爵(フュルスト)』・『伯爵(カウント)』級の『存在(へいたい)』を好きなだけつくれるんだから」

 

「好きなだけ…ってのは無理だ。それに斑があるし、『子爵(ヴィスコント)』級くらいの奴も生まれる」

 

「それとそれと!」

 

「なんだよ。まだあんのか?」

 

「あれ?」

 

自分がさっき『ポイ捨て』したモノをさす。

 

「実はさ、成功するとは思わなかった『王の覚醒』には彼の力を借りたんだ。約束に力を与えるだけど…お願い」

 

「まっ、いいよ。減るけど大した事じゃねぇしな」

 

ポーンの影から一本の影が現れ、

 

シュッ、ドシュッ!

 

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

『ポイ捨て』されたモノ…ワルドは苦しみのた打ち回る。

 

「…死ななきゃ、一刻位で馴染むだろ」

 

「ふむ、じゃあそれまでティータイムだ」

 

 

 

 

 

 

 

崩壊寸前のアルビオンから脱出したルイズ達を乗せたキャッスルドランは信じられない速さでトリステインに到着した。

 

渡やキバット3魔騎士、シエスタを抜いたルイズ達四人はは、アンリエッタに報告すべく、トリステイン王宮へ向かう。

 

 

トリスタニアの街は、数日前からアルビオンの内戦の噂で持ち切りだった。

 

その為か、王宮は厳戒態勢が敷かれ、出入りする者は、身分を問わず、厳しく調べられるようになり、更に王宮の上空一帯は飛行禁止令が出されている。

 

城のあちこちでも、魔法衛士隊のグリフォンやマンティコアが闊歩し、緊迫した雰囲気が広がっている状態だった。

 

その為、ルイズ達は目立たない所でキャッスルドランを降り、シルフィードで王宮に向かい、正規の手段でアンリエッタに取り次いだ。

 

そんな経緯を経て、キュルケ達は別室で待機し、ルイズはトリステイン王宮の一室…アンリエッタの私室に通された。

 

「姫様、こちらがご依頼の手紙にございます。それと…こちらはウェールズ皇太子様よりお預かりした品にございます…」

 

ルイズが跪いて、手紙とウェールズから預かった『風のルビー』を恭しく差し出した。

 

指輪を見せられた時、アンリエッタは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに微笑みを浮かべてそれらを受け取る。

 

「…ありがとう、ルイズ・フランソワーズ。やはり、あなたは一番のお友達だわ」

 

そう言うアンリエッタは確かに微笑んではいたが、心では『嘆きの音』を奏でている。

 

「…あの方は…もういないのですね…」

 

「…姫様」

 

「…ねえ、ルイズ。ウェールズ様は、わたくしの手紙を最後まで読んで下さったのかしら?」

 

「は、はい…確かに、最後までお目を通されておりました」

 

それを聞くと、アンリエッタの目に涙が浮かべ、ぽつりと呟くように言う。

 

「…そう。ならば、あの方は…わたくしを、愛しておられなかったのね…」

 

「それは違います!」

 

「…?」

 

「ウェールズ様の心は、ずっとあなたを求めていました!ワルドに殺される寸前まで…最後の最後まで姫様を求めていました!」

 

「私を…?」

 

「はい…姫様がウェールズ様を求めるように…ウェールズ様も…」

 

「あ、あぁぁ…ウェールズ様…ごめんなさい…あなたは…そんなにまで、私を想ってくださっていたのに…私は…う、うぅ…!」

 

「姫様…今はお泣きください…」

 

自身も涙を流しながら、アンリエッタを抱きしめるルイズ。

 

アンリエッタもルイズの背中に手を回す。

 

「泣きたい時に泣いて…再び奏でましょう…私達の音楽を…」

 

「…ルイズ…あなたは強くなったのですね。でも…私はあなたの身を案じてワルドを護衛に付けたつもりだったのに、逆にあなたを脅かしてしまった…」

 

「いいえ…それこそ、姫様がお気になさることではありません…憎むべきは、貴族の…いえ、心の誇りを忘れてトリステインを裏切ったワルドであり、レコン=キスタです。姫様が私如きの身を案じて下さったことを、心から嬉しく思っておりますわ」

 

「ルイズ……」

 

ルイズの一言一言が運命に裏切られ続けてきたアンリエッタの心を少しずつ救っていく。

 

(ワタル…あなたが教えてくれたのよ)

 

再びアンリエッタを強く抱きしめるルイズ。

 

(『心』の大切さを…)

 

 

 

 

「キバット…」

 

渡はキャッスルドランの『王の間』の王座に座りながら、つぶやく。

 

「どうして…皆、仲良く出来ないのか…」

 

「渡…」

 

「どうして人は…人の大切なモノを奪うんだろう…」

 

その答えをキバットも3魔騎士も答えなかった。

 

渡は人が人を傷つけ、殺す理由を痛いほどわかってる上で呟いているからだ。

 

「どうしたら…分かり合えるんだろう」

 

 

 

 

「お引取りください。『王』は今誰とも謁見を望んでおりません」

 

ルイズ・キュルケ・タバサがキャッスルドランの『王の間』の扉の前にはシエスタが立ちふさがっていそた。

 

「そ、そんな…」

 

シエスタの目には恐ろしいほど、意思がこもっていた。

 

「あの方は深く傷付いております。あの方を護る為に、私はここで番をしております」

 

「シエスタ、ワタルに会わせて」

 

「ダーリンは…どうしてるの」

 

「ワタルは…大丈夫なの?」

 

「………」

 

シエスタはまっすぐ3人を見る。

 

「あの方は…私達人間を信じておりました。人間は素晴らしいと…人間は優しいと…」

 

シエスタは右拳を握る。

 

『G・E・T・R・E・A・D・Y』

 

「それを裏切ったのはあなた方『人間の貴族』…」

 

その右拳を左掌に乗せる。

 

『F・I・S・T・O・N』

 

シエスタは祈るように、両手同士を握り…

 

「変身…」

 

『HE・N・SHI・N IXS 2ed SERIES 『FATIMA』』

 

黄金の十字架がシエスタの上空に現れ、シエスタを包んでいく。

 

光が収まった先にいたのは…

 

「し、シエスタ…そ、それは…」

 

過去、キバと戦い、共闘した『IXS』の2倍はある重厚な装甲。

 

手に持っているのは巨大な戦斧。

 

「この姿は『ファティマ』…あの方を護る力…」

 

ヒュバッ!

 

『ファティマ』は目にも止まらぬ速さでルイズの眼前に斧を向けた。

 

「…あなたに…あの方をお救いする事ができますか?」

 

 

 

 

 

 

結局、渡には会えずにキャッスルドランからでたが、入り口に座り込んでいた。

 

「こうなれば持久戦よ。私は絶対にワタルに会うわ」

 

「もちろん」

 

「うん」

 

三人は腹をくくって、座り込む。

 

「ふふっ…あのシエスタが変身したのはビックリしたけど、全く歯が立たなくて、猫掴みで放り出されたけど、その程度で諦める私達じゃないわ!」

 

『お~!』

 

「窓から忍び込もうとしたら、ハタキで落とされたのも、裏口から入ろうとしたら、水をぶっ掛けられた程度で私達は諦めない!」

 

「でも…どうするの?」

 

「…八方塞?」

 

「それはいわないで」

 

「ほう、王はココにいらっしゃるのですね」

 

『!?』

 

突如聞こえた声に三人は振り向く。

 

そこには後ろに十数人の『兵』を従えた一人の男がいた。

 

黒を基調とした神父服のような服を着ているが、神父服にしては豪奢すぎる彩色と装飾。

 

髪はオールバックに纏めており、身長も高く、顔も整っている。

 

 

「あ、あんただれ!」

 

「何者!?」

 

「まさか…レコン=キスタ?」

 

「いえいえ、まさか」

 

男は芝居がかった動きで頭を下げる。

 

「私はこの城にいらっしゃる『王』をお迎えに上がったものですよ、お嬢様方。よろしければお名前を」

 

「…人に名前を聞く時は自分から名乗るものよ、ミスタ」

 

それを聞くと男は更に笑って、

 

「これはこれは失礼しました。私は偉大なる王に仕える『四公爵(チェックメイト・フォー)』の一人…」

 

ニッコリ笑って

 

「『ビショップ』と申します」

 

「!?」

 

その名前を聞いて、タバサの心が…

 

「以後お見知りおき…」

 

「ビショップ!」

 

『タバサ!』

 

タバサが感情をむき出しにして、ビショップの名を叫ぶ。

 

「やっと見つけた…やっと…」

 

「んん?おや、これはこれは『シャルロット』!お元気そうで実に何より!」

 

タバサの感情をまったく気にせず、

 

「時にお母様はお元気かな?」

 

もっとも言ってはいけない事を簡単にいった。

 

タバサの心から剥き出しの殺意と憎悪が溢れる。

 

「ビショップッ!あなたを…殺す!」

 

感情をむき出しにしたタバサは自身の最大の魔法をイメージして、

 

「『ウィンディ=アイシクル!』」

 

ビショップに解き放った。

 

 

 

 

 

 

 

「みんな!?」

 

闘いの気配を渡は玉座から立ち上がる。

 

「行くのか?」

 

次狼の言葉に渡は止まる。

 

「また…『人間』の醜さをみるかもしれんぞ」

 

渡は思いつめて…そのまま部屋から出て行った。

 

「いいのですか、ジロウ様」

 

「決めるのはあいつだ。俺達はあいつが決めた事に着いていって、護ってやればいい」

 

 

 

 

 

「おやおや、はしたない」

 

「くっ!」

 

「レディーはもう少しお淑やかに」

 

ビショップはタバサの渾身の魔法を『火』の魔法で消してしまった。

 

「タバサッ!」

 

すぐにキュルケは『火』の魔法を放つ、が!

 

「そちらの魅惑のレディーもです」

 

今度は『水』の魔法でかき消した。

 

「しかし、シャルロットもそちらのレディもやりますね。共に『トライアングル=スペル』を放つなんて。しかし…」

 

ビショップの右手に『火』、左手に『水』が現れる。

 

「せ、先住魔法!?」

 

「はっはっはっ、ついでに申しますと、先程あなた達の魔法を消すのに使ったのはそれぞれ『スクウェア=スペル』です。私はビショップ!『四公爵』一の魔法使い!」

 

ルークは踊るように歩き出し、ルイズに近づく

 

「と、止まりなさい!」

 

「おおっっと、ごめんなさい。お願いですからあなた様の魔法だけは勘弁してください。『虚無』の魔法は流石に私でも使えませんので」

 

「え?」

 

ルイズは一瞬あっけにとられる。

 

「おや、その様子じゃ知らなかったようですね。あなたの魔法は『虚無』。『王』を呼び出せたのが何よりの証拠です」

 

「わ、私が…『虚無』…」

 

ビショップは重大な事をまるで些末毎のように喋る。

 

「ですが…」

 

両手の『水』と『火』が凶悪に滾る。

 

「もう用済みです。死んでください」

 

「マテッ!」

 

突如、空から誰かが降ってきた。闇の鎧に闇のマント…

 

『ワタル(ダーリン)!?』

 

「ルイズちゃん達を傷つけるな…」

 

キバは黒い声で命令する。

 

「こ、これはこれは…」

 

両手の魔法を消し、ビショップはすぐに傅く。

 

「『王』の命とあらば従います」

 

「お前は?」

 

「はっ、私の名は『ビショップ』。『|四公爵(チェックメイト=フォー)』の一人であり、『貴族』達の統括をおこなっております」

 

ビショップは自分の素性を名乗る。

 

「何をしにきた」

 

「それはもちろん、我等『ファンガイア』の『王』を迎えに」

 

そこでビショップの姿が変る。

 

まるでステンドグラスを使ったような輝く体。

 

「どうか我等の王に…そしてこの世を統べましょう。見たでしょう人間の醜さを」

 

その言葉にキバの心は揺らぐ。

 

憎悪の鎧が更に重厚を増した。

 

「人間は醜い。然したる理由もなく、掟を破った訳でもなく『同族』を虐殺する最も愚かで弱い『種族』。家畜程度の価値が無い者達が増えております」

 

ビショップはさぞ当たり前のように話す。

 

「さあ、我々の元へ…世界を支配してください」

 

その言葉を聴いて…キバは…

 

「そうだな…」

 

闇の腕をビショップに向ける。

 

(支配してから…)

 

「まって!」

 

キバはその声に止まる。

 

「ルイズ…」

 

「駄目。その男の言葉を聞いちゃ駄目」

 

「貴様…」

 

そこで初めてビショップの声に『憎悪』が宿る。

 

「ワタル…あなたはどうしたいの?」

 

「………」

 

「あなたが優しいのは知っている。そして人間が…ううん。この世に生きているもの全てが好きな事をもちゃんと知っている」

 

「ダーリンが優しいのは…」

 

「ちゃんと知ってる」

 

「だけど…人間はすぐに裏切る。人を傷つけるんだよ」

 

3人の言葉にキバの泣きそうな声が響く。

 

「だから…僕が世界を支配して…人に説くんだ。自分達の素晴らしさを…」

 

「駄目。そんなんじゃ駄目」

 

ルイズは首を振る。

 

「人の『音楽』を押えつけるやり方じゃ駄目。もっと人の心は酷くなるわ」

 

「じゃあ、如何すればいいんだ!僕は…僕はただ…」

 

泣きじゃくる声に…

 

「『王様』になればいいのよ」

 

「え?」

 

ルイズの言葉にキバは驚く。

 

キュルケとタバサはルイズが何をいいたいか気づき、

 

「そう、それも最高の王様に」

 

「物語に出てくる、誰もが憧れて、尊敬する王様…」

 

「人の『音楽』を踏みつけない…あなたの『音楽』を皆に響かせて、伝えるの。心の素晴らしさを」

 

ルイズは笑う。その笑みには誇り・想い・強さが詰まった笑顔で、

 

「それぐらいできるでしょ。だってあなたは…」

 

(あなたは…)

 

「私の『使い魔』なんだから!」

 

その言葉は何よりも強きヒカリとなり、キバの闇の鎧を砕いた。

 

キバは元に戻り、渡へと戻っていく。

 

「る、ルイズちゃん」

 

「まったく、泣き虫ねワタルは…」

 

ルイズは笑顔でワタルを迎えた。

 

「やってくれたな…貴様ら…」

 

ビショップから憎悪の怒りを燃やしながら、元の人間の姿へとなる。

 

「『王』よ。せっかくお迎えできると思ったのに残念でありません。伝承にある『真の王』の力が消えた今、あなた様には何の価値もない。ワルド」

 

「はい」

 

『!?』

 

兵の一人が前に出る。

 

それは確かに自分達を裏切ったワルドだった。

 

「そろそろ馴染んだでしょう。手伝いなさい」

 

「はっ」

 

するとワルドの体がステンドグラスの化物になる。その姿はまるで鳥のような意匠を象った姿…イーグルファンガイアの姿へと…

 

「みんな、下がって」

 

「で、でもダーリン…」

 

「僕が皆を護る」

 

「王よ…いくら貴方でも私と眷属となったワルド、そして…」

 

兵達が歩み寄る。

 

そして後ろにいた残りの兵達も様々な意匠のファンガイアとなった。

 

「『ポーンの軍団(レギオン)』相手にどこまで持ちますか?」

 

ビショップが前に立つ。

 

「力こそが我等の絶対の法。力なき王などいりません」

 

「…憎んで…恨んで…悲しみを広げなきゃ力が手に入るのなら…僕は強くなりたくない」

 

「渡!キバッていこうぜ!」

 

キバットが飛んでくる。

 

「でも…それでも強くならなきゃいけないなら」

 

キバットを右手で掴む渡。

 

「皆を笑顔にする為に強くなってみせる!」

 

「ガブッ!」

 

キバットが渡の左手を噛む。

 

「変身!」

 

キバットベルトにキバットを吊るし、渡はキバに変身する。

 

「だって…それが、『本当の強さ』なんだから!」

 

キィィィィィィィィンッ…

 

キバの目の前に輝く光が降りてくる。

 

キバがそれを掴むと光は一本の笛となった。

 

「キバット!」

 

「おう!見てろ!真の王の登場だ!」

 

キバットが笛…『タツロットフエッスル』を加え、

 

「『TATSU LOT』!』

 

『♪♪♪♪♪♪』

 

 

 

 

 

キャッスルドランが今までに無いくらい揺れる。

 

「ようやく…腹を据えたようだな」

 

「タツ…ロット…」

 

「お兄ちゃん。やっと戻ったね」

 

「ワタル様…」

 

バゴンッ!

 

「おまたせしました~!私、復活!です!」

 

突如、天井をぶち破り小さな黄金の竜が現れた。

 

「シエスタさん。天井を破ってすいません!」

 

「いいえ、片付けておきます」

 

「すいません!それではいってまいります。ぴゅんぴゅーん!テンション!フォルテッシモ!」

 

「…いってらっしゃいませタツロット様。我等の主に黄金の道を示し、光を齎してください」

 

 

 

 

 

「ん?」

 

超高速で迫り来る物体にビショップは気づく、しかし、

 

ザシュッ!ガシュッ!

 

「ぐっ!」

 

「がっ!」

 

黄金の物体はビショップとワルド、『ポーンの軍団』に攻撃して、キバの眼前に舞い降りた。

 

「渡さん!やっと私を呼んでくださいましたね!先輩もお元気そうで!」

 

「ごめんね、タツロット」

 

「久しぶりだからって手を抜くなよ!」

 

「わ、ワタル。その喋ってる竜…もしかして韻竜?」

 

「おや、これはお嬢様方!初めましてタツロットです」

 

「こ、こんにちわ。可愛い竜ちゃん」

 

「よろしく」

 

「ではいきますよ!」

 

タツロットが口のキバを光らせる!

 

「ドラマチックに!」

 

今!

 

「キバっていくぜ!」

 

最後の覚醒(ファイナル=ウェイクアップ)』の時!

 

タツロットが『キバの鎧』の拘束(カテナ)をすべて噛み砕く。

 

『キバの鎧』の肩の部分が開き、大きな黄金の翼を広げる。

 

数え切れぬほどの光の蝙蝠が黄金の翼から現れ、ルイズやビショップ達は目を閉じてしまった。

 

光が収まり、ルイズ達が目を開くと…

 

「嘘…でしょ…」

 

「………」

 

「わ、ワタルが…」

 

ルイズ・キュルケ・タバサの目の前にいる存在は、炎を顕し、なぎ払うと、深紅のマントを顕現させた。

 

その姿にビショップとワルド達も目を見開いている。

 

そう、目の前にいる存在が、現実に存在すること自体が信じられないのだ。

 

神話や御伽噺でしか存在しない究極なる存在…

 

神々しき黄金の鎧、圧倒的な存在感、滾り迸る魔皇力…

 

その存在には二つの意味がある。

 

一つは『帝政』を敷く者…

 

そしてもう一つは…『王を超える者』…

 

「黄金の…皇帝…」

 

仮面ライダーキバ=エンペラーフォーム…

 

この姿こそ、この世の真なる支配者の本当の姿だった。

 


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