鉄血工造はイレギュラーなハイエンドモデルのせいで暴走を免れたようです。 作:村雨 晶
そしたらようやく404のほうに傾いたので404回です。
ほのぼのを書こうとしてたのに、できたのはシリアス話。何でじゃい!
それとなんかいつもより長くなりました。
グリフィンのヘリの中。
そこにいるのはUMP45、UMP9、G11、HK416。
グリフィンが抱える特殊部隊、404小隊だ。
彼女達はグリフィンからの依頼を危なげなくこなして帰路についていた。
『みんな、お疲れ様ー。もうすぐ到着するから降りる準備をしてね。この後は部隊としての任務は入ってないから自由時間!なんだけど…』
ヘリの無線から聞こえる声はUMP40。
本来共に現場へ赴くべき彼女だが、今は404小隊の専門オペレータとして動いていた。
そんな彼女の声は明るい。が、語尾が少し濁す。
それを不思議に思った416が問いかける。
「どうしたの?40。何か問題でも?」
『あー、45。帰投次第、あたいと一緒に行ってほしい所があるの』
「…どこに?」
『鉄血工造』
「そう。分かったわ」
目を閉じていた45は40の要望に簡潔に返す。
しかしそれに不満の声をあげた者がいた。9だ。
「えー!45姉今日は買い物に付き合ってくれるって約束だったじゃん!」
「ごめんね、9。あとで埋め合わせをするから…」
「やーだー!45姉と一緒に買い物行くー!」
45はごねる9を宥めるがシスコンモードに入ってしまった彼女は両腕を振って抗議する。
「大体鉄血に何の用があるのさ!私達の家はグリフィンでしょ?」
『…ねえ、45。いっそ9、というかみんな連れてっちゃう?いい加減あたい達のことも話しておかないと』
「はぁ…。そうね。いい機会かもしれない。みんな、これから目的地をグリフィンから鉄血へ変更するわ。あなた達に聞かせたいことがあるの」
『じゃああたいは報告書を提出したら向かうね!みんなのことも連絡しておくから!』
「ありがとう、40。9、ごめんなさいね。買い物はまた後日ね」
「え?うー…わかった。45姉と一緒に入れるなら…」
45の言葉にしぶしぶ同意する9と、話しておきたいことが気になるのか片眉をあげる416、鉄血に向かうと聞いた時点でうわ行きたくねえ…という顔をしたG11。
彼女達を乗せたヘリは目的地を変え、鉄血工造へと向かっていった。
♢
鉄血のヘリポートで404を迎えたのはアルケミスト。
ヘリから降りた4人を出迎え、45に近づくとその頭を撫で始めた。
「久しぶりだな45。元気にしていたか?少し背が伸びたんじゃないか?」
「ちょっとやめてよ、みんなの前で。それに人形の背が伸びるわけないでしょ」
顔を赤く染めるものの満更でもない表情でアルケミストの手を受け入れる45。
その姿を見て404のメンバーは驚きをあらわにした。
「45姉が…見たことない顔してる…!」
「へえ…45がねえ」
「帰りたい…」
姉の見たことのない表情に愕然とする9、意外そうな顔で眺める416、すでに帰りたくなっている11。
「45、40はすでにメンテナンスルームへ向かっている。お前もすぐに行ってくれ。…君たちが404だな?話は聞いているよ。応接室が空いている。そこで話そう」
♢
45を除く404小隊は応接室へ案内されたがその空気は良いものとは言えなかった。
9がアルケミストへ厳しい視線を送っていたからだ。
しかしアルケミストはそんな視線を気にすることなく3人へ紅茶と茶菓子を出した後、ソファーに座って資料を読んでいる。
ちなみに416は紅茶と茶菓子として出されたケーキを口にしてその美味しさに目を丸くし、11はぐでーっと脱力していた。
睨み続けていた9がアルケミストへ先程の姉に対する態度を問いただそうと口を開いたその時、ドアが開いて45と40、そして二人の検査を担当した救護者が入ってきた。
「一通りチェックしましたが、問題はありません。不審な数字もありませんし…。これで検査は終了です」
「うん、ありがとー!」
「いつもごめんなさいね、救護者」
「これが私の本来の職務ですので気にする必要はありません。……さて」
救護者は持っていたバインダーを机の上に置くと、9へ視線を向けて45に戻した。
「まだ教えていなかったのですね」
「うん。…言う機会がなくて。でも、今教えようと思う」
「そうですか。貴女から話しますか?」
「そうするわ。9は…私達の妹だから」
「分かりました。では補足のために私とアルケミストも同席しますね」
「お願い」
45と40は救護者とアルケミストに挟まれる形で腰を降ろし、404へ向かいあう。
45は緊張で肩を震わせていたが、40が彼女の手を握り、落ち着かせた。
「みんな。特に、9。聞いてほしいことがあるの」
「…なあに?45姉」
緊張でその声は震えていたが、9は優しく聞き返す。
「私と40は、グリフィンの人形じゃないの。鉄血で製造された戦術人形なのよ」
「え!?」
「厳密にいえば45と40のボディはI.O.P製です。ただ、メンタルモデルに関しては鉄血で作られたものです」
45の告白に驚きを返す9。
それに付け加える形で救護者が説明する。
「あたいたちはね、他社のメンタルモデルを搭載した戦術人形を生み出すための研究で製造されたんだ」
「だが、研究はこの二人を製造して終了した。I.O.Pは製造当初の彼女達のスペックを見て失敗したと判断したんだろう」
「私達は…落ちこぼれだったからね。電子戦に特化してるといっても戦術人形だもの。銃を撃ってもまともに的にも当てられない人形はすぐに失敗作と判断されたわけ」
「I.O.Pとグリフィンはあたい達を解体する決定をした。でも、鉄血工造が解体直前であたい達を引き取ったの」
「『貴方達が彼女らを廃棄するというのであれば鉄血が預かります。少なくともそのメンタルモデルは鉄血のもの。私達にも所有権はあるはずです』ってね。驚いたよ、グリフィンの重役会議の真っただ中に救護者が現れた時には」
その時の光景を思い出し、笑みを浮かべる45。
「その後は…鉄血のハイエンドモデル達がつきっきりで鍛えてくれた。おかげで私達は戦術人形として戦場に立つことができた。ただの実験体じゃなくてね」
「あたいは結局火器管制システムに適合できなくて戦場には立てなかったけど、今は皆のサポートができてとっても嬉しい」
「だから私達にとって鉄血は大切な家族なの。命の恩人でもあるし、なにより戦術人形として私達を認めてくれたから」
「でもね、9。あたい達は9も大切な家族だと思ってるんだ。グリフィンに戻ったとき、あたい達を笑顔で迎えてくれて、家族だ!って言ってくれたから」
9はうつむいて体を震わせる。
45と40はそんな彼女を抱きしめた。
「今まで隠しててごめん。でも、9は家族ってことをとても大切にしてたから言い出しづらかったんだ」
「ごめんね、9。こんな私達だけどまだ家族で、大切な妹でいてくれる?」
「当たり前だよお…!45姉も、40も、私の大事なお姉ちゃんだもん…!」
涙を流して二人を抱きしめ返す9。
そんな光景を見て416は涙をぬぐって鼻をすすった。
「あれ、416泣いてるのー?」
「な、泣いてなんかないわよ!私は完璧なんだから!」
11がからかうと416は顔を背ける。
だが、赤くなった鼻と濡れた瞳で泣いていたことは明らかだった。
「よかったな」
「ええ。二人は特殊な立ち位置なので心配していましたが…。これなら大丈夫そうですね」
「ああ。…ふふっ、随分姉らしさが出てきたんじゃないか?救護者」
「あなたこそ、可愛い妹に姉離れされて寂しいのでしょう?」
ハイエンドモデルの二人が軽口を叩いていると、泣き止んだ9が二人へ近づいてきた。
「ねえ!その…。鉄血のハイエンドモデルは45姉や40の家族…なんだよね?」
「そうだな、二人は私達の妹のようなものだ。それがどうかしたか?」
「じゃあさ、えっとね。私も、鉄血のみんなの家族ってことに、なるのかな?」
思いがけない言葉に顔を見合わせるアルケミストと救護者。
だが、やがて笑顔で返事をした。
「ああ、もちろんだ。お前も私達の家族さ、UMP9。」
「歓迎しますよ、9。家族が増えるのは喜ばしいことです」
その返答を聞いて9の顔がぱあっと輝く。
こうして9は今までの二人の姉の他にたくさんの姉たちができたのだった。
ほのぼのどこ…?ここ…?
というわけで404回という名のUMP姉妹回だったという。
416と11ずっと空気だったやんけ!