鉄血工造はイレギュラーなハイエンドモデルのせいで暴走を免れたようです。 作:村雨 晶
スキンはトカレフのだけ当たりました。ヤンデレ身があって実に素晴らしいスキンでしたね!
「どうして…どうしてこんなことに…」
私、M4A1は司令部近くの公園のベンチに座り、うなだれていた。
何故私がこんな状況になったのか、その原因は今日の朝に遡る……
♢
目を覚ました。
指揮官より支給された快眠プログラムにより清々しい気分で上体を起こす。
「♪」
鼻歌を歌いながら服を着替える。姿見をみておかしなところがないことを確認し、朝食をとろうとドアを開けた。
「きゃっ!?」
しかし、開けた先にはノックをしようとしていたM16姉さんが立っていて驚きで声をあげてしまう。
「おっと、驚かせたか?すまんな、M4。…少し話があるんだ。部屋に入っても?」
「え、ええ…」
姉さんも突然ドアが開いて驚いた顔をしたものの、すぐに真剣な表情へ変える。
任務以外であまり見ない表情に圧され、部屋へ通した。
「それで姉さん、話って?」
「ああ。実はな、M4。お前には休暇を取ってもらう」
「え?休暇?」
「ああ。お前、一日も休まずに働いているだろう。非番の日も指揮官を手伝っていると聞いた」
真剣な表情から任務の話かと思ったがどうやら違うらしい。
確かに非番を貰うことはあっても一日休みというものに馴染めず結局執務室へ足を運んでいた。
「そこでお前に業務命令として一か月の休暇が言い渡された」
「…は?一か月!?何かの間違いじゃ…」
「残念ながら事実だ。ほら、これが命令書」
姉さんから渡された書類には確かに業務命令として私に一か月の休暇が言い渡されていた。
「なんでこんなものが!」
「あー…。M4。お前は去年起こった労働基準監督署に鉄血の救護者が押し入った事件は知ってるか?」
「は、はい…。かなり話題になりましたから。それが何か?」
「その時にな、私達人形にも有給制度が導入されたんだが。M4、お前だけなんだ。有休もとらずに休日返上で仕事してるのは」
「は、はい?」
「今から有休をとってもらわないと今年の決算に間に合わないと指揮官に泣きつかれてな…」
「え、じゃあ…」
「簡単に言えば仕事禁止令がお前に発令された」
「はあ!?え、ちょっと待ってください」
「当然ながら一か月間仕事に関するものは禁止だ。…まあ、なんだ。外に出て気分転換でもしてくるといい」
「え、ちょっと、待ってください!」
「外出許可は私の方で出しておく。いいか?働くなよ?絶対だぞ?」
「ね、姉さーん!」
♢
「強制的に休みを取らされるって一体どんな状況なの…?」
姉さんに言われるがまま外に出たはいいものの、何をすればいいか分からない。
参考程度にARやSOPに話を聞いたものの…。
AR:ウインドウショッピング。時には服屋に入り気に入った服を買ってくる。
SOP:食べ歩き。おいしいと評判のお店を教えてくれた。
服は…あまり興味ないし。食べ歩きも三食以外に食べるというのがなんだかよく分からない。
「はあ…どうしよう…」
「おい、どうした?でかいため息ついて」
「ひゃああああ!!??」
後ろから不意にかけられた声に思わず驚いてしまう。
振り向くと鉄血の、確かエクスキューショナーと呼ばれているハイエンドモデルが立っていた。
「え、エクスキューショナーさん!?」
「さんはいらねえよ。お前は確かグリフィンのM4…だったか?」
「は、はい。あの、なにか用でも?」
「あー、いや。顔見知りが真昼間から暗い顔して座ってるのが気になってな」
「…実は…」
エクスキューショナーにこれまでの経緯を話す。
すると彼女は噴き出して笑いだす。
「ははは!働き過ぎて休みを命令された!?なんだそりゃ!」
「わ、笑わないでください!」
笑い続ける彼女に抗議する。いくらなんでも笑いすぎです!
「いや、わりぃわりぃ。あんまりにも変な理由だったんでな…。くくくっ」
「うう…」
変な理由だという自覚はあるけどここまで笑われるとさすがに恥ずかしい。
「いや笑った笑った。そうだな、この後暇か?」
「予定はないですけど」
「じゃあ俺と一緒に来いよ。ベンチで黄昏てるよりはましだろうぜ」
そう言ってエクスキューショナーは歩き出す。
私は慌ててその後を追った。
「そういえば、その荷物は…?それにその恰好…」
「あん?私服だよ私服。非番の日まで戦闘服着てる必要はねえだろ」
「そ、そうですね…」
彼女の服装はいつもの真っ黒な戦闘服ではなく白のリブ生地のセーターとデニムのジーンズ。体形が豊かな彼女によく似合っていた。
対する私はいつもの戦闘服…。し、仕方ないじゃないですか!これしか持ってないんですから!
「そんでこの荷物はな…。まあ目的地に着けばわかるさ」
「はあ…」
両手に持っている大きなビニール袋。
透けて見える中身はどうやら人工甘味を使った菓子のようだけど。
ずんずんと進んでいくエクスキューショナーに私はただ付いていくのだった。
♢
「さて、着いたぞM4」
「ここって…」
エクスキューショナーが歩みを止めたのは少し大きな建物。
見た感じ何かの養護施設のようだけれど…。
「あーっ!エックスの姉ちゃんだー!」
「エックスのねーちゃん抱っこしてー!」
「あそぼー!ねーあそぼー!」
「こらガキンチョども!俺の名前はエクスキューショナーだって言ってんだろうが!」
「長いし言いにくいよー」
「エックスキュウリ?」
「なんでそうなるんだ!」
外で遊んでいた子供たちがエクスキューソナーを見つけた途端群がっていく。
どうやらかなり子供たちに慕われているらしい。
「エクスキューショナー、いらっしゃい。…あら、あなたは」
建物から出てきた女性がエクスキューショナーに近づいていく。
そのとき女性は私に気付いて私へ向き直った。
「M4A1です。えっと…」
「スケアクロウよ。あなたのことはエクスキューソナーから聞いたことがあるわ」
「え?」
「『脆いグリフィン人形しちゃ見込みがある』って。エクスキューショナーが鉄血以外の戦術人形を褒めたのはこれが初めて」
「あの人がそんなことを…」
視線をエクスキューショナーへ向ける。
いつの間にか子供を肩車して追いかけっこが始まっていた。
「あの、ここは?」
「ここは孤児院。この情勢じゃどうしても孤児は増えるから」
「鉄血が孤児院を経営していたなんて初耳です」
「ここは鉄血の所属じゃないもの。救護者が私財を投じて建てたのよ」
「…あの人は何でもやってますね」
「救護者は誰かを助けるためなら何だってするわ。私も彼女に助けられた一人」
スケアクロウが髪をかき上げ遠い目をする。
過去を思い返しているのだろうか。
「私はスケアクロウだけど、数あるダミー人形の一つなの。私はダミーの中で唯一バグが見つかった個体で、メンタルモデルが戦いに嫌悪感をもってしまうの」
「戦えない戦術人形、ですか」
「ええ。当然ながら私は廃棄されるはずだった。でも救護者がね、私の平行処理能力をかってくれてここの管理を任せてくれた」
スケアクロウは目を閉じてそっと胸に手を当てる。
「嬉しかったわ。戦えない私を必要としてくれたことが。欠陥人形の自覚はあったけど、それでも死にたくはないしね」
「……」
彼女にかける言葉は見つからなかった。
私は欠陥なく、しかも特別な人形として生まれた。
そのことはとても幸せなことだったのかもしれないと思ったから。
「あの…」
「ん?」
「私、しばらく休みを取るんです。その間、ここに来てもいいですか?」
「…ええ。歓迎するわ。子供たちも喜ぶでしょうし」
私の質問に笑顔で返すスケアクロウ。
いつの間にか追いかけっこからかくれんぼへ変わった子供たちとエクスキューショナーの遊びを眺めながら私は長い休暇を楽しもうと決めたのだった。
登場人物
M4:休暇を強制的に取らされた人形。ワーカホリックで働いてないと落ち着かない。でも今回、よい休暇の過ごし方を見つけた模様。
処刑人:なんだかんだ使いやすいので登場回数が最も多い。孤児院に来てるのは子供が好きなのもあるが、救護者で荒んだ精神を癒すため。アニマルセラピーならぬチャイルドセラピー。子供たちから名前を覚えてもらえず、エックスと呼ばれている。
スケアクロウ:孤児院の院長、というか管理人。スケアクロウのダミー人形だったが、戦闘を忌避するというメンタルモデルのバグが見つかったために廃棄予定だった。それを救護者が拾って自分が作った孤児院の院長に任命した。子供たちからは「先生」と呼ばれ慕われている。