鉄血工造はイレギュラーなハイエンドモデルのせいで暴走を免れたようです。   作:村雨 晶

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思いついたので続いた奇跡。

この話はギャグになる予定なので割と好き勝手書けて楽しいでござる。


処刑人は苦労人のようです。

 

 

――ミッションを説明する。

依頼主はいつものグリフィン。内容はK03地区で確認されたE.L.I.Dの撃破となる。

形状は人型で、片腕が異様に肥大しているのが特徴だ。複数存在が確認されているが、まあハイエンドモデルの戦闘力なら倒すのはさして難しくないから安心しろ。

ただ、未確認だがこいつらの上位個体もいる可能性がある。もし倒せれば特別報酬の対象だ、逃がすなよ。

それと、今回のミッションは同地区のグリフィン基地の部隊が協同で動くって話だ。獲物を横取りされないよう気をつけろ。

ま、こんなもんか。悪い話ではないと思うぜ。検討を祈る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しゃあ!気合入れてけよお前ら!グリフィンに一歩出遅れたなんて報告にならないようにな!」

 

 

了解!と士気高く返答する部下たちに俺は満足して一つ頷く。

営業の奴らが持ってきた今回の任務はまあよくあるありふれたものだ。

このご時世、E.L.I.Dなんざそこらじゅうで見つかるし、そいつらは周囲に危害を及ぼす歩く災害みたいなもんだ。

本来なら国が軍隊動かして殲滅するのが普通なんだが、未だに睨み合いを続けてる国にそんな余裕はない。だから俺達みたいな民間軍事会社にお鉢が回ってくるってこったな。

ま、そんなお上の政治事情なんざどうでもいい。俺達は戦術人形。戦場がありゃ喜んで駆けつけるさ。

 

 

「処刑人。対象が確認されたポイントから奴らの現在地を絞り込んだ。この円の中にいる可能性が高い」

 

「さすが狩人。仕事がはええな。それじゃあ、下級人形は三人一組(スリーマンセル)で動かすとして、俺と狩人は単独で動くことにしよう。グリフィンの連中はどうだ?」

 

「あちらもこちらと歩調を合わせる気はないらしい。反対側から攻めると連絡が来ている」

 

「はっ、まあグリフィンの人形は脆いからな、俺達についてこれるはずもねえ。こっちとしても願ったりだ」

 

 

ブレードを肩に担ぎなおして部下どもに向き直る。

 

 

「てめえらは三人一組で組め!俺と狩人は遊撃だ、なんかあったら閃光弾を空に撃て!俺達のどっちかがそこに向かう。一人でも行動不能になったらその組は即撤退だ!分かったな!・・・そんじゃあ作戦開始だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、俺達は窮地に陥っていた。

 

 

『チームα!行動不明者が二名!撤退します!』

 

『チームβ、救援をようせ――うわあああああああ!!!!』

 

 

無線からは部下たちの悲鳴がひっきりなしに響き、空にはもう10以上の閃光弾が放たれている。

だが俺も狩人も動くことはできないでいた。何故なら・・・

 

 

「クソが!上位個体が他の奴らを統率できるなんて聞いてねえぞ!諜報部の奴らいい加減な仕事しやがって!」

 

「興奮するな処刑人。戦場では冷静さを失ったやつから死ぬぞ」

 

「分かってるよ!・・・おい!損傷は大丈夫か!」

 

「は、はい!ごめんなさい、足を引っ張ってしまって・・・」

 

 

上位個体が下級の個体を統率し、本来なら三人の下級人形でも倒せるはずの奴らに部下たちが返り討ちにあってしまったからだ。

しかもグリフィン側の被害も大きいらしく、一人の人形が足を破壊され保護したところを上位個体に襲撃された。

狩人とはなんとか合流できたものの、グリフィンの人形を見捨てるわけにもいかず釘付けにされてしまっている。

 

 

「はんっ、てめえ程度ハンデにもなりゃしねえよ」

 

「『俺は強いからお前を守りながらでも楽勝だから気にするな』という意味だ。処刑人は根がいい奴だからな」

 

「狩人!てめえ余計なこと言ってんじゃねえ!」

 

「あ、あはは・・・」

 

 

素っ頓狂なこと言いやがった狩人に怒鳴る。見ろ!グリフィンの人形が苦笑いしてるじゃねえか!

 

 

「とはいえ、この状況はよろしくないな」

 

「ああ、部下たちも壊滅状態だ。数で押されりゃこっちが不利だな。・・・仕方ねえ、俺が突っ込む。その間にお前はそこの人形連れて撤退しろ」

 

「それは・・・!」

 

「うるせえ、今のお前は足手纏いなんだよ!それにあんな奴に俺が負けると思うか?」

 

「いや、全く」

 

「流石相棒。よく分かってるじゃねえか」

 

 

グリフィンの人形が声をあげるが封殺する。

あんな奴に俺がやられるわけねえだろ。

 

 

「うし、行くぞ!」

 

「・・・ん?待て、処刑人。何か音が・・・・・・」

 

 

狩人が何か言ってたが無視して突っ込む。膾切りにしてやるよ!

奴が俺を視認し咆哮をあげる。そうだ!俺を見ろ!

ブレードを振り上げ、奴の肥大した腕がぶつかり合うその瞬間。

奴の体が突然俺のほうへ吹っ飛んで来やがった。

 

 

「うおおおおおおおおおお!!!!??????」

 

「え、処刑人ー!!??」

 

 

想像外の出来事に反応できず、俺は奴の下敷きになってしまう。

つーかくせえ!こいつの臭い凄まじいぞ、おい!

 

 

「処刑人、大丈夫か?・・・くさっ」

 

「聞こえてるぞ狩人てめえ!」

 

 

小さい声で臭いっつったろお前!聞こえてるからな!おい!

 

E.L.I.Dの死体を何とかどかし、蹴っ飛ばして脇に寄せる。

ちっ、と舌打ちをこぼして奴を吹っ飛ばした犯人を探すとそれはすぐ見つかった。

白い車体に赤十字。車体の上部には赤いランプ・・・ではなく砲塔が載っていてそれが救急車の振りをした戦車だとすぐに分かる。

あれで奴は轢き飛ばされたのだろう。

 

 

「患者はここですか!」

 

「救護者!てめえその前に俺に言うことあるだろうが!」

 

「おや処刑人。言うこと?・・・臭いですね。お風呂入っていますか?汚れは病気の元ですよ」

 

「臭くしたのはてめえだろうがー!!!」

 

 

キューポラから顔を出した救護者へ怒鳴ると頓珍漢なこと言いだしやがった。

いや、こいつはいつも頓珍漢な言動をしてるが・・・。いやそうじゃねえ、そうじゃねえだろ俺!

狩人にも言ってもらおうと振り返るとそこに姿はない。すると狩人からのメッセージが届く。

 

 

『先に帰る。後は任せた。P.S 本当に臭いから帰ったらすぐに洗ったほうがいいぞ』

 

「狩人、お前、お前えええええええええええ!!!!!!!」

 

 

まさかの相棒の裏切りに怒声があふれ出る。

すでに救護者は俺を無視し、グリフィンの修理に取り掛かっていた。

 

 

「損傷は致命的なものではないようです。応急修理は済ませたので施設に戻り次第本格的な修理を受けるように」

 

「あ、ありがとうございます!・・・あの、貴方のお名前を聞かせてください」

 

「名乗るほどのものではありませんが・・・。救護者と呼んでください」

 

「はい!救護者さん、ありがとうございました!」

 

 

キラキラとした目を救護者に向けるグリフィンの人形。やめとけ、そいつだけはやめとけ・・・。

戦場に唐突に戦車で突っ込んでくるような奴だぞ。

 

この日、俺は初めて「虚しさ」という感情を知ったのだった。

 

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