鉄血工造はイレギュラーなハイエンドモデルのせいで暴走を免れたようです。 作:村雨 晶
潜伏者のほうがシリアスすぎて逃避で緩い空気のこっち書いてるけどあっちもいい加減進めないと・・・
書類にペンを走らせる音が執務室に響く。
かつて救護者が言ったように私に回される仕事は大幅に減り、今はだいぶ落ち着いて仕事をすることができている。
まあそれでも仕事は未だに膨大なため執務室に缶詰めなのは変わりない。以前とは違い休憩時間をしっかりとれるようになったのは幸いでしょうね。
今日は珍しく戦場に赴かなかったらしい救護者が私の仕事を手伝ってくれてる。
お手本にできそうなほど綺麗な姿勢で山のような書類を捌くその姿は彼女の性格を表しているようだった。
救護者がいるにもかかわらず平和な空気が流れる鉄血工造。
書類整理も一段落し、休憩しようと救護者に声をかけようとしたその時。
「な、な、なんだこれはああああああああああああああああああああああ!!!!!?????」
平和な空気を切り裂くように施設内に轟く悲鳴じみた絶叫。
また処刑人かとも思ったけど、処刑人が叫ぶ原因たる救護者はさっきの絶叫にキョロキョロと辺りを見回している。
それに今の声は処刑人の物じゃなかったような、と思い至ると廊下を乱暴に走る音が聞こえる。
デストロイヤーでも来たのかと思ったけど、それは執務室の扉を乱暴に開けた人物によって否定された。
「救護者ァあああああ!!!これは、このボディはどういうことだ!説明しろォ!!」
「・・・・・・代理人?」
怒鳴り声をあげながら入ってきたのは代理人。・・・なんだけど様子がおかしい。
代理人はこんなに幼かったかしら・・・?
「ウロボロス。何をそんなに騒いでいるのです?」
「何?何だと?この体のことに決まっている!なんだこれは!」
「『代理人~ロリっ子☆ばーじょん~』ですが?」
「だからなんだそれはと聞いている!」
幼い代理人が地団太を踏んで救護者に詰め寄ってる・・・。可愛い・・・。
「私も聞きたいですね。こんなボディが製造されているなど初耳ですが」
「それはそうでしょう。今ウロボロスが入っているボディは5体で製造中止になったモデルですから」
「待って。待ちなさい。この体が5体も作られていると?」
「ええ。これはそのうちの一体です」
開いたままだった扉から恐ろしいほどの無表情で入ってきた代理人が幼い代理人と救護者を問い詰める。
しかし幼い自分が5体造られていると知った代理人は膝から崩れ落ちた。
「どうして・・・どうしてそんなことに・・・」
「ロリータコンプレックスを患っていた研究者が幼い代理人を造りたいと独断で製造したボディです。5体目の製造中に私が現場を押さえ、押収しました」
あー・・・。そういえば三か月前くらいの報告書にそんなことがあったような。もう解決してたし私も意識がもうろうとしてたからテキトーに判を押したような。
「いや!そんなことよりも!なんでそれに私をダウンロードした!」
「使えるボディがそれしかなかったもので。言ったでしょう?『スペックが著しく低下する』と」
「言った・・・。言っていたが!これはいくらなんでもあんまりであろう!?この体では戦闘どころか日常生活さえままならんではないか!」
「早く出たいと駄々をこねたのはあなたでしょうに。それにそのことなら代理人がいるでしょう」
勝手に自分の幼いボディが製造されていたのに加え、それにウロボロスがダウンロードされ、その本人に『そんなこと』 扱いされたたために地面にのの字を書いていた代理人が涙目で二人へ顔を向けた。
「代理人のボディもまだ新調して日が経っていません。慣らしも必要でしょうからあなたのお世話もしてもらうことにしました」
宿舎の部屋も同室で申請しましたし、と続ける救護者。
すると先程の表情から一変したウロボロスが満面の笑みで救護者の手を握る。
「感謝するぞ!救護者!・・・代理人お姉様のお世話・・・ウェへへへへへ」
「私の意思は?救護者」
「可愛いものが好きでしょう?あなたの幼い姿は十分可憐ですよ。それにあなたなら彼女の手綱を握れそうですし」
だらしない顔でトリップし始めたウロボロスを横目に代理人が抗議してるけど救護者はそれを一蹴していた。まあ、誰でも自分の顔がだらしなく緩んでいるのを見るのは嫌よね・・・。
「・・・彼女の本来の体ができるまでですよ?」
「ええ。それで構いません。あの体はあくまで間に合わせですから完成したらすぐに移しますとも」
しばらく睨み合っていた二人だけど、代理人が折れたみたい。ため息を一つ吐いて微妙な顔でウロボロスを見た。
・・・でも、ウロボロスの体はスペックが高すぎて完成まであと最低5年はかかることを代理人は知ってるのかしら・・・。