《不定期更新》男性アイドルは超満員の中音楽なしで一人歌うことができるだろうか 作:星燕
本日、○月☆日土曜日。Nid d'oiseau harutoがプレオープンする。
ちなみにこころがあの話を口に出してからまだ一週間ちょいだ。
それで俺が欲しいって言った調理器具から材料、調味料、挙句理想の内装まで完璧に仕上げてきている。
憧れのあの調理器具から某食戟アニメのいくつもの特徴的な包丁。最先端技術の塊まで。
改めて黒服さんと弦巻グループヤベェな。
しかし今回は感謝だ。何しろ調理スタッフとして三人、ホールスタッフとして四人の計七人も黒服さんをお借りしている。極め付けに最初のプレは希望通りにあの二十五人にしてもらった。感謝しかねぇや。
あ、調理工程が多いから時間をずらして五人ずつなんだけどね。
「シェフ、お客様がいらっしゃいました。」
「あ、分かりました。今行きます。」
今のでわかったと思うが、俺はこの店の中ではシェフと呼ばれる。なかなかくすぐったいもんだ。さて、最初の五人から難関だ。気合いを入れていこうか。
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ーAfterglowー
「いらっしゃいま…まて、蘭か?」
「そうだけど?なに?」
「あ、いや…すごい綺麗だ。誰かと思った。」
最初の組はAfterglow。予約時間より二十分ほど早いけど…もっと言うと蘭しかいないけど。
それにしても蘭がやばい。着物とか予想の上すぎる。いつものパンクでロックな赤メッシュの蘭もカッコよくていいが、今の着物を着ている蘭は…綺麗だ。それ以外に当てはまる言葉を見つけられない。
「なにしてんの?早く案内してよ。」
「ああ…それじゃあ改めて。
Nid d'oiseau harutoにようこそいらっしゃいました。シェフの東郷啓斗です。本日は心ゆくまでお楽しみください。それでは、こちらへ。」
「ん。」
軽く左手を差し出せばその上に右手をのせてくる。
自分のものより一回りほど小さい手を握る。この手であんな音楽を…そう思うとなかなか感慨深い。
「そういえば他の四人は?」
「ひまりと巴がドレスコードのこと知らなくって。予約ギリギリになるってさ。」
「は?」
「え、なに。」
「俺直接ひまりにドレスコードのこと言ってあるけど?」
「えっ…。」
驚きに満ちた表情で固まった蘭は、しかし。数秒後には本当に和服なのかというスピードで携帯電話を取り出しひまりに電話をかけた。
「ちょっとひまり、啓斗から聞いたんだけど。ドレスコード知ってたんだ?」
『ーー!ーーー?ー!』
「はぁ!?意味わかんないんだけど!早く来なかったらひまりの分はいらないって啓斗に伝えるから!」
『ーー!?ーー!ーッ』
まだ話しているのが聞こえていたが蘭は速攻で切った。ありゃひまりが悪いな。なにを企んでたか知らないけどあのふわふわピンク頭のことだから着物着付けてもらいに蘭の家に…とかだろ。
っと、席についた。
「蘭、ここ。ひまり達が来たら一品ずつ料理を出すから。ウェルカムドリンクは俺特製のカシスソーダな。もちろんノンアルコール。安心して飲めよ。」
「…なんかすごい準備いいね。悔しいんだけど。負けた気分で。」
「誰と、何を、競ってんだよ。」
蘭は「別に」と言ってそれから何も話さなかった。それじゃあ俺も仕込みに戻ろう。
厨房の中は煌びやかな店内とは打って変わって戦場のようなひりついた空気で満ちている。
「アマネさん、オーブンあっためてください。それ終わったらポテトを蒸して。」
「ウィ、シェフ。」
「ナナミさん、野菜の素揚げを予約の五分前から始めてください。一度揚がったら五分休ませてもう一回揚げてくださいね。」
「ウィ、シェフ!」
「タクミさん、スープと前菜任せます。作り方は覚えてますね?前菜は十五分、スープは三十分で上げてください。」
「ウィ、シェフ。」
「
今日出す料理は相手が高校生なのとプレオープン初日の試運転ということでフォーマルなコース合計八品とアマネさんのテストメニュー。棚の中からオーダーメイドの包丁、白銀を取り出す。
あー…この輝き、不規則な刃紋、アボカドを種ごと切れるその鋭さ…。
その包丁の柄をもって、祈るように胸の前に掲げる。
(俺は今までこころに振り回されてきた。それが今はどうだ?今日はともかく、明日からは舌の肥えた大物達がここにくる。あいつのおかげで好きなことが出来る。嗚呼、アイドルやっててよかった。)
集中は高まった。今すぐ
「さぁ、調理を始めようか!!」
「「「ウィ、シェフ!」」」
一品目はアミューズ、二品目は前菜。三品目はスープ。三つとも他の三人に任せているから三から八品目を作ればいい。
四品目、魚料理、ポワソン。今日は白身魚のポワレ。
五品目、キイチゴのソルベ。口直しの氷菓だ。
六品目、肉料理、アントレ。鹿肉と青果のキャセロール。
七品目、デセール。デザートである。今日はスモモのジェラート、フォンダンショコラ、季節のフルーツ盛り合わせ。
八品目はカフェ・ブティフール。コーヒーと二種類の焼き菓子。これがこれから俺が作る料理だ。
まず、一番時間がかかる鹿肉の調理。乾燥させた鹿肉のフィレをローストする。そして野菜と果物をキャセロール。なべ焼きする。
同時に白身魚は下処理をした後、フライパンを温めてバターを入れる。程よく溶けたところで魚を投下。アロゼをして表面を焼いたら蓋を閉め、蒸し焼きにする。
ふんわりと仕上がった白身魚を取り上げて、少し休ませる。残ったバターにアスパラガスとゴボウ、スナップエンドウをぶち込んでスライスガーリックを入れる。全体的に柔らかくなったら盛り付ける。そしてフライパンに残ったソースを全体にまんべんなく、かつ美しくまわしかけていく。ちょうど三品目の皿が帰ってきた。俺は五枚の皿をトレイに乗せてゆっくりと厨房の外へと踏み出していく。
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「お待たせしました。白身魚のポワレです。改めまして、皆さんこんばんは。当店のシェフを務めております、東郷啓斗です。
…っと、前置きはこんぐらいで。お前らすっげー綺麗だな!みんなドレス似合ってるよ。
つーか蘭はいつのまにドレスに着替えたんだ?」
挑発的な笑みであいつが話しかけてくる。
そしてそこから下に視線を向ければ…あった。さっきから私の、私たちのよだれを生み出し続けている匂いの根源。キラキラと光る白と黒の大きな宝石が、そこにはあった。
恥も外聞もなく、今すぐあの料理に食らいつきたい。そう強く思わせる何かがそこにはあった。会話なんていらない。
「お腹空いたんだけど。早くそれくれない?」
「そーだよ!私もうお腹ぺこぺこ〜!」
「モカちゃんもー、お腹ー、ぺこぺこー。」
「楽しみだな、啓斗くんの料理!」
「ああ!蘭とつぐみは特に今日を楽しみにしてたもんな!」
「「してない(よ)!!」」
しかし会話をしないと怪しまれるのも確か。なんと歯がゆいことか。はるとくぅん…早くそれちょうだいっ。
「そんなに楽しみにしてくれてたのか。嬉しいよ。そんじゃまあ、どうぞ召し上がれ。」
とうとう、とうとうソレが私達の前に置かれた。震える手を御しながらそっとソレにナイフを当てる。ほろっと、なんの抵抗もなくナイフは重力に従って落ちていった。皮のパリパリ具合からは想像もつかないほどに中はふわふわほろほろ。薄黄金色の魚のエキスが切断面から滴り落ちる。
そっとフォークに乗せて口へと運ぶ。
ジュワッ
おおよそ魚とは信じられないほどの汁の本流が私の口の中を襲った。しかし決してくどくない。上に乗っていた薄いレモンがここで爽やかさをプラスしていた。
一口食べただけで察してしまった。これを食べ切ったら…やばい。
しかし、人間は痛みには抵抗できても快楽には抵抗できない。ナイフとフォークを持つ手が止まらない。
「なにこれぇっ!?」
「白身魚のポワレ。」
「いやそうではなく!」
「身はふわっふわで皮はサクサク…すごいよ!お店で出せるよ!」
「出してるしな。」
「なぁ啓斗、ラーメン作ってみないか?お前なら至高のラーメンを作れるっ!」
「お、おお。とりあえず落ち着け。」
「はるとくーん、テイクアウトはある〜?」
「そのようなサービスは取り扱っておりません。」
「…チッ。」
「おい、蘭なぜ舌打ちをする。俺はお前に何かしたか?」
「私よりうまい。」
「逆に聞くが自分と同じ程度の味しか出せない店にお前は行きたいと思うのか?」
「いや、まったく?」
「それが答えだろうが。舌打ちされる理由なかろうが。」
「シェフ、次の料理を。」
「あ、分かりました。」
キイチゴのソルベを持ってきたタクミさんに呼ばれて足早に厨房へ戻る。仕上げの時間だ。青果のキャセロールを皿に盛り付ける。皿の中央には肉汁を吐き出し続ける鹿肉。そしてその二つを彩る二種のソースを描くように垂らしていく。赤のソースは、バルサミコ酢と赤ワイン、イチジクと少量のハチミツを煮込んで作ったもの。緑のソースはハーブ、オリーブ、オリーブオイルとレモン果汁、チーズをミキサーにかけたジェノベーゼソース。
ああ、美味しそう。もうよだれダラダラだ。
タクミさん、すっごい目で見てる。あとでスタッフの分作ろう。賄いくらいないと皆さんもやってられないだろう。
あ、一応お給料は全員出ている。
弦巻グループの担当者によると、これからだんだん上がるらしい。
理由は、政治家や芸能人、官僚からアーティストまで大物を相手にするから、らしい。
トレイに皿を乗せながらふと考える。
あれ、高校生にやらせる規模じゃなくねぇ?
てか給料が高校生でウン十万ってどうなんだろう。
てか税金とかどうなんだろう。
ま、いっか。
開き直って思考を捨てて厨房の外へと出て行く。向かう先はただ一つ。あのテーブルだ。しかし今回は残りの料理の仕込みをすでに終わらせているため盛り付けだけでいい。なんなら俺なんかもう厨房にいなくたっていい。いや、それは言い過ぎたが。
「お待たせしました。鹿肉と青果のキャセロールです。お好みのソースをつけてお召し上がりください。」
「「「「「ふわぁっ…」」」」」
何やら目をトロンととろけさせ頬を緩めている五人の美少女。眼福だ。
「い、いただきます!」
ひまりの声で全員が動き出す。そして、肉料理と魚料理の大きな違いを感じることになる。
「あ、れ?止まんない…噛んだ分だけ肉汁がぁっ!」
「噛み続けていたい…なのに、もうない!?どうなってるの!」
なんかあの五人すごいリアクションいいな。見てて楽しい。ふぁぁあ、とか。ふおぉぉ、とか。頭を抱えたり目を見開いたり。
あー、ほんとかわいi
「ちょ、なにやってんの啓斗くん!?」
「なにって…自分を殴ってる。」
「止まって!一旦自分を殴るの止まって!」
「いや、正確に言えば俺の思考と記憶を無かった事にするためのこれは一ツールでしかない。故に辞めない。」
「やめろよ!だよ!」
「ああ、ひまりとつぐみは優しいんだな。あ、あと1メートル離れてくれ。今近づかれるとあと三倍は自分を殴ることになる。」
あわあわ、おろおろと騒がしいつぐみとひまり。とりあえず厨房戻ろう。
段差につまづく。
なにも入ってないフライパンを振る。
包丁をまな板に刺す。
………。
「バ○ス!!」
「シェフが滅びの呪文を!?」
「ああ、アマネさんか。気にしないで。思考をバル○していただけだから。」
「あー、そうですか。」
(なんかめんどくさそうだから突っ込むのやめよう。)
「て、勝手にアテレコしないでくださいよ!」
「つい職業病で。」
「本職アイドルで…ん?声優?調理師?どれ?どれだっけ?アレ?」
迷宮に入ったアマネさんを放置してデセールの盛り付けに入る。
スモモのジェラート、フォンダンショコラ、季節のフルーツをバランスを崩さず盛っていく。最後にバンドの名前でもある夕焼けをイメージしたブラッドオレンジのシャーベット。まぁ、サービスなのだが。
お腹冷えないかな?大丈夫かな?
「ナナミさーん。」
「はい、なんでしょう?」
「これウエイターの人に渡してもらえます?温かいものを追加したいので。」
「分かりました。」
と言っても、今すぐできるのはパンケーキくらいだ。まぁ、フワッフワにするのだが。フワッフワパンケーキの仕組みはソーマ君が作ったオムレツと大体一緒だ。メレンゲをぶち込んでフワッフワにする。フワッフがフワッフワでフワッフワになるのだ。
さらにフワフワのホイップも追加ァッ!容赦のないフワフワ地獄に俺の頭もフワフワしてきたぜ…ひまりや彩みたいにな!!
おっと、柄にもなく興奮してしまった。いやしかし誰かのためにご飯を作るというのはやり甲斐があっていいな。…おれにも誰かご飯作ってくれないかな。出来れば血と髪の毛と爪は入れない方向で。
「シェフ、お客様もう食べ終わりそうです。もう上がりますか?」
「ええ。今盛り付けです。これは俺が持っていくのでコーヒー持ってきてください。」
「ウィ、シェフ…ってなんか他人行儀で嫌ですね。啓斗さんって呼んでいいですか?」
「あ、はい。そっちの方がいいです。年上の人にシェフとか呼ばれるのはちょっとしんどかったですね。」
「私たちは職業柄歳下に敬称付けも普通ですけどね。」
軽い冗談を交わして笑い合う。職場に必要なのは良い風通しとユーモアだと思う。
最初の戦場のようにひりついた空気など何処へやら。今は緩やかさの中にひとつまみの緊張と高揚が入り混じっている。
まぁ一組目が順調に終わりそうな安堵とかもあるのだろうが。
これが、最初の一歩だ。
「シェフ、お客様お帰りです。」
桜が舞い散るあの日に、金色少女に導かれ…沢山の出会いがあった。沢山の驚きがあった。ここからだ。
ここからはじまる。俺の、夢への挑戦が!!
「本日は、ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」
俺の、世界への挑戦が始まる!
「いや、あんたアイドルでしょ。」
「そうでした。」
多くは語りません。
ただ、これだけは言わせてもらいたい。
軽い気持ちで見てください。
絶対に、重く見てはいけません。
これはギャグです。作者のストレスと欲望に任せた、某少年誌の超次元料理マンガに似た、ギャグです。
本当は五組分作るつもりだったんですけど、文量がちょっと…
次回から多分普通の日常回になります。
そして近いので七夕でも。
今回はAfterglowだったから次回はなにが良いかなぁ。
あ、そのうちラジオの方も更新しなきゃなぁ…
評価とか感想とかをもらうと作者が喜ぶそうですよ?
ヒロイン総選挙in令和元年・夏
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千聖こそ正妻
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リサ姉まじ天使・RMT
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蘭のツンデレ最高
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紗夜さん愛してます
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その他(感想欄にて受け付けます。)