《不定期更新》男性アイドルは超満員の中音楽なしで一人歌うことができるだろうか 作:星燕
クリスマスと聞いてやってきました。正月までにあと二話仕上げます。がんばります。バレンタインもちゃんと書きます。間を開けないようにあげます。
ブランクとかやばいですがどうぞ。
いいかお前らぁっ!
この小説はあったかもしれない十二月二十三日から二十五日までのドタバタ珍道中的バラエティ番組のお話かもしれない(困惑)
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耳の横をすり抜ける肌を切りつけるような冷たい風。街を彩るネオンの色彩。行き交う人達は笑顔と高揚、そして一抹の不安を抱えて足早に道を進む。
本日、12月23日。クリスマスのイブイブである。まあ、だからといって特に予定があるわけでもなく…俺こと東郷啓斗は今ではすっかり行きつけになってしまったCiRCLEで色々しているわけだ。
「ハルトくんそろそろ時間だよー。」
「あ、まりなさんアザス。」
「しっかし有名アイドルがこんな日にスタジオに篭りっきりとか、大丈夫なの?灰色っぽいけど。」
「いや、桃色じゃダメでしょーに。」
「たしかに。」
機材を片付けながらまりなさんと軽口を叩き合う。はあ、平和って素晴らしい。これで年末の生放送特番さえなければ御の字なんだけどなぁ…
「ハルトー!これからパーティーをするわよ!早く準備して一緒にいきましょう!」
「あー…こころ、俺は今から家に帰るハルトさんだからお前が探してるのとは別人だと思うぞ。」
「何言ってるの?早くしないと始まっちゃうわ!」
「まりなさーん!たすけてぇ、拐われちゃう!アイドルが誘拐されちゃう!」
「あー、あー、なんか聞こえづらいなぁ…なんか聞こえる気がするけどきのせいかな!」
「おぉい!?ちょっ、誰かァァァァア!?」
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「って感じで連れられてきた。」
「いやほんと、ハルトさんごめんなさい。」
「やっぱり美咲だけだよ、俺のこと労ってくれるの…。」
現在鶴巻邸。執事さんやらメイドさんやらにわちゃわちゃと体を採寸された後にフィッティングルームへ移動もとい輸送されてスーツを着せられ今に至る。
正直周りからの目とかそもそも周りの人のテレビで見たことある顔とか色々否定したい現実はあるけど、味方が一人でもいてよかった。
「みんなー!今日は集まってくれてありがとう!きっと最高のパーティーになるわ!」
ははは、うふふ、そのほか説明しにくいがおそらく親が娘のお遊戯会を観ているような温かな視線と声音でこころを見ているようだった。
ーーーえっ、あれって内閣のーー大臣じゃ?
ーーーハルトさん、私達はなにも見てません
一瞬のアイコンタクトで通じ合った俺と美咲は自分たちの周囲に目を向ける。
ナントカ大臣に儚い薫さん。野球のスタープレイヤー。最近有名になった社長や、ふぇぇしている花音さんと大物アーティスト。大御所の俳優に元気なはぐみ。ベテランの芸人…
ーーーえっ、いつもこんな感じなの?
ーーーやっぱり異常ですよね。
苦労もここに極まれり。美咲は有名人の人達からの謎の
「それに、今夜は私の友達にもきてもらっているの!おーい、ハルトー!こっちにきてちょうだい!」
訂正。俺も胃に穴が開きそうだ。主に、無邪気な金髪の
ガン無視を決め込もうか、今すぐ逃げ出そうか本気で悩んでいると、いつの間にか黒服さん達が俺の周りを囲んでいた。
「こころ様より何曲か歌を歌っていただけるとのことでしたので…あちらにご用意があります。」
「あー…これ選択肢あるけど一択なパターンだ。」
持ち前の身体能力でどうにか切り抜けられないか、何パターンも思考を重ねる。
「こちら、楽曲をアコースティックギター用に編曲したものになります。お好きな歌をお歌いください。」
「えーっと、勝手に歌を歌うのとかは…ほ、ほら事務所とか、ギャラとか…ね!?だからほら、勝手に歌っちゃうと…」
せめて、考えが纏まるまでの時間を…時間を稼がなくてはっ!
「ああ、それなら…ーーで、ーーー万円を振り込んでおります。」
えっ…いや、うっそぉ
「あっ、振り込み済みなんだあ」
「どうぞステージへ。」
「はい…」
有無を言わせぬ迫力と、お金と少々の権力によって、今晩は4曲ほどの歌を歌わなくては行けないらしい。
隣にいた美咲の、哀れみに満ちた…そして関わらないように少し距離を取ったその数秒をとてもとても見なかったことにしたい。
もし自分が美咲の立場なら3秒で出口へと走るが、それはそれだ。
「ええ、こんばんは燈豪ハルトです。こころさんのご紹介に預かりました。それでは僭越ながら、今宵のこころさんの美しさと…そして、皆様のひとときをほんの少し彩るように歌わせていただきます。」
ちなみに言わせてもらうが、先程の選択肢発言。今思えば一択もなかったわけだ。
歌詞の左上に丸がついている曲が何個かあるので…まあつまりそれを歌えということだろう。
「では一曲目。君に届け。」
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「流石ねハルト!やっぱりあなたは最高よ!いつでも、どんな曲でも私の大好きな声だわ!」
「それはどうも。」
あー…黒服さんからもOK出た。え?映像?事務所ホームページ?勝手にしてくれよ。え?レストランの予約?一年半先で良ければ。優先はできませんので。ゴメンナサイ。
「うわっ、ハルトが囲まれてる。そっち側だったの?」
「ちげえよ、てか助けろよ。なあ、美咲さんをウェイトレスとして雇おうかな。」
「はいはーい、ハルトくんは私たちとご飯を食べるのでこっちにお願いします。…いや、ゴメンて。悪気は、なかった。だから頼むからそういう黒服さん経由は許して。」
「たすけてくれたから許しちゃる。」
まったく、ひどい話だ。そう思わんかね。っと、美咲とこころ以外のノータッチだけど大丈夫か?尺的に。
…ん?尺的に?あれ、俺は一体…?なんか変なモン食ったか?いや、パーティー来てからはないはずだし…あ、なんかアルコール入ってたのか?
「美咲ー、なんか食いもんにアルコール入ってた?」
「んー、あっ、デザートのケーキとかには入ってるかも。」
「あー…もしかしてチョコとかにも?」
「いや、ハルトの方が味覚鋭いでしょ。」
ふむ、たしかに。あれかな、歌った後の高揚感とか興奮とかで味覚が仕事してなかったのかな。
あれ?美咲がふたり…いやさんにん…?
「みしゃき、にゃんでふたりぃ?」
「うわっ、ゆっくり回るタイプか!ちょ、落ち着いて!」
「んー…ねむぅ」
「…」スッ
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カシャカシャカシャッ
「…ふぅ。」
やりきった。その一心で私はスマートフォンをポケットに入れる。黒服さんを呼んで介抱してもらうようにお願いする。
「よし、帰ろ。」
保護者会で共有しなくては。謎の使命感を帯びて私の、私たちの23日は明けて行った。
ではまた明日か明後日。
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