《不定期更新》男性アイドルは超満員の中音楽なしで一人歌うことができるだろうか 作:星燕
今日のお話は合同ライブの前日。
なんでこうなった感は否めませんが…
まぁそれもありだろう。(責任ぽいっ
最近の目標は憧れの作者さんにお気に入りしてもらうこと。
してもらったらうれしいなぁ…
「皆さーん、盛り上がってますか!」
『はーい!!』
ここは幕張ドームシティ。俺の、初ライブのステージだ。と、言っても流石にデビューして数週間のアイドルがワンマンライブなんて出来ない。これは様々なグループや音楽が入り乱れる音楽フェスだ。なんでも、バラエティーの収録現場にいた開催者側のお偉いさんが、もともと参加が決まってたパスパレとおんなじ事務所だからとオファーしてきたらしい。
因みに合同ライブ前日である。
それを、例によって事務所が勝手に処理。二つ返事で了承の後参加する運びとなった。
ちなみに今の煽りは俺ではない。パスパレの彩である。俺の出番はここから六組あとである。
歌う曲は三曲。一曲目はSEKAI NO OWARIさんのDragon Night。二曲目はEveさんのアウトサイダー。三曲目はEasyPopさんのハッピーシンセサイザ。今回は前に六組もいるので盛り上げや煽りを気にしなくていい。らしい。なので純粋に歌いたい曲を選んだ。
そして今回も音はパスパレの皆さんだ。彩は楽器ができないのでハッピーシンセサイザで参戦だ。こういう風にほかのバンドとコラボできるのなら今度からはロキロキしたりロメオったりできる。
ボカロばっかだって?
しょうがないだろ。ボカロ盛り上がるんだもん。若干八つ当たり気味に歌っても大丈夫なんだもん。ようつべでそればっかみてんだもん。
いつかはSEKAI NO OWARIさんも出るロックフェスにも出てみたい。オールカバーでロキとロストワンの号哭、ブリキノダンス辺りだろうか。
いや、オファーなんか来てないから考えても意味ないんだけど。
「ありがとうございましたー!」
お、色々考えていたらパスパレの皆が帰ってきた。
「よお、お疲れ様。」
労いの言葉とともに先に買っておいたアケエリアスを手渡す。
「啓斗くんありがとー!」
「今日のライブもブシドーでした!」
「おう。みんな凄かったぞ。」
「いやー…疲れましたー!」
「ここからさらに3曲もあるのよね。」
「「「「え?」」」」
今の状況話そうか?千聖さん以外は俺と演奏すること忘れてた。
「わ、忘れてたぁ!」
「体力全部使っちゃったよ!」
「るんってこない!」
「やばいっす…やばいっす!」
あ、麻弥さんも忘れてたのね。そりゃほかの三人も忘れるわ。
「譜面は?頭に入ってんのか?」
「入ってますけど…体力が……」
「しょうがねぇな。啓斗くん特性はちみつレモンを進呈しよう。これ食って回復しろ。てかしてくれ。アカペラはしんどい。」
こんな時のため…というより俺が終わった後に食おうと思って作ってきていたはちみつレモン。これを食いながら四組の分休めばギリギリいける…と思う。アドレナリンとか脳内麻薬とかで。なんとかなれ。
「ふわぁ!甘い!酸っぱい!」
「これは、るるらるんっ!って感じ!」
「るるら…?とっても美味しいです!カンロです!」
「ほんとね。甘さもちょうどいいわ。」
「おいしいっす!」
「それはなりよりです。食い終わったらタッパー閉めて俺にくれ。」
「「「「ご馳走様です!」」」」
「美味しかったわ。」
「あぁ、そう。よかったね…。」
想定したよりも遥かに凄まじいスピードでタッパーが帰ってきた。なにそれ。カ○ビィですか?
いや、それだけ疲れてたってことか。
「東郷啓斗さん!パスパレの皆さん!スタンバイお願いします!」
おっと、もう出番だ。話す相手がいると時間が過ぎるのが早いな。
「んじゃまぁ、やりますかね。」
「ずっと思っていたのだけれど」
千聖さんが話しかけてくる。
「あんなに無理矢理アイドルになったのに、あなたは仕事は楽しそうよね。」
「ああ、そんなことか。これは俺の持論だけど、どんなに最初は拒否していた仕事だとしてもそれが自分に与えられた役目なら全うするのが仕事や役目に対する誠意だと思うんだよ。夢を追いかけてこの世界に入った人もいるんだから俺はそれを穢しちゃダメだ。」
これはずっと思っていたことだ。たとえ苦手なことでも、それを嫌々やるのは違うと思うのだ。少なくとも、俺はそういう思考で生きている。
だから巻き込まれんだよ!
「それに、やるんだったらとことん楽しんで楽しんで楽しんで…最後の最後まで、全力でもう絞っても出ないってぐらい絞り出してやりたいんだよ。だから、手伝ってくれ。」
『次のアーティストは先日のバラエティーで話題沸騰中の男性アイドル!東郷啓斗くん!今日は同じ事務所の先輩アイドル、パスパレの皆さんと参戦です!』
ふっ、と振り返る。必要なのは一言だけ。
「行こう!」
ステージ脇のステップを駆け上がる。一気にステージを真ん中まで駆け抜ける。他の五人は楽器を持っているから少し遅れる。
ならばこの僅かな時間も楽しもう。
「どうも、はじめまして。東郷啓斗です!」
観客の熱気、叫び、その表情からこのステージは楽しめばいいんだと、言外に言われているように感じる。
「こういうフェスに出るのは初めてで少し緊張してるんですけど…皆さんと楽しめるように歌います。歌える人は是非歌って、飛んで跳ねて騒ぎましょう!!」
紡ぐ言葉一つ一つに、騒ぐ細胞の隅々までこの感情を乗せろ。
魂を込めろ、歌え、心を放て。
「それじゃあ一曲目!Dragon Night!!」
短い前奏から静かに、感情を昂らせる。
徐々に速くなる心臓の音とリズム。歌詞の意味を噛み締めながら次の音を撃ち出す。
まだ、まだ足りない。観客の方が熱い。パスパレの方が強い。そんなのダメだ。
今、この瞬間のこの場所は俺の為だけにある俺のステージ。
誰よりも熱く、誰よりも強く。誰よりも優雅で誰よりも気高く。心を震わせるような瞬間を見つけるために。
『今宵、僕たちは友達のように踊るんだ!』
心臓がうるさい。体が熱い。血液の流れが速い。服は汗でビショビショ。でも、そんな状態になってるのがこの上なく嬉しくて、何よりも誇らしかった。
「二曲目行きます、アウトサイダー!」
頭が冴える。体中に広がる熱に対して、頭の方はいつになく冷静だった。少しずつ、だけど確実に思考はクリアになっていく。
生まれて初めて感じる全能感。今ならなんでもできるという自信。いろんなものがあるけれど、確かなのはそれらがなにかの形に変わろうとしているということだけ。
こんな経験は初めてだった。
もっと、歌いたい。誰よりも長く、歌っていたい。俺という、このちっぽけな存在を世界に知らしめたい。
「次の曲で最後になります。」
次が最後。その事実に胸が軋む。だがそんなの関係ない。時間は有限だ。その時間いっぱいを使って楽しむ。
ふと、後ろの五人を振り返る。
準備は?
オーケーに決まってる!
短いアイコンタクトで言葉を交わす。
彩が隣に出てくる。
「今日はありがとうございました。初めてのフェスで、皆さんの熱気が音楽の凄さを改めて教えてくれました。
それでは最後の曲です。ハッピーシンセサイザ!!」
オモチャの起動音のようなメロディーに乗せて歌い出す。
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「ふぉあー!やったったー!」
「やったった?」
「やってやった、じゃない?」
「おー、なるほど!」
現在帰りの車の中。運転席には瀧本さん。行きも帰りも送ってもらって…頭が上がらないです。いつもありがとうございます。
「ねーねー、すごいよ!今エゴサしてたんだけどね!」
「それってそんなおおっぴらにしていいことだっけか?」
「気にするだけ無駄よ啓斗くん。彩ちゃん続けてちょうだい。」
「うん、それでね!急上昇に“東郷啓斗”と“パスパレ”があるよ!」
「は!?パスパレはいいとして、俺も!?」
謎だ。なんでこうなった。俺は歌っただけだぞ。ついでに明日のライブのことを最後にチラッと話した気もするが、それ以外にはなにもしていない。
なのになんでっ!!
「啓斗くん凄かったもんねー。二曲目の…アウトサイダー?見てて鳥肌立っちゃったよー流石私たちが見込んだ子だ!」
「見込まれてたんですね。」
ふむ、そんなバズってるんか。そんな風に言われたら気になってきてしまう。
家に帰って晩御飯を食べて…風呂入って手が空いたら調べてみるか。
今?
今は恥ずかしくてできないよ。
ダニエルズプランさん、ありがとうございます!
精進します。
感想をいただいたので歌詞全部ブッパしました。
流石にBANは怖いです。
我らが啓斗くんは歌い始めるとゾーンに入って王様になっちゃう系男子みたいです。
みなさん、近くに啓斗くんがいてマイクがあるときは気をつけましょう。
評価、感想、アンケートへの回答、アドバイスや見たい話、ラジオで啓斗くんに聞きたいこと、どしどし下さい。
ヒロイン総選挙in令和元年・夏
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