断章保持者(トラウマ持ち)でもヒーローになれますか?   作:カナーさん

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なにも考えずに書いた。


断章保持者(トラウマ持ち)、決勝戦へ

 ジリジリとした熱さが実態を持たないのにも関わらず、ズンっとした熱気を叩きつける。

 足が重い。汗によって肌に纏わりつく服で気分も最悪。胃の中に魚が泳いでいるのか、腹がグルグルと掻き回されているような痛み。

 

 正直言って吐きそう。でももう吐くものは出尽くして、それでもおさまらず、胃液が喉を焼くくらい痛むから我慢してる。

 

 喉に逆流した物がこびりついているのか呼吸し辛い。鼻にも少しの入ったのか嫌な匂いが内から臭う。

 それがまた嘔吐を催促させるのを必死に我慢して歩む。

 

 自分のことで精一杯なのが幸いではないけど、外は外で酔いそうな歓声の熱気で包まれていた。

 

 声だけで空気が淀み、窓ガラスが割れるのではないかと疑ってしまう程の声。

 思わず流れるプールのように歓声の波に呑まれて漂ってしまうのでは、と思ってしまう。

 

 もし体調が万全でもこの波だと結局酔いそうだ。しかも内からではなく外からの波。何処に流されるかわかったもんじゃない。そっちじゃないだけ軽傷かな…。

 

 定位置につき、地面ばかりを映していた視界を上に上げる。

 

 『____________』

 

 今の肉体と精神の状態だと目の前の相手で一杯だからか、司会のプレゼント・マイクがなにか言っているが聴き取れない。

  

 『___決勝戦__爆豪_________!』 

 

辛うじてわかったのは決勝戦であることと、おそらくは相手の名前。

 

 ホッと一息。

 

 相手はそれを快く思わなかったのか"怒り"を示してくる。

 

 訂正する余裕もない。視界が眩む。望遠鏡を逆に見たときのように狭い。

 でもようやく終わる。ようやく一息つける。ようやく…トーナメントが終わって休める。

 

 そろそろ限界だった。これ以上〈断章〉を酷使するのは、後数分が限度。意識に至ってはギリギリといったところ。

 後数分までしか〈断章〉を制御できない。それ以降になると暴発のリスクが高くなる。

 

 主に轟とかいう奴のせいだ。奴の"炎"を目撃してしまってからどうも頭に靄が覆う。

 

 そんな愚痴を溢していると、相手がこちらに跳んできた(・・・・・)

 

 「…完膚なき一位、ね。ここで加減したら後が煩そうね」

 

 ぎちぎちぎちぎち…

 

 と親指をめい一杯に押しやり、カッターナイフから不吉な音を響かせ、少し欠けた刃が伸びてくる。

 

 そして、左腕の包帯に指をやり、掻き毟るようにほどく。

 

 包帯を止めていたピンが音を立てて弾け、髪留めがほどかれるように包帯をほどき_

 

 「〈私の痛みよ、世界を焼け〉っ!」

 

 今の姿に相応しい〈断章詩〉を叫ぶと共に腕にカッターナイフを滑らせた。

 

 「っ!」

 

 あまりの暑さからひんやりと感じる薄い刃が皮膚の上を走り、皮と肉を切り裂き筋まで切り込んでゆく。瞬間に、電気がその後を追いかけるように迸り、激しい痛みと切り裂く感触が混ざり腕を突き、指まで突き、脳まで貫いて、遅れて心臓の鼓動に合わせて痛みが広がり血が浮き上がる。

刹那

 

 

轟っ!

 

 その瞬間に空気が発火(・・)した。

 目の前を火炎と爆光が爆豪の声と体を覆い尽くし、髪と肉が焦げる猛烈な臭いが猛火と共に湧き上がった。

 

 血が引くいつもの光景。

 

 だがそれは今だけは別だった。

 

 「………くっ!」

 

 フッと蝋燭の火が消えるように爆豪をなめていた業火が消えた。

 

 「……う…………くっ…………」

 

 途切れそうな意識を引き留める。

 

 __駄目よ。今意識を手放したらロクでもない(・・・・・・)ことしか起きない。

 

 対戦相手(ばくごう)を切れかかった意識の中で見やる。

 

 最小限の加減をしたからか体の左側のみが焼けていた。焼かれた面は炭化しておらず炙られたように赤く腫れ上がっているだけで命に別状があるようには見えなかった。それでも相当の負荷だったのか荒い息で、痛みから動けないのか殺すような目でこちらを睨みつけていた。

 

 _限界ね。

 

 左腕を抑えていた右手を離し、そのまま小学生が先生にアピールするように手を上げた。

 

参った(・・・)わ。私の負けよ」

 

 それを聞き取ったのか爆豪は驚いたように目を見開き何かを言おうと口を開いたが、それは勝者が決まった歓声に呑まれ私には聞こえなかった。

 

 

 

 

 そのまま雪崩れるように保健室へ直行してベットに横になった。そのまま数時間休ませて貰おうとしたのだが、リカバリーガールが表彰式くらいでなよ、その後ならここを使っていいから、っと似た内容を延々と諭してくるので、仕方なく表彰台に立っている。

 

 服は着替えるのすら億劫だったので、ゴシックロリータのままだ。これは一応、サポートアイテムとして持ち込んでいる。ついでにカッターナイフも。個性を発現させるための道具として申請してあるし、問題はなかった。

 

 それでも普段から奇異の目には慣れていたがこの量の目には流石に少しばかり萎縮してしまう。

 

 しかも、テレビ放送されている上にオリンピック並み熱さを持ち合わせているので、これではただの公開処刑だった。

 

 その後、オールマイトがセリフ被りをしながら現れ、順々にメダルを渡していた。

 

 それを速く終わらないかと思いながら眩みぼやける視界で見つめていて、彼から私の名前を呼ばれてようやく私に話かけているのだとわかった。

 

 「…すいません。個性の影響で意識がはっきりしなくて…」

 

 それから彼は私を労り、ある質問をしてきた。

 

 なぜ、爆豪少年との試合を途中で諦めたのか、と。多分こんな感じの質問だったはず。

 

 「後一回が体の限度でしたので、あれ以上は勝負にならないかと思いまして」

 

 こんなニュアンスのことを発言したはずだ。

 

 それにオールマイトは言葉を投げかけてくれたようだが、辛そうな表情がわかったのか次に移った。

 

 そこで一位の爆豪が私になにか言っていたようだが理解する元気がなかった。

 そのまま観客一同とオールマイトがズレた締め括りを聞き流した後、ベットに意識を手放した。

 

 

 

 

 後日、丸一日をベットで過ごした後、リカバリーガールから帰ろうとしたところに、話があると言われ服装を戻した後、そのまま待機していた。

 

 待っていること一時間。現れたのはオールマイトを始めとした先生方が狭い保健室にやって来た。

 

 「…なんですか、面接でもするんですか?」

 

 「そうだね、似たようなものだよ。僕たちは今から君に質問する」

 

 よくわからない生物の校長先生がそれに肯定を示す。

 

 質問?コスチュームを着て?詰問の間違いじゃないかしら。

 

 「…なんでしょうか」

 

 「単刀直入に聞く、君の個性についてだ」

 

 「…なんのことです?」

 

 個性?なんだ、自傷行為についてお咎め…じゃあないだろうし、訳がわからない。

 

 「個性届けによると君の個性は"自傷"。自身を傷つけることで発火させることができる個性と記されている。だが君は初戦では自傷行為をせずに、対戦相手を場外に吹き飛ばしているね?」

 

 なんだ、そんなことか。

 

 「自傷といってもリストカットだけが自傷というわけじゃないです。トラウマを意図的に思い出すのも立派な自傷でしょう。体を傷つけなかったので実体を持たなかっただけですし、最近知ったので申請が間に合わなかったんです」 

 

 「本当かね」

 

 「…なんです、他にもなにかあるんですか?」

 

 「リカバリーガールから聞いたよ、君の傷は手当するまでもなく完治していたと」

 

 それを聞いた瞬間、無意識に左腕に巻いてある包帯を見た。確かに結びが少し違う。

 

 「本当のようだね」

 

 そこでハッと気付く。

 今の行動はまずい。今の行動は治癒することを私が認知していたことを裏付ける。あのまま包帯を剥がして入ればまだ、誤魔化せたのだろうが包帯の結びを見た瞬間に止まってしまった。

 もしハッタリであったなら完全に私は"黒"だろう。

 

 _この状況はまずい。

 

 「話してくれるかい?君の"個性"」

 

 _その瞳は辞めてくれ。

 

 「時槻(・・)少女」

 

 ______。

 

 「…私の個性は自身を傷つけることでそれに通ずる現象を引き起こす個性です。リストカットなら痛みを炎に。トラウマなら深度を衝撃に。鋏なら食い込み度で相手を切断しますね」

 

 私の言葉を受け止めて、皆が黙り込む。帰らせてもらえないだろうか。これ以上関わりたくない。

 

 「時槻__」

 

 「私に関わらないで。それ以上掘り下げると、暴発(・・)するわ。私を人殺しにするつもり?」

 

 誰かの言葉を遮り、素の言葉を紡ぐ。

 

 「問題ない、俺の個性で_」

 

 「それは発動する前の個性を打ち消せるだけで発動後の現象は無理でしょう?もう発動しているのよ(・・・・・・・・・・)。後は手綱を離すだけであなた達を襲うわ」

 

 その言葉に合わせるように近くの机がばんっ!と戦闘機のエンジンのような爆音が炸裂した。

 中から爆発したような歪な形に引き裂かれ、飛び散った。

 

 多分あの先生の個性は発動していた。目がカッと見開いていたし、髪の毛が少し上がっていた。

 

 その光景に皆が顔を驚かせ、険しくする。

 

 「帰らせてください。これ以上は保ちません」

 

 そう言って、ベットから立ち上がり、スタスタと扉へ歩いて行く。誰も止めなかった。

 

 

 

 

 休校が終わり教室に行くと波に捕まった。

 比喩でもなんでなくて、クラス全員が時槻に寄って来たのだ。

 

 時槻は基本的に来る者拒まずのスタンスで、クラスからは困った時に助けてくれる人という認識だった。

 

 この点はオリジナルの時槻雪乃(ときつきゆきの)のは違う点だろう。

 

 ので、私は全員を相手にしなければならず、朝からかなり疲れた。

 基本的にクラスではいい人を演じているが、こういう時はどう反応すればいいのかわからないので余計に神経を使った。

 

 ヘロヘロのまま昼休みまで席でぐったりしていた。クラスメイトはそれを疲れからだと思い、席に座っている間は話し掛けてこなかったのは幸いだった。

 

 だがその時間も昼休みに職員室に来るよう言われているので、名残惜しみながら職員室へ向かった。その時のクラスメイトの視線も時槻には馴染みないもので疲れがぶり返しそうだった。

 

 転入の話なら電話で済ませばいいのになんでわざわざ、呼び出すかな…。

 

 職員室に付き、そのまま会議室へ通された。

 そのままAとC組の先生の話を聞いた。ヒーロー科への編入と職業体験の話だった。どうやら私に指名があったらしくその話もあった。

 

 …単純に疑問なのだが私を呼ぶような理由がある場所とは何処だろうか…?少なくとも順位は二位だが、アピールできるようなものがあっただろうか。

 

 戦闘力?制圧力?…まあいいか。私が今考えるべきことじゃない。

 

 就職率はどちらがいいのかしら。この一点だろう。ヒーロー科のほうがいいなら考えるけど職種よね…。

 

 どっちかというとサポート科系統の会社に行きたかったのだけど…まあ、〈断章〉を使ってもいい職種というとヒーローぐらいだしほぼそこへ就職するとは思うけれど。

 

 そんなことを一日中考えていた。

 どうでもよいがA組らしい。よっぽど個性を脅威だと感じのでしょうね。

 

 

 

 

 数日後。

 なんかモヤがいる。

 モヤが喋りかけてきた。

  

 




断章のグリム、面白いよ。

誤字報告ありがとうございます。
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