断章保持者(トラウマ持ち)でもヒーローになれますか?   作:カナーさん

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わかっていましたが、主人公以外を喋らそうとすると、口調がコレジャナイ感ハンパない。


断章保持者(トラウマ持ち)、強制暴発(試)

 ステインは〈聖女ギヨティーヌ〉によって体に大きな傷を追ったがそんなことを感じさせない三次元的な動きで私から逃れようとしていた。

 増強型の個性等ならそれも理解できるが素の身体能力で壁を足場にするって…。

 ぶっちゃけどうやってんの?

 〈アリス〉によると隙間だったり、刀で支えていたり…ってDIOじゃないし、ここは忍びの世界ですか?えなに、この世界では鍛えれば超人的な動きは可能なの?

 

 でもやってることは私でも一応可能ぽいけど…そんなことよりまず、どうするかを考えないと。

 

 考えることに気を取られているとザシュ、グシュと私を凍らせたやつと同じように私は右腕にでっかいナイフが二本突き刺さった。

 それだけではなかった。

 〈黄泉戸契(ヨモツヘグリ)〉の影響で痛みに無頓着になってしまって、よく見ると体中に欠けて刃こぼれした刀で斬りつけられていたり、ナイフも腕だけでなく脚や胴体にもそれなりに刺さっていた。

 

 おかげで調達するのが面倒くさいこの服がかなりボロボロになっていた。

 …雪乃さんの美貌にあったこの服はこのご時世だからか少しの苦労で手に入ったがそれでも結構お気に入りなのだ。(同時にトラウマでもあるけど)

 

 

 

 

 時槻の頭上を勢いよく炎が通過する。

 

 「おい時槻。一人で突っ走ってんじゃねぇ。こいつは一人でなんとかなる相手じゃない」

 

 「そうだよ時槻さん。こいつは…」

 

 

 先程からステインを相手にしてきる彼女は緑谷達の声が聞こえていないのか振り返る身振りすらせず、一方的に傷つけられていた。

 それでも、鬱陶しくなったのか一瞬だけこちらに視線を向けた。

 ステインはそんな彼女を頭上から斬りかかろうとするが、轟が炎でそれを防ぐ。

 それを距離をとって躱したステイン。その間に緑谷と轟は声を届かせる。

 彼女への恐怖はなくなった訳ではないが、それでも彼女がこちらの動向を気にしながら、わざわざ緑谷達を庇うような彼女に不利な状況に持ち込んでいるのはわかった。

 自己犠牲の、あるいはその姿勢にヒーローとして何かを刺激されたか、恐怖は薄まっていた。

 だからこそ、声を掛けながら彼女の側に立つように彼女と一緒に戦おうと足を向けていた。

 

 

 

__________________________________________________

 

 

 

 

 

 「_________うるさいわ」

 

 絞り出すようゆっくり呟いた。辺りに冷気がブワッとドライアイスのように足元を拡がり、駆け巡った。瞬時に空気に緊張が走った。

 

 時槻さんは苦虫を噛み締めたようなダラダラと汗を流し苦渋に耐えているようだった。

 

 

 

 「〈こうなったら何回だって白雪姫を殺してやる〉』

 

 その言葉は、時槻さんから発せられた言葉だった。そのはずだ。

 最初は間違いなく時槻さんの言いたくもないといった声色だった。なにかに耐え忍ぶ、前までの轟君のような、そんなことを思い出す表情だった。

 

 それが途中で人が入れ替わったように、全てを見下す妖艶で無慈悲な女王のような…短期間しか時槻さんを見てないけど、あんな表情を…ヴィランのような表情を…。

 

 

 

 

 ………………なにかがあふれる

 うちがわから…こころからなにかがおしよせてくる

 かさをあげて…こころのかさをふやしてあふれてもれでてくる

 しんからあつさをうばわれていく

 なかからしんまでゆっくりのなめとるように

 

 こころからかさをあげてなにかがこえて…はれつした

 

 

 

 それは当人達のもっとも直視したくない現実

 

 兄に母に師

 

 ほんの一瞬だ。

 

 飯田天晴に轟冷にオールマイト

 

 その姿が飯田に轟に緑谷にヴィジョンのように写し出された。

 

 体中の毛が逆立った。地震が起きたように手足の震えが止まらず、瞳の焦点は定まらない。

 空気が変質した。水中にいるように纏わりつきローションのような粘着質なヌメリが全身の肌を撫でた。

 不快なヌメリ。取り除こうとヌメリを掴むと指にヌチュっと音が聞こえそうなほどの不快感に、猛烈な血臭いに背筋が凍った。

 

 

 

 轟は強烈な臭いが鼻腔届き、喉の奥から溢れてくるものを抑え込もうと反射的に右手で口を抑えようとして、そこで右手に感じる感触に気がついた。

 

 右手を見ると白い毛(・・・)に覆われていた。

 ちょうど白髪カツラを手で掴んだときのように指の隙間から毛が鬱蒼とはみ出していた。

 不思議に思い、半開きの状態の手を少しだけ握るとさらさらっと触り心地いい、透き通るような、羽毛のような不思議と懐かしいと思う感触が指を撫でた。

 

 そして、ふにゅっと低反発するやわらかな抵抗が指に伝った。まんじゅうくらいの低反発。力を入れればぷちっと潰してしまうような弱い反発。

 クセになるのがわかるような飽きない感触。それは轟も例にもれず、何度も押しては押し返される感触を楽しんでいた。

 そして、その感触に直に触りたくなったのか、手を開いた。

 

 それは白の綺麗な円形で中心黒い瞳孔をもった轟の母の瞳(・・・)だった。

 

 「___ああああああああああああっ!!」

 

 目を見開いて絶叫した。喉から吐き出された絶叫は無機質な路地の無音を破壊するように響いた。

 絶叫により力んだ指がべったりと血に濡れ、強烈な生臭い生命の臭いが爆発したように立ち昇った。指先の髪から赤く、白い母親の髪を赤く染めていき羽毛のようだった毛はしっとりと血を含んで指に絡みついた。

 父親のように。

 

 「__________っ!!」

 

 

 

 

 オールマイトの悲惨な光景の中、夢から醒めたように唐突に目の前が切り替わった。そこには苦痛に耐え、歯が折れそうなくらいに力を入れている時槻さんの姿が。

 

 「……だから、いやなの…よ」

 

 掠れた時槻さんの声。

 

 「チーム…なん…て…どこの、世界でも…私に、は、あわないわね」

 

 嘲笑うような自傷地味た表情と言葉。言い終わるとタイミングをはかったようにドバっと口から大量の血液を撒き散らした。

 体にある血を残らず絞り出すように流れる血は止まらず、ボロボロの服と傷だらけの体を上書きするように汚していた。

 

 オエッ

 

 グチョッと生々しい音が鮮血の水溜りに落ちた。

 それは陸に上げられた魚のようにビクビクの痙攣して水溜りに波紋を作っていた。

 パクパクと口を開閉していた。

 …それは魚ですらなかった。それは細い腕のような太さで歪な円柱な形で人参のような色合いだった。

 

 形の崩れたロールケーキのような、鎮座する、時槻さんの口から痰のように吐き出された物体。

 

 それが何なのかようやく霧がかった頭でようやくわかった。

 

 あれはソーセージだ。加工される前のソーセージ大にカットされた腸だ。喉を通る時に捻れて千切れたその一部だと。

 

 だが曇ったようなどんよりとした頭には本来感じるはずの悍ましさを理解せずただ呆然の眺めていて、やがて耐え切れなくなった体はゆっくりと瞼を閉じた。

 

 

 

 

 朝、いつもより早めに学校へ向かい、会話しているとこっちまで気が滅入りそうな教師に会い、そのまま教室へ連行された。 

 

 どうやら顔合わせらしい。教室も移動で今日から本格的に全て変わるようだが、どうせ一時的なものだろう。

 

 私はそのうち普通科へ逆戻りだ。

 

 

 

 「……今日からA組でお世話になる時槻雪乃です。…これでいいですか?これ以上は無駄だと思うのですが」

 

 雪乃さんのデフォルトである不機嫌さすら消した無表情で挨拶する。

 なんとなく内心でみんな同じことを言ってそうね。

 席に関しては事前に話を通してあるし、その他諸々も済ましてある。

 

 担任から許可っぽい言葉が貰えたので空いている一番後の席へ歩いていく。

 視線が私を射抜いているのがわかる。爆発したみたいな髪は攻撃的な視線を。背が低い子は…。………………。

 

 内側にいる白野君の信条が渦巻く。なんというか相変わらず目立つことは彼にとって嫌らしい。精神との分離を引き起こしそうだ。

 それでもこの体になってからは慣れた視線しかなかったので気にせず向かって中学校に比べて綺麗な椅子を引いて座る。

 

 そのまま流れるようにポケットから一般に比べて小さい本を取り出してページを捲る。

 

 よくある閉じた子の関わらないでといった雰囲気を作り出す。

 

 普通科では白野君スタイルを全うしていたがここでは雪乃さんスタイルのほうが何かと都合や良さそうだ。なんせ大抵空気を読んでくれるからだ。

 

 …それでもそういう意図を理解した上で関わろうとしてくる輩がいるがそれは問題ない。

 

 キョロキョロと何名かが人を探すように辺りを見渡して、なぜここにいるのだろうかっと疑問に頭を傾げて、思い当たらずそのまま席に戻っていった。

 

 成功してよかった。いや正確には失敗か。

 

 最近…というかあの狂人と対峙した日以降にある〈断章〉の多少コントロール出来始めた。

 不安定ではあるが扱えるようにはなったその〈断章〉の〈効果〉によって彼女達は私を見ることが出来なくなっている。

 

 〈名無し(アノニマス)

 物事の名前を喰うことでその物事を認識させない能力。

 

 これが最近暴発し始めている。私がほかごとにかかりきりになるといつの間か悪さしているようで困っている。私は忙しいのに。とはいえこの状態は悪くない。

 無駄な接触をどうするべきかこの〈断章〉で解決したのだから。

 といっても結局の所〈断章〉であることに変わりはない。原作で描写があった記憶がないのでコントロールは絶望的だ。使いこなせれば完璧な隠蔽が可能になるのだから、非常に惜しい。…最悪の場合は〈目覚めのアリス〉で壊すけど、ん〜〜惜しい。せめてオンオフくらいは出来るようにしたい。

 いまのところ発動条件は外側へ意識が向くこと。

 私は基本、内側の〈断章〉に頭を悩ましていて、そのときは何もないようなのだ。それが今のように本を読んだりしていると浮き出てくる。この〈断章〉を発動するには〈断章〉から気を逸らさないといけないのね…。

 

 いや無理だから。アホちゃう?だって今本を読んでいるだけで〈断章〉が働いているのに意識するなって無理無理。

 

 …それでも〈断章〉としてはこの上なく楽な部類ね。

 なんせ意図しない暴発はないってことだから安全性はかなりいい。〈断章〉の大変なところってやっぱり暴発だから、それを簡単に抑制できるというのはかなり嬉しい誤算だ。…これが他の〈断章〉なら良かったのに…いやでもその場合、最悪の時はどうやって私を見つける?

 

 

 

 何でもありません。そのままの君でいて。

 私が頑張るから!!暴発やめて!!!

 

 

 

 

 

 

 そういえばヒーローなんちゃな授業あるけど、コスチュームは来るのかしら。

 というかどんな感じの扱いを受けるだろうか。

 救助とかやなのだけど。

 

 

 

 

 

 




前回の刃先を向けた後のカツンっという音はイヤホンが落ちた音です。

誤字報告ありがとうございます。
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