断章保持者(トラウマ持ち)でもヒーローになれますか? 作:カナーさん
ちなみに前回、人質のなった少女事刻んでましたが最初の案では素手で心臓をブチ抜いていました。
学校の演習試験を無事(?)終わらせ時槻は合宿へ向かうバスの前でAとB組の集結した場所のぼんやりと立っていた。
世間では夏休みらしいが時槻には関係ない。
日頃仕事の事を考えている人間に急に休みを与えたとして、その人間は休めるか?否である。
むしろ、脳内は仕事のことで頭を埋め尽くし休めれない。そういう人間に休息を与えたいなら午前中だけとかある程度仕事をさせるのが一番安心する。
では時槻の場合だが、彼女の場合はそれもない。
彼女の場合生き方そのものが直ちに帰結するため休まるということはありえない。
寝れば死ぬ。気を抜けば〈断章〉が暴れる。目を開けると知らない場所にいる。
時槻は極端にいえば世界のため生かされている社畜だった。安寧の日などありはしない。
ボ〜っと眠たそうに虚空を見つめていると、なにやら馬鹿にした声色が朧げな時槻の意識に紛れた。物間である。
A組はB組より優秀…?知らないわよ。私は勝手に決まったんだから
その言葉に若干意識が覚醒して、小声で不満そうに言葉を漏らした。
時槻の〈断章〉は日に日に制御しきれなくなっていた。神の悪夢を制御するなどそもそも間違いではあったが、せめて強弱くらいは振れ幅を弄れないと見境なく悪夢がこの世に現出してしまう。
全知全能の神と呼ばれる存在が見て、そして切り離した悪夢が溢れ出せば人間が耐え切れるものではない。
〈断章〉とは簡単に言えばトラウマを能力にする。これにつきる。故に総ては時槻の悪夢を内包したものなのだ。時槻の精神は比較的落ち着いている。それなら通常は〈断章〉も同じように安定する筈なのだ。
なのに安定しない。むしろ発狂していた頃に近付いているくらいだ。
今回時槻が眠たそうになのは〈チェシャ猫〉が原因だ。
本来〈チェシャ猫〉はこの世界に存在する様々な『リカ』の人生を寝るたびに体験する。そしてその『リカ』は大抵酷い死に方をする、というのが本来の姿。
だがこの世界で生を受けてから数年で時槻は『リカ』の夢を見なくなった。
代わりにこの世界で死ぬ人間ならところ構わず対象にして時槻に夢を見させる。
この世界では『リカ』というのは一種の呪われた名前に数年前からなっている。彼女せい…とは断言できないが連日して惨い『リカ』の死体が発見されれば無理もないことだろう。この世界の『リカ』を〈チェシャ猫〉は喰い尽くしてしまった。
その頃の時槻は発狂状態だったのでその事実を知らない。一日に何十人もの『リカ』を体験して尽くが悲惨な死。その頃の時槻にとって夢と現実の境界はなくなっていて安寧の日もなく、休まる刹那すら存在していなかった。
では今の時槻の状態といえばちょうど殺された。蛙吹と話している最中に殺された。
発狂状態の時は夢と現の境界線がなくなっていたので〈チェシャ猫〉は起きていても悪夢を見せるようになった。
今はエピタフのように前髪の内側にその視界の映像がゲーム画面のように映っている。発狂状態の時と同じように。
鏡、窓、影、水面、隙間、瞳
別世界を暗示させるものならなんでもそれを媒介にして体験させようとする。
正直時槻の手に余っていた。
暴走状態というか、あまりに乖離しているのだ。これが精神が不安定なら説明もつく。
だが明らかにこれは外部からの干渉があった。意図的に〈断章〉を暴発させようと、そう感じるのだ。
そんなもの〈断章〉に干渉する〈断章〉である〈グランギニョルの索引ひき〉。不安定にする点に関しては〈
だがどちらも時槻が保持している。この世界で保持者になるには〈泡禍〉に遭遇する必要があるため他の保持者という可能性はない。
他の可能性は一つだけあったが、それはそうでないで欲しいという考えで目を逸らしていた考え。
〈泡禍〉が浮かび上がった可能性
それなら〈断章〉が不安定なのも説明がつく。ほか全ての理由が纏まってしまう。それは最悪の可能性でしかも対策のしようがなかった。だから時槻はそうそうに諦めていた。
話を戻すが不安定の〈チェシャ猫〉が時槻に悪夢を見せる昨晩はかなり酷かったようで何十人分を見てしまった。
「眠たそうね雪乃ちゃん」
「夜更かしはしてないわよ。今日はなかなかアグレッシブ夢だったから疲れているの」
寝惚けながら蛙吹と取り留めない雑談をしていると飯田が席順に並んでバスに乗るようにと声を張っていた。
✟
バス内はガヤガヤと流石高校生というべきか。かなりうるさく会話が飛び交っていた。
時槻は、というと相澤先生の反対側の席で寝ていた。
〈チェシャ猫〉の面倒なところはそれを夢だと気付けないことで時槻が耐性を得る前の、素の少女だった頃の感受性で体験されられるためかなり精神的にきつかった。とはいえ睡眠時間が短ければ見る人数も減るようでほんの少しの仮眠をとっていた。短いと見ないことを時槻は付き合ってきて把握していた。
ちなみに蛙吹がその寝ている姿を写真で撮っているのを窓に写った時槻にそっくりなゴシックロリータの服を着た少女が見つめていた。その少女を時槻が宥めていたの蛙吹は知らない。
蛙吹が女子グループに「寝ているから少し静かにしましょう」という言葉と共に付随されたその写真を、何名かが密かに保存したことを時槻は知らない。
✟
バスが停止すると時槻は目を開いた。終始騒がしかったのもあるがなんやかんやで彼女も合宿を楽しみにしていたのだ。
人は楽しいことがあるとスッと目を覚ます。彼女も例外ではなかった。
どうやら一旦休憩のようで、時槻も含め全員バスから降りた。
外に出て「んー」と体を伸ばす。雪乃は一時廃墟で生活していたがやはりこういうのは馴れないと心の中で愚痴る。
伸ばしている間にも見えていたがどうやらここは崖の上にある空き地のようだった。辺りには森が茂っていて、時槻は少し萎えていた。
時槻が少し萎えていると、近くに停車していた一台の車から四人が降りてきた。女性二人に子供が一人、
「ご無沙汰しています」
相澤が女性二人に頭を下げて挨拶していた。
その言葉を聞くや否や、アニメの猫のような笑みをすると
『
とビシッと口上も噛まずポーズも決まっていた。
「………………………………………………」
いい大人が恥ずかしくないのだろうか
猫の手に猫の耳、猫の尻尾…猫尽くしね。猫の手を借りたいとかそういうのから派生した感じかしら。救助らしいし。
でも恥ずかしくないのかしら
やね。一番の理由は猫ってだけで〈チェシャ猫〉が
結構失礼なことを考えているとボサボサ髪が興奮したように彼女達のことを説明する。
やはり救助で間違いないようで山岳救助などが得意らしい。キャリア、ランキングから見ても凄いらしい。
…それより先生。この葡萄みたいな頭の人、トイレ行きたがっているんだから行かせたら?
などと思っているとスタスタと男が近付いてきた。サラリーマンのようにスーツ姿の男は暑さを感じさせない足取りで悠々と進む。
雪乃はその男は見るや目を少し広げ、驚きの表情をする。
そして男は雪乃の前で跪いて彼女の左手をとり
そのまま彼女の包帯で隠れた左手首へ唇を落とした。
当然プッシーキャッツを含め全員が固まる。
「…また会ったわね。
「お久ぶりです雪乃さん。なにってただのキスですよ。童話をよく読んでいるので憧れがあると思ったんですけどね…」
騒然
全員に挨拶させようとした相澤すら止まってしまった。
そんな中、気にした様子もなく二人は会話を進めていく。
「…童話なら手首じゃないわ。あなた手首にする意味わかっているの?」
「童話は手の甲ですね。えぇわかっています。欲望でしょう?」
なら尚更わからない。いやわかりたくない。
態々〈雪の女王〉のためリストカットしている左手首に落としたのだから自ずと理解できる。
…焦がれているのか。
そんな考えが出たが雪乃はこの男が嫌いだった。引ったくるように腕を戻して相澤へ視線を向ける。
「今回お世話になるプロヒーロープッシーキャッツの皆さんだ。お前ら挨拶しろ」
流石相澤先生。この状況で紡ごうとしていた言葉を出せるとは。もちろん挨拶のその前に阿鼻叫喚。
この男に至ってはプッシーキャッツの青い方に詰問されてた。
✟
全体が落ち着くまで数分を要し
「挨拶」と短く相澤が催促して皆が挨拶すると赤い方が説明をする。そして途中からなにかを察し、バスへ駆け出す。そんな必死の様子を雪乃は見ていた。雪乃はまだ相澤先生をよく知らないが故静観していた。
「雪乃ちゃん早く!」
「悪いが諸君。合宿はもう始まっている」
青い方が生徒の前に立ちはだかるように現るとそのまま地面に触れる。
その瞬間、雪乃は意図を察した。
予想どうり土が蠢き中で爆発したように盛り上がり、生徒たちを押し出した。それはまるで土砂崩れのような勢いで生徒達だけを押し流した。
「私有地につき個性の使用は自由よー。今から自分の足で施設までおいでませ。この魔獣の森を抜けて!」
「魔獣ね…片腹痛いわ」
「そう言ってやらないでください。初見じゃ魔獣としか言いようがないんですし。それに彼女のことを馬鹿にしないでください」
生徒達だけ…正確には雪乃を除いたA組生徒達だ。
魔獣と聞いて雪乃は一瞬〈異形〉が脳裏をチラついたがあんなものをヒーローが留めているなんてありえないことに気付き自嘲も含め笑っていた。
脳裏に浮かんだのもそれを一瞬考えてしまったのもヘラヘラしているこの男のせいだ。
雪乃の関係者であり、森という『異界』で、魔獣という単語。
これだけ条件が揃っているならば雪乃が警戒するのも無理なかった。
『森』というのはヘンゼルとグレーテル、ラプンツェルなど童話や昔話によく登場し、不思議なことや危険なことが起きる場所として描かれる。
確かそんなことを原作で説明していたよう気がする。
だから本物の魔獣というのは可笑しくない…そう思ってしまった。
この男がいなければ考えすらしなかったことだ。
「イレイザー、この子平然と回避して満さんと話しているんだけど」
「おい時槻、お前も下の奴らと一緒についていけ」
「そういえば鍛えるのが第一目標でしたね…わかりました。申し訳ないですが"道"を作ってくれませんか?」
流石に飛び降りるのはその…自殺みたいで嫌なんです。
ピクシーボブの個性で運んで貰うと邂逅一番に梅雨ちゃんに心配された。
確かに土砂崩れで一人だけ見つかんなかったらこんな反応か、と呑気に考えていた雪乃。
その後女子全員に囲まれあの男のことを説明することになる。それが想像以上に疲れるとはこの時の彼女は思っても見なかった。
✟
その後目的地に16時半に着いた。
本来なら17時20分が約一時間縮まったのはひとえに時槻がいたからだ。
時槻雪乃は着いても全員がヘトヘトで戦意喪失といった形相なのに対し平然一人普段と変わらない様子を見せていた。
七時間以上動き続けただけ、というのが彼女の感想だった。
軽く散歩しただけというような態度で、事実それくらいにしか思っていなかった。
彼女が使ったのは〈聖女ギヨティーヌ〉という〈断章〉
この〈断章〉は本当に使い勝手がいい。裁ち鋏を向けて刃を落とすだけでいい。そうすればギロチンで飛ばされた頭のように指定したものが切り飛ばされる。
近距離においては無類の強さね。唯一の欠点を上げるなら〈断章〉であること、と興が乗ってしまうこと。
どちらも気にしていればさほど問題ないから〈断章〉の中では破格ね。
そうこの発動条件の簡略さ。その効力。
それが約一時間短縮することに繋がった。
その後ボサボサ髪改め緑谷が子供に挨拶すると子供が緑谷の股ぐらに拳を叩き、燃え尽きさせていた。
しかしあの子供…ヒーローに家族でも殺されたの?怒りが明確に奥に宿っていた…哀悼と悲痛も一緒くたに混じっていたけど。
荷物下ろしてそのままご飯だけど…
悪いわね梅雨ちゃん。気持ちはわかるけど肉の類が食えないのよ。代わりに楽しんでちょうだい。
…後あなた後でしっかり彼女を説得しなさいすっごい目で見てるわよ
✟
-食事の時間が終わり入浴-
「壁とは越えるためにあるPlusUltra!」
「ヒーロー以前に人として学びなおせ」
「クソガキィィィィイ!」
いつもどうりの峰田、注意する飯田。そんな声が一枚挟んで聞こえてくる。
「いやー青春してますねぇ!」
と腰にタオルを巻いた人繋満が入っていく。
「人繋さんっ!?なんでここに」
「おう!これから一週間顔合わせるから交流のためにな。後その小僧よろしくな。おーい早くしてくださいよ雪乃さん」
『えっ…』
彼の一言で男子だけでなく壁の向こう側の女子までもが言葉を失う。
「…うるさいわよ」
ギギッと錆びついた重厚な扉のようにゆっくりと脱衣場のほうへ顔を向ける。
そこには後ろに髪を纏めたTシャツにショートパンツといったラフな格好の雪乃がいた。
態々明記する必要はないと思うが此処は男湯である。"男湯"である!断じて秀吉風呂とかではない。
そしてこれもわかりきっていることだが時槻雪乃は女性である。男の娘などでは決してない!股ぐらには何も付いていない!!
皆が絶句しているが男は平然と雪乃を呼ぶ。そしてこちらも平然と男の隣に並ぶ。
「ここの石鹸はけっこう品質がいいですよ」
「ふ〜ん。そっ」
「興味ないですね」
「石鹸を使えることに喜びを噛み締めてから出直しなさい」
雪乃は服を着たままであるが男と同じように体を洗っていく。その表情は男に呼ばれたときより険しい。
「あぁ気にしているんです?大丈夫ですよお互い(溶けても)直ぐ治るんですし」
「服を(血で)濡らしたくないわ」
「なら頑張ってください」
男はそのまま体を泡立たせ、頭を泡立たせて一気に頭から洗面器に貯めた湯を浴びる。
「あ〜こうドバっとくるのが好きなんですよ」
「興味ないわね」
ドバっと男の浴びた湯が地面に叩きつけられるとようやく頭が回転した。
が、
「な、なんで時槻君が男湯にはいってきているんだっ!!?」
今度は恥ずかしさ頭が回らなくなる。
「時槻ぁ、そういうことなんだな!?
「うるさいわよ葡萄。文句があるならこの男に言いなさい」
「いやだってこっちに入るって言ったの雪乃さんですよね?」
『っ!?』
「それはあなたが風呂まで一緒についてくるから私が犠牲になったのよ。女湯に男一人より男湯に女一人の方からダメージ少ないでしょ」
『まずこの人女湯にまで入るつもりだったの!?』
「だってどうせ一人で入るつもりでしたでしょ」
「当り前でしょ遺体を作る気?」
『どういうことっ!?』
足だけを湯につけ話す雪乃のその隣で肩まで潜らせる男。
この二人の会話はピクシーボブが怒り狂うまで続いた。
結果、体を癒やす温泉がむしろ活き活きし過ぎて逆に疲れることになる。
ある少年は、首に滴れる汗と湯の温度で高揚した頬に対抗するような雪のような肌。足もまた……。普段の凛とした表情からは連想出来ないくらいラフな格好でボディラインが………。ギャップが…と語っていた。
ちなみにこれで百分の一である。
✟
一方教師陣は重い空気に包まれていた。
話の中心はラグドールのことだった。
何処かでサイコロの音と退廃的な少女の嘲笑うような聲が聞こえたような気がした。
まさかの名前持ちで再登場するとは…しかもかれしとして。
そしてこの適当感。ちな最初はバスタオルだけでした。
最初の案-if
ガシッと男は雪乃の前髪を掴むとそのまま湯舟に引き摺り込む。
バシンッと顔面に熱い湯が叩きつけられるが段に手を滑らせこれ以上引き込まれないようにした。雪乃はそれを条件反射で無意識のうちに行っていた。
男はこれ以上は引き込めれないの悟ったのかすぐに晒されている首に腕を巻き付け
その瞬間鈍い音と共に雪乃の首が男を支点としたように傾いた。
だが雪乃はギョロっと魚のように瞳を男に向け
「〈自由を奪うモノは檻に〉」
ズルっと注射針のように樹木のような針が体内に侵入していく。男の腕は中で増殖した針によって元のサイズより肥大し、裁縫セットの針山のように針が腕から飛び出す。
だがそれは腕だけだった。
彼は個性で腕だけを囮に針に繋げ、体を切り離した。
なにをどの程度繋げるを選べれるため体を犠牲に緊急脱出に使えた。
「…最悪の気分ね。服が息が詰まるわ、二重の意味でね」
スッと服に忍ばせた裁ち鋏を持とうとして
グズゥっと僅か隙に男と切り離された筈の腕が雪乃の首に食い込んだ。
グンッ!と風切り音と共に雪乃はトラックに轢かれたような衝撃を受けそのまま男湯と女湯を隔てた壁を粉砕し浴槽に叩きつけられた。
「あぁ最高だなお前の血はよぉ、それに懐かしいなぁこうやって俺が立ってお前が這いつくばっているのは」
「黙りなさい…」
「あぁそうそれ懐かしい。狂気に囚われていた時に一生懸命お世話してたもんなぁ。何度もグチャグチャのシェイクしてされたのに、それでも献身的に面倒見ていたもんなぁ」
「殺すわよ」
「いいね。やってみろ後悔するのはあなただ」
オチが見つからずここで打ち切りに。