断章保持者(トラウマ持ち)でもヒーローになれますか?   作:カナーさん

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Q一週間くらい?
A誠に申し訳無いです。
 事故病気病院納期台風等に追われておりました。死にそうでした。次の投稿の予定日も確定出来ないです。

 日常的な話ならネタがあるので二話くらいなら…。本編は終わりを見据えているのでそこに到達するまでの過程を何度か見直したりラストをどう締めようか伏線をどうするか、なにも考えずスタートさせた頭を捻らせています。

 完結はさせます。番外編はわかりません。筆者が現実で痛かったら進むと思います。一話の時も痛みがきっかけでしたし。





断章保持者は不明

 

 異界と化した『森』。または冥界。

 その冥土を踏み入り、彷徨い、取り戻せた(さいかいできた)者はラプンツェルの王子だけ。

 

 冥界の食べ物を口にしてはいけない…だがこれは食べることだけに留まらない。

 

 例えば、杖として持ち出そうとしたり、溶接するように体に引っ付けたり。

 

 この個性が蔓延った時代。通常では考えつかないような手段で異界のものを口にする(とりこむ)可能性は大きい。

 

 あぁ。だからお願い。

 

 そう願わずにはいられない

 

 私の内から浮かび上がる〈泡禍〉を抑え込んでいる間に。

 

 どうかどうか。まだ森であるこの場所から。

 

 久しく喚き希う

 

 まだ形相が変わらぬうちに。王子が渡り歩いた『森』の舞台にならぬうちに。帰ること叶わぬイザナミになる前に。

 

 ただの茶番だ、決して叶うはずのない願いをそれでも

 

 

 流れる風景に混ざる八百万とその横にいる男。そして瞼の裏に写るゆったりとした風景のなか、彷徨う男に伝えようと必死に腕を伸ばして…

 

 

 …踏切を横切る特急列車のような速さで迫る剛腕に全てを遮られた。

 

 

 

 

 

 ズンッ

 

 

 と特急列車が通るように目の前を大質量のナニカが横切った。それはあまりに速く目線を追っても木々に隠れ、姿は見えることはなかった。

 

 ぶちゃ

 

 っとワンテンポ遅れて、鳥の糞が落ちたような音がした。一つだけではないような、一度に何匹もの鳥が同時にしたように異様に少し大きめな音だった。

 

 そちらに目線を戻すと黒い物が所々を赤く染めて落ちていた。

 

 それがなにか、八百万は思い至ってゾォと熱を奪われていくのを感じる。

 あれを着ているものは八百万は一人しか知らなかった。

 喪服のような黒さで端のほうにフリルがあしらわれた服。そのフリルに隠されるように八百万も羨むような白い肌の美しい手が。

 

 緩く閉めた蛇口から漏れ出る水のようにゆったりと手の反対側から紅い滴がゆっくりと溢れ、あっという間に地面は紅い絨毯のようになり、まるで紅い絨毯に王冠を載せたように血の上にその腕が横たわっていて、血の濃淡が白い肌を際立たせていた。

 

 

 

 

 トラック、或いは電車に轢かれた感覚に似た衝撃が雪乃を襲っていた。

 進路にある木々をへし折りながら、それでも雪乃は止まらない。一本、一本っと折る度に体の何処かが折れ、潰れ木片が体に突き刺さる。

 

 近くして速度が揺らぎサッカーボールのように跳ねながら階段を転げ落ちるようにして…ようやく地面に停まった。

 

 

 四肢欠損を覚悟にしていた雪乃はボロボロの肉体の感覚に少しだけ安堵した。

 まだ抗える。まだ消さなくていい。

 

 雪乃の腕、部位は必ず他者に渡ってはならないのだ。誰が決めたでなく雪乃一人が定めた、雪乃自身を縛る法。

 

 雪乃の肉体は長い間〈断章〉に晒されたおかげで〈レリック〉の側面さえもっていた。

 雪乃の肉体は〈断章〉を内包するまでに発展していた。〈断章〉とは心の傷。それが肉体にまで及ぶ。

 

 いってしまえば雪乃の体は本来存在しない常識を携えた物質に果てていた。とある魔術なら第二位の未元物質に似たようなものか。

 つまるところ回収されてはマズイのだ。

 

 存在しない常識といってもせいぜい人の悪夢を誘発させることだが、かなしいことに雪乃はそれを〈泡禍〉まで昇華させ、被害を拡大させてしまう(・・・)ので____パチッと意識が途切れた。

 

 

 そして勝手に(・・・)再起動する。理解出来なかった。

 停電したように唐突に意識が途切れた。まるで状況がわからないので動こうと筋肉に力を入れると圧迫されるような違和感が腹部と頭部から生じた。

 目線を下げると腹から人の腕ほどある先の尖った木の枝が露出していた。後ろから突かれたように腹を貫通して飛び出していた。

 そして下げていた視界に滔々と見慣れた液体と固体の果てが伝い落ちていく。

 

 老廃物のように流れ落ちていく中身であったものを俯きながら他人事のように眺めていると太陽が雲に隠れたように急激に影が雪乃を覆う。

 

 目線を上げ、確認することはなんて愚は雪乃はしなかった。

 

 焼かれるような痛みに耐えて、カッターナイフを持った腕を振り上げるとその握った手ごと巨腕にビンタのように叩きつけられ、手が接触した時点で雪乃の手は粉砕して、けれどもそれがクッションとなったのか運悪く、カッターナイフは壊れることなく、襲いかかってくる巨腕に押されるように雪乃の耳へその刃を向けていた。

 

 視界の見切れるか否かの境。しかし朧げでも捉えた物を非情にも〈アリス〉は明確に理解した情報を送る。

 

 耳掃除をされた時の痛みとは比べようもない熱い痛みが直に脳に噴く。

 不幸にも〈雪の女王〉のために痛みを感じられるようにしたため鼓膜にカッターナイフが刺さるという異質な痛みを味わうことになった。

 

 それだけではない突き刺さったまま転がるように地面を跳ねたため耳の中で暴れるように無事な部分を抉り、より奥へ深く刺さった。

 痛みで点滅する視界に梅雨ちゃんが写った。

 ゾッとした。熱い体が青くなった。

 〈チェシャ猫〉で見た光景と似ていた。

 

 「__っ」

 

 

 

 

 

 コンっとトガの頭に何かが当たった。

 確認のため、飛んできた方向に目線だけを送ろうとして__実体をもった質量の激流が激突した。

 

 目線を動かすなんて出来やしなかった。そも体が命令を拒否した。

 

 

 

 

 

 マンダレイ達の戦場。

 進行のない諍いは停滞の中、漸く次のステップへ移行を始めていた。

 

 微睡みから覚醒した、寝坊を認識した学生のように瞳を閉じた(・・・・・)ピクシーボブが起き上がった。

 

 棺から引っ張りだされるパペットのように不完全で蘇ったアンデットのようにそれは機敏に動かず、辿々しく、さながらからくりのようで要領えず、起き上がるのさえ苦戦したというようで、ギギッとオノマトペが付きそうくらい異様で異常な風貌だった。

 

 起き上がったピクシーボブは戦闘中のマンダレイ達に目はくれず、それどころか自身の怪我すら気付いていないようにボオと黄昏れるように森の方を見つめていた。

 

 その姿は新婚の旦那の帰りを待つ主婦のような初々しさで、愛人の墓の前にいるような儚さで、ともかくそんなことを同時に抱かせる表情で「………」と小さく何度もそれを呟いていた。

 

まるで誰かの名前でも呼んでいるようだがマンダレイ達自身に狙われた風切りと打撃と金属音に挟まれ聞こえやしなかった。

 

 「ちょっと!ピクシーボブ!!」

 

 マンダレイが声を荒げた。個性で自分の言葉を無差別に届ける彼女はわざわざ声を大きくする必要ない。相手の意識が薄い場合は別だが、その場合は状況によるが並列させる。

 

 今だって彼女は個性とその喉を使って沈みかけている意識を浮上させようとしている。

 一つでも処理させる工程が多ければそれだけ意識の突っ掛かりが増える。

 

 ピクシーボブはやはりというべきか体を起こすのすらぎこちなく、リハビリ数日目のガタガタした危うやを保持しながら、ゆらゆらと幽霊のように歩き、誰かに引っ張られるように手を前に出して__一本一本の木が淀んでいる、異様な空気を放っている森に吸い込まれるように瞼を閉じたまま、足を踏み出していた。

 

 

 

 

 近く断続的で規則性のない物音に目をさました。

 さました…そのはず。けど目の前は真っ暗でただただ少し離れた場所から音が聞こえ続けるだけだった。目隠しかと思ったけど圧迫感がなく、それじゃなにが覆っているのだろうと頬付近に触ったときの感触。

 それに触発されるように頭部から鈍い痛みが包みこむ。

 

 痛みでどうにかなりそうだったがそれと共に直前の記憶付随してきた。

 

 森が燃えて、浮遊感そして痛み。

 

 ギッと痛みが鼓動した。

 

 推測…敵に頭部を強打され、そのまま意識不明。

 

 なら私は敵に連れ去られたのか。肌に感じる地面の感触。暗雲の意識、盲目の視界。

 

 人質と無力化なら視界を潰されるのも納得はできる…認めたくはないが。それならこの途切れない音は…?

 

 「ピクシーボブッ!!

 

 小さな声だった。ただ私のヒーローネームを呼ぶだけの声を。

 それを聞いて私はわかった。

 私を呼んでいる。

 

 

 ヒーローを呼んでいる。

 

 

 そう意識した途端この手を包む感触とその声がはっきりとして、そして語りかけてくる声を聞いていると知らないはずなのに、なぜか涙が溢れそうになる。

 もっと触れ合いたいってもっと話を聞きたいって。そんな思いが空虚だった胸から漏れ出てくる。

 私を呼んでいる場所があるって言ってた。ならそこにいこう。そうすればこの空虚の穴を埋めれる気がするんだ。失ったものを取り戻せると思うんだ。ヒーローとしてそれはどうかと思うけど、そんなWin-Winの関係でいいんだよね

 そうだよね〇〇〇。

 

 

✝ ✝

 

 グチュグチュと沸騰して全身の皮膚が溶け、肌に空気に触れている、この刹那も異常が針を突き刺すように脳に届いていた。

 

 起き上がろうとするも支える筈の腕は痙攣しているのか異物のような感触で動きやしなかった。

身体がだるい。四六時中運動したように体が動くことを拒否していた。

 身体には疲れに無数の傷や異物が入り込んでいて瞳からはなんだかよくわからないものを流していた。涙じゃないなにか、痛みを発するものだ。

全身が鉛を入れられたように重い。それに〈泡禍〉が。いやその再現がこの森で起こっていたし、ロクな状況じゃなかった。

 

 だがこの状況は都合が良かった。両腕が上がらず目を閉じれば眠ってしまいそう。

 

 いやなことは寝るに限る。悪夢を見なければだが、現在どこも悪夢が開演中で休めそうな拠り所はどこにもなかった。

 

 こういうときはとても危ういことは過去の経験で身に沁みていた。

 

 この時ほど芯を持たなければならない状態、だけど過去と明確に違う点がある。

 よりどころ、つまり_依存先が今回はないのだ。

 

 寝れればこれが悪夢だと微睡み、狭間にいる間はそう断じることができる。その先は本物の悪夢だがそれでもいっときの和らぎであればそれだけで充分だった。

 

 が、今の私にはどこが微睡みでどれが現実で何処が悪夢なのか見分けがもう出来ない。

 

 不完全な〈猫〉の模倣。

〈泡禍〉と〈断章〉が私の悪夢であり、私はそれを再現してしまう。

 私はあれ以上の悪夢を知らぬがゆえ、そして私はそれに立ち会った訳ではないゆえ、〈断章〉が再現するのは〈泡禍〉と〈断章〉の陰のみ。それが私の精神を擦り減らさせ、さらなる悪夢が再来する。簡単な話、悪夢が増大し続けるループ。

 

 壊れてしまえば楽なのでしょうが…私は一際頑丈だったらしい。

 

 

 悪夢の再現にまさか当人達の容姿や人格まで含まれ…そのせいでもうすぐで壊れそうだった私の精神は再現されたモノと混じりあって__結果現在の『私』が産まれた。

 

 だから私は自分という個がない。

 

 さらにいえば混じりあった弊害でなかで暴れ、せめぎあって余計に私は不安定。そのせいで〈断章〉が不完全なのに不安定というどうしようもないことになっている。だから〈猫〉も不完全で不安定の結果私は現実が見えてない。

 

 だから目の前で私を追っていた狩人が串刺しにされていても、その周囲を霧が覆っていても私を眺めているだけ。

 疲れたら遊戯を休む。その先のことを今は考えない。

 

 現であれ幻であれ、碌でもない未来が待ち受けているのは必然なのだから。

 

 夢の中で頑張るのは馬鹿らしいでしょ?

 それと同じよ。

 夢の中で必死こいても瞳をあければ唯の泡。なにも残らない。決してね。

 

 

 

 

 林間合宿の被害は甚大でプロヒーロプッシーキャッツの二人が行方不明。爆豪が拐われ、残りのクラスは十九名は命に関わる傷もなかった。あくまで"傷"はだが。

 

 

 ……ある一名の生徒の安否は確認されていなかったがヒーロー、警察、ともに生きてはいないと見解だった。死体こそ確認されていないが、針にこびりついた血や臓器、腕などの部位がソーセージのように括られた物が無数に落ちている森。それを目のあたりにすれば誰もがその結論に至るのは自明の理だった。

 

 例え生きていたとしても痛みで…両者はその事実を伏せ、生徒達には爆豪と同じようにヴィランに拐われたとしか説明出来なかった。

 ヒーローの卵だとはいえ、いや卵だからこそ子どもに身近な死を教えることなど大人には出来なかったのだ。

 

 肥大化した体から雪乃の反応が出たのは両者とも疑問に思ったが雪乃の個性のことを考えればそれぐらいできるだろうと両者納得していた。

 

 雪乃がヒーロー科に入ってきたときから個性届の変更をよくしていたので最近知って遅れたのだろうと。

 

 だが、ある生徒にはそうは映らなかった。

 

 

 

 

 暗闇。

 夢から戻れば、目隠しをされているようで更に体は自由に動かなかった。縛られている…というのもあるが明確に体から異物感を感じるからおそらく椅子なにかに磔にされた上に、棒かなにかを標本のように突き刺している感じかしら。

 

 痛みを感じないのは〈黄泉戸契〉のせいか。

 

 なにも出来ない訳ではないけど動かさないようにしているなら無理矢理動く必要もないし、暇ね。

 

 珍しく〈断章〉も安定しているし暫く休憩しよう。

 

 夢の中で後処理に奮闘していたし、こんな暇も悪くない。暗闇が少しチクリとするのが不満だけどそれくらいは許容する。固定するためと思われる無数の棒も今の私なら気にならない。

 

 我ながらロクでないとこまで来てしまった。けど今はこの和らぎに浸っていよう__

 

 

 

 

__無理、やっぱり気になるわ。

 

 この囲まれているような圧迫感。〈軍勢〉ね。私が過去、逃した記録があるのは霧の男らしいから多分そいつはヴィランね。

 

 私が逃がすくらいだもの(ツキ)はなかなかね。まあ、標的にされた時点で安らかな眠りは消失した訳だけど、ヴィランはそんな未来はなかったか。

 

 取り敢えず姉さんに話を聞こう。悪夢の張本人だけど犯人に同情してしまう…なんて言ったかしら。あんな感じでむしろちょっと安心する。会話するのは至難だけど最近気に掛けてくれるから多分大丈夫でしょ。

 




個性届の変更という名の追加。
発火
+衝撃波、切断
+再生
+刀山
主に傷付けたものが現象として起きているので大人の腕とか、多分そういう発想に至ったんじゃないんですかね。

余談ですが雪乃さんがよく怪我をするのは筆者が痛かったところが主です。当時は耳と節々だったんでしょう。
最近は眼です。次回は眼が犠牲になるのでしょうか。
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