断章保持者(トラウマ持ち)でもヒーローになれますか?   作:カナーさん

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なにも考えずに書いてます。こういう展開が見てみたい!っていう要望があるなら下さい…


断章保持者(トラウマ持ち)、霧の不審者に会う

 

 

 スーパーへ買い物に向かっているときだった。いつもの如くショートカットで裏道を通っているときにそれは現れた。

 

 

 〈食害〉の影響ですぐ物事は忘れてしまうが、繰り返された事は比較的長く覚えられるのでスーパーへ裏道を使うルートは覚えていた。なのでいつもの調子で向かっていると突然モヤが行く手を阻むように現れた。

 

 私はそれを〈断章〉の幻視だろうとスルー、つまり堂々と正面衝突しそうだったのを〈目醒めのアリス〉によって、それが幻でも何でもなくて本当に活きている生物だとわかったので、急遽足を止めて、なんとかぶつかりはしなかった。

 

 とはいえ、後は三歩でモヤに当たりそうなくらい近いのだが。

 

 

 改めてちゃんと見る。

 

 モヤだ。

 モヤが居た。

 そんなあやふやな奴でも〈目覚めのアリス〉は発動する。

 

 〈目醒めのアリス〉

 この世界においての能力は見て、聞いて、触れて、感じたものを理解する能力。そして理解したものを拒絶すると消滅させる能力。

 寝てる時の夢を起きると忘れていることはないだろうか?もしくはしばらくすると忘れたり。

 つまりはそういう能力だ。名前の通り。アリスが目覚めてしまったが故に不思議の国は消滅してしまった。

 

 これのおかげで、もの覚えが良かった。高校が受かったのもこの能力のおかげである。だが危険性は本物で安易に人を拒絶出来なくなってしまった。その程度?と思うかもしれないけれど、嫌悪、不快などでもこの能力は発動してしまう。

 

 個性に問い詰められた時に暴発と言っていたのはこの能力で、あの時に見せた〈断章〉はまた別物。

 

 相澤先生の個性もこれで確認した。けど、あの時は暴発しかかっていたのを抑えるので精一杯だったので余裕がなかった。

 

 そんな訳で他人の個性すら"理解"してしまうこの〈断章〉はこんな不自然なモヤすら"理解"する。

 

 ちなみに気体などの手に触れられない、実体を持たない相手にも〈目醒めのアリス〉は猛威を振るう。再生系統も勿論。

 

 どうやらこのモヤ改め霧は個性による物体ではなく、個性によって変質した体らしい。

 

 台風とか大丈夫なのかな。プールとかもそうだけど、分散しないのかな。後毒ぽい色してるけど…汚染された?

 

 取り敢えず不審者だろう。迷子という訳ではないようだし、ちゃちゃっと終わらせよう。

 

 そう思い、耳から音の流れていないイヤホンを外す。確かあの娘はイヤーウィスパーだったようだけど、イヤホンのほうが違和感を持たれないので基本的にイヤホンをし続けている。

 

 「____勧誘し___」

 

なにか言っているがもう会わないのでいちいち覚えない。それに今耳はそんな音を拾えるような状況ではなかった。

 

 サーと砂時計の砂が流れるように、耳から蟲が滝のように溢れてくる。

 カサカサッと頬を喉を腕を足を辿って這っていく。

 それが流血のように地面に流れていき霧の人を包んでいく。どうやら蟲が見えていないよう。

 

 _まあ、そっちのほうが幸運でしょうね。

 

 蟻を体に登らせた人は居るだろうか。簡単に言えばそれがより悍ましいものになって数十体が耳に巣でもあるのかそこから溢れ出して、体を這いずり回っている。

 

 普通に聞いたらブルッとしてしまう。なんせ耳の中にゴキブリやムカデがいるだけで気持ち悪いのにそれが何匹も。

 

 …もっと不快感を煽るなら蚊が耳元に飛んでいる感覚。大体は顔をしかめるだろうアレ。あれよりも不快なのだこの蟲は。

 

 〈食害〉

 この世界では耳に記憶(・・)を喰らう蟲を宿す〈断章〉。しかもこの蟲は個性持ちでも見えないらしい。この蟲を宿しているせいで私は常時記憶を喰われ続けている。とはいえ〈目醒めのアリス〉などの〈断章〉を持っているからかその喰われるスピードはかなり遅い。姿は蟻を想像してくれるとわかりやすい。

 

 この〈断章〉は面倒なことが起こったときに重宝する。そう今のように_

 

 空間に毒ぽい霧が充満しそのまま霧の向こうへ消えてしまった。

 

 _記憶をある程度喰われると自分が何をしにここに来たのか忘れる。本当に便利だと思う、こういう時は有耶無耶にできるし。

 

 それにこういう記憶も喰ってくれるので、嫌な記憶処理としてはこれ程のものはないだろう。

 私はおそらく半日もしない内に霧の不審者に会ったことすら忘れるだろう。

 

 イヤホンを定位置に戻して__気付いた。

 私は何をやろうとしていただろうか。

 チッ不審者のせいで忘れてしまった。…本当になんで外に居るんだ?

 

 

 

 

 唐突だがこの肉体_時槻雪乃は美人だ。あの高校でもTOP3には入ると思うくらい人目を引く美貌。

 

 面倒だから結論からいうとヴィランに絡まれた。

 

 確かに華奢に見えるし美人だからか、話し掛けられることも多い。

 

 目の前をいる彼等を無視して周りを見渡す。近くに人もカメラも見えない。

 

 念の為にイヤホンを外す。

 それと同時に私にしか感じ取れない圧迫した空気の明度と温度が一気に白い息が出るのではないかというほど下がった。

 

 そして、近くの窓がバシンッ!と勢いよく閉まる。

 

 「ねえ」

 

 ピクッと窓の音に驚いたのか体を一瞬震え上げさせてたが、声が私だと気付くと彼等は言葉を掛けられたのがオッケーの返事だと思ったのか喜色に顔を染める。

 

 

 「〈一緒に死のうか〉」

 

 ペタ、

 

 と閉められた窓に絵の具のような白い手形が浮かぶ。

  

 ペタ、

 

 もう一つまた、一つ…

 

             ペタ、

    ペタ、

 

 

 ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ。

 

 手形が太鼓のように窓の表面を浮かぶ上がり、白い手形がびっしりと朝顔カーテンのように覆い尽くした。

 

 ぴしっ

 

 そんな音が窓から嫌に耳に残り、辺りが静寂に包まれた。…それが均衡を破った合図だった。

刹那

 

 バンッ!!

 

 耳がはちきれるほどの轟音と共に窓が炸裂して砕けた。それは窓のみにおさまらず床や壁を同時に亀裂が走り破裂し、その瞬きに満たない時間になにもかもが破裂し、炸裂し、引っ張られ、クラッカーのように飛び散った。

 

 それは彼等にも及んでいて、辺り一帯の隙間から

 

 ズルッ

 

 っと何十本もの手が這いずり出して、ガッシリと指が皮膚にギチッと食い込むほど掴んだ。

 

 そして轟音と共にひねり潰され、引き裂かれた。

 

 辺りは災害があったように、荒れに荒れて原型留めず一瞬で崩壊しきっていた。

 

 残ったのは、私と、破壊され歪んだ廃墟の様な有様な通りと、それらを包み込む本来の静寂だけだった。

 

 __どうしよう、また、なんで外出したのか忘れてしまった。買い物袋は持っていないようだから買い物ではない…よね。

 

 …よしとしよう。〈断章〉のための定期的な贄がここで賄えたとプラスに考えよう。

 

 〈軍勢(レギオン)

 先生方から〈目醒めのアリス〉を騙す時に使用した〈断章〉。この世界では、この〈断章〉によって彼女の周りには彼女の家族と、その家族によって殺された新しい家族たちが亡霊として漂っている。

 そして、活性化するとその場の周囲にいるものを亡霊の一員として加える。

 彼女が言っていた贄というのは定期的に補充しないと彼女が制御しきれないため必要だった。

 

 幼いころ、それを理解しておらず街中で意図しない発動で大量に死人を出した為、そこで理解して、勝手に発動しないように贄を与えていた。

 

✟ 

 

 

 「ねえ雪乃知ってる?最近神隠しが頻繁に起こっているみたいだよ」

 

 「知らないわ。神隠し?」

 

 「そう突如としてヴィランばかりが失踪する事件が各地で起こってるみたいなの!しかも何処にも共通するのが拠点だったり、そこへの通りだったりがめちゃくちゃに破壊されているんだよ。警察は一連の失踪事件が共通の犯人だと思っているみたいだね」

 

 「へえーそうなんだ。ヴィランばかりだけど怖いね。気をつけないとね」

 

 「そうだねー」

 

 そんな他愛もない話をしている。

 

 その事件の被害者、あなたの隣にいるわよ(・・・・・・)、なんて冗談でも言えないわね。

 

 その子は新しい家族じゃないわよ。だから隣に立つのは辞めて。

 …そんなこと言っても無意味なのだけどね。口に出すと言うのは存外大事で、意識しないとこの〈断章〉は見境なしに周囲の人間を巻き込む。

 

 だからこうやって襲っていい相手とそうでない相手を区別しないと私は…また(・・)クラスメイトを無意識のうちに亡霊の一員に迎え入れてしまう。

 

 

 




お気に入りが登録され困惑の作者…。
しかも結構チラ見している方も多い模様で…。
なにより嬉しかったのは断章のグリムを知ってる方からの感想ですね。
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