断章保持者(トラウマ持ち)でもヒーローになれますか?   作:カナーさん

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誤字報告などとても助かっています。
初めて報告貰ったかな…?
そして、増えていくお気に入り登録。
ヒロアカって偉大なんだなぁ。


断章保持者(トラウマ持ち)、再勧誘。

 

 

 …今日はリカバリーガールに放課後来るようにお達しがあったので向かっている。

 

 思うのだけど最近先生に呼ばれ過ぎではないだろうか。それに今回に限っては理由が検討つかない。普通、事前に目的を伝えるべきでしょう。

 

 

 

 

 ズカズカと大股で通りを歩いていく。

 最悪だった。

 カウセリングだって?巫山戯ないで。私が何年この〈断章〉と過ごしてきたと思っている。

 

 自身の限界くらい把握している。私がなんのために観衆の面前でゴシックロリータの服を着たり、リストカットしたりしていると思っているのよ。

 

 …ここまで、先生が生徒に介入してくるならヒーロー科への転入はもう少し待ってもらおうかしら…。

 

 私は本当はサポート科に入りたかったのだけど…よく考えて、私になにか作れるだろうか…と。うん、無理でしょう。

 

 それならサポート科とコネを作ったほうが有意義だと気付いて、普通科に決めたわ。

 だって、その頃はまだ、今より〈断章〉が不安定だったので死人を出す可能性が高かったしね。

 

 そんなわけで私は、私の〈断章〉には細心の注意を払って生活している。そんな私にカウセリングなんて喧嘩を売っているようなもの。

 

 神話生物の制御を一般人にできる?クトゥルフ神話技能なんて習得されても困るわ。

 

 それに、私が寝ている時に悪夢に魘されていた?…知ってるわよ。姉さんから聞いているわ。

 

 

 

 

 「時槻雪乃さんですね?」

 

 「…どちら様でしょうか」

 

 私よりも大きいモヤが喋りかけてきた。

 毒のような紫色のモヤを頭巾のように纏って喋ってきた。なんで名前が割れているのかは…考えても仕方のないとして、誰だこの人?

 

 「付いて来て下さい、ボスがお待ちです。勿論、拒否権はありません」

 

 「姉さん」

 

 『なあに、雪乃?』

 

 ボソッとモヤの人にも聞こえない声量で呼びかける。

 それを笑みを含んだ少女の声が応えた。

 同時に周囲の明かりが劣化したように、さらにそのうちの一角が明度を下げて(かげ)り、その中を黒いゴシックロリータの衣装を纏った少女が立った。

 

 「心当たりある?」

 

 なにが、は必要なかった。

 

 『うふふ。えぇ、あるわ』

 

 耳元に囁く、雪乃にそっくりな顔に浮かぶ退廃的な笑み。

 

 やっぱりっと思った。

 今までの経験上、雪乃に話し掛けてくる知らない人は二つに別れる。

 

 少数か多数か。

 

 少数の対処は楽で〈食害〉に記憶を喰わせればそれでいい。

 

 問題は多数の時だ。それは基本的に揉み消した面倒事の再来がほとんどだ。しかも規模が拡大している事が多い。

 

 今回の様に周りを仲間達が囲み逃げられないような状況はとても、とても面倒だ。

 

 なんせ、この人数が動いている、となると揉み消すのが大変になるからだ。なんだったら揉み消せ切れずに、新たな問題が舞い込んでくることもある。

 

 〈名無し(アノニマス)〉は使えないからね。使えれば、もっと楽に…いや、やっぱりいいです。これ以上トラウマをふやさないでください。

 

 止めようの無い〈チェシャ猫〉や〈アンデルセンの棺〉のこともあるし、これ以上負担を増やさないで…。

 

 「…要件はなに?そのボスと私はなにをするの?それくらいは答えてくれるわよね。人を呼び寄せるってことを理解しているなら答えれるわよね」

 

 「…我らはヴィラン連合あなたを勧誘しに来た」

 

 「……は?」

 

 思わず目を見開いて呟いた。

 勧誘…?

 

 「モルモットの間違いじゃなくて?」

 

 「我々はあなたの境遇を知っています。ヴィラン連合はあなたの隠れ蓑となる」

 

 …。

 出たよ。勘違い。

 〈アンデルセンの棺〉の弊害がここでも起こっている。…別に私は率先して問題を起こしたいわけではない。おもむろ、問題がやってくるか、問題に連行されるかなのに…。

 

 〈アンデルセンの棺〉

 …面倒なので問題点だけをあげよう。

 この〈断章〉、死人と一緒に私を棺に閉じ込めようとする。そしてこの棺は近くにある死体の元へ私を無意識に連れて行く。

だから…とても、とても誤解されるのだけどその死体はしっかりと処理している。

 

 …おそらくこいつらは私をヴィランとかそんな感じの同類だと思っているのだろう。

 

 …まあ、処理数に関してはトップクラスだと自負しているけれど…まさか死体処理とかで勧誘している…?

 

 …私は死体を解体するのが趣味でもいたぶることが快楽の狂人でもないのだけど。

 

 …仕方ない。

 

 「〈一緒に死のうか〉」

 

 ……。

 

 

 

 

 大地震が起きたような亀裂や瓦礫が辺りに散乱している。

 

 私はその傷跡が刻まれた場所から離れる。

 路地裏への道のその先に視線を向ける。

 

 少女が立っていた。

 口から血が溢れさせ、折れた首に滴った血が制服を染めて、ある方向へ指差していた。

 

 ………。

 

 〈軍勢(レギオン)〉の断章を使い、数名が逃げ出した。

 

 人間もよくやる手法。わざと逃して巣をあぶり出す。

 霧の人は即座に逃げた。空間に吸い込まれるように消えたし、〈目醒めのアリス〉によってどういう個性なのかはわかっている。だから、あえて逃した。

 

 あの個性は貴重だろう。当人もそれは理解しているはず。

 

 最初に逃走が成功するのも霧の人だろうと予想していた。じゃあ考えてみよう。

 

 何処に行く?

 

 失敗にしろなんにしろ、報告はするだろう。あれ程の個性、手元に居るはずだ。

 

 

 表情は険しくなるばかり。〈アンデルセンの棺〉も死体がなくなったので効力を失った。

 

 ようやく追跡できる。

 

 _正確には"導かれる"の間違いだけど。

 

 『私の出番かしら?』

 

 …そうね。

 

 

 




勿論、断章のグリムも偉大です。

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