断章保持者(トラウマ持ち)でもヒーローになれますか? 作:カナーさん
感想もこのあと返信します。
表現を少し凝るとこのザマで…内容も帰宅して十分で考えましたし、これからは一週間に二回が良い方になるかなっと思います。
「はあはあ…」
「…あ?おいおい、なんで黒霧だけがここにいるんだよ」
薄暗い静寂が沈黙を生み出し、薄い絨毯と机、バーのような客と店員で分けるテーブルの形式がうっすらと見える、がらんどうの部屋。
少しばかり高級感が漂い、優雅な印象を受ける。
けれどもそれは使われる部分だけのようで、隅のほうには湿った空気が淀んでいた。
ソファにドカッと腰掛けた、"手"を顔に貼り付けた男が疑問を突然現れた黒霧に向ける。
「死柄木…彼女は危険です。今すぐ_」
「今すぐ__どうするの?」
カランっと軽快な鈴を鳴らせて扉がゆっくりと開く。鈴がなければ音すらなかっただろう、それは鈴により無理やりにでも意識を持っていかれた。
扉を開けたのは一人。黒いゴシックロリータの服を身に纏い、白い手袋をした右手にカッターナイフを持ち、腰に数本の不釣り合いな肉厚な鉈をぶらさげていた高校生の少女だった。
いや、本当に一人なのか?
黒霧はなぜかそんな不安を覚えた。
少女の背後は黒闇だった。本来外から入る蛍光灯や看板の瞬く灯火の一切が見えず、まるで少女の背後に満員電車のように人が詰められていて、その全てからギョロッと魚のような目を一旦に向けられたように感じた。
それだけではない。鈴の音を受け取った瞬間、"なにか"がすぐ横をそよ風のように通り抜けた。それを薄気味悪いと感じた。
なんてことはない扉を開け閉めした時に生じる程度の微風といっても差し支えないものなのに、なぜか気味が悪くてしかたなかった。
そこにあまりに不気味で動けない黒霧の横を死柄木が高速で通り抜ける。
拘束系統の個性の術中に嵌った。そうでなくとも土足で入ってきた黒い少女に死柄木は同じ判断を、個性を使用しようと近付いただろう。
愚か者を破壊しよう、と。
それは成功して、ガシッと少女の左手首を握り締めた。
すぐに崩壊は始ま__ることはなかった。
ぐしゃっ!
という肉を叩き切る、重い湿った音が部屋を響かせた。
右手にあったカッターナイフを歯で咥え、新たに手にしたのは腰に下げていた不釣り合いな鉈だった。
それを素早く振りかぶり少女の細腕からは想像できないような凄まじい勢いで死柄木の手へ自身の手首ごと鉈を振り下ろした。
死柄木はそれに驚きはすれど怪我を負うことはなかった。
少女が振り下ろした鉈は少女を完全に寸断するほどの威力はないらしく、骨の半ばに埋まり
ずる
と死柄木と黒霧が居るのにも関わらず目の前で嫌な音を立てて引き向いた。
少女はたった今拷問から解放されたように、ぞっとするような狂気と虚ろな目で、無表情に彼等を見下ろしていた。
「…………………………………………………………………」
滴る血液に見向きもせず、陽炎のように、幽鬼のように、クラクラと立ち尽くす少女。
「…………………………姉さん」
重たい圧迫感のある空気を壊したのは、この状況を作り出した少女だった。
「〈
なにかを少女が虚ろのように呟いた。
その瞬間に、プチプチと卵が潰れるような音を火切りに少女の左腕にまるで何十何百回と切り刻まれたように、噴水から滴る水のように血液が流れる手首から二の腕まで刹那の間に駆け巡った。
そして
轟っ!!
一瞬にして、視界が点滅するほどの爆光と部屋をなめるように、火炎が辺りを伝い蹂躙し、ソファを机をグラスを燃え上がらせて、瞬く間に
✟
独り。焼け落ちた廃墟同然のバーに腰をおろしていた。
空虚。
燃え尽きといってもいいかもしれない。スポーツ選手などに起こるやる気が失せるあの状態。…新たに表す言葉が思い付いた。放心。これが一番近いだろうか。
そんな自問自答を繰り返していた。
…彼等には逃げられた。
最後に彼等側から聞こえた言葉は「個性強制発動」というあの場に居ないはずの第四の声だった。
それは気になることではあるが、「非常に」という言葉はつかなかった。
新たな声に興味はなかった。
重要なことは個性に干渉したという事実。
〈目醒めのアリス〉はそれを少し捉えていた。支配でも霧男が自発的に使ったわけではない。奴は個性を意図的に奴のタイミングで
「……………決めたわ。ヒーロー科に転入する。企業に就職するにだってアピールポイントがないとね」
そんな様子を風乃はクスクスと雪乃の内心を見透かしているように婉然と笑みを浮かべていた。
〈雪の女王〉
一言でいうなら痛みを炎に変える〈断章〉。
唯一加減できる〈断章〉で、この身体の本来の持ち主である少女の〈断章〉でもある。
姉である風乃が亡霊として憑いている。
「もしもし、えぇ。私よ。そろそろ期間で様子見なのだけど…一つ頼まれてくれないかしら」
…十分後。
夜の車があまり通らない道に車が雪乃の側で止まっていた。運転手は席に座ったままで、雪乃は窓を挟んで会話していた。
彼はヴィランによって子供を亡くした親だ。
スーツを着た中年くらいの男性。髪のトコロドコロに白髪が混じり、顔に皺を刻んだ、ひどく疲れ切った印象を受ける。精神的な負荷を溜め続けたならこうなるだろうなっという不健康さを気付いていないのか感じとれる。
「じゃあお願いするわ」
「あぁ…よろしく頼む」
後ろの席に座り男に囁くように言うと男は緊張したおもむきで車を走らせた。
会話はなかった。いや、厳密にはあったのだがそれは事務報告のようなもので走りだしてそうそうに終わり、その後話す内容もないので雪乃は黙っていた。
男はというと仕切りに背後にいる雪乃をチラチラっと雪乃が前を見て運転しなさいっと注意したくなるような様子で、事故が起こってないほうが奇跡だと雪乃は思っていた。
雪乃は男の自宅に向かっている。
これから彼の
雪乃は基本的に独り暮らしをしている。それは自身の〈断章〉のこともあるし、他人がいるというのは予想以上に雪乃にとって負担であったからだ。
高校では養子ということになっているがそれは面倒事を避けるため男に頼んで保護者に仕立てていた。
もちろん、気付かれるとさらなる面倒事が舞い込んでくるがそれも〈断章〉があればどうにかなる問題だった。天秤にかけ、独りを選んだ。
雪乃は男の様子は見慣れているので特に思うことはないが、それでもよぎってしまう。
…その態度はどうにかならないのか?っと。
男が雪乃を恐怖、畏怖している訳ではないのは知っていた。どちらかというと、ご機嫌取りというのが男の中を埋め尽くしているのだろう。
失礼なことをしていないか、とかそんな事が頭を乱回転して男から余裕を奪っていた。
なのでいつもの言葉を口にする。
「…よほどの害がない限り私は見捨てないわ」
その言葉を聞いて安心したのかしっかりと前を見据えて車は走っていく。ゆらゆらっと飲酒運転のような蛇行運転から正常に戻ったことに拳を作ったり開いたりしている
夜はまだ続く。
雪乃視点
『〈愚かで愛しい私の妹。あなたの身と心と「〈あげるわ〉」…もぅ〉』