戦姫絶唱シンフォギアDAL   作:援道未知

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 先に言っておきます。
 今回の話は、本編とは全くの無関係です。おまけに、一日で書いたのでとても簡素です。
 最新話を楽しみにしてくれていた皆様には、大変申し訳なく思います。本編の執筆は実に大変なところを進行中であり、本当に下手が出来ない為かなり慎重になっています。
 本当にもう少しですので、今しばらくお待ちください。

 では、エイプリルフールだからこそできるストーリー、どうぞ。


アンコール
もしも、こんなifがあったなら


 立花響には、現在進行形で大好きな人がいる。

 その大好きな人とは、自分と同じ高校に通う、一学年上の男子生徒のことである。

 出会いは偶然だった。中学時代、ちょっと人生に嫌気が差し、学校の屋上から飛び降りようとしたことがあった。その理由はまぁ、一言で語るのも難しいので、原作参照とだけ言っておこう。具体的にはGを視聴することを推奨する。ゴキのことではない。五期のことでもない。

 そんな訳で、最早迷う思考もできずに屋上から飛び降りようとした。しかし、屋上というのは、人間社会においては危険スポットの代表各と言っても過言ではない訳で、当然危険防止の為のフェンスが立ち並んでいた。

 邪魔をするなら越えるだけだという思考に行き着いた響は、フェンスをよじ登ろうと網目に手と足をかける。危険防止の為にあるというのに、登れるようになっているのは如何なものか。普段ならそう思うが、この時はそれに感謝した。そして、フェンスの上まで登り、いざ飛び降りようとした時だった。

 突然屋上の扉が開かれ、一人の男子生徒が現れた。

 曰く、何をやっているんだ、とのこと。

 階段を走って来たのか、その男子生徒は息も絶え絶えで、これから死のうとしている響よりも更に死にそうだった。

 本当なら、水でも与えたい気分だった。だが、彼が自分の邪魔をしようとしていることは明白だったので、一言だけ。

 

「君が、わたしより確実に長生きできるようになるんだよ」

 

 それを聞き届けた男子生徒は、まだ息が整っていないまま、響に言い返した。

 

「俺も、君と同じだ」

 

 え? と呆ける響に、彼は続ける。

 

「俺には、今の君と同じ気持ちになったことが二度ある。

 最初は、母親に捨てられて、何もかもに絶望して、生きることに意味を見出だせなくなった。

 けど、俺を受け入れてくれて、優しくしてくれる家族ができたんだ。その人達の思いを無駄にしないように、何より、その人達と一緒に居たいって思った俺は、今まで生きることができた。

 

 生きることを、諦めなかったんだ!」

 

「……ッ!」

 

 最後の言葉が、響の心を打った。

 それは、あの日、響を生き長らえさせた言葉。

 

「……良い言葉だよな。俺も、改めて生きたいって思わされた」

 

「……え?」

 

 まるで、その言葉が誰かからの受け売りであるかのように言う彼。

 響は、ある確信に至る。

 

「……もしかして、君も?」

 

「ああ。君と同じ、あそこであの人に助けられた」

 

 そう言って、彼は胸元に手を置いた。

 

「二度目は、結構最近のことだ。そこそこ仲の良かったはずのクラスメートも、良い具合に付き合いの良かった近所の人達も、みんな、俺の敵になった」

 

「……わたしも……友達も、近所の人も、みんなみんな……わたしを……」

 

 気が付けば、響も語り出していた。語ると言うには、いささか言葉足らずだったが。

 それでも、彼はそれだけで理解した。

 

「辛いよな。信頼が裏切られる瞬間ってのは。俺は経験あったくせに、また生きるのを諦めそうになったよ」

 

「……どうして、諦めなかったの……?」

 

 響は問う。

 どうして、そんなにも強くいられるのか。

 一体何が、生きる理由となっているのか。

 彼は、穏やかな笑顔を浮かべながら、響を指差し、

 

「目の前に、生きることを諦めようとしているやつがいる。

 それを止めようって気持ちだけで、生きたいと思える理由には十分だ!」

 

 曇りのない、真っ直ぐな瞳で、彼は言ってのけた。

 

「……それだけ?」

 

 信じられなくて、響は聞き返す。

 

「それだけだ!」

 

 彼は躊躇いなく答える。

 その姿が、響には眩し過ぎて、思わず彼から視線を反らしてしまう。

 

「……私には、そんなの……」

 

 彼のような強さを持てる自信は、響にはない。

 もし、これからも今のような日々が続いたとして、果たして彼のように生きられるのだろうか。

 考えれば考えるほど、否定的な考えが渦巻いていく。

 

「……怖い、怖いよ…………」

 

 

「俺がいる」

 

 

 気が付けば、人差し指だけを立てていた彼の手は、五本の指全てが伸ばされ、響に向けられていた。

 

「悲しい時、怒った時、一人じゃどうしようもなくなったら、俺にぶつけろ! どんな時、どんな場所だろうと、必ずお前の助けになってやる!」

 

「そんな……そんなの、君が苦しいだけだよ!」

 

「さっき俺が話したこと、もう忘れたのか!? 俺は二度の本気で死にたくなる気分を味わって、それを乗り越えた男だぞ! この鍛え抜かれた鋼鉄のハートは、女の子の愚痴程度じゃ何ともならねぇよ!」

 

「そんなの信じられない! 君だって、いつかわたしのことが嫌いになる! こんな、呪われたわたしなんか……ッ!」

 

 人の心は簡単に変わる。それを、響は思い知らされたばかりだ。

 いくら強く生きられる彼だって、どうなるか分からない。ほんの些細な出来事で、どうなるか……。

 

「確かに、それは俺も自信がない」

 

「…………」

 

 やはりそうだ。結局のところ、人は自分の気持ち一つコントロールできない。

 決して嫌いにならないなどと、言える訳が……。

 

「……けど、そんな後先のことばかり気にして、今やりたいこと、やるべきことをやらないなんて選択肢は、俺には選べない!」

 

「……ッ」

 

「今諦めたら、未来なんてない! 俺は今、お前を助けて、お前のこれからの笑顔を見たいんだ!」

 

「…………」

 

「お前はどうなんだ!? 本当にここで終わらせて良いのか? お前のこれからに光がないって決めつけて、何もかも諦められるのか!?」

 

「…………わたし、は……」

 

 彼の叫びが、響の心を引き寄せる。

 もう一度、立ち直りたいと思わせる。

 

「お前が諦めないなら、約束する!

 これから先、どれだけの人がお前を否定しても、俺の生涯をかけて、お前を肯定してやる!」

 

「…………ッ!」

 

 肯定する。

 その一言が、響を完全に振り向かせた。

 

「握れ! 今は、それだけで良い!」

 

 今も尚、伸ばされ続ける手。

 その手は、これから先の未来へと、響を連れて行くのだろう。

 どうなるか分からない。最低か、最高か。はたまたそれ以外の未来に。

 ただ、一つだけ確かなことがある。

 

 どんな未来だろうと、その手がある限り、彼はいる。

 自分を肯定してくれると言ってくれた人が。

 

 気が付けば、響はフェンスから、彼の手を掴むべく飛び降りていた。

 勢いを付け過ぎたせいか、彼は響を受け止めきれず、もろともに後ろへ倒れ込んでしまい、後頭部を屋上のコンクリートにしたたかに打ち付けた。

 

「いぃっっっッッ!!??」

 

「ご、ごめん! 大丈夫!?」

 

「だ、大丈夫だ……ッ! こんなの、妹のおはようキックに比べたら……ッ!」

 

 頭を片手で抑えながら、明らかに痩せ我慢と思えるセリフを吐く彼。

 そんな彼に、申し訳ないと思いながらも、響は確認する。

 

「……ねぇ。本当に、わたしのこと……」

 

「嫌いにならない。なったら、最悪殺してくれ」

 

「わたし、そんな重いキャラじゃないよ……」

 

「自殺しようとしておいてよく言うよ」

 

「き、君だってそうだったんでしょ!?」

 

「そうだったな! あはははは!」

 

「……ふ、ふふふ!」

 

 と、先程の出来事が嘘であったかのように、笑い合う二人。その打ち解け具合は、まるで幼い頃からの親友であるかのようだった。

 だが、忘れてはいけない。この二人は初対面である。

 

「俺は五河士道。学年も死にたくなった回数も一つ上だけど、士道で良いぞ」

 

「わたしは立花響。これからよろしくね、士道」

 

 この日、二人は確かな絆を築き上げた。

 その証として、二人の手は、固く繋がり合っていた。




 この日しかない。そう思って、本編そっちのけで書きました。

 デアラとシンフォギアのクロスオーバーとタグにありながら、デアラ要素はほぼ天使オンリー。かといって、デアラ本編とシンフォギア本編の純粋なクロスオーバーは、様々な要因によって僕にはほぼ不可能(ギャラルホルンなら……)。
 ならば、頭の中で妄想し続けていたこの話を、虚言が許されるこの日にやってやるという心意気でやりました。

 敢えて言おう。
 後悔はない。
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