戦姫絶唱シンフォギアDAL   作:援道未知

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 小説を書いてる時、他の作品のアイデアが浮かんだりするんですよ。
 皆さんはそういう時どうしてますか? 僕は取り敢えず思い付いた設定や内容を書き留めておきますね。そうしているうちにストーリーまで書いてたりします。
 という理由で遅れました。反省も謝罪もしますが後悔は皆無です。

 本当に、本当にお待たせしました。待っていてくれた皆さん、本当にありがとうございます。そしてごめんなさい。久々なのでかなり拙い出来となっているのもごめんなさい。

 今回から第二章、響プレイングの始まりです。ぶっちゃけ章分けする必要なんてなかったと後悔気味。
 それでは、どうぞ。


響プレイング
これは、罪によって生まれた物語


 

 未来を創る。

 その行いに大小はない。どこにでも居る普通の人間の起床の仕方一つであっても、世界は形を変えていく。

 そして、善悪もない。

 世界を救う大業も、世界を破壊する大罪も、未来を築く行いの一つ。

 未来に善悪などない。あるのは、ただ存在するという事実だけ。

 ただ存在するだけの未来を、どのように形作るか。

 それは、人が望み、人が行動すること。

 そう。

 人の未来を築くのは、人の願いと行い。

 

 

 

 これは、一人の少女の願いと行い()が生んだ物語。

 

 

 

 

 

「……揃ったな」

 

 風鳴弦十郎は、自分の屋敷の居間を見渡しながら言う。

 ここに集まっているのは、S.O.N.Gに所属するシンフォギア装者六名、オペレーター一名、メカニック一名、そして保護観察対象が一名と、ほとんどお馴染みのメンバーである。全員で長テーブルを囲み、神妙な面持ちでこの場に集まっていた。尚、有事に備え、藤尭は本部でお留守番である。

 

「昨日、我々S.O.N.Gの保護観察下に入った園咲声繋君に対して聞くべきことを聞く為、このような場を設けさせてもらった。本部ではない理由は、全員が知っての通りのことと思うので、説明はしないでおく」

 

 最後の付け加えに、弦十郎の正面に座る声繋が顔を背けた。しかし彼はそれをなるだけ短く済ませ、再び弦十郎に向き直った。

 

「弦十郎さん。俺を受け入れてくれた上に、わざわざこんな場を設けてくれたことには感謝しています。ですが……」

 

「ああ。前置きはこのくらいにして、早速本題へ入ろう」 

 

 弦十郎はまどろっこしいやり方は好まない。そして、ここにいる全員が、その本題の為だけに集まっている。

 何より、声繋が装者達と和解した翌日にこのような会議が開かれているのは、端的に言って急を要するからである。

 

「我々から君に聞きたいことはただ一つ。君が永い眠りから目覚めた理由についてだ」

 

 故に、弦十郎は酷く端的に問うた。

 昨日声繋からもたらされた話に寄れば、彼は歴史を改変してから二日前まで、隣界と呼ばれる異世界で眠りに着いていたという。

 そんな彼が、何故今になって目覚めたのか。

 自らの存在が許されないことを知っていながら。

 本来なら、声繋本人とその力の出自など、問い質したいことは山程ある。だが、彼が今ここにいる現状が、それどころではないということを示していた。

 

「……まず、最初に言っておきます」

 

 弦十郎からの問いに、声繋は重苦しい表情を浮かべながら、

 

「俺は、自分の意思で目覚めた訳じゃありません」

 

「……だろうな」

 

 声繋の答えを、弦十郎はあっさり受け入れた。それどころか、予想すらしていた。

 

「……疑わないんですね」

 

「ああ。昨日、一昨日と見た限りでは、君の行動には一貫性が無さ過ぎる。予めの目的があったようには見えなかったからな」

 

「……話が早くて助かります」

 

 声繋本人はこうも簡単に受け入れられるとは思っていなかったのか、僅かにホッとした様子だった。

 なら、と。彼は本題に入る。

 

「そう遠くない未来。この世界に危機が訪れ、それを止める為には俺の力が必要だから、俺は目覚めたんです」

 

「危機だと……?」

 

 確かな重みを持ちながらも、あまり具体性のない言葉に、翼が聞き返す。

 

「それは、我々の力では敵わない危機なのか?」

 

 声繋の力は、歴史改変前の世界で人類守護の為に振るわれていたと聞く。それだけならば、シンフォギアと変わらない存在だ。力の大小はともかくとして。

 改変後のこの世界を守ってきたシンフォギアが存在しながら、声繋が必要となる危機。その全貌に、全員の注意が向けられる。

 

「俺が世界を守ることに嫌気が差して、歴史を改変したことは、装者の皆から聞きましたよね?」

 

「ああ。ここにいる全員が既に知っている」

 

「俺の存在は、俺の中にある霊結晶(セフィラ)によって保たれています。つまり、霊結晶には時間の強制力に対して、ある程度の抵抗力があるんです」

 

「それが、その危機ってやつとどう関係があるんだよ?」

 

 どこか遠回りした説明に焦れたクリスが問う。

 

「霊結晶には、所有者の心に強く反応する特性があります」

 

 だが、声繋は話の路線を変えない。

 

「正の感情が強ければ強いほど、霊結晶は所有者に力を与えます。けど、負の感情が高まれば、霊結晶は別の形で所有者に力を与えます」

 

「……まさか、暴走するというのか?」

 

「え?」

 

 翼の問いに、これまで淡々と述べていた声繋が虚を突かれたような反応を返した。

 

「そんな感じですけど……何で分かったんですか?」

 

「あ、いや……。シンフォギアにも、装者の負の感情が高まることによって、暴走を起こす危険性がある。感情に影響される力ならば、もしやと思ったのだ」

 

「あぁ……。確かに、そういう欠点はあります。正直に言うと、俺が暴走したなら、まず地球が消えていたと思います」

 

 間違いなく冗談ではなく、真剣な表情で言い放つ声繋。それを見て、翼とマリアは昨日の自分達の行いが、下手をすれば地球消滅の引き金になりかねなかったことを自覚させられ、冷や汗をかいていた。

 

「歴史改変直前の俺は、まさに暴走寸前の状態でした。霊結晶は負のエネルギーが蓄積された状態で、もう俺の手には負えない物になっていました」

 

「君はその状況に耐えられなくなり、歴史改変を決行した。本来の思惑はともかく、それによって君の暴走は防がれたという訳だな?」

 

「そして、声繋は霊結晶の力でこの世界に残った。で良いんだよね?」

 

「それだよ、響」

 

「え?」

 

 自分の理解力に不安があった響の確認に、声繋は核心を突いたと言わんばかりに指を立てる。

 

「さっき、ある程度の抵抗力があると言いましたが、つまりは完全に時間の力に打ち勝てるという訳ではないんです」

 

「……? でも、声繋はこうしてここにいるよね?」

 

「その『ある程度』の範囲に、『俺の存在を保つ』ことが含まれているだけさ。そして、その『ある程度』から外れたのが、今回俺が目覚めた『原因』。それこそ、さっき説明した、霊結晶に蓄積された負のエネルギーなんだよ」

 

 ここに来て、声繋の説明はいよいよ核心に迫った。ここまでの遠回りな説明は、この為の布石だったのである。

 

「『ある程度』から外れたということは、時間の強制力に負けたということではないのか?」

 

「そうとも言えます。ただ、負けはしても、消滅はしなかったんです」

 

「消滅はしなかった? ……まさか!」

 

 その時、声繋の説明をただ聞くだけになっていたエルフナインが、何かに気付いたように顔を上げた。

 

「時間の強制力に負けた負のエネルギーは、声繋さんから離れ、誰にも悟られないどこかで人々の負のエネルギーを吸収し、その存在を保持、肥大化しているということですか!?」

 

「そう……って凄いな! そこまで分かったのか!?」

 

 最早結論を内包していたエルフナインの発言に、声繋は完全に面食らっていた。

 エルフナインはS.O.N.Gの技術顧問にして、組織随一の頭脳を持つ。彼女にかかれば、多少難しい話もパズルを解くことと同義なのである。

 

「……あ、すみません。何か、声繋さんの台詞を取ってしまったみたいで……」

 

「いや、気にしないでくれ。……えっと、その娘が言ってくれた通りです」

 

 どこか投げやり気味に言う声繋。言うつもりだったことを先に言われて、リズムが狂ったようである。

 それが伝播し、何とも気まずい空気となった中、弦十郎がわざとらしく咳をしてから言う。

 

「しかし、そんなエネルギー体が存在するのであれば、我々の探知機に引っ掛かっているはずだ」

 

「それはそうだと思います。そのエネルギーはこの世界にはないものですから」

 

「何だと?」

 

「歴史を改変した後、俺は隣界という世界に眠っていました。けど、その負のエネルギーは、俺とは違う世界……異次元に移動したんです」

 

「……異次元?」

 

 その言葉に、全員が反応する。

 ありふれた言葉である。創作物等で多く用いられ、現実においては基本的に使用されることのない言葉。

 だが、世界の超常問題を解決してきたS.O.N.Gの面々は、その言葉を現実で聞いた覚えがあった。

 そう、それは……。

 

「バビロニアの宝物庫。それが、負のエネルギーが逃げ込んだ場所です」

 

 その名前を聞いて、S.O.N.Gの面々に激震が走った。

 バビロニアの宝物庫。それはかつて、S.O.N.Gが特異災害対策機動部二課として活動していた頃に戦っていた、人類を襲う認定特異災害『ノイズ』の住み処となっていた異次元空間である。

 

「ちょっと待って! バビロニアの宝物庫は、私達がネフィリムを内部で自爆させた空間よ! それに耐えられるとは思えない!」

 

 マリアが強く抗議する。

 一年前に起きた事件の折、ネフィリムという怪物がバビロニアの宝物庫内で一兆度の爆発を起こしたことにより、宝物庫内のノイズは全滅したとされている。そんな爆発が起きた空間で、生き残れるものがあるとは思えない。

 だが、エネルギー態となれば、話は別である。

 

「実体を持った存在なら、確かにそうだと思います。けど、実体を持たないエネルギー態なら、その限りじゃない」

 

 ネフィリムの爆発は、あくまでも物理的エネルギーに過ぎない。非物理的な負のエネルギーには通用しないのだ。

 

「しかし、その負のエネルギーはどうやって宝物庫から出るつもりだ?」

 

「鍵である『ソロモンの杖』は、未来さんが宝物庫に投げ込んで一緒に消えたはず……」

 

「負のエネルギーは、俺と同じ力を持っています。例えば、俺が昨日使った〈封解主(ミカエル)〉で……」

 

「出られる、ということか」

 

「ソロモンの杖のスペアキーかよ……」

 

 かつて、多大な労力と犠牲を経て破壊に成功したソロモンの杖。その代用となり得る物があるということに、事件の当事者達はげんなりする。

 

「あ! 同じ力があるなら、声繋さんに閉めてもらえば……」

 

「向こうもまた開ける。堂々巡りね」

 

「デスよねー……」

 

 切歌の浅はかな案は即刻拒否される。

 ここまでで、声繋が目覚めた原因について一通り話したことになる。何か聞き逃していることはないかと全員が頭を捻っていると、弦十郎が一番に口を開いた。

 

「そう言えば、君が眠りに着いたのはいつなんだ?」

 

「三年前です。歴史を改変したのも同じ年です」

 

「割と最近じゃねぇか! たった三年でそんな……!」

 

「……いや。あり得ないことでもない」

 

 クリスの言葉を神妙な面持ちをした翼が遮る。

 三年前というと、響がガングニールを受け継いだ年である。思い返してみれば、二年目からは人々の負のエネルギーが高まるような大事件がいくつも起きている。それらの規模を顧みれば、一概に『たった三年』とは言えないかもしれない。

 その後は誰も挙手することなく、話に一旦の区切りが着いた。

 

「君が目覚めた原因は分かった。昨日、一昨日と君の力を目の当たりにすれば、それと同等の力が必要になるのも頷ける。……本来なら、そうあるべきではないのだろうが」

 

「…………」

 

 最後に付け加えられた言葉に、ここにいる誰もが言葉を返さない。もう、全員が充分過ぎるほどに理解しているからだ。

 霊結晶の力は、間違いなく人の手に負えない代物だ。聖遺物などという危険極まりない古代の遺産を取り扱うS.O.N.Gですら、取り押さえることは叶わなかった。

 そんな物を再び蘇らせなければならなかったこの状況に、誰もが歯痒い思いであった。

 

「そんなこと、思わないであげてください」

 

 一人を除いて。

 

「確かに、霊結晶も、それを持つ俺も、もうこの世界にいちゃいけない存在です。その思いは俺がずっと抱き続けます。……でも、あなた達だけは、それを思わないであげてください!」

 

 悲痛な面持ちで、切実そうな声色で。

 声繋は、懇願するように言った。

 

「……声繋さん?」

 

「ど、どうしたデスか? どこか、具合でも悪いんデスか?」

 

 あまりの痛々しい様子に、調と切歌が心配する。

 二人に声を掛けられて我に返ったのか、声繋はその場に座り直す。

 

「……すみません。でも、それをあなた達が思うことは、彼女の行いをただの罪にしてしまうことなんです」

 

「……彼女?」

 

 ここに来て、第三者を示す言葉が声繋からもたらされた。

 彼女。女性を差す言葉。

 つまり、声繋の目覚めは、人為的なものであるということ。

 

「誰だ!? 一体誰が園咲を目覚めさせた!?」

 

「誰なの!?」

 

「ちょ、ちょっとどうしたんですか!? 翼さんもマリアさんも!」

 

 唐突に声を荒らげる二人。あまりの変貌ぶりに、近くに座っていた響は若干退きながら問う。

 

「考えてもみなさい! 声繋を目覚めさせたこと自体はともかく、その女が私達に彼のことを説明してさえいれば、私達が戦うのを防ぐことが出来たかもしれないのよ!」

 

「加え、園咲が我々と組むことを望む程の事態。その女がそれを分かっていないとは考えられない」

 

「た、確かに……」

 

 二人の言うことにも一理ある。声繋の存在を必要とし、かつ彼とS.O.N.Gを組ませることが目的であるならば、何故その女性は声繋を放置したのか。一昨日の声繋の心情を考えれば、それがどれだけ無責任なことかなど分かりきったことだ。

 自らの存在を否定されながら終わり無き救済を続け、遂に心を磨り減らし、歴史改変まで行って安息を得た声繋が。突如理由も分からず目覚めさせられ、人間に攻撃され、それでもそれに耐え続け、ようやくS.O.N.Gとの和解を果たしたのだ。

 決して楽な道のりではなかった。それこそ、彼が暴走し、本当に世界が破滅するという未来もあり得た。

 そんな危険を放置した女性のことなど、許せるはずが―――

 

「……仕方なかったんです」

 

 ―――ないというのに。

 

「この世界を、大切な人々を守る為には、そうするしかなかったんです!」

 

 一番の被害者であるはずの声繋は、それでも彼女を庇った。

 

「……何で?」

 

 理解出来ない全員の疑問を、響が代表して声繋にぶつける。

 本当に理解出来ない。いくらお人好しの響でも、こうも無責任な女性のことを許せる声繋の気持ちが。

 感情に任せて動いた手が、声繋の肩を掴む。

 

「声繋は、何を知ってるの?」

 

 昨日の爆発事件の最中、憤った声繋が響に言った。

 自分には、全てを知る力がある。

 本当にそんな力があるのなら、響達が知り得ない情報を、声繋は知っているのだろうか。

 知っているのなら、話してほしい。

 そんな響の願いが届いたのか、声繋は自分の肩を掴む響の手をそっと離し、優しく包み込んだ。

 

「……歴史を改変したことで、俺の存在はなかったことになり、人々の記憶からも俺は消えた」

 

 声繋は、ポツリポツリと言葉を紡ぐ。

 

「だから、居ないはずなんだよ。俺を目覚めさせられる人間なんて」

 

「確かに。創作物などの定義に則れば、そうなるが……」

 

 だが、現に声繋はここにいる。その居ないはずの誰かの手によって。

 

「居るとすれば、負のエネルギーが実体を得てこの世界に顕現し、それを察知した俺が目覚めるという未来を知っている人間だけ」

 

「……声繋?」

 

 響には、今の声繋の行為の全てが理解出来なかった。

 何故、そんな頓珍漢なことを言ったのか。

 何故、それを自分の顔を見て言ったのか。

 何故、今尚自分の手を握っているのか。

 

「……え? まさか、そんな……」

 

 エルフナインが、またも声繋の言わんとしていることを察する。

 

「いや、だがそれなら……」

 

 弦十郎が、何か合点がいったような言葉を溢す。

 

「……え? 何? 何なの?」

 

 そんな二人に、響は自分でも驚くほど怯えた声を溢す。

 何か、とてつもなく嫌な予感がした。

 本能が叫ぶ。これ以上は聞きたくないと。今すぐに話題を変えたいと。いっそのことこの場から逃げ出して、未来とどこかへ遊びに行きたいと。

 だが。

 声繋は必ず、全てを話す。

 声繋はまだ、この話題を終わらせる気はない。

 声繋は強く、響の手を握りしめている。

 

「せ、声繋……」

 

 怖い。

 誰よりも知りたかったと断言できる真実を目の前にして、響の心は怯えていた。

 確証なんてない。声繋が自分を傷つけるようなことを言わないと信じたい。

 だが、響は知っている。

 声繋は、もう嘘を吐けないことを。

 

 口を開いた彼を見て、響は覚悟も決められないまま、ただ目を瞑ることしか出来なかった。

 

「……ごめん」

 

「………………え?」

 

 全く予想もしていなかった言葉に、響のみならず、この場にいた全員が意表を突かれた。

 響は堪らず、またもや「何で?」と問う。

 

「……良く考えたら、響以外の人達にだけ全部を話して、後から響を入れて少しかいつまんだ内容を話すべきだったかもしれない」

 

「え? そういうこと普通言う?」

 

 とても本人の目の前で言うべきではない内容である。

 

「今君が言ったように、俺ってとんでもないバカ不器用野郎でさ。今の響の表情を見るまで、そんなこと思い付きもしなかった……」

 

 言われて、響は空いている手で思わず頬を触る。

 声繋は見抜いていたのだ。響が怯えていることを。真正面にいるのだから当然だが。

 

「……あっ、天使は使ってないからな! こんな真正面に居る相手の気持ちが分からないほど鈍感じゃないし、顕現せずに使えるほど便利でもないし!」

 

「……ぷふっ」

 

 罪悪感溢れる表情から一転、必死に弁明する声繋。そんな彼を見て、響は思わず失笑してしまう。同時に、先程まで渦巻いていた恐怖心が、少し晴れた気がする。

 本当に、不器用な少年である。期せずして響を追い詰め、期せずして響の心を晴らす。最早、一周回って器用とさえ感じる。

 とはいえ、そんな相手に笑ってもである。真剣な気持ちの時に笑われた声繋は、若干不満そうだった。

 

「ごめんごめん。でも、もう大丈夫。おかげでちゃんと聞けそう」

 

「……そっか」

 

 響の表情を見て、声繋は安堵して短く息を吐いた。

 改めて皆に向き直る二人。ところが。

 

「……あの、何ですかその目は?」

 

 声繋と響を除く全員が、何やら意味ありげな視線を二人に向けていた。しかも、何人かの組み合わせでそれぞれ異なる視線である。

 ある者達は、うんざりとした冷たい視線を。

 ある者達は、微笑ましげな暖かい視線を。

 ある者達は、まるで珍しいものでも見たようなキラキラとした視線を。

 

「いや、本当に何なんですか?」

 

「気にするな。それより、話の続きを聞かせてくれないか? もう、大丈夫なんだろう?」

 

 弦十郎は声繋だけではなく、最後に響の方を見て問う。

 覚悟は決まった、とは言いきれない。

 ただの予感に過ぎない。声繋が言わんとしていることが分かった訳でもない。形の見えないものに対して明確な覚悟を決めるなど、簡単に出来ることではない。

 だが、大丈夫だと言ったのだ。

 その言葉を覆すことはしない。

 

「声繋」

 

「……ああ」

 

 響の呼び掛けに、声繋は短く答える。

 

「眠っていた俺を、その手で無理矢理引っ張り出した女の子の名前は……―――」

 

 声繋は口にする。

 全ての始まり。

 この世界に、再び災厄を目覚めさせた少女。

 未来の為に、罪を犯した少女。

 その名は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――立花響」

 

 

 

 

 

 




 あとがきトークに代わるネタが思い付かない……。

 この度は、読者の皆さんを五ヶ月も待たせてしまい、大変申し訳ありませんでした。また何とかやっていきます。
 感想、評価、指摘、待ってます!
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