戦姫絶唱シンフォギアDAL   作:援道未知

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 作品タイトル変えました。

 本編に入る前にいくつか報告が。

 またもや部活の小説を書かなければならないこととなり、次回は前回並に遅れると思います。

 次に、今回登場させたオリジナル設定の説明ですが、書いててもちゃんと説明できてるのか分からない出来となっております。なので、おかしな点を発見された方はすぐに教えてください。というか、指摘コメントは全然受け入れていますので。あとがきトークで言う暇がないだけなので。迅速に書き直しますので。

 最後に、悲しいお知らせが。
 我が家で飼っているポメラニアンのラテが、余命数ヶ月と診断されました。これを書いている数週間前のことですが。
 なので、活動報告にて、ラテのことを書き綴らせていただいています。あまり多くのことは書けないでいますが、少しでも多くの人にラテのことを知ってもらおうと思っています。
 ……最近は少し元気ですが。

 前書きでこんな長文すみません。どうも、文章を纏めるのは苦手なんです。
 では、本編へスクロールどうぞ。


Memorial 1 / その声は天使を()び、音と調律する

 崇宮(たかみや)真言(まこと)という少年は、正しく善良な人間だった。

 優しい両親の元に生まれ、他人より上に立てる能力を授かり、それを誰かの為に使うように育てられた。

 困っている人は見過ごせない。人助けには自分の全力を注ぎ込む。誰にでも優しく接する。

 崇宮真言は、人助けの化身のような少年へと成長した。

 環境、能力共に恵まれた彼は、人として理想の人生を歩んでいた。

 

 ある日、彼は災厄となった。

 自分達の平和な世界を滅ぼす災厄を(ころ)す為、母親から自らも災厄となる十の力を授かった。

 何故、崇宮真言だったのか。

 その災厄は、人には鏖せなかったから。

 災厄を鏖すには、彼も災厄となるしかなかったから。

 他の人間にはできなかったから。

 彼にしか、できなかったから。

 

 彼は災厄を滅ぼし尽くした。

 人々は彼に感謝を捧げ、彼を神と奉った。

 崇宮真言の人生は、一つの終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

「さて、と。まずは……」

 

 炎と瓦礫の牢獄と化したショッピングモールへ戻った声繋は、〈囁告篇帙(ラジエル)〉を開く。

 全知の天使〈囁告篇帙〉。その権能は、この世界のあらゆる出来事を知ることができるという、正真正銘全知の名に相応しい天使。ただし、『出来事』という存在してこそのものを知る以上、未来の出来事まで知ることはできない。

 声繋は〈囁告篇帙〉を用いて、この火災を起こした爆発の原因を調べる。声繋が念じると、一瞬で〈囁告篇帙〉のページにその情報が記載された。

 まず、爆発の原因はやはりというか、爆弾であった。しかし、声繋は薄々気付いていた要因には目もくれず、残りの爆弾の数と位置を検索する。

 

「残った爆弾は九つで、全部時限式。位置はまちまちだな」

 

 爆弾の数と性質と位置は分かったが、数が多いのと、設置場所同士の距離が離れ過ぎていた。普通なら、人数を駆使すれば何とかなるかもしれないが、現在、ショッピングモールに入る為の入り口は、全て瓦礫によって遮られており、消防隊が入るにはそれなりに時間が掛かる。その時間によっては、爆弾は残りの半分が爆発し、より多くの犠牲者を出すことになるだろう。

 

「―――〈封解主(ミカエル)〉」

 

 声繋がいなければ。

 鍵の天使〈封解主〉が顕現する。〈封解主〉の能力は、一言で言えば『開閉』。〈封解主〉の鍵を対象にかけることで、対象の機能を起動、停止させることができる。

 そして、その対象には、制限がない。

 先程、響を連れてS.O.N.Gの潜水艦へ移動した時、〈封解主〉は空間に『孔』を開け、潜水艦内の発令所まで道を繋げたのだ。この機能を使えば、わざわざ爆弾の設置場所まで向かわずとも、この場所から爆弾までの道を繋ぎ、爆弾の機能を停止させることができる。

 しかし、それだけでは止まらない。

 声繋は、全力で全てを救うと決めたのだ。

 そんなまどろっこしいやり方で、収まる訳がない。

 

「―――〈贋造魔女(ハニエル)〉」

 

 声繋は、左腕に追加された緑色の宝石が填められた装甲を抑えながら、天使の名を呼ぶ。

 箒型の天使〈贋造魔女〉が顕現―――しなかった。

 代わりに、左腕の装甲がパージされ、物理法則を無視した変形を経て、〈封解主〉の先端部分に新たなヘッドとして合体した。

 新たな姿となった〈封解主〉を空中にかざす。次の瞬間、〈封解主〉から新たな〈封解主〉が次々と生まれ、声繋の周囲に浮かび上がった。

 元の物と合わせて九本。

 声繋が〈封解主〉を捻ると、他の〈封解主〉も同時に捻られた。

 

(ラータイプ)

 

 響を連れ出した時と同じように、空間に『(あな)』が開き、爆弾までの道が繋がった。しかもそれだけでなく、他の〈封解主〉も同様に『孔』を開いていた。

 声繋は〈封解主〉達を『孔』に、正確には『孔』の先にある爆弾、その本体である爆薬に突き刺す。そして、〈封解主〉を先程とは逆に捻った。

 

(セグヴァ)

 

 それだけを行って、声繋は〈封解主〉を引き抜いた。

 念のため、〈囁告篇帙〉で確認を行う。

 

「……良し、成功」

 

〈封解主〉の能力が作用し、爆薬の成分が『閉じられた』ことを確認した声繋は、次の行動に移った。

 

 ここで、声繋が行ったことを説明しよう。

 まず、何故〈封解主〉が増加したのか。その謎は、現在声繋が纏う霊装〈神威霊装・全番(ウォーディーン)〉にあった。

 新たに追加された装甲には、声繋の力の源である〈霊結晶(セフィラ)〉の一部が組み込まれている。霊装は〈霊結晶〉から生み出される霊力が、強固な形を持って形成される。その霊力の源である〈霊結晶〉を外装することで、霊装の防御力が桁違いに跳ね上がるのだ。

 それだけではない。追加装甲には〈霊結晶〉の一部が組み込まれている。この言葉が意味するのは、単なる防御力向上だけではない。

 声繋が扱う武器、天使とは、〈霊結晶〉から生み出された最強の矛、形を持った奇跡とでも呼ぶべき存在。声繋の体内に宿る〈霊結晶〉は十個に別れていて、それぞれが一つの天使を生み出している。〈霊結晶〉は、天使の親と呼べるということだ。

 その親が、他の親が生み出した天使に力を与えればどうなるか。

 声繋が行ったのは、天使と天使の能力の融合である。〈神威霊装・全番(ウォーディーン)〉各部の〈霊結晶〉を別の天使に合体させることで、その〈霊結晶〉が生み出す天使の特性を、合体した天使に付与したのだ。

〈贋造魔女〉の能力は、分かりやすく言えば模倣。能力をかける対象を有機物無機物問わず、別の物体に変身させることができる。

 しかし、その能力では〈封解主〉が増殖できないのではないか。その通りである。だが、それは〈贋造魔女〉が〈霊結晶〉から与えられた能力を、模倣という形で保持しているからである。

〈封解主〉の力は、能力をかける対象の開閉、つまり鍵の役割を果たしている。しかも、対象に制限がないマスターキー。その鍵に模倣の能力を付与したならば、どのようなことが起きるのか。

 答えは単純。

〈封解主〉の能力に適するように、〈贋造魔女〉の能力が変化したのだ。

 一つで全ての錠の開閉を行うマスターキーを、より効果的に活用できるように。

〈霊結晶〉の一部と天使が合体することで、新たな力が発現する能力。その名は『霊天合(リンケージ)』。

 災厄の力を救済の為に行使する、声繋が見せる奇跡である。

 

「んじゃ、次だ!」

 

 声繋は再び、〈囁告篇帙〉による検索を開始する。

 爆弾の処理の後は、建物内に取り残された人々の救出である。生き残っている人の数、その場所を調べたところ、五十人が一人~四人ずつ、別々の階、別々の場所で炎と瓦礫から逃れていた。

 消防隊はまだ到着していない。調べれば、後一分半で到着するようだ。

 

「それだけあれば、全員助けられる」

 

 声繋の行動は決まった。

 一分で、五十人を救出する。

 声繋はもう一度、『霊天合』状態の〈封解主〉で空間に『孔』を開ける。今度は先程の倍近い数の『孔』が開かれた。

 とはいえ、声繋一人でこれら全ての『孔』を行き来する訳ではない。そもそも、そのつもりならば、今このタイミングでこれだけの数の『孔』を開けたりはしない。

 では、この行為にどんな意味があるのか。

 その答えは、すぐに分かる。

 

「さぁ―――出番だぜ、『俺』達!」

 

 左目が金色の時計と化した声繋が叫ぶと、声繋の影が広範囲に広がり出し、そこから何本もの腕が伸びてきた。腕だけでは止まらず、その下から十数人の、身に纏う霊装以外は声繋と全く同じ顔と容姿を持った少年達が這い出て来たのだ。

 

「んあー! 久々だなー!」

 

「何年ぶりだ? 『俺』達を呼ぶなんて」

 

「細かいことは後で良いだろ? それよりやることやっちまおうぜ!」

 

「ああ、頼む!」

 

 声繋の一言にそれぞれ「おう!」と頼もしく答えた少年達は全員、声繋が開けた『孔』にそれぞれ飛び込んで行った。

 

 彼らの正体は何か。その答えは、声繋が持つ天使の一つ、〈刻々帝(ザフキエル)〉にあった。

〈刻々帝〉の能力は、時間。天使として顕現する際の形である、巨大な時計盤と二丁の銃。時計の文字盤から銃に霊力を装填し、対象に発砲することで、文字盤の数字に対応した能力を行使することができる。その能力を行使するには、ある代償を支払うことになるのだが、ここで語ることではない。

 して、その中の一つに、〈八の弾(ヘット)〉という技がある。その技は、自身に銃弾を撃ち込むことで、自身の過去の再現体を出現させるというもの。

 今しがた声繋の影から現れた少年達は、その〈八の弾〉によって生み出された、声繋の過去の姿ということだ。声繋を探しに来た装者達の目を欺く為、街中を歩き回らせた分身も、同様の力によって生み出された声繋の過去である。普段は声繋の影に潜んでおり、必要に応じて呼び出すことが可能なのである。

 

 分身達が『孔』を潜り抜けた後、残された声繋はどうするのかというと。

 

「良し、待つか」

 

 待機である。

 無論、こんな状況で何もしないという訳ではない。

 声繋が立てた救出方法とは、本体である声繋が『孔』を開き、分身達が生存者を救出してここに戻ってくるまで、『孔』を維持するという、至ってシンプルな方法である。『孔』は放置しておくと自然に消滅し、『孔』を潜った場所に移動すると他の『孔』の維持が不可能になるなどの理由の為、声繋はここで待っていることしかできないのである。

 とはいえ、何も心配することはない。分身体のスペックは声繋ほど高くはないが、それでも普通の人間とは比べ物にならないほど強い。彼らならば、恐らくそろそろ……。

 

「「「ただいまー!」」」

 

「おう、お帰り」

 

 などと考えていたら、分身達が戻ってきた。全員が煤けた格好の人達の手を繋ぎ、または気絶した人を抱えているなどして、各々の役割を果たしたようだ。

 全員戻ってきたことを確認する為、声繋は救出された人の数を数えていく。その間、意識がある人達の非常に困惑した様相に苦笑を堪えきれなかった。

 と、全員数えたところで、声繋は一人足りないことに気が付いた。分身の数も足りていない。

 

「まだ助け出せてないのか……? 取り敢えず、助けた人達は外に逃がそう。『俺』達、頼む」

 

 分身達が頷いたのを確認して、声繋は『孔』を一つだけ残して閉じ、代わりに一際大きな『孔』を開けた。建物の外とこの場所を繋げたのだ。

 

「俺も残りを助けてから外に出る。『俺』達は、この人達を外に送り届けたら、俺の影に戻ってくれ。悪いけど自力で」

 

「おう。気を付けろよ」

 

「って言っても、この程度の炎、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉と比べたら太陽とぬるま湯だけどな」

 

「用心しとくよ。ほら、行った行った」

 

 そんな会話を経て、分身達と救助者は『孔』を潜って行った。

 声繋は『孔』に背を向け、開けっ放しのもう一つの『孔』に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 調と切歌を連れたクリスは、炎と煙を出し続けるショッピングモールにたどり着いた。

『アーリーデウス』の追跡を行っていた装者達だったが、火災現場での救助活動に入れとの通達を受けた。『アーリーデウス』を放っておくことも、人命を見捨てることもできない状況に立たされた彼女達は、追跡に翼とマリア、救助にクリス、調、切歌と役割を分担したのだ。

 そんな訳で、今ここにはクリス、調、切歌の三人が揃っていた。

 

「おいおい、一体何やったらこんなふうに燃えるんだよ……?」

 

 クリスは目の前の惨状を眺めながら、呆然と呟く。

 建物の隙間という隙間からは止めどなく煙が溢れ出ており、壁は全体が炎によって赤色化している。一体どこのトランザムか。なんて言っても洒落にならないほどの大惨事だ。

 

「とにかく、中に取り残されている人達を助けないとデスよ!」

 

「んなの分かってる! あたしらにできるのはそれくらいだからな!」

 

 切歌の言葉に、クリスは投げやり気味に返す。

 シンフォギアには、単体での鎮火能力はない。元々、人類が対抗できない敵を排除することを目的として作られたのだ。

 だから、火災など普通の人間では行動が制限されるような状況下での救助活動においては、元々備わっている身体機能上昇と、装者の肉体を保護する防御性能を駆使し、人命救助に勤しむことになるのだ。

 とはいえ、クリス達に不満はない。

 人の命さえ救えれば、それで良いのだから。

 

「お前ら、いくぞ!」

 

「了解!」

 

「デース!」

 

 シンフォギアを纏う為の歌、誠詠を唄う。

 その直前。

 

「「「……………………は?」」」

 

 三人の目の前に、巨大な『孔』が現れ、そこから大勢の人達が出てきた。

 救助活動を行うことに完全に思考が傾いていた三人は、全くの予想外の出来事に、呆けた声しか出せなかった。

 そして、更に驚くことが起きる。

 その中の数人が、全く同じ容姿をしていたのだ。

 というか、その容姿に見覚えがあった。

 

「あ、『アーリーデウス』!?」

 

「「声繋さん!?」」

 

 予想外というか、一体誰がこんな状況を予想できるのかという事態に、クリスは頭が追い付かなかった。

『アーリーデウス』。先日、突如として発生した謎の大爆発と共に現れた、未知の敵。

 その敵が、何と目の前に複数人いるのだ。追い付かなくなるまで考えただけ表彰物の異常事態である。

 そんなクリスを差し置いて、調と切歌は『アーリーデウス』達のもとへ駆けた。

 

「声繋さん……の分身ですよね?」

 

「あれ? 月読さんに暁さん?」

 

「わぁ……。最初に分身さんを見た時は、こんな分身アリデスか!? って思ってたのに、こんなトンデモな数まで……」

 

「……何でここにいるのかはともかく、この人達のこと見ててくれるか? 怪我をしている人もいるけど、この中にいたにしては軽症だし、救急車が来るまで横に寝かせておけば大丈夫だから」

 

「声繋さん……の本体は何してるデスか?」

 

「まだ一人残ってて、その人を助けてる。安心しろ。『俺』は助けると決めた人は絶対に助ける」

 

「信じます。ところで、響さんは? 一緒にいたんじゃ……」

 

「……っ!?」

 

 三人の会話を理解が追い付かなくなった頭で聞いていたクリスは、響の名前が出てきたところで強く反応した。

 

「……響は、『俺』を庇って重症を負った。今は―――」

 

「おい! そいつはどういうことだ!?」

 

『アーリーデウス』の言葉を最後まで聞くことなく、クリスは彼に詰め寄った。

 

「あのバカがお前と一緒にいたとか、お前があたしの後輩達と関わりがあったとかは良い! けど、何であのバカがお前を助けるなんてことになるんだよ!?」

 

「…………っ」

 

 クリスに激昂されて、『アーリーデウス』はばつが悪そうな表情になる。

 彼の強さは、昨日戦ったクリス達が一番良く知っている。認めたくはないが、彼は間違いなく自分達より強い。だからこそ、その彼が自分より弱い響に助けられ、挙げ句に彼女が重症を負ったという事実に腹が立った。

 

「お前、昨日はあいつを助けたくせに、何してやがったんだよ!?」

 

「……悪いけど、聞きたいことは後で『俺』に聞いてくれ」

 

「だから、今お前に……」

 

 クリスが言いきる前に。

『アーリーデウス』達はふわりと浮き上がり、ショッピングモールの天井へ向かって飛んで行った。

 

「おい! 待ちやがれ!」

 

 まだ納得のいく答えを聞けていないクリスは、ギアコンバーターを掴み、唄う。

 

「―――Killiter Ichaival tron」

 

 誠詠が鳴り渡る。

 クリスの唄に応え、コンバーターが強い光を放った。

 

 光に呑まれたクリスの身体を、五線譜のベールが通り、赤、ピンク、白のスーツに身体が包まれる。更に、その周りを浮かぶ赤い宝石が鎧と化し、頭部、腕部、腰部、脚部をスーツの上から鎧った。

 

 そのギアを纏ったクリスの姿は、まるでどこかの国の姫君のよう。だが、その鎧に秘めたるは高貴なるきらびやかさなどではなく、全てを壊す魔の弾丸。

『魔弓 イチイバル』

 仲間のシンフォギア装者が全幅の信頼と共に背を預け、狙う全てを射抜く者、雪音クリスのみが纏うことを許された弓。

 

「ちょ、ちょっとクリス先輩!?」

 

 いきなりシンフォギアを纏ったクリスに驚いた切歌。

 

「お前らは怪我人を見とけ! あたしはあいつを追う!」

 

「追うって、どうするつもりなんですか!?」

 

「知るか! とにかくもう追うしかねぇんだよ!」

 

 それだけ言い残して、クリスは建物の中へと走って行く。二人が呼び止める声が聞こえてきたが、今のクリスにそれに反応する余裕はなかった。

 入り口を塞ぐ瓦礫を小型ミサイル数発で吹き飛ばし、建物の中に入るクリス。途端、瓦礫と炎が織り成す地獄絵図を目にして顔をしかめるが、経験による慣れでこみ上げてくるものを振り払い、『アーリーデウス』を探し始める。

 

「どこだ!? どこにいやがる!?」

 

 あちこち探し回るが、自分より年下に見える少年どころか、人影すら見当たらなかった。

 

(あいつ、本当に救助作業をしてたってのかよ……)

 

 この惨状の中で、人気を感じられないことが、クリスにそう考えさせた。複数の『アーリーデウス』が連れてきた人達の人数から考えて、建物内にいたほとんどの人を助けてしまったのだろう。

 だからこそ、余計に腹が立つ。

 大多数を助けられる力を持っているというのに、たった一人の、一番近くにいたはずの響を、何故助けられなかったのか。

 過ぎたことをいつまでもねちねちと考えることが、自分の悪い癖だと分かっている。だが、他人のこととなると、本人の口から直接聞くまで止まることができない。

 

「どこにいやがる―――『アーリーデウス』ッ!!」

 

 行き場のない憤りが乗せられた慟哭が、炎と瓦礫の牢獄に響き渡った。

 

 

 その時。

 

 

 

「どいてくれぇぇええええーーーーッッ!!」

 

 

 

「――――――は?」

 

 この場に似つかわしい、されどどこか間抜けに聞こえる切迫感溢れる絶叫が、クリスの背後から聞こえた。

 何事かと背後を振り向くクリス。

 そこには、色とりどりの宝石が埋め込まれた神秘的な鎧を纏いながら、その鎧を纏うのにこれっぽっちもふさわしくない、全く余裕が見られない顔でこちらに向かって飛んでくる『アーリーデウス』が。

 

「な―――っ!?」

 

「ちょ―――っ!?」

 

 次の瞬間、二人は正面衝突した。

 全く予想がつかない事態を前にして何の備えもできるはずがなく、クリスは彼が飛んでくる勢いのまま地面に背中からダイブした。意外だったのは、想像していたよりも衝撃が少なかったこと。昨日。彼の飛行速度を目の当たりにしたクリスとしては、もっと勢いを付けていると思っていた。急ブレーキでもかけていたのだろうか。

 なんてことより、今の状況である。

 クリスとの衝突で勢いが殺されたのか、『アーリーデウス』は地面に着地していた。いや、着地というより、倒れていたと言うべきか。

 

 クリスの上に覆い被さるようにして。

 

「……な、なななな…………っ!?」

 

 段々と状況が飲み込めてきたクリスは、この状況が自分にとってマイナス的であることを理解した。

 

「―――ど」

 

「……ん?」

 

「どけよテメェェエエエエーーーーッッ!!」

 

「うおおおおーーーーッッ!?」

 

 自身の上にいる『アーリーデウス』の腹に渾身の蹴りを叩き込もうとする寸前、彼は転がってクリスの上から退き、蹴りを回避した。

 だが、クリスはそれで終わらせるつもりなどない。何の目的か知らないが、(見た目は)年の近い異性に押し倒されたという得体の知れない屈辱が、クリスにアームドギアのハンドガンを握らせた。

 

「ててててテメェ! こっちが色々ぐちゃになってるって時に、何破廉恥してくれやがる!」

 

「ご、誤解だって! ひとまず銃を下ろしてくれ! 俺の話を聞いてくれ!」

 

「ちょうど良い! こっちもテメェに話があったんだ! だがその前にテメェに鉛弾をぶちこまねぇと気が済まねぇ!」

 

「それだと永遠に話できないだろ!? お願いだからそんな物騒なもん向けないでくれ! この子が怖がっちゃうだろ!」

 

「存在自体が物騒なテメェに言われたか―――この子?」

 

 まるで第三者を示すような言葉に、クリスは少し冷静になった。

 そう言えば、この少年は何をそんなに怯えることがあるのだろうか。クリスが今握っているハンドガンよりも物騒なガトリングガンを相手に、一直線に突っ込むほどの度胸を持っているというのに。

 そして、クリスは新たなことに気が付いた。

 少年は、両腕で何かを抱えていた。その何かは、やけにふさふさしてそうな毛並みと三角の耳、つぶらな瞳を持ち、それらが時々ピクピクと動いている。

 クリスはそれに見覚えがあった。

 ポメラニアン。犬の種類の中でも、特に毛並みがふさふさしていると噂の、簡単に言うとめちゃくちゃ可愛い生き物である。

 

「な、何で犬!?」

 

 無論、こんな状況に不釣り合いな愛らしい生き物が存在していることに、クリスがつっこまないはずがなかった。

 

「いや、最後の一人を助けようと向かったら、その人がここのペットショップの店員さんで、動物達を助けようとしてたんだ。俺も手伝おうと分身達も使って動物達をケージに入れてて、その最中にこの子が逃げ出して、穴に落っこちて……」

 

 つまり、こういうことである。

 その落下しているポメラニアンを追い、空中でキャッチするも気付けば地面と激突する直前。自分は大丈夫だが犬は無事で済む訳もないから、何とか激突前に飛行して危機を回避するも、咄嗟のことで上手く飛ぶことができず、何とか止まろうとしていた時にクリスと衝突した。

 それを聞き終えた時、クリスは。

 

「……お前、バカだろ」

 

 呆れた声でそう言った。

 

「いや、ちゃんと犬は助けたんだぞ! 確かに、この力を手に入れて結構経つのに、今更上手く飛べなくなるとか自分でもバカな奴だと思うけど!」

 

「違う、そうじゃねぇ。いや、それはそれでバカだと思うが……」

 

 最後に付け加えられた言葉に「うぐっ……」と呻く彼を見ながら、クリスは問う。

 

「何で、助けるんだ?」

 

「え?」

 

「人間はともかく、何で動物まで助けるんだ? 言葉なんて通じない、何考えてるかなんて分からない、どう行動するかもあやふやな動物を、何でこの状況で助けようと思うんだ?」

 

 クリスから見れば、『アーリーデウス』の行動は非効率的なものだった。

 そりゃ、動物だって命ある生き物だ。おまけにポメラニアンのように可愛い動物だって多くいる。そんな生き物達を見殺しにしたいとは、クリスは思えない。

 だが、彼はどうして助けるのか。明らかにやりづらくなるのに、どうしてそこまでするのか。

 

「そんなの、そうしたいと思ったからに決まってるだろ」

 

 答えはあっさりと返ってきた。

 真っ直ぐな瞳で、常識を謳うように。

 その瞳で見つめられたクリスは、まるで口だけが金縛りにあったように言葉を発することができなかった。

 

(こいつ……何なんだ……?)

 

 改めて正面から向き合ってみると、不思議な少年である。

 その身に絶大な力を宿しておきながら、戦いの中で相手を傷つけない。命の危険に晒された者は小動物すら助ける。

 

 ―――こいつ、まるで……。

 

「―――って! 何でここにキミがいるんだ!?」

 

「今更かよ!?」

 

 ―――……(あのバカ)みてぇじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 雪音クリスが動物救助に協力してくれた。

 

 あたしも協力してやる! 勘違いすんなよ! こっちはお前に聞きたいことがあるが、お前が動物達助けるのに忙しいって言うから、とっとと終わらせてこっちの話に耳を傾けさせる為だからな!

 

 などとギャーギャー騒ぐものだから、まぁ手伝ってくれるならと、お姫様抱っこでペットショップがある五階に連れてきたのである(最初はお姫様抱っこの状態にまたもギャーギャー騒いだが、犬を抱かせたら大人しくなった)。

 後、何でここに来たのか聞いてみれば、あの赤シャツ司令官から救助活動に入れとのお達しがあったからとか。誰かからの伝言を言われなかったかと聞いてみれば、そんなもんなかったとか。

 つまり、声繋がわざわざ出向いて伝えた言葉は、装者達には伝わっていなかったのである。

 ……いや、まぁ、当たり前と言えば当たり前である。敵対認識している相手が自分達の拠点に突然現れて、人命救助を買って出てきて、色々訳の分からない言葉をつらつらと述べるだけ述べてさっさと消えられては、何が何だか分かったものではない。伝えられるものも伝えられないというものだ。

 

(はぁ……。どうして俺はこう、不器用バカなのか……)

 

 どうしようもない自分に呆れてしまう。絶大な力を持っていながら、肝心なところでどうしようもないポカをやらかす。自分の気持ちに正直に動いた結果がこれである。

 

「よーし良い子だ。ちょっとこの中で大人しくしてろよ。すぐに助け出してやるからな」

 

 手伝いが、一人増えた。

 

「…………雪音クリス、か……」

 

 最初に会った時、大量のミサイルをぶちこまれた。全て防いだが。

 彼女達と戦った時、銃弾の嵐を見舞われた。全て斬り落としたが。

 響と話し始めた時、またもミサイルをぶちこまれた。全て素手で防いだが、火傷を負って超熱かった。

 正直言って、彼女にはまともな印象がない。さっきも出会い頭に銃を向けられて、向こうもこっちに良い印象を持っているとは思えない。昨日のことを考えれば当たり前のことだが。

 だが。

 

「……ま、響の仲間なら、悪い人じゃないんだろ」

 

 そう片付けられるだけの何か(・・)が、今の声繋にはあった。

 

 そんな訳で、今はクリスも、逃げようとする動物達を追いかけている。

 因みに、ペットショップの近くにも爆弾が設置されていたが、それは声繋の手によって爆発しないようにされたため、爆発はしていない。よって、この辺りはまだ火の海にはなっていない。

 だが、いずれ火が回ってくる可能性はあり、動物達が遠くに逃げることを恐れた声繋は、水と冷気を操る天使〈氷結傀儡(ザドキエル)〉が生み出した氷の壁で、店の周囲を囲んだのである。ポメラニアンが落ちた穴も〈贋造魔女〉で塞いだため、もう動物達が遠くへ行く心配はない。

 外堀は完全に埋めた。後は、迅速かつ丁寧に動物達を助けるだけである。

 

「あっ、クリスさん! もっと丁寧に抱いてあげてください! こう、彼氏とのデート中にペットショップで動物を抱かせてもらった時の感じで!」

 

「おまっ、こちとら彼氏もデートも年齢イコールだ! つーかどんな例え出してんだ!? 分かり難いったらねぇぞ!」

 

「いや、こういう作業してると、残り時間をペットショップで和むために使っても良かったという後悔で……」

 

「何言ってんのか分かんねぇが、そっちにオウム行ったぞ! あたしらの会話を間抜け声で真似てやがる!」

 

『やがる! やがる!』

 

「うわ腹立つ! て言うか店員さーん! ちょっと動物多過ぎませーん!?」

 

 ……そんなこんなで。

 元々ガラスケースの中にいた動物も、ケージに入れる途中でパニックになって逃げ出そうとした動物も。天使の能力、クリスの奔走、店員の指示を駆使した結果。

 

「―――良し! 動物はみんなケージに入れたぞー!」

 

「おっしゃー!」

 

 ついに、動物達の保護に成功した。〈囁告篇帙〉で確認したから間違いはない。

 後は、外に出すのみである。声繋は〈封開主〉を喚び、外へ繋がる『孔』を開く。

 

「それじゃ『俺』達、みんなを外まで連れて行ってくれよ」

 

「「「おう!」」」

 

 分身達は動物が入ったケージを持って、『孔』に向かって歩いて行った。ペットショップの店員も、声繋とクリスに何度もお礼を言いながら、分身達に連れられて『孔』を通って行った。声繋の力については、色々と必死過ぎて気にしていられなかったのか、特に言及してこなかった。それはクリスも似たようなものらしく、やけに静かだった。

 

「それじゃ、クリスさんも」

 

「……その前に、聞いても良いか?」

 

「……? ああ、そう言えば、話があるって言ってましたね」

 

 クリスは元々、声繋に何かを問い質す為にここへやって来た。それを、今果たそうと言うのだ。

 一応、まだやることはあるが、手伝ってくれた礼もあるし、わざわざこんな場所に来てまで聞きたいことなのだ。耳を傾けてもバチは当たらないだろう。

 声繋が「良いですよ」と言うと、クリスはこちらに向き直る。

 

「……お前の分身から聞いた。あのバカが、お前を庇って……」

 

「……ああ」

 

 それは、確かに聞いておく必要がある。

 声繋は苦い思い出を語るように、口を開いた。

 

「……はい。響は、俺を助けて重症を負いました」

 

「……っ。なぁ、あいつはどうなったんだ……? まさか、もう……」

 

「安心してください。響の怪我は、俺の力で治しました」

 

「……え?」

 

「ただ、失った血はどうしようもなくて、今はあなた達の本部で対処してもらっています。後は、そちらの技術次第です」

 

 声繋に現代医療の知識はない。得ようと思えば得られるが、声繋自身にそれが必要ないからだ。

 響がどうなるかは、彼女達の組織に懸かっている。組織の医療技術を知っているだろうクリスなら、これを聞くだけで分かるはずだが……。

 

「…………なら、安心だ」

 

 クリスは、心底安心したようにへたりこんだ。

 どうやら、響は助かるようだ。

 それを知った途端、〈囁告篇帙〉で調べる暇もなかった声繋も、安堵のあまり同じようにへたりこんだ。

 

「よ、良かったー……」

 

「……お前も、心配だったんだな」

 

「当たり前ですよ。短い間だったけど、デートした仲ですから……」

 

「……はーん」

 

「は……っ!」

 

 クリスにジト目で見つめられて、声繋は自分の失言に気付いた。

 共に人(動物)助けをしていたから忘れていたが、クリスは声繋の命を狙う組織の一員である。響は自分に好意的に接してくれたし、声繋も響のことは信じたいと思っているが、クリスはどうか分からない。

 少なくとも、戦いたくはない。彼女は響のことを、とても大切な仲間と思っている。昨日の誤射めいた攻撃も、響を助けようと思っての行動だった。そんな仲間思いな人と戦うことなど、考えられない。

 声繋は弁解すべく、即座に口を動かした。

 

「いやあの―――」

 

「心配すんなよ。あたしはお前と戦わねぇから」

 

「―――デートじゃなくて…………え?」

 

 クリスから放たれた意外な言葉に、声繋の弁解は時間差で止められた。

 

「え? はっ? 何で!? どうして!?」

 

「聞き方がくどい! ……別に、お前の力は確かに危険なモンだが、お前自身にはあんまり危機感を感じないっつーか……」

 

 上手く言葉が纏まらないのか、口をもごもごと言わせるクリス。不覚にも、少し可愛いと思わされた。

 やがて、言葉が纏まったのか、クリスは再び口を開いた。

 

「……お前は、あたしの仲間を二度も救ってくれた。赤の他人も、小せぇ動物も助けた。お前は悪い奴じゃない、少なくともあたしが戦いたいと思えない相手だと思った。それだけだ!」

 

「すごく短いですね」

 

「うるせぇ! こっちはこういうのガラじゃねぇんだよ! 大体、人同士が分かり合うのに大層な理由なんかいるかよ!」

 

 纏めたというには、いささか纏め過ぎな気がするセリフだった。

 正直、響と大差がない。短い時間の中で得た、自分が見たままの印象で相手を理解した気でいる。全てを知ることができる声繋にとって、あまり好めない思想。

 だが。

 

「……そうですね。必要ないですよね」

 

 声繋にとって、それはもう必要なかった。

 

「……ん? 随分あっさり信じるな。絶対納得できねぇと思ったが……」

 

「そりゃ、クリスさんが俺を嵌めようとしてるかもって懸念は、少しだけあります」

 

「あるんじゃねぇか」

 

「でも、それ以上に、俺はクリスさんを信じたい。それが俺の正直な気持ちで、俺はそれに従いたいと思ったんです」

 

「……ふーん」

 

 クリスは何やら、品定めをするような目で声繋を見る。失礼かもしれないが、見た目的に全然様になっていなかった。背伸びをして大人ぶる小、中学生にしか見えなかった。

 やがて、「ふっ」と口元を緩めると、声繋に手を差し出した。

 

「……クリスさん?」

 

「一先ず、あたしはお前の味方になったんだ。だったら、やることがあるだろ?」

 

 クリスはそれを促すように、更に手を近付けてくる。

 つまり、そういうことである。

 

(……けど、な……)

 

 声繋の正直な気持ちは、それを受け入れたいと言っている。

 だが、声繋にはまだ、クリス達が受け入れられない要因が多々ある。それを明かすこともできない現状では、声繋の行動は決定していた。

 

「……ごめんなさい。俺には、まだその手は取れません……」

 

「……そっか」

 

 声繋の言葉での返しに、クリスは僅かに残念そうな表情を浮かべながら、そっと手を退いた。

 声繋は「けど」と付け足し。

 

「協力してくれたことには感謝します。おかげで、迅速に動物達を助けられました。だから……」

 

 今度は、声繋の方から手を差し伸べる。

 

「……たくっ。ややこしいんだよ」

 

 クリスは、その手をしかと握り返した。

 彼女と親密な関係になることはできなくとも、人助けのお礼はするべきだと思った。

 ややこしい。その言葉に、激しく同意する声繋であった。

 

「……結構、勇気いりますね、これ」

 

「全くだ。ま、いきなりこういうのは難しいよな。あたしもそうだったくせに……」

 

「何となく分かります。クリスさんって、何だかんだあった末に仲良くなるタイプに見えるから」

 

「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。お前の気持ちも、あたしには分からねぇことじゃねぇ」

 

 握っていた手をほどいたクリスは、僅かに赤みが差す天井を見上げながら。

 

「きっと、お前もあたしも、ややこしいのに追いかけ回されて、手を掴まれるんだろうな……」

 

「え?」

 

 やけに感慨深げに言うクリス。

 いまいち意味が分からない声繋だったが、その姿に妙な親近感を抱かずにはいられなかった。

 

「……あの、そろそろ俺達も出ませんか?」

 

 微妙な空気を解消すべく、声繋は脱出を提案する。既に、消火作業も始まっている。いつまでもこんな場所にいては、作業の邪魔になるだけだ。

 

「そうだな。もう誰もいないんだよな?」

 

「はい。間違いありません」

 

「よし。んじゃ、外まで頼む」

 

「了解です」

 

 声繋は再度、〈封解主〉を喚び出す。

 目の前に鍵を向け、捻ることで、外へと続く『孔』を開いた。

 

「天使って便利だよな。戦闘以外にこんな使い方があるんだからよ」

 

「えぇ、まぁ……」

 

 クリスの正直な感想に、返し方が分からず曖昧な返事になってしまう。

 中には、便利で片付けられないものもあるのだが。

 

「レディファーストです。お先にどうぞ」

 

「おう、悪いな」

 

 声繋のさりげない気遣いにより、先んじて『孔』を潜るクリス。それに続いて、声繋も『孔』を潜ろうとした。

 

 その時。

 

「見つけたぞ! 『アーリーデウス』!」

 

「……え?」

 

 背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 背後を見ると、そこにいたのは、二人の女性だった。

 その二人は、一人は青い髪、もう一人はサーモンピンクの髪を揺らした、声繋よりいくつか年上に見える女性。

 おかしなことに、声繋から見た彼女達の相違点は、身に纏う物以外はほとんどそれだけだった。

 それだけ、二人共が声繋に向ける刃の如く鋭い眼光が、ギラギラと煌めいていたから。




未来「戦姫絶唱シンフォギアD第七話、読了ありがとうございました! シンフォギアサイドの小日向未来です!」

折紙「デートサイドの鳶一折紙」

未来「今回のあとがきトークは、この二人でお送りします。よろしくね、折紙ちゃん」

折紙「こちらこそよろしく」

未来「うん。握手したいからもっとこっちへ寄ってほしいんだけど……」

折紙「貴女は危険。こっちの美九と同じ存在」

未来「違うから! 原作はそうかもしれないけど、少なくともシンフォギアDの私は違うから! ここにいるのはシンフォギアDの私だから!」

折紙「因みに、作者はシンフォギアの最終回のラストシーンを最後まで見ずに終わった。主な理由は、一つ下の妹が近くにいたから」

未来「…………ごめんなさい」

折紙「……という訳で、今回は貴女の為にもう一人来てもらった」

未来「え? もう一人って……」

士道「おわっ!? なんだよ琴里? ここってあとがきトークの……って」

未来「え、五河君!? どうしてここに!?」

士道「いや……琴里が『折紙の相手は未来なんだけど、正直まともなトークになる気がしないから、未来をデレさせるなり何なりして来なさい』って……」

折紙「私が琴里に士道を連れてきてほしいと頼んだ。方法は琴里に一任した」

未来「え? えぇ!?」

士道「まぁ、そんな訳で、デート・ア・ライブ主人公の五河士道です。ちょっと変なタイミングでの登場になったけど、可能な限り盛り上げさせてもらいます。小日向さんもよろしく」

未来「……あ、は、はい! こちらこそよろしくお願いします!」

士道「こ、小日向さん……?」

折紙「とても緊張している」

未来「だ、だって……同い年の男の子と、あんまり話したことないから……」

折紙「本編で声繋と喋っていたのに……」

士道「あ~……。何となく分かるよ、その気持ち。俺も訓練が始まった時は緊張しっぱなしだったからさ……」

折紙「士道に告白されたのは良い思い出」

士道「…………まぁ、その、何だ、そんなに緊張することないぞ。女の子向けの話題でも、ある程度は通じるからさ」

未来「で、でも……」

士道「遠慮するなよ。こっちはそっち以上に個性的な女の子達と毎日戦国時代送ってるんだ。そこらの男子より会話は弾むぜ」

未来「…………」

折紙「士道は百合属性でも自分にデレさせる最強の男主人公。気が付いた時には、相手は士道に惚れている」

士道「折紙!?」

折紙「未来の緊張を解そうと思って」

士道「言い方! それだと、俺が小日向さんをデレさせようとしてるふうに聞こえるだろ!?」

折紙「……正直、彼女にとっては、その方が良い気がする」

士道「良い訳あるか! 他所の作品のキャラクター相手に!」

未来「……い、五河君!」

士道「おぉ、何だ?」

未来「こ、今度、響と一緒にカラオケ行こうと思うんだけど、五河君もどう!?」

士道「お、おう……。(いきなりデートかよ!?)」

折紙「その時は、私も呼んでほしい」

未来「う、うん。もちろん!」

士道「折紙まで……。て言うか、こういう状況なら折紙は小日向さんを止めるんじゃ……?」

折紙「問題ない」

士道「そうなのか?」

折紙「何人増えようと、私の勝利は揺るがないから」

士道「………………っ」

未来「こ、これが……男女恋愛……っ!」

声繋「……良いのか? 今回のトーク、これで?」
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