戦姫絶唱シンフォギアDAL   作:援道未知

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 大変長らくお待たせしました。

 本当、色々ありました。ここで書ききれない、というかこんなところで書きたくないようなこともありました。
 もう更新しないんじゃないか、とか思われていたかもしれませんが、一応でもラストまでの構想はできているので、それを書ききるまでは終われません。

 そんな訳で、長らくお待たせした最新話、どうぞ。


Memorial 2 / 彼は、その思いに応え―――

 崇宮真言は、戦うことを嫌っていた。

 生来、人を思いやる優しさを持った彼は、如何なる状況下にあっても、人と争うことはなかった。

 自らの命を狙う者が現れた時でさえ、彼は戦わなかった。戦うことで相手の命が散ることを恐れ、彼は何者からも逃げることを選んだ。

 彼は命が失われることを嫌う、優しい少年だった。故に、誰かの命の危機を知れば、己の全能力をもってそれを阻む。例え、その行いによって己の命が狙われることになるとしても。

 

 そんな彼が、人と戦うことを選ぶ時があった。

 

 それは、己の大切な者の為であった。

 

 

 

 

 

「……遅ぇ」

 

 燃え盛るショッピングモールの外にいるクリスは、やや機嫌の悪い口調で呟いた。

 先程共に救助活動を行った声繋の力と気遣いにより、クリスは一足先に外に出ていた。後から声繋も出てくるはずだったのだが、いつまで経ってもクリスが通って来た『孔』から彼が姿を現す気配がない。『孔』と言ってもトンネルのようなものではなく、扉のように通ればすぐに出られるものだから、そんなに時間がかかるはずはないのだが……。

 

「……あのー、クリス先輩」

 

「んぁ?」

 

 思考を巡らせていると、後ろから恐る恐ると言った様子で切歌が声をかけてきた。その隣には、調もどこか気まずそうに並んでいた。

 

「どうした?」

 

「その……怒ってないデスか?」

 

「は? 何をだ?」

 

「……みんなに内緒で声繋さんと接触していたこと、です」

 

「……あぁ」

 

 言われて、クリスは納得した。

 詳しいことは知らないが、調と切歌は、S.O.N.Gが敵対認識している声繋と無断で接触していたらしい。それも、それなりに親密そうに。

 

「まぁ、オッサンにバレたら雷は落とされるかもな」

 

「うぅ……っ」

 

「けどよ」

 

 そう、クリスは続ける。

 

「そん時は、あたしも一緒だ」

 

「「……え?」」

 

「あたしもあいつと一緒に行動した。オッサンの指示を聞かずにな。だから、あたしがお前らを怒れるかっての」

 

「クリス先輩……っ!」

 

「でも、意外です。クリスさんが声繋さんを信用するなんて」

 

「……そーいや、そうだな」

 

 調に言われて、クリスは初めて気が付いた。

 クリスは人付き合いが得意な人間ではない。今でこそ多くの仲間に囲まれているが、去年の今頃はクラスメイトとすらまともに会話ができないでいた。それどころか、逃げてすらいた。

 そんな彼女が、組織が敵と認識している声繋と協力し、救助活動を行った。これは、クリスを良く知る者が知れば、天変地異の前触れかと思われるほどの事態である。

 

「……なんつーか、あのバカに似てるんだよな」

 

「声繋さんが響先輩に、デスか?」

 

「ああ。誰かの為に必死になるところとか、どっか抜けてるところとか」

 

「確かに。私達に協力してほしいって言いに来た時も、急いでるはずなのに、それを忘れてたように見えました。そういうちょっと抜けてるところとか、似てる気がします」

 

「響先輩とファミレスで食事してた時も、響先輩にいつも通りで良いって、優しく言ってたデスよ。ああいう優しいところもデスね!」

 

「あ? ファミレス?」

 

「およ? 聞いてないデスか? 響先輩と声繋さん、今日デートしてたんデスよ!」

 

「あぁ……」

 

 言われて、クリスは思い出した。そう言えば、声繋が勝手にポロっと言っていた気がする。

 

「毎度の自己紹介に彼氏いない歴=年齢って言ってるあのバカが、S.O.N.Gが敵対認識してる男とデート、か。一体何のジョーダンだって話だよな」

 

「多分、響さんは声繋さんと友好関係を築こうと考えていたんだと思います」

 

「いや、それは分かる。けど、何でその手段がデートになるんだ?」

 

「そりゃ、男を籠絡するなら女に惚れさせるのが一番だからじゃないデスか?」

 

「それどこ情報だよ?」

 

「最近やった女性向け恋愛シミュレーションゲーム『恋してマイリトル☆シード girls strategy』デス!」

 

「お前そんなゲームやってたのか!?」

 

「弓美先輩に薦められて……。けど、ちょっと面白かった、です」

 

「お前も!?」

 

 次々と明らかになっていく真実に、クリスの脳は熱暴走寸前だった。親しい友人達が自分の知らない世界へ足を踏み入れだしていることに、何だかとてつもなくモヤモヤさせられる。

 

「……って、何でこんな話になっちまったんだ? 確か、あたしら揃ってオッサンに雷食らうとか何と……か……」

 

 会話を元に戻すべく、クリスは最初に話していた内容を思い出す。

 そこで、あることに気が付いた。

 クリス達装者がシンフォギアを纏う時、その様子はリアルタイムで映像化され、本部の発令所で確認することができる。

 クリスが気付いたのは、ギアを纏って声繋と接触していたのであれば、その様子は発令所にいる弦十郎達に見られていたことである。

 ただ、それでは妙な点が存在する。

 クリスが声繋と接触していた時、発令所からは何も言われなかった。組織が敵対する存在と装者が接触して、弦十郎が何も言わなかったというのは、極めて不自然なことである。

 

「まさか……」

 

 ある可能性に至ったクリスは、通信機で本部に呼びかける。

 二秒と掛からず、発令所は応答した。

 

『どうしたクリス君? 何かトラブルか?』

 

「単刀直入に聞くぞオッサン。

 ―――あんた、あいつとあたしらを試してるだろ?」

 

『…………分かるか?』

 

 一切遠回しな表現を使わないクリスの言葉に、弦十郎はしばしの沈黙の後、ほぼ答えと言える質問をした。

 

「それなりな付き合いなんだ。分かることは分かるし、分からねぇことは分からねぇ」

 

『その分からないことというのが、俺の考えか?』

 

「考えは分かる。お人好しなあんたのことだ。あのバカの考えも無視できなかったんだろ? あたしが分からねぇのは、お人好しでも博打はできる限りやらねぇあんたが、何でそんな大博打したのか、だ」

 

 司令官という立場上、弦十郎は責任感の強い漢だ。特に、装者達に関しては、大人でありながら少女である彼女達に戦いを強いているという無力感を日々感じていることから、自分から彼女達に無理を言うことはない。

 そんな彼が、クリスと声繋の接触を傍観していたというのだ。これに理由がないなどという道理はないだろう。

 

『……つい先程、負傷した響君を彼が我々の所まで連れて来てくれてな。君が今しがた体感した力を使い、発令所にいる俺のすぐ隣にだ』

 

「……何か、あいつならやりかねねぇ気がする」

 

『その時の彼の必死そうな顔を見て、俺は思った。もしかしたら、響君と同じ人種なのではないか、と。共に行動したクリス君には、分かるんじゃないか? 彼の本質が』

 

「……ああ。分かる」

 

 人付き合いの苦手なクリスにだって分かる。

 彼は、凡そ人に危害を加えるような、誰かを傷つける行為ができる人間ではない。

 小動物一匹一匹の命を全力で守ろうとし、出会って一日程度の相手の怪我を治療し、命を狙われながらも相手を傷つけないよう立ち回る。

 どれもこれも、可能かどうかはともかく、響がやりそうなことだ。

 そして、そんなことができる人間というのは、自然とある一つの呼ばれ方をされる。

 

「あいつ、バカだわ。……しかも、何でかここ一番って時ほど、デカイことを賭けてみたくなるタイプのな」

 

『……ふっ』

 

 クリスの結論を聞いて、弦十郎は満足気に笑った。

 

「で、あんたはあたしとあいつが上手くやれるだろうと思って、高見の見物決めてたって訳か」

 

『それは人聞きが悪いな。娘に新しい友達ができる瞬間を見届ける父親と言ってくれ』

 

 おどけるような口調で言う弦十郎に対し、クリスは「そういうことにしといてやる」と言って、通信を切った。

 

「……はぁ。友達、ねぇ」

 

 弦十郎が最後に言っていた言葉を思い返し、クリスは一人、ため息を吐く。

 声繋は、クリスが差し出した手を取らなかった。クリスとしては、一生に一度できるかどうかの偉業に等しい行為だったのだが、それを拒絶された今、友達になれるかどうかは微妙なものだった。直後に声繋から手を差し出されたが。

 無論、彼にだってそうするだけの理由があったはずだ。それが分からないほど、クリスは人見知りをやっていない。

 そもそも、彼には謎が多過ぎる。あの力はどのようにして手に入れたのか、どうして爆発を引き起こしたのか、あの力は聖遺物なのか。彼と会って一日程度しか経過していない故致し方ないことだが、彼と友好関係を築くには情報が少な過ぎるのだ。

 

(あのバカはデート、後輩達はそのサポート、あたしは一緒に人助け。一番あいつのことを知ってそうなのは、やっぱり……)

 

 比較的最も長い時間、声繋と接触していたのは、彼とデートをしていた響だろう。デートであれば、必然的に会話も多くなり、上手くいけば彼の口からポロっと重要な情報が得られたかもしれない。本人には悪いが、彼ならやりそうである。

 

(……あたしも、した方が良いのか?)

 

 ふと、クリスはそう思い始めた。そして、すぐにその考えを消し飛ばした。

 

(いやいやいやいや! 無理に決まってんだろ! 第一、男友達もいたことのねぇあたしにできる訳あるか!)

 

「……どうかしたんですか?」

 

 クリスが悶々と悩んでいると、後ろから調が恐る恐るといった様子で声をかけてきた。

 

「あ、ああ、ちょっとらしくねぇこと考えてただけだ。気にすんな」

 

「はぁ……。それで、司令は何て言ってたんですか?」

 

「あ? 何て……?」

 

「え? 司令に次の指示を扇いでたんじゃないんですか?」

 

「……あ」

 

 完全に失念していたことを指摘され、クリスは腑抜けた声をもらした。

 建物内の人々(と動物達)を救出し終えた今、クリス達の役目は終わった(ほぼ声繋が一人で片付けたが)。となれば、弦十郎に報告し、次の指示を扇ぐのが定石だ。

 クリスは早速、再度本部へ通信を繋げた。

 

「オッサン、報告忘れてた。任務は完了したぜ」

 

『ああ、ご苦労。ところで、一つ頼まれてほしいことがあるんだが……』

 

「……?」

 

 弦十郎の言い様に、クリスは違和感を覚えた。

 追加の任務を言い渡されているはずなのだが、弦十郎の言い方はどこか遠慮を含んでいるように感じたのだ。

 

「何だよ? 追加の任務なら引き受けるぞ?」

 

 ひとまず、追及はせずに要件を尋ねるクリス。今さっき任務を終えたばかりだが、クリスは大して動いていない為、体力には余裕がある。調と切歌も同様だ。

 だが、それでも弦十郎は迷っているのか、スピーカー越しに唸り声を聞かせてくる。やがて、何か諦めたようなため息を吐いた後、要件を述べた。

 

『……翼とマリア君が彼と接触し、何やかんやあって戦闘状態に入ってしまった。仲裁役を買ってくれないか?』

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 それは、クリスが『孔』を潜ってすぐのことだった。

 

「街中を徘徊していたかと思えば、裏でこんな災害を起こしていたとはね!」

 

「昨日の爆発に続き、よもやこのような場で災うなど……。最早、貴様は存在が災害と見なせる!」

 

 突如現れた、二人のシンフォギア装者。

 風鳴翼と、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。

 その身に世界を守る鎧を纏った、見目麗しい二人の女性は、煉獄の檻の中に佇む災厄に向け、確かな敵意を放っていた。

 その災厄とは、今しがた建物内に取り残されていた、人間以外を含む全ての生存者を救出した少年、声繋。

 その少年は、明確な敵意を向けられながら。

 

(な、何でこの人達がいるんだああああッッ!?)

 

 考えてもおかしくはないが、タイミング的にはズレたことを考えていた。

 

(おかしいだろ!? この人達『俺』を追ってたはずだろ!? 何でターゲットほっぽってこっちに来るんだよ!? いや、こっちが本当のターゲットだけど!)

 

 タイミングはともかく、声繋が驚く理由は正当である。

 声繋は響とのデート中、うっかり霊力を使ってしまい、翼達が自分を探しに来ることを危惧した。対策として、〈刻々帝(ザフキエル)〉の〈八の弾(ヘット)〉で生み出しておいた分身の一体を彼女達に追跡させ、目を欺くことに成功した。

 クリスから、翼とマリアは分身を追っていると聞いた。救助活動の最中、彼女には最低限の事情を話しており、分身のことも理解してもらった。騙したことへの文句も散々言われた。

 だから、翼とマリアがこの場にいるのは、声繋にとっては完全に想定外なことだった。

 一体何が原因か。まさか、クリスが根回しをしたというのだろうか。

 

「それにしても、まさかテレポートが可能だったとはね。突然目の前から消えた時は焦ったけど、丁度行く予定だったこの場所にいてくれて助かったわ」

 

(クリスさん、疑ってごめん! あとあんた達もごめん! 役目ほっぽったのは『俺』の方だった!)

 

 全て、分身体が招いた事態だった。

 翼とマリアが追っていた分身体は、あろうことか自分の役目を放り出して救助活動に参加しようとしていたのだ。しかも、マリアの話から察するに、時間切れで参加できなかったと推測できる。分身体には活動限界時間があり、それを過ぎると消滅してしまうのだ。

 結果、声繋の分身体は、本体によろしくない状況を作って消えてしまったという、何とも情けない最期を遂げてしまったのだ。過去の自分そのものということもあって、声繋は羞恥を禁じ得ない。

 

「剣を抜け! 今ここで、我々が貴様を斬る!」

 

(えぇ……。これ、どうするのが正解なんだ……?)

 

 声繋は悩んだ。ここで、彼女達と戦うべきかどうか。

 先程、響を彼女が所属する組織に送り届けた際、声繋は『火災を何とかした後で相手になってやっても良い』という旨のメッセージを装者に伝えるよう、弦十郎に託した。装者達には伝えられなかったが。

 その言葉に嘘はない。戦いたいかどうかと聞かれれば、否と答える。だが、彼女達を傷つけずに事を進めていけば、こちらに戦意はないと伝わるのではないかと思い、そう言ったのだ。

 

(正直、もう必要ないと思うけど……)

 

 今しがた、クリスと共に救助活動をしたことで、声繋はクリスと繋がりを持つことができたと思っている。今はまだ、越えるには難しい溝があるが、不思議と手を伸ばせば届くような距離にある。そんな関係になれたのだと、声繋は感じていた。

 それをわざわざ絶つようなことは、したくない。

 

(……そうだな、ここは何とか穏便に済ませよう)

 

 声繋は戦わない道を選ぶ。

 彼女達が声繋の話を聞いてくれるかは、かなり厳しいだろうが、いざというときは自分の身体を好きなだけ斬らせてストレス発散してもらうとしよう。……回復できるとはいえ、それを選ぶのは本当に嫌だが。

 

「……あの、ちょっとい―――」

 

「貴方が現れてからというもの、最悪なことばかり。世界中が貴方一人に困らされ、仲間は喧嘩、そしてこの火災。全部、貴方のせいで起こってしまったこと!」

 

「―――え?」

 

 話を切り出そうとした声繋を遮り、鬱憤が込められたようなマリアの言葉の、ある一部に。

 声繋は耳を引かれた。

 

「……喧嘩って、どういうことですか……?」

 

「……?」

 

「それを聞いてどう―――」

 

 

『答えろッ!!』

 

 

 二人が答えないことは分かっていた。今の自分と彼女達とでは、言葉で繋がることなど到底不可能であることも。

 だから、声繋は〈破軍歌姫(ガブリエル)〉の力を使った。

 街中で未来を助けた時と同様、霊力を込めた洗脳効果のある音で、相手を自分の制御下に置く。

 その状況下において、声繋の命令は絶対。一度聞いてしまったが最後、相手は声繋の言葉に逆らえない。

 本来であれば、悪漢などを穏便に撤退させる時か、自分の命が危機に晒された場合にのみ使用すると決めている力。それを、命の危機に晒されている訳でもなく、何の罪もない翼とマリアに使用するのは、声繋とて不本意である。一方的に命を狙われているとしても、悪意がない限りは。

 その上で〈破軍歌姫〉を使った理由は、実のところ声繋にも分からない。

 最早、無意識下での行為だった。

 

 声繋の怒号が二人の鼓膜を打った瞬間。

 燃え盛る怒りを滲ませ、張り詰めていた二人の表情が、何の感情も見受けられない真顔となった。

 直後、翼が口を開いた。

 

「昨日、貴様と戦い、我々の本部に帰投した後のことだ。我々は貴様を討伐することを義務付けられたが、立花がそれに反対し、私と論争になった」

 

 淡々と、翼は昨日の出来事を語っていく。

 

「その結果、立花響は今回の件から除名され、私達と離れることになったわ」

 

 マリアが引き継ぎ、声繋の質問に対する答えを述べた。

 それを聞き終えた声繋は、鈍器で頭を殴られたような気分を味わっていた。

 

「……そんな」

 

 声繋にとって、それは意想外な事実だった。

 声繋は、自分の存在を否定されることに疑問を抱かない。自分が人間にとって、どれだけ危険な存在か、それを知っているからだ。

 しかし、声繋が驚いたのは、自分の存在を肯定されたことではない。

 

 誰かに、その誰かが仲間と衝突してまで、自分が肯定されることが、受け入れられなかった。

 

『何で、響はそんなことを……?』

 

 響の行動の理由を知りたい声繋は、続けて命令を出す。

 

「……自分と貴様が似ていると感じたのだろう」

 

「え……?」

 

「立花は昔、ある事件がきっかけとなり、周囲から迫害を受けていた」

 

「……ッ!?」

 

 その事実に、声繋は再び衝撃を受けた。

 意外としか言い様がなかった。一日にも満たない付き合いではあるが、声繋には、響が人に嫌われる姿を想像できなかったのだ。

 

「今でこそ、立花は多くの友人に囲まれ、幸せを噛みしめている。だが、それは立花を大切に思う友がいたからこそ。それを知っている故に、貴様を見捨て置くことができなかったのだろう」

 

「…………」

 

 翼によって語られる響の真実に、声繋は驚くことしかできなかった。

 周囲から否定され続ける者を救う。それは、言葉にすれば酷く簡単に聞こえるが、実際は酷く困難で、険しい道のりである。

 否定される者の側に着けば、その者が受ける否定を自分も受けることになる。ましてや、自分の仲間が否定する者の味方となれば、それは裏切りにも等しい行為となる。響はそれを、声繋の為にやってのけたのだ。

 

(響……)

 

 彼女が、組織の意向とは真逆の行動をしていたことは、薄々気付いてはいた。

 だが、まさか仲間にその意思をぶつけ、仲間から見放されてまでそれを行っていたことは、想像できなかった。

 

 声繋は、響の心境を省みる。

 声繋を救うことを選んだ時。

 仲間に自分の意思をぶつけた時。

 仲間と衝突した時。

 仲間に見放された時。

 響は、どんな気持ちだったのだろう。

 そんなことは決まっている。〈囁告篇帙(ラジエル)〉を使うまでもない。

 

 きっと、辛かっただろう。

 

「…………よし」

 

 その結論を得た時、声繋は自分がどうすべきか、その答えを見つけた。

 既に、〈破軍歌姫〉の洗脳は解いた。洗脳されている間の記憶は残らない為、彼女達は僅かな間の記憶が抜け落ちていることに疑問を感じているだろう。

 彼女達には悪いことをしたと思う。その償いをする為にも、声繋は彼女達の要求を呑むことにした。

 

「受けて立つ。俺と勝負しろ」

 

 自分を信じてくれた、響の為にも。




二亜「いつもあなたの心の近く(ニアー)に! デアラヒロインの本条(ほんじょう)二亜(にあ)でーす!」

エルフナイン「シンフォギアのスーパーメカニック、エルフナインです。……こんな感じで良いですか?」

二亜「オーケーフナちん! 今回はこの二人で、シンフォギアDの振り返りをやっていくよー!」

エルフナイン「前回の更新から二ヶ月以上経っていますからね。最初の部分は忘れられているかもしれません」

二亜「んじゃ、いきなり第一話と第二話を続けてからどうぞ!」

 ユーラシア大陸で突如発生した大爆発。S.O.N.Gは爆心地の中心に少年を発見。調査の為にシンフォギア装者を向かわせる。一足先に到着した響は、原因と思われる少年と接触。その後、駆け付けた他の装者達は少年と交戦を開始する。
 少年は光り輝く大剣、冷気を放つ巨大なウサギの人形、撃った対象の動きを止める銃と時計盤、そして治癒の炎を駆使し、装者達を圧倒する。その最中、少年を狙ったクリスのミサイルは、計らずも響にも降り注ぐ。しかし、少年が響を守るようにしてミサイルを退けた。それによって、響は少年を悪人ではないと推測し、短い交渉の結果、話し合う機会を得た。

エルフナイン「以上、第一話と第二話の振り返りでした! 二亜さん、如何でしたか?」

二亜「いやー、ビッキーの少年ぶりが凄いねー。流石主人公!」

エルフナイン「この小説ではヒロインですけどね。まぁ、士道さんに似ているからこそ、声繋さんと話し合おうとされているのでしょう」

二亜「んじゃ、次いってみよー!」

 本部に帰投した装者達は、少年を殺すよう命令される。その決定に納得がいかない響は、特機部二時代からの付き合いである翼と衝突するまでに怒り、その状態を問題視した弦十郎によって作戦メンバーから除名される。
 S.O.N.Gから離れることとなった響は、街中を歩いている途中、昨日の少年と再会する。少年から「話し合う為に来た」と言われ、響は少年と交渉の為のデートを開始する。その前に、名前を持たない少年に『声繋』という名前を与えた。

二亜「以上、第三話でしたー!」

エルフナイン「響さん、皆さんに内緒でこんなことして大丈夫でしょうか……?」

二亜「まぁ、うちの少年も精霊とパッタリ出くわすことあったし、いんでない?」

エルフナイン「いえ、そういう意味ではなくて……」

二亜「ほらほら。あんまり長くできないんだから、次々いくよ!」

 デートを開始して最初に立ち寄ったのは、響達がよく行くファミレスだった。食事を楽しむ二人。そんな二人を、偶然同じファミレスに来ていた調と切歌が目撃する。響と声繋の仲良さげな様子を見た彼女達は、二人のデートをサポートすることを決意。響の同級生達にも協力を扇いだ。
 調と切歌から事の経緯を聞いた響の親友、小日向未来は、デートをサポートすべく二人の下へ向かう。道中、不良に絡まれるも、声繋の助けで事なきを得、二人に映画のチケットを渡してその場を去った。
 しかし、未来と別れてすぐ、声繋がデートの中止を提案する。理由は、未来を助ける際に天使を使ってしまったことで、その反応を探知したS.O.N.Gが装者達を差し向けることを危惧したから。
 響はそれを断り、声繋ももう少し響と一緒にいたいと提案を破棄。向かってくる装者達の目を欺く為、近くで二人を見守っていた響の同級生三人、調と切歌の協力を得て、響のコーディネート、分身体を装者達に追わせることで、デートの続行を可能にした。

エルフナイン「第四話、五話の振り返りでした。それにしても、声繋さんは何と言うか……普通の男の子ですね」

二亜「まぁ、性格はうちの少年が元になってるからね。でも、こんな場所だから話すけどさ、こっちの少年は心がぶっ壊れてもおかしくないことがあったんだよね~」

エルフナイン「え!? 言って良いんですか!?」

二亜「だいじょぶだいじょぶ! 本編でそこはかとなく触れてるし、どうせ読者だって気付いてるでしょ。漫画家ナメんなよ!」

エルフナイン「そ、そういうものですか……。あ、次いきましょうか」

 映画館のあるショッピングモールに到着した二人。しかし、そこで親とはぐれた子供を発見し、一緒に親を捜すことに。無事に親の下へ送り届けるも、二人は映画を観るタイミングを逃してしまう。
 その後、何もすることがなくなった二人は、自然と会話を始めていた。声繋の両親の話になり、そこで響は声繋が本当に名前を持っていないのかと疑問に感じるが、声繋自身がそれを指摘したことが決め手となり、改めて声繋と分かり合おうと決意する。
 しかし、二人がいるショッピングモールで、爆発が起こった。声繋は無事だったが、響が瓦礫の下敷きになってしまう。急いで助け出そうとする声繋だが、響が声繋に向かって倒れてきた柱から彼を助け、重症を負ってしまう。
 声繋は事態を打開すべく、力を使おうとするも、それによって生じるリスクを思い返し踏み留まる。だが、自分のことを信じ、その身を挺してまで助けてくれた響を、そしてまだ生き残っている全ての人々を助ける為に、神威霊装・全番(ウォーディーン)を纏う。
 天使と天使の能力を結合する霊天合(リンケージ)を駆使し、次々に生存者達を救出していく声繋。最後はペットショップの店員と動物達となり、クリスの助力もあり、全員救出することに成功する。この共同作業により、声繋はクリスと繋がりを持つことに成功した。

エルフナイン「最後は一気に振り返りました! ……って、二亜さんどうしたんですか?」

二亜「いや、第六話見て思ったんだけどさ、何で迷子と一緒にいるシーンをダイジェストにしたのかって思って……」

エルフナイン「作者さんも後悔しています。今からでも挿し入れようかと考えていますよ」

二亜「五.五話とかならやれそうだね。……やらせる?」

エルフナイン「やらせるべきでしょう」

二亜「よし! じゃあビッキー連れてレッツ直談判だー!」

エルフナイン「はい! ついでにボクも早く出られるように!」

二亜「っとその前に、読者のみんな。感想、指摘、評価、よろしくね~!」




二亜「あ、そういえばさ、作者が最近色々と短編書きたくなったらしいんで、その辺もヨロ!」

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